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間違いなくVtuber四天王は俺の高校にいる!  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第三章 兎と友達と風邪と運動会と告白
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第37話 兎vs月

 瑞穂の気が済んだところで、俺は綺鳴を部屋に呼んだ。


「ここが兎神さんの部屋ですか~……あ! かるなちゃまグッズたくさんですね! だいふくの(かがみ)ですっ!」


 計画通りの反応だ。

 つーか、本当に綺鳴が俺の部屋に居る……あの綺鳴が、月鐘かるなの中の人が。夢のようだな。


「この押し入れは何が入ってるんですか?」


 綺鳴が手を伸ばしているのはギチギチの押し入れ。今にも決壊しそうなダムだ。


「待て! それには触るな!」


 俺は慌てて綺鳴と押し入れの間に割り込む。


「え? どうしてですか?」


「物詰込み過ぎて決壊寸前なんだよ! 触るな危険だ!」


「ははーん」


 綺鳴は口角を上げ、ジトーッと見てくる。


「兎神さんも健全な男子高校生ですもんね~。秘蔵の品の一つや二つ、ありますよね~」


 なにやら一人で勝手に納得し、綺鳴は押し入れから離れた。


「さて、それではそろそろやりますかゲーム!」


 おっと本来の目的を忘れていた。今日は大運動会の特訓をする予定だった。


「そうだな。かるなちゃまが参加する三種目のゲーム、全部ダウンロードしてあるぜ。どれからやる?」


 かるなちゃまが参加するゲームは以下の三つだ。


 一つ、“ツトムカート”。レースゲームだ。

 二つ、“大激闘! ブレイクシスターズ!”。これはもう説明する必要ないだろう。

 三つ、“エグドラすごろく”。エグゼドライブが公式で発売したゲームで、名前の通りすごろくゲームだ。エグゼドライブのVチューバーを操作してすごろくができる。


「ブレシスからいきましょう。叩き潰してあげます!」


「俺はお前に勝ったハクアたんの師匠だぞ。勝ち目あると思ってるのか?」


「ふっふっふ。昔のままの私だと思ったら大間違いですよ~。めちゃくちゃ特訓しましたから!」


 うん、知ってる。つーかその特訓配信見てたし。

 コイツがどう成長したかも全部把握済み。まず負けないだろう。


 案の定、ゲームが始まってすぐに俺が先制した。


「ぬわあ!?」


「悪いがボコボコにさせてもらう!」


 綺鳴はキャラの動きに合わせて自分も動いてしまうタイプで、体を上下に揺らしたり、傾けたりする。


「やだっ! だめっ……!」


 ……ちょっと嬌声(きょうせい)出すのやめてくれませんか! 集中切れるんで!


 隣から響くエロい声。

 さらに綺鳴はピンチになると膝でぴょんぴょん跳ねやがる。跳ねるとその豊満なバストがぶるんぶるん揺れるため、


(くっ!? これは予想外の妨害……!)


 俺の視線は画面から綺鳴の胸部に引き寄せられてしまう……!


「隙あり!」


「しまった!?」


 綺鳴の胸に集中している内に一本取り返されてしまった。


「まだまだこっからですよーっ!」


「上等だ! かかってこい!」

 


 ◇◆◇



 兎神と綺鳴がゲームに白熱している頃、瑞穂は洗濯物をベランダに干していた。


「ふんふんふーん」 


 鼻歌交じりに兄のパンツを手に取ると、同時に隣のベランダから窓を開く音が聞こえた。

 瑞穂はベランダ同士の間にある仕切りの隙間から隣のベランダを覗く。青い髪の女子が部屋着でベランダの花壇に水をやっていた。


「やっぱアオ姉だ! おっは~」


「ん? あ、瑞穂ちゃん。こんにちは」


「ねぇねぇアオ姉! 朝影綺鳴さんって知ってる?」


「うん、知ってるよ。友達だからね」


「そうなんだ! さっき初めて会ったんだけど、すっごく可愛くてさ~。年上だけど妹に欲しいぐらいだよ。アオ姉の高校って可愛い子いっぱいだね」


 アオの水やりの手がピタッ……と止まる。

 洗濯物の続きをやろうとする瑞穂の背に向かって、


「……どこで綺鳴ちゃんと会ったの?」


 顔は笑っているが、声は淀んでいる。


「え? ウチの玄関だよ」


「どうして綺鳴ちゃんが兎神家の玄関に居るのかな?」


「遊びに来たんだって。いまおにぃの部屋に居るよ~」


 アオの笑顔が引きつるが、洗濯物に集中している瑞穂はそれに気づかない。


「……部屋にはお兄ちゃんと綺鳴ちゃんの二人だけ?」


「うん、そだよ~」


 その時、兎神の部屋からド! っと大きな音が響いてきた。

 ブレシスの決着が着いた音だ。兎神の歓喜の声と綺鳴の悲鳴の交響曲である。その音はベランダにまで轟いた。


「盛り上がってるみたいだね~」


「そうみたいだね~」


「多分、二人でゲームでもやってるんだろうな~」


「へぇ。()()()()()()を……」


 アオは平静を装う。

 しかしその手元のジョウロから注がれる水は、なにも生えていない土に向かっていた。

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