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第4話 Vtuber四天王

 エグゼドライブでは“1期生”、“2期生”など同時期にデビューしたVチューバ―を○期生とまとめて呼ぶ。

 俺の推しはエグゼドライブ6期生だ。そう、かるなちゃまをはじめとする四天王が属するのがこの6期生である。


 今日はその6期生のコラボ生配信の日だ。


 月が空を彩る木曜の夜、月見だいふくアイスをつまみながらブルーライトを眼球に浴びる。

 今日は6期生が視聴者の質問に答え続ける生配信だ。可愛らしい部屋を背景(バック)に、6期生5人が全員並んでいる。


『第18問! 【6期生の中で一番下品なのは誰ですか?】……だって。ふふっ、なにこの質問~』


 いまこのコーナーを仕切っているのは“天空(あまぞら)ハクア”。

 ラメ入りの黒髪セミロング、身長158cm、Cカップ。

 登録者数123万人。


 自称、海軍騎士(オーシャンナイト)。海を取り締まる騎士……という設定だ。設定に準じて6期生を取り締まる風紀委員的立ち位置である。


 セーラー服にセーラー帽を身にまとっているが、手に騎士が付けるような籠手や腰に騎士剣を差していたりと、セーラー服+鎧の独特な格好をしている。


『一番むっつりなのは間違いなくヒセキでしょ』


 クールにそう返したのは“蛇遠(じゃおん)れつ”。

 パーマ気味の緑髪ミディアムショート、身長152cm、Bカップ。

 登録者数108万人。


 アマゾンの奥地で長くアイドルをやっていた経歴(せってい)を持ち、自称、密林の歌姫。

 パーカーを着ていてフードを深く被っている。下はホットパンツだ。首には蛇皮のマフラーを巻いている。

 基本いつも勝気かつ冷静、クール系ツンデレ。Vチューバ―には珍しいタイプだろう。歌が上手く、彼女のオリジナル楽曲は動画投稿サイトで1500万回再生を簡単に超える。


『いやいや、そんなことないって! 店長、清純派だから!』


 “七絆(なずな)ヒセキ”。

 銀髪のツインテール、身長157cm、Eカップ。

 登録者数172万人。


 自称、宇宙(スペース)店長。スペースキングとか、スペースリーダーとかなら何となく意味がわかるが、彼女は宇宙(スペース)店長を名乗っている。宇宙の店長である。意味は深く考えてはいけない。

 肩だしのYシャツにミニスカートを着ている。格好は近未来の女子高生の制服をイメージしているらしい。


『この前放送に乗せられないような用語連発して、マネージャーに怒られたのは誰だったっけ?』


『――意外にエッチな用語いっぱい知ってるのはハクアだよね~』


『……話そらしやがった』


『私!? わ、私は一般常識程度しか知らないって……!』


『うっそだぁ。だって〇〇〇〇〇とか〇〇〇とか知ってるでしょ?』


『ちょっとやめてよヒセキ! またチーフマネージャーに怒られるよ!!』


『あれれ~? 今の単語が怒られるようなモノって、わかるってことはぁ~?』


『うっ……!』


 まんまとヒセキ店長の罠にかかるハクアたん。

 真面目系のハクアたんとフリーダムな店長は相性抜群だなぁ~。


『さっきからみんな、なんの話してるか全然わからないぽよ!』


 語尾に“ぽよ”を付けて喋る彼女は“未来(みく)ぽよよ”。

 ピンクのショートカット、身長138cm、Aカップ。

 登録者数21万人。


 自称、未確認生命体。

 厚手の白コートとミニスカートを着ている。プロフからわかる通りロリッ子Vチューバーで、不思議ちゃんなキャラで売っている。語尾に“ぽよ”を付けるなど特徴的ではあるのだが……ロリ系は同期にかるなちゃまが居るし、破天荒なキャラは他にも店長が居る。ゆえにあまり登録者数が伸びない不遇のVチューバー。(ちまた)では幻の五人目(ファイブメン)と呼ばれている。


『いいんだよ~、ぽよちゃんはなにも知らなくて』


 店長が笑って言う。


『かるなちゃまはなにか下品な言葉知ってるの?』


 ハクアたんがかるなちゃまに振った。

 俺の一番の推し、“月鐘かるな”。


 月からやってきた月の巫女。

 登録者数142万人だ。

 巫女服を改造し、露出を大きくした服を着ている。


 さてさて、このハクアたんのパスをかるなちゃまをどう受けるかな……。


『かるなはお子様だから、(しも)系の言葉は知らないでしょ』


 れっちゃん(蛇遠れつの愛称)がかるなちゃまを煽る。


『かるなちゃまだってそれぐらい知ってるよ!』


『へぇ、じゃあ言ってみてよ』


 かるなちゃまは渾身の声で、




『ちん〇ん!!』




 かるなちゃまのストレートな下ネタを前に、6期生全員が大笑いする。


 あぁ……いまこの画面の中にあるものこそ、平和なのだろう……。


『じゃあそろそろ次の質問いくよ~。え~っと……うわぁ、またこの質問かぁ』


 なんだろう。ハクアたんの声色が低くなった。


『なになに? どしたのハクア~? 早く読み上げて!』


『え~第19問! 【6期生が全員同じ高校に(かよ)ってるって本当ですか?】だって』


 6期生は全員現役高校生だと自分たちで言っている。確かに配信スケジュールを見ると高校生っぽくはある。実際、かるなちゃまの魂である綺鳴は女子高生だったわけだしな。


 度々(たびたび)、6期生のエピソードトークで高校の特徴が合致することがあったからこんな噂が出来上がったのだろう。しかし似ている校風の高校なんていくらでもあるし、あくまで噂の範疇だと俺は思っている。

 つーか高校生Vチューバーなんてそう居るもんじゃないからな。


『ないない。だってそもそもさぁ、店長は女子高で、ハクアは共学だもんね』


『ぽよよも女子高ぽよ!』


『かるなちゃまは共学だよ……一応ね』


『ウチも共学』


『ハイ! この通り、この噂は嘘ってことです! 次の質問行きましょう~!』


『あっはは~、ハクアたん淡泊だね~』


 話は変わり、次の質問へと移行する。


「そりゃそうだよなぁ~。綺鳴がうちの高校に居るんだし、もし全員が同じ高校だった場合、6期生全員が俺と同じ高校に通ってることになるもんな」


 そんな展開、天国ではあるけれど……まぁまずないだろう。

 もしも6期生が全員俺の高校にいたならそれは、俺にとって宇宙人・超能力者・未来人が同じ高校に居ること以上の奇跡だ。


「ん?」


 放送が終わってすぐ、滅多に鳴らない俺のスマホが珍しく鳴き出した。

 迷惑電話かな? 変な番号の羅列だったら切っちまおうと思って電話番号を見る。

 うん、知らない番号だが変ではない。


「もしもし」


『こんばんは先輩。私です、朝影麗歌です』


「……なんで俺の番号を知っている?」


『小さいことは気にしないでください』


「個人情報流出は小さいことじゃねぇ」


『それでですね先輩、お願いがあるのです』


 勝手に話を進めやがった……。


「はいはい、なんでしょうか」


『明日の朝、私の家に来てください』


「はぁ? なんで?」


『決まっているでしょう』


 いやな予感がする……。



『月の巫女を太陽の下に連れ出すのです』



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