第拾玖話 仲良し大会?ねーよ、んなもん
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筆を取ろう。
そう思ったのは一体誰だったか、それすらも知覚されることもなく、ただ呆然とありありと、その状況を受けつつあるのは果たして一体誰なのか?
それが分かってしまっては、一層に面白い冒険譚が水の泡ではないか……そう考えるのは一体誰なのか。
それすらも悟らせないことこそが素晴らしき冒険譚を描くきっかけ、そう思っているのは果たして……?
そう、この学園対抗大会に見せかけた、国家間の小競り合いが発生するこの場では、そんな瑣末なことはさておかれた。
誰が言ったか冒険譚、誰が信じたか冒険譚。
そんなお伽の話をするのはいつの世も上位存在であることは明確なのだ。
その上位存在が一体なんの筆を取ると言うのだろうか?と言う一般的な質問は棚上げして、紡ぎ出す冒険の話。
冒険……と揶揄するにはまったく持って烏滸がましい、別の何かだとも思うのだ。
いつも聡明で優れている人間なんて、いるはずも無く、又圧政においてはその限りではない。
「いつも思うけど、これってとても退屈なことだよねぇ。その場にもいけずただのお飾りなら、誰だってできることであると思うんだけど、ボクの気のせいかなぁ?」
誰に問いかけているのか、それすらもわからない。
しかし、とても面白い状況になること請け合いの話を見逃す手はなく、事態を混沌とするエッセンスさえ散りばめる。
彼女は正しく特異点だ。
人類史でも稀に見る存在であり、それは天皇猊下も承知おきのはず。
その特異点は、ただひたすらに強かった。
どの国家すらも有に超える戦闘力を誇り、そこそこの相手なのであれば簡単にゴミクズに変えることのできる存在……そう言えば想像に易いだろうか?
その想像力にお任せして、簡単に二国の刺客をねじ伏せている可憐な見た目をしたおっさんは、この世界に存在していいものなのか?
そんな問いは意味をなさない。
誰にも答えることなどできないからだ。
そんな問いに意味なんてない。
単純に比較することなどできないからだ。
「ボクってば、本当に便利な異能なんだけど、扱いに困る上の者たちがいるのも事実なんだよねぇ。今もボクを見張っているであろう奴らに、一言声を出してこう言いたいよ。《《ボクなんかを見るより彼女を見た方が余程マシだってね》》」
それは確かにその通り。一本を取られたと言ったところだろう。
彼女の有する戦闘能力の高さには、常に注目して監視するという考えが一般的に根付いてきた頃だった。
こうして反応するのも実に数百年ぶりだろう。なんとも嘆かわしいことか、この国の天皇猊下を見守ったとしても、他の国が疎かになるのは自明の理だった。
女王が常に意を唱えているであろう英吉利にだって、首脳が化け物とタイマンを張って勝つ亜米利加だって……例に挙げるとキリがない。
だから、自身はこの冒険譚を推そうと思っているのだ。
常勝無敗を誇った大日本帝国のこの素晴らしい冒険譚を皆へ!
素晴らしき旅路を皆へ!
あくなきまでの探究心でこれを読むものは、実際は少ない。
それが実に嘆かわしいことであるとも思うのだ。嘆かわしいことであると言うことはこの際置いておくとしても、これはあんまりではないか!
世界はここまで楽しいに溢れている……そう断言できるからこその忠言と捉えてもらってもなんら差し支えない。
「君って、いっつもボクを見てたりするけど、それって意味のあることなのかい?そんなに意味のないことだと思うけどね?こんな不老不死の何がいいのか分からないよ〜」
筆を取ろう。
筆を取るに差し当たって、一つ物事を変革したものだと捉えよう。
これはただの学園対抗仲良し大会などでは無く、血みどろで血生臭いただの少年漫画のバトルものであるかのように扱おう。
それが今のところできる最大限の表現であり、最大限の褒め言葉、そう思ってもらおう。
いつも、自分の行動というのは誰かに見守られている。
いつも上位存在の影がちらつく、そんな生き方をしてみよう。
そうしたら、まともに生活が立ち行かなくなって、誰にでも顔向けできる人間などほとんどいないのだから。
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はい、仲良しこよし大会なんかではなく、ただのチミドロフィーバー!でした。
どうも、俺こと俺です。
今現在は血飛沫が起こるここ、学園間……いえ訂正いたしましょう!国家対抗戦の武芸間に居ます!
やんごとなきやんごとのあるやんごと方の身分の、なんごとでやんごとな大会!
何を言っているのかわからねぇと思うが、俺にも何が何だか全然分からん!
普通はこんなことしないって!
回復役がいるからって無茶しすぎでしょ君ら。
そんなにこれが楽しいかね。俺には理解のできない思考回路だ。全くもってこれなんて楽しくもなんともない。
しかしながら、闘争の中で得られる知識と知恵と勇気がある。
それだけでもまだ救いなのでは?
それがないと、まったく無意味なただの血の流し合いなのだから。
え?前戦っている時楽しいとかほざいてたタコはどいつなのって?ソビエト連邦国なんじゃないですかね?旧い名前を独逸と呼称する国よ!
あっ、どいつと独逸を掛けたんだよ?分からなかった?ねぇねぇ分からなかった?残念、俺にもよく分からん!
ま!俺には関係のないことか!どんな奴がどんな思考で戦っているのであれ、別にそいつの意見を尊重する必要すらも感じないけど!
別に何も戦うことが悪いってことでもない。合理的且つ非条理でなければ別に問題のないことだ。
この国家間対抗戦だってそうだ。
「次は大日本帝国からお越しのモンキー共、出てこいや!」
初手バカにし出すとかギスギスしすぎじゃね?このクソ国家共。
テメェらも言っとくがモンキーだからなぁ!どこぞの海賊の漫画じゃねぇんだよぉ!声を大にして言いたい。
「絶対にこいつらを黙らせてやる」と。
言いたいことは言えて満足か、この幼稚園児並みの知能を有するクソ虫どもめ。
過去の恨みだかなんだかしらねぇがよぉ!俺らの國に挑んで負けておめおめと逃げ帰ってきて白旗かがけた奴らは、いったいどこの誰だったんでしょうねぇ?!
俺も大概ギスってるわ。過去の遺恨残りまくりだわ。
こりゃ俺も人のこと言えんね。控えよ。
そして、呼ばれると同時に二人に目配せする。我々は不意にでも国家間での選抜メンバーであるということに変わりはない。
もし俺らが負けたのならば、それは天皇猊下を侮辱する行為に等しい。
それは断じて否である!
そんなことをするならば、弓きり折自害する方がマシだぁ!
とどのつまりは俺らはかの有名な御仁、那須与一になれば良いだけだ。那須与一のような働きぶりを見せれば、天皇猊下の象徴としての役割も果たせるというもの!
徹底された教育が行き届いていなければ、こんなことを思わせるのはまず不可能よ!
我が祖国大日本帝国を舐めるんじゃねぇぜ?
俺らを舐めると、大概痛い目見るのがテメェらだ!
さぁ、道を開けろ(コミット系のYo○Tuber)
「ふっ、何を思うか無口な少女よ。ソナタらには地面に這いつくばって泥を啜るのがお似合いだ」
「何をいうかと思えば…………このなんの取り柄もない国家が随分と大きく出たものですね」
「やけに高いところが好きなのは、どうやら木に登るのが得意だかららしいな、日本猿」
「私たち…………猿なら、さしづめ貴方方、は……一体何?」
「可愛がってやるからかかってきな、子猫ちゃんたち……いやお猿さん達ぃ!」
「………………………………………………………新種の雑草」
俺の言葉でピキったバカが一人突っ込んでくる。この国家間対抗戦は武器有りのなんでも大会。
ぶっちゃけ飛び道具がいっちゃん強ぇことになるんだが、俺ら異能使いを舐めるんじゃねぇ。
飛び道具っていうのは異能がまともに使えないおつむが足りない奴らのすることだ。
弾丸を槍でペドの人が弾き返すと、隠し持っていた暗器を使って喉元に、愛の人が武器を突きつける。
俺は至ってシンプルだ。
ナイフを使って相手の棒術を軽くいなすと、そのまま腹部を一度突いて痛みを味わせたのち、さらに深く差し込んで引き戻す。
こうすることにより二重苦を味わうことができ、俺と同じ追体験をすることができる。
異能使いの戦いに、何も異能まで使う必要もない戦いを挑む方が悪い。
これは悪手だったな。
そうして、俺たちは国家間対抗戦で勝ち続け、五連勝をしていたところで異を唱えるものがいた。
まぁ、勝ち続けていたらいずれあったことだ。
ここは素直に言い分を聞いてやることにしよう。
そこで初めて情報を精査し、制する。
対抗戦とは、情報面でも始まっているのだよ。その国のどの情勢がそうさせているのかすらも、こちらは学園で習い済だ。
中卒の俺にしては、めちゃくちゃいい具合で焦っているまである。ここまでくると裏があるんじゃないかと思い始めたぐらいだ。