表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
間違いなくVtuber四天王は俺の高校にいる!  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第五章 兎と夏休み

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/91

第75話 綺鳴の後を追え その2

 綺鳴を尾行して数分が過ぎた。

 特に何かが起きたわけじゃないが、綺鳴という少女は本当に見ていて飽きないなと思った。

 すれ違いざまに犬に吠えられ「むぎゃあ!?」とビビり散らかしたり、白線の上から出ないように歩いたり、猫を見つけて追いかけるもすぐにバテたり、子供に挨拶されてキョドったり。なんともまぁ、よくも神様はこんな可愛い生物を作れたモノだ。


 麗歌は姉の可愛い姿をスマホで撮影していた(もちろん無音で)。やってることはまんまストーカーだな。


 綺鳴は迷いない足取りで駅に行き、電車に乗る。俺と麗歌も後を追いかけ、綺鳴と1車両違いの場所から綺鳴を監視する。


「まさか電車に乗るとはな。確かに妙だ」


「一体どこへ行くつもりなのでしょうか……」


 扉を隔てているため、安心して会話できる。


「なぁ麗歌、ふと思い出したんだが」


「なんでしょう」


「さっきお前、綺鳴の外出は珍しいって言ってたけど、俺とアイツが関わることになったきっかけの日……綺鳴に絡んでいた不良を俺がボコした時、綺鳴はコンビニにいたじゃないか。つまり、1人で外出していたわけだろ?」


「……あの日は、特別だったのです」


 麗歌の表情が暗くなる。


「イチゴ大福を買いに行くことが特別か?」


「アレは配信上の嘘です。本当は……」


 麗歌は後ろめたい顔で、


「あの日、お姉ちゃんは私のために買い出しに行ってくれたのです」


「どういうことだ?」


「入学してすぐの慣れない学園生活、さらに6期生のマネージャー業務……あまりの多忙さに私は体調を崩してしまったのです。と言っても、本当に軽度の体調不良でした。軽く頭痛がする程度のものです。ですが迂闊なことにお姉ちゃんの前でふらついてしまい、心配したお姉ちゃんが買い出しに行っちゃったのです。頭痛薬や夕食、ゼリーを買いに行くと……私は止めたんですけど、押し切られてしまって」


「そういう経緯があったのか」


 妹のためなら苦手な外出もする。やっぱ根っこの部分で優しいんだよな、アイツはさ。


「本来お姉ちゃんが深い理由も無く外に出ることはないです。ですがもしも、深い理由も無く外に出たのなら、とても嬉しいですね。服を買いに行くとか、スイーツを食べに行くとか、そんな理由で外出するようになったのなら、とても嬉しいです……」


 麗歌にとって、この尾行が拍子抜けで終わることは喜ばしいことなんだろうな。もしも綺鳴が女子高生らしく休日を過ごしたのなら、麗歌は嬉しそうに、されど少し寂しそうに笑うのだろう。


「あ、降りたぞ」


 綺鳴は樫和駅、俺のバイト先の最寄り駅で降りた。


「追いかけるぞ」


「はい」


 まさか俺のバイト先にでも行ってるのか? いやそんなわけないか。もしそうなら俺の耳に入ってないはずがない。

 綺鳴は駅のすぐ傍にある駅ビル、その1Fのフードコートエリアに足を運んだ。


「アレは……」


 綺鳴はとある行列に並んだ。行列の先にはシュークリーム屋がある。


「シュークリーム屋だな」


「はい。テレビでも取材されたシュークリーム屋です。看板商品は紫芋シュークリーム、甘さが絶秒らしいです」


「詳しいな」


「……シュークリーム、好きなので」


 限定150個と看板に書いてある。なんとなく事情は読めてきたな。


「とりあえず男じゃなかったみたいだな。もう面倒だ。直接話を聞いてくる」


 俺は変装を解き、隠れるのをやめる。


「お前も来るか?」


「いえ、私は待ってます。後をつけたことバレかねないですし。昴先輩は近くにバイト先があるから自然ですが、私は本来この場所に用のない人間ですからね」


「そうだな」


 俺はスマホで麗歌に電話を掛ける。麗歌がスマホを取ったところで、通話状態のままスマホをポケットに入れる。


「それで話を聞いとくんだな」


「すみません。ありがとうございます」


 俺は麗歌から離れ、綺鳴の後ろに並ぶ。

 いつ俺に気づくかな~、とワクワクしながら待つこと2分、列が1歩進んだ時だった。綺鳴はこちらを振り向いた。その小さな顔を上げ、宝石のような鮮やかな目で俺を見上げる。


「え? えぇ!? 兎神さん!? なんでここに!!」


「たまたまお前の姿を見つけてな。追いかけてきた」


「そっか。兎神さんのバイト先はここの近くでしたね……」


「シュークリーム買うために朝から並ぶなんて、よっぽどシュークリームが好きなんだな」


「はい。好きですけど、私が食べるために買いに来たわけじゃないんです」


 おっと? 


「じゃあ誰のために買いに来たんだ?」


「麗歌ちゃんですっ!」


 綺鳴はうさ耳カバーのスマホを出し、画面を見せてくる。スイーツを特集しているサイトだ。


「シュークリーム、モンブラン、タルト……どれも美味そうだな」


「どれも麗歌ちゃんの好物ですよ」


 そんで値段がすんごい。ま、朝影家の財力なら余裕で買えるか。


「最近、麗歌ちゃんのおかげで外出に耐性が付いたんです」


 そういや綺鳴のコミュ障を克服させるため連れまわしている、って前にメッセージで言ってたな。


「その恩返しで、こうして麗歌ちゃんの好きな物を買いに来たわけです。特にこの店は麗歌ちゃんが凄く気にしていたので、なんとしても買いたいんですよ。でも昨日も2日前も私が買う前に売り切れてしまって……」


 連続外出の理由がわかったな。


「外出できるようになって買うのが妹の好物とはな。よっぽど麗歌のこと好きなんだな、お前」


「はいっ! 世界一可愛い妹ですからっ!」


 にぱーっと笑う綺鳴。

 なんつーか、今日はひたすらこの姉妹のイチャイチャを見せられているな。

 それからついでに俺もシュークリーム(俺と瑞穂の分)を買い、俺は用事があると言って綺鳴と別れた。

 階段で通話中のスマホを出す。


「もういいだろ」


『はい……』


 声が上ずっている。スマホ越しでも照れているのがわかる。


『なんだか……すみません。今日はその……』


「まったくだよ。イチャイチャイチャイチャと、甘ったるい姉妹愛見せつけやがって」


『うっ……』


 あの麗歌がうろたえてやがる。


「お前はこれからどうするんだ?」


『お姉ちゃんがちゃんと帰れるよう、最後まで見守ります』


「まだ尾行するのかよ……ほんっとシスコンだな」


 くす。と通話先から笑い声が聞こえる。


『シスコンにもなりますよ。だって……世界一可愛い姉ですから』

【読者の皆様へ】

この小説を読んで、わずかでも

「面白い!」

「続きが気になる!」

「もっと頑張ってほしい!」

と思われましたらブックマークとページ下部の【★★★★★】を押して応援してくださるとうれしいです! ポイント一つ一つが執筆モチベーションに繋がります! 

よろしくお願いしますっ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ