納豆が世界を変える。
「王様、本日の献上品は異国の地から仕入れた大豆で作らせた最高級納豆です」
「うむ。下がってよいぞ」
臣下全員が退出する。
「納豆!! 納豆じゃ!!」
飛び跳ねて踊り狂う。
今日の納豆もおいしい。いつもとは少し粘り気が違う。タレ無しで食べると広がる素材の味。しかし、素材のまま食べられるのは、上級者。わし位なもんじゃ。
タレを付けたらまたそれも美味。
はぁ。でも家臣も国民も納豆好きは少ない。なぜじゃ。
どうやったら、納豆が国民に浸透するんじゃ......?
国民がわしのことをねばーる王とか、ナトゥークサーイ王とか言って居るのも知っておる。
悔しい、悔しいのじゃ......
両手を地面に着く。
「納豆人気をあげてやろうか......?」
顔を上げるとねばねばの悪魔。
「納豆が国中に広がるんじゃな? 任せた」
「くくく。任せろ」
悪魔は消えた。
今日は寝るとしよう。きっと疲れておるのじゃ。
次の日。
王室まで聞こえるくらいの悲鳴が飛び交っている。
「何事じゃ?」
臣下を呼び寄せる。
「王様、こちらの国内を飛び交うドローンの映像をご確認くださいねばぁ」
「うむ。下がってよいぞ」
映像を確認する。
歩いている国民は、靴と地面の間で糸を引いている。
こっちの国民はなぜか手で鼻をつまんでいる。
満員電車では白い糸がいたるところに伸びていて、乗客は全員気絶している。
もしかしてじゃが、国中のものが納豆化......?
「王様、病院に国民の半数が搬送されていますねばぁ!! しかし、点滴がねばねばしていて、悪化する一方ねばぁです!」
なんじゃこれは? 納豆がまるで悪役じゃ!!
納豆がうまくいっているところはないか??
密室殺人事件の現場じゃ。
「警部。4人の容疑者の指紋が凶器から出ませんねばぁ!!」
「君、この事件は簡単ねばぁ。凶器から糸を引いていて、それがつながっているのはあなたねばぁ!!」
「ここまでねばぁか......」
うむ。事件が解決したのじゃ。納豆はやはり良いものじゃ。
それよりも病院を何とかせねばじゃが......
とりあえず納豆を食べてから考えるのじゃ。
ストックの納豆を開けて、タレをかける。
タレはしっかりとトロッとしておるな。
そうじゃ!! タレをばらまけば、納豆化したものが良くなるかもしれないのじゃ!!
急いで、ドローンに納豆のタレを詰めさせ、国中にばらまいた。
「うまいねばぁ!!」
「うまいねばぁ!!」
白米を食べては倒れていた国民が泣きながら白米を食べているのじゃ。
その日、納豆のうまさに気付いた国民は、納豆を買いあさった。
「王様、本日は納豆が仕入れられませんねばぁでした。申し訳ございませんねばぁ」
「よいよい」
やはり初心者に、タレ無し納豆は厳しいようじゃ。
スーパーで売る納豆にタレをつけることを義務化するかの。
納豆。ああ納豆。
その日から、国は、世界一の納豆大国となり、国民の心が豊かになったことで、犯罪も起こらなくなった。
めでたしめでたし。