表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
間違いなくVtuber四天王は俺の高校にいる!  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第六章 兎と蛇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/91

第87話 はじめてのオフ会 後編

 焼肉屋に着き、まず驚いたのはその焼肉屋の高級感だ。

 明らかにチェーン店ではなく、予約無しでは入れなさそうな感じ。店の扉に金色の龍の絵が描いてあった。飾ってある花やインテリアも高級そうなものばかり。

 店員さんの案内に従い、店内を歩く。白虎の絵が扉に描かれた“白虎の間”という個室に通される。

 個室も広々としていて落ち着かない。席に座り、とりあえずメニュー表を見るとバカ高い値段の肉たちが並んでいた。どれも普通の焼き肉屋の5倍はする。


「えっと、本当にここの代金は会社が出してくれるの?」


 黒崎が気になっていたことを尋ねてくれた。

 割り勘とかになったら水しか飲めない。


「もちろんです」


 麗歌が答える。

 うろたえているのは私と黒崎だけで、他の面子は堂々としている。反応の差で家の貧富がわかるな……。

 店員さんを呼び、一通り注文をした所で六道が立ち上がった。


「ボクちょっとトイレ!」


 村雲も六道に呼応するように立ち上がり、


「私もお手洗いに」


 六道と村雲はトイレへ行く。うざったい性格だが、ムードメーカーの六道が抜けたのはキツイな。

 すると今度は麗歌のスマホが鳴り出し……、


「すみません。会社からです。少し外します」


 麗歌が電話に出るために退席。そして、


「ごめんね。私もお母さんが電話」


 そう言って黒崎も席を外してしまった。

 そうして取り残されたのは陰キャ2人。


「……」

「……」


 重苦しい静寂。

 こ、ここはあたしも離脱しよう。


「あ、あたしも……」


 正面に座る綺鳴と目が合う。

 綺鳴はうるうると瞳を濡らしていた。あ、これは陰キャ特有の被害妄想だ。みんなが自分と気まずいから席を外したと思っている……いやあたしは確かに気まずいから出ようと思ってたけどさ。

 ここであたしまで抜けたら相当な傷を負うだろうな。


 仕方ないな……。


 あたしは立ち上がるのをやめる。


「ねぇ、アンタさ、ゲームとかやる?」


 とりあえず話題を見つけよう。確かコイツ、ゲームはそれなりにやるタイプだったはず。


「う、うん!」


 勢いよく頷き、スマホの画面を見せてくる綺鳴。


「これ、今月買ったゲーム?」

「うん!」

「……良いセンスしてるじゃん」


 初心者向きのタイトルから玄人向きのタイトルまで揃ってる。RPG、音ゲー、ガンアクションと、あたしと好みが似ている。


「ファイブナイト、今度オンラインでプレイしようよ。はいコレ、あたしのフレコ」


 あたしがメモにフレンドコードを書いて渡すと、なぜか綺鳴は目を輝かせた。


「フレコ!? つまり……私の友達になってくれるってこと!?」

「え? 友達というかフレンド……いや、意味は同じか」

「……人生初の、友達……!」


 ジーン。と嬉しそうに涙を流す綺鳴。


「ぷ。はは……! 大げさだっての」


 つい、あたしは笑ってしまった。


「お、大げさじゃないです! 私、これまで友達出来たことないので、これは私の人生にとって大きな一歩というか……!」

「なんだ。ちゃんと喋れるじゃん」

「え……」

「もっと積極的に話しなって。可愛い声してんだから、黙ってちゃもったいないよ」

「か、可愛い……?」

「うん。良い声してるよね。柔らかくて、良く通って、耳心地がいい。あたしちょっと低めだからさ、デュエットとかしたらイイ感じに……」


 あたしの言葉が変なとこに刺さったのか、綺鳴はまたジーンと瞳を濡らした。


「……シズちゃん……!」

「ちょ、アンタまでシズちゃん呼び?」

「私……私……シズちゃんに会えて良かったぁ……!」

「だから大げさだって!」


 ダーッと涙を流し始める綺鳴。コイツ情緒やばいな。


「あーもう! なんで泣くのさ!」


 仕方なく綺鳴の隣に座って慰める。


「なんか悩みでもあるの? あたしで良けりゃ聞いてやるからさ、泣きやみなよ」


 よしよし。と頭を撫でながらあたしは言葉をかけ続ける。


「……私……実は同世代の女の子が怖くて……でも! シズちゃんは……良い子で……勝手に怖がっていた自分が恥ずかしくて……!」


 別に良い子じゃないんだけど……。


「はいはい。別にいいよ怖がるのぐらい。そんぐらい気にしないって」


 抱き寄せて背中をさする。

 なにやってんだろあたし。子守り? 姪っ子を思い出すわ。


「シズちゃ~ん!! 末永くよろしくね~~~!!」


 綺鳴が抱き着いてくる。


「プロポーズか!」


 つーか、こ、コイツ……! 背はちっこい癖に胸はあたしより断然――!?


「おまた~~~~せっ!!」


 六道の声が響くと同時に、個室の扉がガラッと開かれた。

 六道と村雲が個室に入ってくる。


「えっと、どういう状況かしら?」

「コラ! シズちゃん! きなりんをいじめるなぁ~!! ぷんぷんっ!」


 泣いてる綺鳴を見て、六道は悪ふざけ気味にキレる。


「ち、違うんです! シズちゃんは~! めっちゃ良い子なんです~~!!」

「ちょ、それはそれで恥ずかしいからやめてよ!!」


 次に麗歌が、程なくして黒崎が部屋に入ってくる。


「お姉ちゃん……なにやってるの」

「よくわからないけど、悪い感じでは無さそうだよ」


 通話とかで何度か話したとはいえ、初対面の奴らと焼き肉屋とか正直不安だった。けれど杞憂だったな。


 ムードメーカ―で話が尽きない六道。

 凛としていて、一番大人っぽくて頼りになる村雲。ちょっと天然で面白い。

 周囲の空気を見て場をまとめる黒崎。コイツは司会者役だな。

 一番年下だけど物怖じせず意見をズバズバ言う麗歌。


 そして――


 不器用だけど、コミュ障だけど、頑張り屋でほっとけない奴。

 これから先、コイツらと一緒に何年、もしかしたら十年以上一緒に生きていくことになるんだろう。アイドルグループみたいにさ。

 大人になっても全員でステージに立つ光景を思い浮かべて――悪くないな。と、この時のあたしは思ったんだ。

【読者の皆様へ】

この小説を読んで、わずかでも

「面白い!」

「続きが気になる!」

「もっと頑張ってほしい!」

と思われましたらブックマークとページ下部の【★★★★★】を押して応援してくださるとうれしいです! ポイント一つ一つが執筆モチベーションに繋がります! 

よろしくお願いしますっ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ