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第拾肆話 強力とは縁遠い、表情筋

 

 まさか、二人一組になって"ぺあ"を組まされることになろうとは……思いもよらなかったなぁ。

 今からでも遅くはない。俺にぺあはいらない、一人で十分だと言わなければならない。

 釈明をさせて欲しいんだが、そんな雰囲気でも無さそうっぽいよな。

 なんか、張り詰めすぎたベースの糸が今にもはち切れそうな、そんな感じ。

 まぁ、ベースの糸なんてこっちから叩き切ってやるんだけどね。

 ちょっとこう、ツンデレ風女っぽくなんか断ってみようかな?

「あ、あんたなんか、本当は興味ないんだからね!?勘違いしないでよね、あなたになんか信用を寄せてないんだから!」と、テンプレートな事を言葉に果たして出して言えるかな…………口下手な俺がね!!

 無理だなぁ、昔から一単語二単語ぐらいしか口に出して行った事ないし、無理だろうなぁ。

 まぁ?俺が本気を出せばできないこともないって言うか?そんなこともないって言うか?…………ここで見栄張ってもしょうがないよねぇ。


「……………………………………(本当のところはよろしくなんてしたくないんだからね!?私のこと受け止めれるのあんたしかいないんだから……勘違いしないでよね?!あんたのことなんか、本当は好きでもなんでもないんだから!!)よろしく」


「はいはーい、よろしくね!」


 彼女の名前はなんだったか。

 えっと、えーっと、えっと。うーんとうーんと……出てこねぇからどうでもいいか!

 課長とか部長の名前なんて覚えても無駄なだけだし!無駄無駄無駄ァ!一度だけ言えばいい事を二度言うのは無駄なんだ。(ジョル○)

 よし、名前を覚えないと言う覚悟があるこの俺は、どうやらジョがつく人たちのようだなぁ!

 オラオラオラァ!って言ってみたかったんだよねぇ。

 一口にでもしておきたい言葉ランキング最上位入賞おめでとう!

 俺にとっては君の名前など瑣末な事でどうでもいいが、しかし!一緒に組むぺあとしては仲良くするに越したことは…………ない!


「君はなんの武器を使うのかな?私は槍を使っていこうと思うよ!単純に長い武器だとアドバンテージになるからね!」


「………………………………(私は一回刺されて死にかけているので、ナイフを意味ありげに見つめながら、こうすることによって人への恐怖を思い浮かばせる感じで)ナイフ」


「ナイフ……?!」


 おっと、困惑しているようですね。

 仕方がない。これだから素人は……ƪ(˘⌣˘)ʃ

 俺もトーシローだけどさ。

 ナイフに一回刺されているので、(ナイフ)の特徴は掴んでいると言っても過言ではない。

 単純に刃渡りは短いが、心臓を一突にする事だってできるのである。

 しかも他の武器と早退した時でも交わしやすくて、尚且つ軽いんだよねぇ。

 これ程戦いに特化した武器はないぐらいには、強力だと思うけどね…………コイツは。







________________________



 鴉ヶ雲対馬守寧々からすがくもつしまのかみねねは当惑していた。

 一番合戦の英雄伝説の中に、彼女は常にナイフを持って戦いに及んだと書いてあったからだ。

 生き写しのような形でそれが見えて、心底驚いている真っ只中なのである。

 そんな彼女を誰が責められよう。華恋は全く気づいていないのだが、彼女はそれを知っている。

 知っているが故に恐れ慄いてしまう。

 無知の知は大事であるが、知っていても何にもならないこともある。

 華恋がその事実に気づくにはまだ時間がかかる。

 そして、そのナイフが旋風を巻き起こすことになるのだ。

 刃渡りが短い刃物を使うのは、本来学園対抗大会であるのならば、不利になるは必須。しかしながら、その不利を有利にしようとしている華恋のストイックさに心底心から驚いていると言う状況である。

 彼女は当惑しながらも感動した。何故か感動した。

 自分は槍を使うと言うのに、彼女はより深く傷を負うことになるのだろうに、と思わずにはいられなかった。

 この胸の高鳴りは、きっと恋なのだろうと夢想してしまっても、誰にも文句は言えないだろう。

 自分にはないものを持っていると言うことに対して、誰が真摯じゃなくいられよう。


(きっと彼女はとてもすごい戦いをするに違いないわ!)


 そう、一番合戦という名は異能を使うものであれば誰しもが知っている名前であり、誰もが畏敬の念を込める人物である。

 そんな人物の写し似で、同じ武器を使うのであれば、誰もが魅了されるというものだろう。

 誰も彼女を責めてはいけない。

 誰も彼女の行いを捲し立ててはいけない。

 単純に恋をしてしまった、そう言う事実が残るわけである。

 これが、魅了されたものの力であり、何かに向けて熱中することは決して悪いことではないのである。

 だから、全てが《《許される》》!!!!

 彼女の行動原理は、ここから一番合戦中務大輔華恋いちばんがっせんなかつかさたいふかれんが握っている、と暗にそう言うことになるのだ。


「…………………………………………(めんどくさいけど、お前とくまにゃならんから。手っ取り早く終わらせてさっさと風呂にでも使ってゆっくりしよう。そうしよう。だから俺と一緒に)戦闘訓練、する」


「(しゅきしゅきしゅきしゅきしゅきしゅきしゅきしゅきしゅきしゅししゅきしゅきしゅきぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!)はい!勿論です!」


 脳内ではこんな感じになっている。

 脳内がお花畑になっているとはこの事を指す。

 そしてこれは、華恋すら知らず。他の人間なんて以ての外、知らないままである。

 それを加味して普通の会話だと思って聞いて頂きたい。


「中々うまくいきませんね、槍を使うのも一苦労です…………(はぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁあ!可愛すぎる、可愛すぎる可愛すぎる可愛すぎるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!)」


「…………………………………………(そんなに根を張り詰めてやらんくとも、別に自分のペースでゆっくりとやればいいと思うから)気にしない」


(きゃわわぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁあぁああぁぁぁぁぁぁぁ!!!)


 こうして、彼女は……鴉ヶ雲対馬守寧々の実力は最大限に強化される。

 元々、学園対抗大会に出るほどの実力者であった彼女が、しかも華恋より上級生、その彼女が華恋以外には負け無しという、なんとも無駄な強さを誇ることになったのはここだけの話。



________________________






 俺氏、風呂に着水ぃ。

 あ"あ"、い"き"か"え"る"う"ぅぅぅぅぅ。

 適度な運動の後はやっぱり温かいお風呂なんですよねぇ。

 これが一番早くキマる方法ですわぁ。

 よしよし、そんな感じで体のメンテナァンスをしっかりとしなければ、まぁ自分の体を弄まさぐる趣味はないんだけど、やっぱりマイサンが消失してしまったからね!

 仕方ないと自分に言い聞かせながらやっていきたいと思います!

 そして、対抗大会で一緒に組むペアの人、心の中ではペアの人と名付ける事にしよう。

 ペアの人がめちゃくちゃ俺の体を凝視してんだけど、何かあったかな?

 何かしたのなら謝るけど、その豊満なボディを晒しながら俺の方を凝視してくるなんて…………もしかして、ペドフィリア?

 …………今日から君の名前は残念ながらペドの人だ。ペアの人なんて呼んじゃってごめん!


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