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8話

「・・・あなたが死んでから母さんが変わったのは・・・」


「私が幻覚魔法をかけた。私は、母に捨てられた。父にも見向きもされなかった。学院に入学する年齢になって、兄である現当主が私の存在を思い出したんだ。」


「どうして・・・」

ティアは呟いた。

アローシェン家はそのような冷たい家庭には見えなかった。


「先代当主はね、愛人がたくさんいたんだ。だが、子供はつくらないことで、正妻である兄上の母上が容認していた。だが、平民で父に気に入られただけの花屋の私の母は妊娠してしまった。父は子供はほしかったからね。女の子がね。だから産ませようとしていたけど、母は正妻からの圧力で何度も流産を図った。


父は母を幻覚魔法にかけて私が生まれるまで操ったんだ。でも、生まれたら男だったからね。そのまま放置さ。正妻は兄に何度も言い聞かせていたよ。私が穢れていて近づいてはいけない、って。

学院入学の年になった時に、同級生が弟が入る、と騒いでいて自分に弟がいることを思い出したみたいだよ。それで父を説得してくれて学院に通うことになったんだ。」


ティアの瞳が揺らいだ。


父はそれに気付き、少しふざけた感じで肩をすくめた。

「まあ、そんなこんなで私としてはね。子供を捨てる親も、子供を利用する親も大嫌いなんだ。貴族の矜持が、とか、貴族としての立ち居振る舞い、なんてどうでもいいんだよ。人の命はみんな平等だ。貴族だから大切とか、貴族だから我慢しなくてはいけない、とか。大変なのは貴族だけじゃない。領主となる貴族によって暮らしが変わる国民だって大変だ。」


ティアは父の言いたいことをなんとなく理解した。


「貴族も平民も生まれた時からその身分だ。自分で選んだわけではない。チャンスがあれば、平民だって国の官僚になれるだろう。下手すれば、貴族なんかよりも平民のほうが優秀かもしれないだろう?帝国は時代遅れだ。魔獣が増えて、他国において行かれている。貴族たちは良いよ。財産があるからね。何とかなるかもしれないけれど、平民は政治をする人たちの犠牲になるだけだ。


だからこそ、帝国を潰す。平民にもチャンスのある国。帝国も中途半端に平民に知恵を付けられるようにしているからね。知恵を付けた平民は怖いよ。強かさに、強さを兼ね備えていて、知恵がつけば貴族なんかより強くなるしね。ここから先、専制君主国家、貴族国家なんてやっていけない。ある程度の規制と身分は必要だろうけれどね。」



一瞬にして父の纏う雰囲気が冷たくなった。

ティアの背筋に悪寒が走る。


父を“怖い”と初めて思った。


「私はね。家族を愛しているよ。サメイラも。ルジオも。ルクレティアナ、君も。古の国に行って君の名前の意味を知ったんじゃないかい?」


父が優し気に微笑んだ。


“ルクレティアナ”


古の国での古語。

“ルク”は愛される、“レティア”大地や海の意味をする。


古の国では大地や海を両親と例える。


ティアの名は両親に愛されている意味をするのだ。


ティアも古の国に行って初めて知った名前の由来であった。

実際父親が死んだことを偽装して、母を殺し、自分を操っていた張本人だったことがわかる前は、彼の自分への愛情を疑ったことはなかった。


実際、事の真相を知っても、彼の愛情を疑うことはなかった。今までの彼の自分に対する態度が嘘だとは思えなかったから。



父は昔から変わらない。

“困っている人のため”それが大前提であった。


治療師として人を助けるために、知識と技術を身に着け、見返りを求めなかった。

それは革命者としても同じなのだろう。


国民のことを考えられなくなった皇帝、貴族は必要ない。それが大前提動いているのだろう。


しかし、母が死ぬ必要はあったのか。

私に幻覚魔法にかけるように、皇后を操る必要があったのか。

ヴィクトリアがけがをして、足が不自由になる必要があったのか。



父の考えは否定しない。

しかしやり方が気にくわない。


「こんなやり方しかできなかった?母さんを・・・死なせたり、私に幻覚魔法をかけるように皇后を操ったり、他にも・・・・止められたことがあるはず。皇后やソーマ侯爵夫人が奪った命を・・・助けることはできなかったの?」



ティアはかすれた声で、絞り出すように言葉を放った。



「・・・サメイラを死なせたのは、あれ以上帝国への想いが強くなれば、子供たちが危険にさらされると判断したからだ。君が学院に通っているとき、ずっと監視していたが、帝国と連絡を取ろうとしていた。皇后にね。サメイラは気づいていた。子供たちにも幻覚魔法が使える素質がある、と。」


「・・・私たちを皇后に引き渡そうとしていたの?」


「引き渡すというよりは、尽くさせる、が正しいかな。」


「どうして・・・そこまで」


「サメイラは孤独だったんだろう。ずっと・・・。・・・なるほど・・・」

父は急に何かを思いついたような表情で顔を上げた。


ティアはいぶかし気に父を見る。


すると、父はくすくす笑い出した。


「・・・どうやらロレッソ殿下は過去を変えたみたいだねえ。」


ティアは父の言葉に目を瞠る。


「どういう・・・」


「ん?ああ・・・ティアにはまだ感じ取れないのかな?」


不思議そうに父を見上げる。


「えーと・・・モーフィスト嬢はティオリア殿下の剣で体が不自由になったね?」


父の言葉に頷く。


「ロレッソ殿下はどうやらその部分を変えたみたいだね。」


「・・・つまり、ヴィクトリアの怪我どうにかさせた、ということですか?」


「ああ。無傷みたいだよ。ティアの記憶も探ってごらん。思い出すだけでいい。」




ヴィクトリアは剣が刺さって・・・刺さった・・・?

あれ?

剣が・・・弾かれた?


「僕らのように、全ての魔法が使える人間は過去を変えられると、実際に起きたことと、変えられた部分が混在して混乱するんだよねえ。」


「・・・なぜ、知っているんですか?」


ティアの質問に、父は笑った。

それ以上聞かないでくれ、そう言っているように感じた。


ティアは何があったか知らないが、何故か自分のことだと感じた。


「・・・私ですか?」


ティアが聞くと、父は苦笑しながら「知らないほうがいい。私は思い出したくもないよ。」と言った。

その顔がとても悲しそうで、それ以上聞けなかった。



私の何を変えたのか。

気になる・・・。



「過去を変えて・・・何が帰ってきたんですか?」

ティアがふと気になって聞いた。


「ははは。義姉に跳ね返ったよ。」

辛そうな表情だった。それ以上何も聞けなかった。







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