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第71話 水着消ゆ

 六道先輩はその谷間を存分に見せつけてくる。

 俺はサッと目線を左に逸らす。すると今度は村雲先輩の水着姿が目に映った。村雲先輩は六道先輩を越えるナイスバディで、しかも装着している水着は黒の競泳用水着。本人は俺に見られても、『競泳用水着だから別に煽情的ではないでしょ』という顔をしている――が、体のラインがくっきりしていてむしろエロく感じる。


「どうなのすばるん!」


 俺は諦め、両手を挙げる。


「とても可愛いです」


「それだけ?」


「……エロいです」


「グッド! それが聞きたかったんだよボクは!」


「昴くん……」


 アオが目を細めて見てくる。仕方ないだろうが、男の子なんだから……。


「ところで、なんでアオたんはシャツ着てるの?」


 アオは“兎海屋”と印字された海の家特製の白Tシャツを羽織り、上半身を隠している。別にこの白Tシャツは着用義務はなく、キッチン勢は調理中に油が跳ねるため着ているが、ホール勢はアオ以外は着ていない。ウチの妹なんかはフリルの付いたガキ臭い水着を惜しげもなく披露している。


「……水着が……きつくて。中学生の時に着ていた物を持ってきたので……」


「別にきつくていいよ! いま他にお客さんいないんだし、ちゃちゃっと一瞬だけ見せて! お願い!」


「……でも……」


「すばるんも見たいよね? ね!」


 六道先輩が強い目つきで訴えてくる。

 アオが縋るような目つきで見てくる。

 瑞穂は遠くで、『押せチキン野郎……!』という目で見てきやがる。

 そして我関せずの村雲先輩。


 俺以外のこの場の人間で多数決を取ったら、見たい派が勝つな。


「見たい……な」


 俺が言うと、アオは下を向いてしまった。


「だってさアオたん」


「そっか……」


 アオが顔を上げ、仕方ない、という面持ちになった瞬間、六道先輩がアオの背後に瞬間移動した。


「え?」


「ずばーん!」


 六道先輩はアオのTシャツを勢いよくたくし上げ、シャツを胸の上まで捲った。

 俺と村雲先輩だけ、その水着を目にする。

 胸当てのような、胸部を全部隠すタイプの水着――のはずだが、アオの胸が中学生の頃より大分と成長したのだろう。胸を覆いきれず、胸の上部と下部がはみ出ている。本来おとなしめなデザインのはずなのに、破壊力が強調されてしまっている。


「~~~~~~っっ!!!?」


 アオの顔がみるみるゆでだこのように赤くなっていく。


「むぎゃっ!?」


 アオはズバッとシャツを下ろし、六道先輩の脳天にチョップをかました。

 プシューと頭から煙を上げる六道先輩を、村雲先輩が引っ張っていく。


「邪魔したわね」


 村雲先輩はそう言い残して外に出た。


「まったくあの人は……!」


「アオ……お前」


「な、なに? 昴くん」


 アオが緊張を含んだ目を向けてくる。


「いや――なんでもない」


 一応、礼儀として水着を褒めようとしたのだが、照れくさくてやめてしまった。

 アオは「何よ、もう」と怒った様子で髪をいじり出した。俺は逃げるようにキッチンへと帰った。



 --- 



 海から客が引き始めた夕方頃、俺たちのバイトの時間は終わった。

 エリちゃんが店じまいをするまでの間、俺たちは自由時間を貰った。まだあと1時間ぐらいは営業するようなので、片付け含めて1時間半は猶予がある。

 待ってましたと言わんばかりに海でバシャバシャ暴れまわる瑞穂。ああいうところはまだまだ子供だな。

 アオは瑞穂に付き合い、シャツを着たまま海に入る。俺は海辺から夕陽を眺めて大きく欠伸をした。


「ねぇ、そこの君。暇なら私と遊ばない?」


 背後から声を掛けられる。

 声の主はわかっている。さっき岩陰に隠れているのを見たからな。


「別にいいですよ。六道先輩」


「ありゃ、バレてたか」


「村雲先輩は一緒じゃないんですか?」


「ランランは先にシャワー浴びて帰り支度してる。さっきシャワー浴びてる時に後ろからおっぱい鷲掴みにしたら頭に肘くらった」


「アンタは懲りるってことを知らないのか」


「あの弾力を味わえたので悔いはないっ! でかくてぴっちぴちで上向き……あの感触は女子高生にしか出せないであろう……! 期間限定のぱいぱいなり……! 次はあのむっちりお尻を掴んでやるっ!!」


 この人、ホント中身男だな。今の発言はまさにヒセキ店長って感じ。


「ねぇねぇすばるん」


 六道先輩は俺の横に立ち、肩をすり寄せてくる。


「なんで今日、ボクが海に来たと思う?」


「さっき自分で言ってたじゃないですか。アオの水着を見に来たんでしょ?」


「それは理由の半分。もう半分は……君に水着姿を直接見てもらうためだよ」


「また冗談を――」


 ふと、横を見たら六道先輩と目が合った。

 六道先輩は口元は笑わせていたものの、瞳は澄んでいた。


「さぁってと、目的果たしたし、海も満喫したし、帰るかね。おっとぉ?」


 六道先輩はある一点を見つめる。


「すばるん、あれ」


 六道先輩が指さす方、海際に……どこかで見た水着が流れ着いていた。

 記憶違いじゃなければ、アレは……アオの水着だ。

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