第拾㭭話 悪魔の如き三人衆
何事にも情熱を持って接するべきだと人々は口々に言う。
なんでだ?別に物事に集中しなくても別にいいだろう?なんで許容する?
頑張りというのは人々がそれぞれ、併せ持っているものなのだ。
しかしながら、それを勘違いしてみんな自分と同じように頑張ることができると思い込んでいる奴もいる。
だから…………風呂場に行ってこの二人に囲まれるのは決して頑張りが許容範囲内を越えたとかじゃ決してないんだ!
ほんとよほんと!もう全てがめんどくさくなったとかじゃないから!ほんとだから!
まぁ、もう二人に関しては諦めるようになりましたぁ!
だって、もうそういう一派だと思われるようになっちゃったし、薔薇ファミリアとか揶揄されるようになっているんだろうなぁ。
悩ましいことだ……本当に悩ましいことだ(大事なことなので二回言いました)
薔薇は言い過ぎたとしても、そういう一派に見えるという点では最早撤回の仕様がないから諦めるとして……どうするかね、この状況。
「いえ、華恋さんには私が髪などを洗います!」
「違う…………それ私の、役目」
「お門違いもいいところですよ!この私が洗うことこそが大事なのです!」
何故か俺の体を洗う洗わないで揉めているらしい……風呂場でそういうことするの辞めてぇ!
他の人に注目されちゃうでしょうが!
それがまた厄介なもので、これが大変なんですよ、地味にね。
まぁ?別に悪い気はしないんだけど、少し恥ずかしいっていうのが本音なんですけど。
ここはバシッと言ったほうがいいのかなぁ?なんだかここでこうするのも恥ずかしくなってきたし……どうしようね?
でも、自分で伝えるとなると少しめんどくさいっていうのが本音なんですけどぉ!普段どういう会話するかも忘れたんでよくわかんねぇや!
もうどうだっていいか!
あーだこーだ話が進んでいき、ペドの人ではなく、愛の人にお鉢が回ってきた。
よしよし、これで体を弄られる心配は無くなったわけだ。こうして平穏に日々は過ぎていくのである。
「よし、今日は実戦に即したことをする!選抜メンバーのみで構成されたチームに、見事勝てた一般のメンバーがいたのなら、それが取って代わって学園対抗大会に出て良いものとする!」
こういうのって不意に現れるから不思議なんだよねぇ。
まじで理不尽ってさ、本当に起きるんだよね。すぐに目の前にでもやってきて、俺の首を切らんとする死神がいるのかと思うぐらいには理不尽って奴だ。
まぁでも?チームといったらなんですがね、二人組を作ってたじゃないですか……それがメンバーをもう一人追加できたらいい位置に行けるという話があってですね。
つまりペドの人と愛の人、そして俺で「よしよし隊」みたいなものを作成した!
ヨシヨシされる度に自尊心が上がるというおまけ付き。
さて、我が選抜メンバーに穴はないぞ……おっと、そういう意味じゃないぞ?
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一般生徒たちははっきりいってウンザリしていた。自分がもし逆の立場で考えていたのなら、めんどくさいと同じことを思うからだ。
だからこそ、彼ら彼女らがめんどくさいというふうに顔に出さなくても、なんとなく察してしまうだけの実力差が離れていた。
それは仕方がないだろう。
何せ異能というのは生まれてから《《怪我や大きな事故など》》をしなければ発現することはない。
それが異能というものだからだ。だからこそ、異能というのは選ぶことのできないものである、と言える。
誰がワンチャンかけて一度死にかけたりして、異能を取ろうか……という話だ。
異能は死に近ければ近いほどに強くなる傾向がある……と言われている。
まだ言われている段階で、実験理論などは提唱されていないに等しいのだが、それも仕方があるまい。
そんなこんなで、一般の生徒たちはそれでもなお掴もうとする者たちを於いて他にいなくなってしまった。
それでも、やる気のあるものたちだということは確実だろう。
目に自信が溢れんばかりに、爛々と輝いている。
三千院播磨守御門と吉祥寺権少納言怜、遷宮時少納言蒼海はその輝いた眼を持ったものたちの中にいた。
しかし悲しいかな、いつもの世界は無常であり、時に現実というのは実につまらないもので終わる。
彼ら彼女らの前に、悪魔と思しき3人組が現れた。
一人は槍使いの名門の出として知られる鴉ヶ雲対馬守寧々に、秋葉ヶ原一族切手の天才児ともてはやされていた秋葉ヶ原宮内少輔愛莉。
そして、転入してきて間もない頃にボコボコにされた相手……一番合戦中務大輔華恋が目の前に君臨する。
とてつもない威圧感と、とてつもない絶望感を与えるその出立は、まさに悪魔…………と評するに値した。
「何かの間違いであって欲しい」「これは夢なんだ!そうだ夢を見ているんだ!」「こんなに明瞭な夢があるわけない、何か悪いことしたかな俺」と心の中で走馬灯を見ていたぐらいだ。
余程のことがない限りは二度と相対はしなかったであろうはずの人物が目の前にいるということはプレッシャーであり、信じられないぐらいに恐怖を与えた。
「ボコ…………ボコ」
「走ってきたら、叩きのめす。走ってこなくても、叩きのめす。走るつもりがないのなら、叩きのめす」
「………………………………………………………………(まぁ、ちょうどいい機会だし、決着をつけるという点で!決着をつけるという点でね!)競争」
その時、華恋は彼らを認識していなかった。
前に会ったことすらも忘れて、誰だっけこいつらともなることなく、目の前に立ち塞がる障壁として相手を見据えた。
そうすることによって、会った時よりも威圧感がとんでもないことになって、三人の同中は「早くお家に帰りたい」だ。
周りからも人が集まってきて、大盛況を見せる中で、この三人だけが分かっていた。
喧嘩を売ってはいけない人間だということを。そんな側に支えているものであるならば、そちらも相応にヤバいと。
その感は正しいだろう。本当に強いのだから手がつけられないのだ。
他のものでは見えぬような速さで三千院らを突き飛ばすと、かかってくるものはいないか目で訴える鴉ヶ雲。
我先にと訓練場に上がる雑多な有象無象ども。
そのどれもを蹴散らして、学園対抗大会という名の、国家間対抗大会は始まって行くのである。
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まさかの大会が国家間で行われる大会だとは思ってもみませんでした…………めちゃくちゃ外国語ペラペラな二人が悪いんですけど!
そしてなんかそのペラペラな英語とか中国語とか理解できるんですけどぉ!なんでぇ!?生まれてこの方あんまり勉強したことねぇぞ!
認識を変える必要があるなぁ、うん。
ペドの人改めて、ペラな人。
愛の人改めて、相する人。
二人とも裏切り者めっ!
…………えっ?なんで話している内容が理解できるかって?
俺にもわからないんで誰かわかるように説明してもらってもいいですか?不明な点がいくつかあるのですが、どうしたらよろしいでしょうか?
虚空に話しかけても何にもならない、俺はめちゃくちゃ外国語に対して適性を持つようになってしまっていたのだ。
そう言う人造人間に改造されたってほうが信じられるぐらいには。