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第88話 キスって?

 祭りの夜が明け、8月14日。今日は日曜日。


 雨宮からの突然の引退宣言を聞いてから、1日が経った。


 昨日、雨宮が帰った後、俺と六道先輩はお互い考え込んで、何も喋らず、石階段を降りた。

 六道先輩は最後は笑って手を振っていたけど、明らかに無理をしていた。


 色々と考えることはあるが、今日は朝からバイトだ。準備しないとな。


 今日はキッチンに林さん、メイドは3年生組が勢ぞろいだ。珍しく受験生の人達もいる。なんでも塾に通うにも金が必要で、定期的にシフトに入らないとキツいらしい。


 メイド喫茶に従業員入り口から入り、バックルームに入る。


「久しぶり青少年」

「おっはー! すばっち~!」


「おはようございます」


 勾坂先輩、八侘先輩はいる……けど、


「あれ? 村雲先輩はいないんですか?」

「うん! なんか急用だってさ~」

「そうですか」


 店長もいないし、今日は人数が少ない。忙しくなりそうだな。

 ええいっ! 一旦雨宮のことは忘れろ! 集中しないとマジでミスる!


「うっし!」


 俺は両頬を叩いて気合いを入れる。


「お! 気合入ってるねすばっち」

「ま、今日は忙しくなりそうだもんね」


 勾坂先輩は元気いっぱいな様子で、八侘先輩は気だるそうにホールに出た。俺は林さんの待つキッチンに行く。


「おはようございます。林さん」

「ヨ~、スバ」


 相変わらずの緑髪、耳・舌・唇ピアスだ。


「今日はBGMどうする? やっぱアレかァ? 蛇遠れつか?」

「いや、今日は……別のでお願いします」


 れっちゃんの歌聴いてたら集中できん……。


「ん? そうか。そんじゃあ……」


 林さんは全く聞いたことのないインディーズバンドの曲をBGMに選んだ。

 将来テレビ越しで聞くことになりそうな良い曲だった。



 ---



――同時刻。


 エグゼドライブ本社、会議室。

 そこにエグゼドライブの6期生とチーフマネージャーは集められていた。朝影綺鳴(月鐘かるな)、黒崎青空(天空ハクア)、六道晴楽(七絆ヒセキ)、村雲蘭(未来ぽよよ)、朝影麗歌、そして――雨宮雫(蛇遠れつ)。


 雨宮が全員の前に立ち、自身が月末のライブで引退することを話す。


 事情を知っている晴楽、麗歌以外の3人は酷く取り乱した。

 綺鳴は雨宮に泣きながら縋りつき、青空も涙を浮かべながら説得。村雲は怒った様子で部屋を出た。


 どれだけ周囲が説得しても、雨宮の思いは変わらず――場はお開きとなる。


 会議室に、晴楽と麗歌だけが残る。


「どうするよレイカン。指くわえて引退を待つわけじゃないっしょ?」

「もちろんです。非常に難しい問題ですが……晴楽さんの時に比べて物理的壁は無いです。やりようはあります」

「それはどうかな? きなちゃまやアオたん、ボクのトラブルとは違うベクトルで難しいよ。だって今回は誰かが、あるいは何らかの問題がシズちゃんを辞めさせようとしているわけじゃなく、本人が辞めたがっているんだから」

「そうですね……しかもかなり根深い問題です。私たち、エグゼドライブの黒歴史にも触れる部分ですからね」

「……正直さ、気持ちはちょっとわかるんだ。あの事件は……ボクも結構こたえたからね」


 晴楽と麗歌はある女性Vチューバーを思い出し、目を細める。


「すばるんには助力を求めるの?」

「はい。そのつもりです」

「すばるんに頼んだところでどうしようもない気がするけどね~」

「こっちが依頼せずとも勝手に動きますよ。あの人は」

「にゃっはは~。そりゃそうだ。さてと、話もまとまったし帰るかにゃ~」


 晴楽は荷物をまとめ、部屋を出ようと扉に向かう。

 そして去り際、爆弾を落とす。


「あ~あ、せっかくすばるんとキスしたのに……完全にシズちゃんの問題で上書きされちゃったな~」


 バタン。と扉が閉まる。

 麗歌は20秒程、その場で静止した。


「キス……?」


 昨日、神社で兎神と晴楽が雨宮と接触したことは晴楽より聞いている。

 神社……天神神社は人気がない。キスをするにはうってつけの場所。雨宮が神社に来る前、あるいは雨宮が帰った後ならいくらでもチャンスがある……冗談の可能性はもちろんあるが、冗談でない可能性の方が高い。晴楽の行動力の高さ、晴楽が兎神を気に入っている点などを踏まえれば……。


「キス、ってなんでしたっけ……? おさかな?」


 最終的に現実逃避した麗歌であった。

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