表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/91

第81話 夏祭り その4

「うっわ! オッサンつっよ!!」


「がっはっは! 惜しかったな坊主! また来な!」


 屋台で待ち受けるは鉢巻を頭に巻いたオッサン。凄いガタイだ。身長180cm越え、体重も100はあるかもな。スポーツをしているであろう男子大学生を易々蹴散らしやがった。


「きっちり削れよ。瞬殺されたら意味ないからな」


「言われなくてもわかってるよ」


「あの」


「ん? どうした麗歌」


 麗歌は俺と鷹峰の腕を引っ張り、屋台から俺と鷹峰を遠ざける。


「観察していて気づいたことがあります」


 と、麗歌はオッサンの腕相撲での癖を語り始める。


「あの方、どんな相手でも最初はわざと手を抜き、押されているフリをします」


 言われて見ると確かに。

 一瞬で倒しちゃうと盛り上がらないし、再挑戦も無いからか。


「その押されているフリの長さは相手の強さで変動します。パワーのある相手は一瞬だけ押されているフリをして、すぐに倒しています。ですが、力量差のある相手はギリギリまで押されてから押し返しています」


「言いたいことはわかった」


 鷹峰は納得した表情をする。


「えっと? つまりどうすりゃいいんだ?」


「最初は弱い力で押して相手を押し込み、最後の一押しで一気に力を入れればいいのです」


 こっちが弱い力で押せば相手は力を抜き、劣勢を装う。その瞬間、全力を出せば勝てる――ってわけか。


「力加減と演技力が肝です」


「やるだけやってみるよ。サンキュな、麗歌」


 俺と鷹峰は麗歌のアドバイスを胸に、屋台の列に並ぶ。


「優秀な友人がいるのだな」


「まぁな」


「わかっていると思うが……」


「この作戦が通じるのは一度きりだ、二度目からは警戒されちまうからな。先手の俺は普通にやれってんだろ?」


「その通りだ」


 やれやれ、嫌な役を引き受けちまったな。だがこれもかるなちゃまのお面のため。仕方あるまい。

 順番がやってくる。

 300円を払い、俺は机の前に立つ。机を挟んで正面にはオッサンがいる。


「お! あんちゃん強そうだな」


「そんなそんな。大したことないですよ」


 俺はオッサンと右手を繋ぎ、机に肘を乗せる。


「れでぃ……ゴー!!」


 レフェリーの合図で俺とオッサンは力を込める。


「ぬおっ!?」


「おらぁ!!!」


 俺はフルパワーをつぎ込み、オッサンと拮抗させる。


「こん、の、ガキ……!!」


「へへ……!」


 俺とオッサンがもし万全の状態でやったらこうも拮抗はすまい。すぐに俺が負けている。

 だが、俺とオッサンの条件はイーブンではない。オッサンはここまでかなりの連戦をしている。中には強者もいただろう。疲労していないはずがない。勝ち目はある。


 俺は削り役だが、別に勝ってしまっても構わないだろう?


「舐めるなぁあああっっ!!」


「……ちっ!!」


 ダメだ。押し切られる……!!


「昴先輩! 頑張って!」


「!?」


 麗歌の、珍しい張り上げた声が俺の背中を押す。

 俺は底力を振り絞る。


「うおおおおおらっ!!!!」


 何とか押し返すが、


「そこまで! 勝者チャンピオン!」


 結局また押し込まれ、負けてしまった。


「ぜぇ! はぁ! やるな坊主! また挑戦しな!」


「……もう握力が無いですよ」


 敗者は大人しく退陣する。


「……無様ですね」


 厳しい言葉を掛けてくる麗歌。俺が負けたことが気に食わないのか、むすっとした顔をしている。


「悪いな。応援してくれたのに負けちゃって」


「別に良いですよ。作戦通りじゃないですか」


 一方で、鷹峰は麗歌の作戦を実行。

 俺に削られたオッサンはあえなく鷹峰に敗北した。

 鷹峰はかるなちゃまとぽよよんのお面、あと氷水で浸けられていたオレンジジュースを景品に貰った。

 鷹峰は景品のかるなちゃまのお面を俺に、麗歌にジュースを渡す。鷹峰はぽよよんのお面を満足げに抱え、祭りから消えていった。


 アイツ、マジでハマってるな。かるなちゃまにハマりたてだった頃の俺と同じ顔してやがる。

【読者の皆様へ】

この小説を読んで、わずかでも

「面白い!」

「続きが気になる!」

「もっと頑張ってほしい!」

と思われましたらブックマークとページ下部の【★★★★★】を押して応援してくださるとうれしいです! ポイント一つ一つが執筆モチベーションに繋がります! 

よろしくお願いしますっ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
かつての強敵との共闘は燃えますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ