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第拾壱話 手袋ポイっ

 


 帰ってきた、我がマイホーム!

 今は憩いの場所はここしか無くなってしまっている状況の、どうも俺です。

 いつもの感じで寮に誰にもみられることなく帰ってきました!

 中学生時代にもこんなことあったなぁ。

 家には俺一人で、親なんて存在は害悪でしかないと思い続けていました。母親は勝手に男作って蒸発し、父親は不倫の末に不倫相手に刺されて死ぬし、碌でもねぇなこれぇ!

 そして唯一の肉親の弟は俺を馬鹿にしてきまくって、ほぼ絶縁状態。

 そんな奴が道端で刺されて死んだって何も思うところなどないだろう、と言うのが俺の所見であります。

 ま、あんな奴のことなどどうでもいいか!

 今は与えられた異能という存在に心を躍らせましょう。

 さてさて、音も立てずに忍び込んだと聞こえは悪いが、お尋ね者状態みたいな俺が白日のものに晒されたらまずいでしょ。

 絶対目の敵にされてるゾ。

 だから身の危険を感じて誰の目に映ることもなく帰ってきたってわけですよ。

 それが一番スマートじゃないっすか?

 スマートじゃないですか、そうですか。

 まま、それは棚に上げましょう!

 異能の研究をしなくてはいけない。自分がどの程度まで【強化】を使いこなせるか調べたいからね。

 こうして寮の片隅にいて自分の中で模索する時間も嫌いじゃないし、むしろ好きなまであるんだけど。

 明日教室に向かった時に何で顔されるか、今から考えるだけで動悸が…………してこないな別に。

 よしよし、ここをこうして、こうじゃ。

 いい時間になってきたので床に付く。明日もより良い1日となります様に、Z○P!


「………………………………」


 はい、学園の机を見たら、目に見える嫌がらせを受けましたっ!

 パンパカパーン!俺のレベルが1上がったよ!嫌がらせということに対するレベルがね!(上がっても嬉しくは無い)

 さてさて、どう調理してやろうかな、コレをやった連中らを。

 聴覚強化して聞こえちゃいるんだよなぁ、陰口的な何かがさ。別にどうってことないんだよなぁ、これ。

 実際に中学に通っていた頃もこういういじめにあったことあるけど、自己解決して見事敵将を死ぬよりも恥ずかしいことにしたし、別に問題はないかなって感じだけど。

 まぁ?そっちがその気なら、こちらにも考えがある。

 ここって異能学園じゃんね?決闘制度みたいなのあった様な気がするんだよねぇ。

 荒らされた机に荒らされた椅子に、大きな音をわざと立てて座り込んでから、ページを捲りどこに載っていたのかを確認する。

 ………………おっ、あったあった。何々…………「決闘方法は至ってシンプル!相手に手袋をぶつけてください、そしてその手袋を拾い上げなければ罰則に値します。その手袋を拾わせたのちに、日時指定ののちに学園側に申請すると受理となります」と、成程ね?

 手袋をぶつければいいのか。えっと、手袋なんて持ってたっけ、俺。

 あ、そうだ、この机を削って手袋作ろ!(馬鹿がばれる)

 筋力、皮膚(爪)を強化しまくって削り始める。

 するとあたりに動揺が走って、慌てふためく。え?学園の備品に手を出しちゃダメ?そんなの今更じゃね?こいつらだって学園の備品に手を加えたし!

 はい、水かけ論争やめようね!俺とのお約束だよっ!

 手袋完成…………!

 よしそれを、作ったと思しき奴に全力投球!筋力は既に強化済みだから、肩を強化してっと陰口の中心にいる奴ら全員に手袋をシューっ!超エキサイティンッッ!

 あ、やべずれた。本当は手前に当てようとしてたのに。


 ………………まっ、いっか!


 多分ぶん殴られたと同じ様な痛みを味わっていますね、コレ。言い逃れもできなそうだし、ついでになんかびっくりしてるし。

 これが本当に狙っていたことだったことにしよう、そうしよう!


「…………………………………………纏めて、来るといい」


 よしっ!セリフはバッチリ決まったぁぁぁぁあぁああああ!

 そんだば、こいつらをクッキングしていきましょうねぇ〜!

 申請はもちろん受理されて、第三運動場に場所を決めました!オーディエンスは勝手に来るだろうし、面白くなりそうだなぁ!

 公式戦は初めてだからねぇ!

 今からどんな感じで倒すか案を練らないとねぇ!

 例えば、圧倒的なまでの異能での暴力で…………それはなんか釈然としないなぁ。

 もっとスマートかつ効率よく敵をボコボコにしたいんだよねぇ。俺の机をめちゃくちゃにしてくれたし(自分でも手袋的な何かを作っているため、自分でも粉々に粉砕しています)どうしてくれようかねぇ。

 よし、こうなったらいい案が出るまで今日は寝ずに自分の中で会議をしちゃうぞ!

 ブラック企業勤めの時は会議の時にもよく叱咤をされていましたぁ!どうも、30過ぎのエリートブラック企業勤め、略してブラッ○ーです。なんか違くね?











 ________________________



 その日の教室は雑然としていた。

 ある人間の机が来た時にはめちゃくちゃになっていたからだ。

 クラス委員の城門寺右衛門少尉黄泉じょうもんじうえもんのしょうじょうよみはほとほと困り果てていた。

 こんなにも荒れている教室は初めてみたからである。

 彼女は幼少の頃からこの学園の学問について学んできた模範的な学生であったからである。

 そんな彼女が初めて目にした光景がいじめという凄惨的な行為である。

 果たして本当にこれが学生に許された行為なのだろうか?これが学生の本文を超える様なものなのではないか?と四苦八苦していた。

 そして彼女は来た。

 本能的にまずいと思っていた。

 まさか有無も言わさずに教室入ってくるなんて、思いもよらなかったのだ。

 一言も声を発することのない、そんな無表情で無口な彼女が登校してきて面を食らった。

 儚げな印象を受ける彼女には、これが酷なのではないかと夢想していたが、椅子に音を立てて座ると、ものすごい勢いで机を削り始めるではないか!

 そしてできたのが手袋。

 嫌な予感がした。彼女が思っているよりも、これが根深いものであるのだと錯覚した。

 彼女、一番合戦中務大輔華恋の一番最初の偉業は、手袋を作り出してその惨事を行なったものに対しての制裁なのである。

 クラス委員長は震えた。

 もしこれが普通の人間に許されたのなら、彼女の特異な力は一体何なのかと、心から恐怖した。


「…………………………………………(相手にしてやるからよぉ、硬いことは抜きにして文句のある奴全員)纏めて、(かかってくる勇気があるなら安心して)来るといい」


 と言い放ったではないか。

 なんたる威風堂々とした姿。なんたる物怖じしない精神。

 クラス委員長は更に震えた。

 こんなのが私と一緒の年齢であるというのかと驚きに伏すしか無かった。

 彼女に対して何もしてあげれないと思った委員長は善人であり、間違っても悪人では無かった。

 彼女が言い放つ言葉に重い意味を捉えながら心を苦しめて悩まされていた。

 そう、一番合戦中務大輔華恋は纏めて敵を屠れればラッキー程度にしか思っていないのである!

 クラス委員長の悩みは人知れず、他の誰に伝わるでもなく、また勘違いした者を一人生み出してしまう。意図していない形で悩みを増やしていく、周りを曇らせていく彼女は、いったいどこへ向かっているのか。

 それは誰にも預かり知れないところである。其れを肴に日本酒を傾ける天皇猊下は愉悦部主将であると言えるだろう。

 分かってて何も言わないのもまた、一興であると思っているのだろう。

 話は逸れたが、彼女の勘違いは旋風となって巻き起こっていくことになるのだ。

 ずっとずっと勘違いされたまま……………………であるかどうかは不明なのである。不明ったら不明なのである。


 

________________________





________________________



 決闘の手袋を投げられた狂倒様主水佑奴助きょうだようもんどのじょうやつすけらの5人は内心ビビりまくっていた。

 とんでもない悪魔に喧嘩を売られたために臆していた。

 逃げようかとも考えたが、決闘制度によりそれはできない。決闘から逃げた場合には良くて禁錮三千年の極刑、いわば終身刑処置か、悪くて即刻打首の切腹である。

 逃げなければ決闘に負けた敗者は勝者によってその全てを委ねられる。

 美味しい思いもできるのではないかと考えたが、彼女は学園切手の悪魔と呼ばれる存在。異能測定では測定不能を何度も叩き出した文字通りの化け物なのである。

 彼自身も、本当は机に細工などしたくは無かった。しかし、家からの命令で「いい顔をさせるな」との命が降ったため仕方なくやっただけなのだ。

 しかし、すぐに細工したことがバレて手袋を投げつけられて、逃げられなくさせられた。工作した全員分手袋を当てられるというおまけ付きで。

 最早勝ち目などない。

 しかし、逃げればそれよりも恐ろしいことになりかねない。家の面目丸潰れだ。

 生まれた頃から名家と言われた狂倒様家は、今や落ち目であり、名実ともに下がっていくしかない家である。

 しかし、そんな彼にも意地があった!

 落ち目と言われた自分の家を大きくするという夢があった!

 しかし、その夢は今潰えようとしている。

 一人の勘違い系無表情無口の銀髪短髪碧眼ロリの手によって。

 尚、彼女はそんなことは梅雨知らず、一人作戦会議に花を咲かせているのであった。

 哀れ、モブ生徒 



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