第拾伍話 見つめられても濡れない
俺は猛烈に説教を食らっている。
何故ならば、それはコミュニケーション能力のなさからきているものだと言える。
しかしながら、異議を申し立てたい。「異議あり!」と声高にして叫びたい。
そう言いたいのは、この手の事に慣れすぎて心に響かないからだ!
俺、昔から説教くらっても「ちゃんと聞いているのか!お前は大人を舐めているな!」などと言われたからである。
まぁ、そんぐらいのこと笑って許してくれよなぁ。だって、実際問題ペドの人は俺との会話なしに勝手に会話が弾んでくれるから!
他人依存なのは変わらないですね…………なにこれ、結局怒られんじゃん!クソが!
はいはい、この手のことは聞き飽きたから、早く帰してもらえませんかねぇ?
はいはい、反省して頭下げときまーす!すいやせんっしたー!…………これで良い?帰してくれる?
あっ、もう良いんすか?ありがとうございますね。じゃ、お暇させて頂きまーす。
結局俺は変わらない。
変われない。
何故ならば、それが俺だからだ!
俺という自然体は、守られなければならない!ほら、天然記念生物のお通りだぞこら!敬わんかい!
ほれ、これで「未来も」明るいじゃろう?(成金の金燃やし)
「ごにょごにょごにょ」
「ふさふさくんくん」
はい、なんか噂になってましたぁー!いやいや、そんな人気者じゃあるまいしぃ、そんなことあるわけないじゃないですかぁ?
私ぃ、女の子ですしぃ、月重を感じるんでぇ、早く帰っても良いですかぁ?
あっ、だめ?はいそうですか。ってならんわーい!心の中だけは、俺の住む居場所だと思ってる。
じゃあ俺とニートの差はなんなりや。ほぼ自宅警備員と変わってねぇんだよなぁ。
なんかさ、俺とニートの差って外に出ているかどうかだと思うんですよねぇ。
なんか違うとか言われても質問とか一切受け付けねぇから!お前の椅子、ねぇからぁぁ!をリアルで食らった俺は一味違うゾ!
中学生の頃にもよく受けてたし、あんまりそこらへんは変わらないんですけどね!
は、虚しい。
俺の心の中を聞かせたら、みんな卒倒もんだろうなぁ。
こんなはちゃめちゃハッピーのやつがいいやつなわけないじゃない、人間だもの(むつを)
別にむつを押しってわけじゃねーけど、あの人の言葉汎用性高いんだよな。
ついつい使ってしまうマンモス。いや、俺にもうマンモスっていうかぞうさん、っていうかマイサンすらねぇから。ドーターになっちゃったから俺。
また今日もペドの人に体凝視されんのかな?めちゃくちゃ見てくるんだよね、本当食い入るように。
まじで百合って言うか犯罪者っていうか、そんなのが存在するんだな…………って、思ったんだよね。(こっち見んな)
俺個人としてはこの人のことなんも知らないんだけどね!やっぱりこちらも汎用性が高い……使いたい言葉が多すぎてまとまらないゾ!
俺の心の中はいつも俺の言葉で満たせれているぜ。
とりあえず、今日も演習場に行って動きや動作などを確認せねばなるまいね。
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「またあの子先生に呼び出されてるわよ」
「本当だ、なんでなんだろうね?」
「そりゃあれでしょ、あれ。素行が悪いとか?」
「素行が悪いっていうか、他の人と喋らないってことだけなんじゃないかなぁ?」
様々な憶測が飛び交うこの学園では、コミュニケーションというのは一種の楽しむ場であった。
そうしていなければ、人間は基本落ちてしまうべきなのだ。
人とのコミュニケーションを欠かすと、どうにも落ち着かない、という人間が多数を占めているのだろう。
しかしながら、コミュニケーションを取らなくても別にさしたる問題はない。
他の人間がどう受け取るかは別としてだ。
何でもかんでもコミュニケーションをすれば良いわけではない。
「あの子、学園対抗大会に選ばれてるから、きっとそのことについてだよ」
「えぇ?そうかなぁ」
「変に邪推するのも変でしょ?それともあんたが直接聞きに行く?」
「…………無理だなぁ。あの子と会話できた試しがないもん。帰ってくるの一単語とか二単語ぐらいだよ?」
「そういうことよ」
彼女は周りから勘違いされがちだが、脳内は至って普通の人間よりもうるさいぐらいには、お喋りな方であるが、脳内のことであるため気づかない。
周りから勘違いされたままにすることもよしとしている……というよりは、全然認知してないから別にどうということもないのだ。
彼女は孤独に生きていても問題はない。最近はペドの人、もとい鴉ヶ雲対馬守寧々がめちゃくちゃ話しかけるからだ。
それで少しは緩和されたが、一方的にマシンガントークをしているだけなので、側から見たら「何をしているのだろう?」と勝手に解釈される。
解釈の不一致は仕方のないモノだとしても、周りからの認知を気にしない人間ほど、強者はいないだろう。
そんなことを踏まえてみると、彼女のメンタルは鋼、と評されるべきなのかもしれない。
ある意味、ブラック企業勤めでメンタルは上がったのかもしれないが、壊れているラジオに水をぶっかけるのと変わらないように、何かが根本的におかしくなっているのだ。
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あの、ペドの人に急に道を阻まれたんですけど、なんとかしてもらって良いですか?
ほら、公共の人物とか、そういう人っていません?今から入れる保険とかってないですかね。あ、ないんですかそうですか。
誰か助けてもらっても良いですか?(泣)
レスキューの人呼んできてまじで!身の危険を感じるから!
ほんとに頼む!まじでまじでまじでまじでまじでまじry…………………………!
めちゃくちゃ真剣な顔してこっちのこと見てる。
やばいかも、俺。女の身で貞操を気にしてしまうようになってから早くも何の時が過ぎようとしていて、これはないでしょう?