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第56話 六道グループ本社

 日曜日。

 ミルキーさんの車で俺は東京のど真ん中に来ていた。


「本社に行った後は社長の所まで無理やり押し通る感じですかね?」


「あたしの権限を使えば本社ビルの社長室がある階までは行ける。そこから先は力づくで行きなさいね」


「会社辞めたのにまだそんな権限があるんですか?」


「あたし、かなりの敏腕だったからね~。まだ会社の方があたしに未練があって、あたしの席を残しているのよ。こうなったら利用させてもらうわ」


 短い付き合いでもわかる、ミルキーさんは優秀な人だ。運転上手いし料理も美味しかったし、頭の回転も早い。鷹峰や黒服もミルキーさんには手を出さなかった。それだけ人望もあるんだろう。


「もう1つ、聞きたいことがあります」


「なに?」


「鷹峰についてです。アイツの強さには……なにかこう、深い執念みたいのが見えたんです。アイツ、何者ですか?」


「……タカちゃんね」


 ミラー越しに見えるミルキーさんの表情が暗くなる。


「タカちゃんは孤児だったのよ。5歳の時に親に捨てられ、孤児院に預けられた」


「そういやアイツ、養子だって……」


「そ。彼は1人で努力して、学問においてもスポーツにおいても武術においても高い成績を収めた。そしてその成績を引っ提げて六道グループの幹部に取り入り、養子として引き入れられた。劣悪な環境で育ったあの子は、親に必要ないと切り捨てられたあの子は、誰よりも上昇志向が強い。いつだって彼は『上』を目指している」


 自分を捨てた親を、成り上がることで見返そうとしているのか。

 アイツの目の奥にある怖さ、その一端が分かった気がする。


「次期社長の座も狙っているでしょうね。そのために、セイちゃんと結婚しようとしている。泥の底から自力だけで這い上がった化物、それがタカちゃんよ」


「……強いわけだな」


「彼から見たら、将来を約束されているのにそれを捨てるセイちゃんはムカついて仕方がないでしょうね」


 納得いった。

 アイツの六道先輩も見る目、アレは愛情とは程遠い……そう、まさに苛立ちに満ちていた。

 俺が鷹峰に勝つためには、アイツと同じように強い執念が必要だ。

 覚悟が必要だ。

 孤独なアイツとは違う、俺の武器が必要なんだ。


「着いたわよ」


 凄まじい高さのビルだ。

 ミルキーさんは1度ビルの前に車を停めた。


「ここが六道グループの本社ビル。全41階よ。最上階に社長は居るわ」


 高い高いビルを見て、自分が戦おうとしている相手、その強大さを改めて知った。



 --- 



 駐車場に車を停めてビルに入る。


「入館証1つくださいな」


 ミルキーさんが社員証? のようなモノを受付に見せると、受付は「は、はいわかりました!」と入館証を1枚出し、俺に渡した。


 入館証を首から下げ、エレベーターに入る。


「さっきも言ったけど、あたしが案内できるのは最上階までよ」


「わかってます。そこまで行ったらミルキーさんは車に戻っていてください」


「……ごめんなさいね、本当はついて行きたいのだけど」


「ミルキーさんが立場的に複雑なところに居るのはわかってます。後は任せてください」


 エレベーターは41階で止まる。

 俺は降りるが、ミルキーさんは乗ったままだ。


「気を付けてね」


「はい」


 ミルキーさんはエレベーターに乗って降りて行った。

 俺は長い廊下を歩いていく。その途中に、あの男は立っていた。


「性懲りもなくまた来るとはな」


 鷹峰翼。

 色々な部屋から黒服が出てきて、俺を前後で囲む。が、鷹峰が右手を挙げると一歩引いた。


「下がっていろ。君たちじゃこの男の相手にはならない」


 先に言っておくが、対鷹峰用の策はない。

 こいつは真っ向から倒す。そうじゃないと意味がない。


「安心しろ。武器は使わないし、他の者に手出しはさせない」


「正々堂々と戦うってわけか。真面目ちゃんだな」


「僕にも譲れないプライドというモノがある」


 鷹峰は拳を構えてダッシュしてくる。

 一撃で決める気だ。

 鷹峰の馬鹿正直な右ストレートを俺は裏拳で軽く弾く。


「なっ……!?」


 今度は俺の右ストレートをくらわせる。鷹峰は腕でガードするが、2メートルほど後退した。


「……どういうことだ? この短期間でパワーが上がっている。一体なにをした? ドーピングか?」


「そんなモンじゃねぇよ。この前は腹ペコだったが、今はお腹いっぱいってだけだ」


 この前はスパゲッティ食ってる途中で邪魔されたからな。


「面白い。久々に、本気を出せそうだ」

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