東方救嬢期3周年記念!(閑話) 〜笑顔と苦労は表裏〜
遅刻したぁぁぁぁああああ!!!!
ごめんなさいぃぃぃいいいい!!!!!!!!!
流石に誤字が多すぎてびっくりしすぎた私です。また誤字などは見つけ次第直していきます。
ついでに全く内容思いつかなくてバチコーンに焦った私です。
色々は後書きにするので、取り敢えずこれだけ。
東方救嬢期3周年、本当にありがとうございます!!!!!!!!!!
「なぁ霊夢、なぁなぁ霊夢、なぁ霊夢」
「そんなリズムに合わせて言わんでいいでしょ鬱陶しい」
ここは幻想郷、その中心とも言える博麗神社。そこには今、1人の巫女と1人の魔法使いがいた。
方は過度に脇を露出させた紅白の服を着た少女、方は白黒のザ・魔法使いという服を着た、大きな黒色の帽子がほぼトレードマークと言っていい少女。名はそれぞれ、博麗霊夢・霧雨魔理沙という。
そんな2人は今、博麗神社。その縁側にて煎餅を齧りつつ湯呑みを手に収めていた。特にこれと言って特別なことはない。これがここの、いつもの日常風景である。……ただ、1つを除いて。
霊夢は一口それを口にやってから、モゴモゴと口を開く。因みに、モゴモゴは比喩表現ではない。
「ほふひはほほひひはひ」
「注釈ないとこういうのってマジでわかんないもんなんだな……」
ほら言ったでs(((バチ–ン
そんなことを口にしつつ、魔理沙は霊夢の手にある湯呑みを指さし、ジェスチャーをする。(自我喪失)
すると霊夢は、豪快にそれを飲み干して木製でできたお盆の上に叩きつけるようにして湯呑みを置いた。
「……あー……」
「?どうしたんだ?」
「……何言おうとしたか忘れたわ」
「おいおいおいおい貧乏が遂に脳みそまで侵食したか? 流石にそりゃあもう末期だぜ」
「ぶち転がすわよコソ泥白黒魔法使いが」
「お?お?お?やるか??やるなら大歓迎だぜ???」
「何よせっかくリズムいい感じに言ってやったっていうのに」
「そここだわる意味どこだよ」
「というかんなめんどくさいことするわけないじゃない何言ってるのよ」
「うわぁ!いきなり落ち着くなよ!」(ブーメラン)
そんな会話をしつつも、時折殺伐となりながらもまったりとした時間が流れていく。
側から見たら全くもってそんなことはないが、本人たちにとってはそんな感じらしい。
恐ろしいものである(⭐︎自⭐︎我⭐︎確⭐︎立⭐︎)
「復活早いなこいつ」
「そうね、もう2度と目ェ覚ませないくらいボコボコにしましょうか」
……
ニーゲルンダヨースモーキー‼︎
「あ、逃げた」
「追いかけるのめんどいからそのままでいいわよめんどくさい」
「めんどくさがりだろ。霊夢らしいっちゃ霊夢らしいが……」
「そんなことよりも、よ。アンタ、何か言いかけてなかった?」
「あぁそうだ。いやな、藍奈のことでふと思ったんだが……」
「? アイツがどうしたのよ」
「……アイツって、優しすぎると思わないか?」
「いや、ほんとにどうしたのよ」
話の脈略がなさすぎるあまり、霊夢は困惑した表情でそう返す。(早すぎる復活。俺でなきゃ(略))
「アイツが優しいことなんていつものことでしょ?」
「そこは認めるんだな」
「そりゃね。博麗神社のことだって、何から何までやってもらってるし」
「もうアイツなしじゃ生きてけないんじゃないか?」
冗談まじりにそういう魔理沙に、霊夢は視線を合わせることなく言葉を吐いた。
「んなわけないでしょ。私は、博麗の巫女よ」
「へいへい。……で、そこでなんだがな、思ったんだよ。私たちから藍奈にしてやったことってほとんどないなって」
「…………否定できないわね……」
「強いていうなら私は幻想郷巡りについて行ってるくらいか」
「私はそれと宿代わりに居候させてるくらいね……」
「な? してもらってることに対して何もしちゃいないだろ? 私たち」
そういうと魔理沙は霊夢の方に向き直った。
「そこで、だ」
そこで一旦言葉を切って、ピンと立てた指を霊夢に見せつけながら言葉を続ける。
「私たちで何か藍奈にプレゼントしないか?」
「プレゼント……ねぇ」
「何だよ歯切れの悪い。そんなに金かけるのが嫌なのか?」
「そんなんじゃないわよ。ただ……」
そこまで言って、霊夢は言葉を止める。
「ただって何だよ。何かあるのか?」
「何もないわよ。…………なにニヤついてるのよ気持ち悪い」
「いやぁ? なんでもないぜ。ただ霊夢も同じことを考えてて嬉しかっただけなんだぜ」
「はぁ!? そんなこと考えてるわけ……」
「言い切らないってことはそういうことなんだな」
「……うっさい黙れ」
「いやぁほんとに可愛い幼馴染を持ったよ私は。鼻が高いぜ」
「……!! いいわそんなにこてんぱんにされたいなら早く言ってくれたらよかったのに」
「いやぁすまんすまん。ちょこっとからかいすぎたぜ」
その後ほんとに鬼ごっこが始まったのは、もはやいうまでもないまであると思う。
数分間それが続き、落ち着いたところで魔理沙が霊夢に文句を混ぜつつ問いを投げる。
「ったくほんとにやるのはないだろ……で、だ」
「今度はなによ」
「何か考えがあるんだろ?」
霊夢は一口お茶を飲んでから、ゆっくりとその問いに答える。
「……別に、特別なことは考えてないわよ」
「嘘つけ。あからさまに何かあるだろ」
「何でわかるのよそんなこと」
「だって最近お前がお茶飲んでる回数も煎餅齧ってる回数も減ってること、私知ってるんだぜ?」
「…………いや、それに関してはほんとに何で知ってるのよ」
「まぁ、親友だからな。当然なんだぜ」
「当然なわけないでしょ普通に怖いわ」
霊夢はそれを聞いて1つ大きなため息をつくと、観念したように言葉をつき始めた。
「……お金貯めてるのよ」
「……なん、だと…………!?!?!?」
正直今日イチの驚きである。
「……そんな反応されると思ってたから言いたくなかったのよ」
「あーすまん、いや、すまん。これは流石に驚きが勝ったぜ……」
だが最近の霊夢ならば納得ができる、と魔理沙は同時にそう思った。
最近……もっというならば藍奈が来てから。少しずつ、少しずつではあるが博麗霊夢という少女は変わりつつあった。
以前までの彼女はいつみても、どこを見ても余裕がない状態だったのだ。そしてそれは、人を……他人を前にしているときでは、更に顕著に現れていた。
だがそれに比べ最近の彼女はどうだろうか。
確かに棘はある。だが前に比べたらそれは鳴りを潜めているし、それに何より前よりずっと笑うようになった。それに加え、最近ではその棘よりも優しさの方を強く感じることが多くなった。
だが多分、そうだとしても棘というものが彼女から完全に無くなることはないのだろうと、そう思う。
魔理沙はそこまで考えて、これも優しさの形か……などと、キザなことを心中で吐き捨てた。
「んで、そりゃ一体何なんだ?」
霊夢はそうきかれて、静かに、小さく顔を背けながら答える。
「……栞よ。押し花の、ね」
「! ……いいじゃねぇか! 藍奈ならぜってぇ喜んでくれるやつだな! アイツ本好きだし!」
あまりの意外すぎたあまり、言葉を出すまで少し間を空けてしまったことは、もはやしょうがないとすら言えるだろう。
(本当に変わったな。……しかも、いい方向に)
魔理沙は心中でそう呟くと、微かな、誰にも気づかれないほどに小さく口角をあげ、微笑んだ。
その時、玄関の方から元気な声が聞こえてくる。その“1つ”が帰ってきたのだ。何かいいことでもあったのか、いつもよりもその声は弾んでいるようだった。
「帰ってきたな」
「えぇ。……聞いたからには、さっきのことアンタにも手伝ってもらうわよ」
「もちろんだぜ」
そんなこんなで、霊夢と魔理沙による計画が幕を開けたのだった。
「なんか規模デカくないか?言葉的に。」
「ナレーション(?)に突っ込んでもどうにもならないでしょ」
「メタイメタイ」
「気のせいよ」
「あ、霊夢さん」
「お帰り、藍奈」
「ただいまです♪ ……っと、魔理沙さん。いらっしゃいです、今日はどうしたんですか?」
「いつも通りだぜ」
「やっぱり。ふふ、そうだと思いましたよ。せっかくきたんですし、夕食、食べて行きますか?」
「あぁ。お言葉に甘えて頂いてくぜ」
「わかりました。それじゃあ僕は買ったものとかしまってくるので一旦中行きますね」
「えぇ。あぁあと、私たちこれからちょっと家開けるから戸締り頼んだわ」
「何かあったんですか?」
「まぁちょっとね……所謂、野暮用ってやつよ」
「……わかりました。ご飯はどうします?」
「もちろん食べるわ(即答)」「もちろん食べるぜ(即答)」
「……ふふ、わかりました。気をつけて行ってらっしゃいね。ご飯、作って待ってます」
「えぇ、行ってきます」
「行ってくるんだぜ!」
2人はそう言って、地を蹴り空へと羽ばたいた。
羽はないが。
「なんか藍奈と話してる時の霊夢デレ多くないか?」
「いや、何言ってんのよ」
人里に向かう道中、魔理沙はふと思い立ちそんなことを口にした。
「お前ってツンデレだろ?」
「んなわけないでしょ」
「側から見たらツンデレなんだよ」
「そう思ってるやつ全員ぶっ飛ばしてこようかしら……」
「やめろやめろ無闇矢鱈に死体の山を作ろうとするな!」
ツンデレのツンもここまで行くと清々しいものがある。
気がする。
「そこあやふやなのね……」
「まぁ個人差だからな」
「何の個人差よ」
「趣味好み」
「そこ言われたら何も言えなくなるじゃない。変えなさいよ」
「流石に暴論がすぎるぜ!?」
「はいはい。……で、何の話だったんだっけ?」
「藍奈と話してるとk」
「あーあー聞こえない聞こえない。よし、この話はここでおしまいよ」
「おい自分が不利になったからって」
「もう着いたんだしいいでしょ?早く買って帰るわよ」
「……へいへい」
不満そうに魔理沙はそう言葉を返して、スタスタと先に行く霊夢の背中を追いかけた。
そんなこんながありつつも、霊夢たちは目的の場所までたどり着く。
そこは、人里一番と言われるほどの生花屋だった。
一番と言われるのは、もちろん品揃えの良さや対応の良さなどの理由は多くを占めている。
……だが、それだけではない。何せ、この店には———
「……何で、アンタがここにいるのよ」
「あら? 珍しいじゃない、あなたこそここにくるなんて。……ねぇ?博麗の巫女」
風見幽香という、1人の大妖怪がいるのだから。
「質問に答えるとすれば、簡単なことよ。私がここの常連ってだけ」
「花の妖怪である、アンタがねぇ」
幽香の、『花を操る程度の能力』。
この能力はとにかく平和な方面に汎用性の高い能力だ。
花を咲かせたり花の向きを変えたりするのはもちろん、枯れた花を元どうりにすることもできる。全くもって戦闘向きではない能力である。
「そう警戒しなくてもいいじゃない。ここはそんなに殺伐とする場所じゃなくて、花を選び、愛でる場所よ」
「そう言うならその殺意を納めて欲しいところだぜ」
そうだ。この妖怪……幽香は2人の気配を感じ取ったその時から敵意を、殺意を放っていた。それも器用に、2人だけにわかるよう、繊細に、あからさまに。
「あら、バレちゃってたのね。ごめんなさい。だけどあなたたちのことだから、もしかしたら花を荒らすかもって考えたのよ」
「流石に私たちのこと舐めすぎだぜ。それにそんなことしねぇよ。そうだったらここにくる意味ないしな」
「そうよ。花は好きってほどでもないけど嫌いでもないし。というより、私たちのことなんだと思ってるの?」
「私との初対面があんなご挨拶だったら、警戒するのも仕方がないと思わない?」
「あれは……いいえ、あれは私たちに非があるわね。潔く、それに関しては謝罪をするわ」
「あら珍しい。博麗の巫女がこんなにも素直なんて……」
「こいつ……!!」
「まぁまぁそうカッカすんな。幽香の言ってた通りだ。こんなところでおっ始めなんかしたらそれこそ取り返しがつかねぇぞ」
「えぇ、そこの白黒の魔法使いの言う通りね」
「ぐぬぬ……!! ……はぁ、わかってるわよそんなこと」
「ふふ、流石にからかいすぎたわね。ごめんなさい、お詫びと言っては何だけど、今日は花を買いに来たのでしょう? 選ぶの、手伝ってあげましょうか?」
「…………こいつはこう言ってるが、どうする?」
「何か裏があるわけじゃないでしょうね」
「ふふふふ、それはどうかしら?」
幽香は不的な笑みを浮かべつつ、霊夢の問いにそう返す。
2人は数秒間見つめあった後、霊夢の方がため息をつき言葉を吐いた。
「はぁ……まぁ、そう言うならありがたく手伝ってもらうわ」
「えぇ。……それで、あなたたちはどんな花を探しているの? どんな系統の花がいい、とか」
「「……」」
「……まさかとは思うけど、何も考えないでここにきたの?」
「「……」」
「……はやとちりというか、なんというか……。まぁあなたたちらしいわね」
「……ふん」
霊夢は小さく顔を背けた。
「まぁいいわ。というか、今思ったのだけど花を何に使うつもりなの?」
「それは……」
霊夢はその問いに口籠もってしまう。どこか小っ恥ずかしさを感じたのだ。
「……まさか、ほんとにする気じゃないでしょうね?」
先ほどよりも鋭く、あからさまな敵意が幽香から放たれる。
「だっ、だからそんなことしないって!! ただ、ちょっと……」
「霊夢は恥ずかしがってるだけでそんな気はさらさらないんだぜ。プレゼントに使うっつー目的もあるわけだしな」
「は、はぁ!? ちょっと魔理沙何そこまで言ってんの!?!?」
「あらそうなの。博麗の巫女にも可愛いところあるのね」
「何言って……ってニヤニヤするのやめなさいよ!!!」
「それで〜? 博麗の巫女さんは誰にプレゼントをするのかしら〜?」
「こいつマジで……!!!」
「ほらほら霊夢。選んでもらうんだからそこまで言わないといけないんじゃねえか〜?」
「まっ、魔理沙アンタ! 寝返ったのね!?」
「私は元々面白そうなやつの味方だぜ」
霊夢は顔を赤く染めて、手で口を覆いながら、ポツリと消え入りそうな声でつぶやいた。
「……もしかして、最近噂の外来人?」
「……ッ!」
「……あっているようね」
そう言って微笑むと、幽香は辺りを見渡した。そしてほとんど迷うことなく、ある一点を見たと同時歩き出した。それを見た霊夢と魔理沙は、驚きを隠せずそれを表情に浮かばせる。
「……笑ったりしないの?」
恐る恐る、霊夢はそう口を開いた。
「……まぁ確かに、あの博麗の巫女が誰かにプレゼントを贈る、だなんて。人によっては笑うかもしれないわね」
小さく唸り声が聞こえた。
「ただ、それを笑うような外道に、私は堕ちたつもりはないわ」
「!」
霊夢はその言葉を聞いて、大きく顔を逸らして。
「………………ありがと」
小さく、そう呟いた。
するとなぜか、先ほどとは異なり、魔理沙と幽香は吸い寄せられるようにして近づく。
「……この子ってこんな可愛かったっけ?」
「奇遇だな幽香。私もそう思ってたところだぜ」
「うっさいわアンタらぁ!!!」
「あら、聞こえちゃってたの」
そんな会話をしつつも、気づけば幽香は目当てを定めて辺りを見回していた。
何秒かの間そうしたのち、近くにいた店員に話しかけに行く。
その後こちらに戻ってくると、霊夢たちに向け言葉を吐いた。
「ピッタリの花は知ってるのだけど、ここの店には今はないみたい」
「……ピッタリの花?」
霊夢は幽香のその言葉に小さく反応を示す。
まるで、彼を知っているような言い種だと。そう思ったのだ。
「なんでピッタリって言い切れるのよ」
「さぁ? 何でだと思う?」
可笑しそうな微笑みを浮かべながら、幽香は言った。
「んなことわかるはずないじゃない……。というか、そのピッタリな花がここにはないんでしょう? どうするのよ」
「どうするなんて、そんなの決まってるじゃない」
「……えぇぇぇ……」
「そんな反応しなくてもいいんじゃないの? まだそれを言ってすらないんだし」
「どーせ太陽の畑に行く、とか言うんでしょ?」
「ご明察。“あそこでしか”できないもの」
幽香が、誰かを太陽の畑に誘うことは実を言うとほとんどない。
色々と理由はあるものの、1番の理由は大切な花たちを傷つけられたくないという思いが一番強かった。
……だが。
「……わかったぜ、こいつの思惑が」
「奇遇ね魔理沙。私もよ」
「思惑なんて人聞きの悪い。ただ私はあなたたちを手伝いたいだけよ」
「よくそんなかけらも思ってもないようなことをさらさら言えるわね」
「いやね、ちゃんと思ってるわよ。……ただ、ちょっとだけお遊びに付き合ってくれたらいいって考えてるだけよ」
「おいこいつついに隠さなくなったぞ」
幽香は、誰もが認める戦闘狂である。
花の次に何が好きかと聞かれれば、即答で戦いというほどに好きなのである。文字通り、3度の飯よりというやつだ。
だから花と戦闘を天秤にかけたとき、花は自分が守れるという確固たる自信を持っているがゆえに、戦闘の方に傾いたのだった。だから提示した場所も、太陽の畑。霊夢の要望も自分の要望も叶えることができる、一石二鳥の場所なのである。
「嫌よそんなの。何回やらされるかわかったものじゃないし、そんなんにいちいち付き合ってたら日が暮れちゃうわ」
「ふーん……でも、いいの? 花に関して私の右に出るものはいないのよ?」
「う……そう言われると……というか、その言い種的に藍奈に会ったことあるのか?」
「さぁ? どうだと思う?」
「まぁたはぐらかす……」
「何言ってんのよ魔理沙。ピッタリの花とか言ってる時点でもうお察しじゃない」
「あ、確かに。言われてみればそうだな」
「……それで? どうする?」
幽香は不敵な笑みを湛えながら、あらためてそう問いを投げた。
もしも本当に幽香と藍奈に関係があるのならば、幽香を頼る方がいいのは明らかである。
先ほども言った通り、花に関して幽香の右に出るものはいない。
だけどついていけば戦闘は確実に避けられない。
だが……。と、考えを張り巡らせに巡らせて、霊夢はやっと選択をした。
「…………あぁもう! わかったわかったわよいけばいいんでしょいけば!!」
そう。最も簡単で合理的な、折れるという選択を。
「ふふ、話がわかるようになったじゃない。霊夢のくせに」
「あんたは相槌1つに嫌味を込めないと死ぬ呪いでもかけられてるのかしら……???」
一周回って霊夢が笑顔になり始めた。
これは本当に限界の証である。
「そうと決まれば早く行きましょうか。博麗の巫女さんも手早く済ませたいようだし」
「アンタが戦わないでいいっていうんだったら一番いいんだけどね……」
「それは出来ない相談ね」
そう言って幽香は踵を返し、太陽の畑を目指し中空に浮き上がった。
霊夢と魔理沙はそれに続き、幽香の跡を追って行った。
「それで、アンタと藍奈はどういう繋がりなの?」
道中、遙か上空。
3人は同じ方向を目指しながら先を進んでいた。
そのとき、霊夢は幽香にそう言葉を投げる。
「そんな大したものじゃないわよ」
「それじゃあ教えなさいよ」
「……そうね……ここでいいかしら」
そういうと幽香はその場で停止した。
「ここでいい……って、まさかここでおっ始めようって気じゃないでしょうね?」
「その、まさかよ」
幽香はそう言うと、日傘として使っていた傘をたたみ、霊夢たちの方へその鋒を向けた。
「だってあそこでやったら、花たちが傷つくかもしれないでしょ?」
「あんたが絶対そんなことさせないくせに……何言ってるのかしら?」
「ま、そういうことならいいじゃねぇか? 遅かれ早かれこいつとは戦うことになるんだ。だったら早い方がいい。とは思わないか?」
「思わないわね」
「即答か……まぁ、霊夢らしいっちゃ霊夢らしいか。んじゃあいい。先手はいただくぜ!」
そう言うと同時に、一枚の紙を……スペルカードを取り出して、叫ぶ。
「悪く思うなよ、幽香。折角なら、お前には新作の実験台になってもらうぜ!
スペルカード発動!天儀『オーレリーズソーラーシステム』!!」
瞬間、魔理沙を中心に8つの魔法陣が展開される。
それらは時計回りで回転を始めたかと思えば、幽香に向けてレーザーを放ち始めた。
その速度と密度は、まるで手加減を忘れたかの如くに、濃く、速い。
「……やべ」
魔理沙は思わず、言葉を漏らした。
端的に言おう。あからさまに調整ミスである。何もかもがえげつなかった。
威力も密度も、そして魔力の消費量も。
「……悪くない」
そうとだけ呟いて、悠々とそれらを避けていく幽香。ただそれは、空を歩いているだけのようにすら見えた。
「はぁ!? ウッソだろこいつ!こんな密度の弾幕なのになんであんな悠々してんだよ!!」
自信無くすぜ……と、そう呟いたはずの魔理沙の顔は、喜悦の念に満ちていた。
「アンタ、あれ見て良くそんな顔できるわね……」
心底めんどくさそうな霊夢のそんな呟きを、魔理沙は聞こえないふりをした。
「私も責めるとしましょうか。……そう言えば、私も名前をつけたのよ。折角ならと思ってね」
「あっそ」
「釣れないわねぇ霊夢は……スペルカード発動」
弾幕の雨を避けながら、余裕綽々にそう宣言をする。
「花府『幻想郷の開花』」
瞬間、空中に幾十本もの花が咲き乱れた。
それは不規則に、そして大小様々に形成された、弾幕の造花たちだ。
次の瞬間には、それらの中心が大きな爆発を起こした。花びらが飛び散り、弾幕が散る。上下左右あらゆる方向から、霊夢たちに対しその牙が向けられた。
霊夢は咄嗟に、あるスペルカードを手に取った。
「スペルカード発動! 霊符『封魔陣』!!」
本来これは攻撃用のスペルカードだ。無数の札形の弾幕により、相手を攻撃する。そう言うスペルカードだ。
防御に特化できるものじゃない。……だが、それで良い。
だって、攻撃というものは。最大限の、防御なのだから。
互いのスペルカードで、互いの弾幕の悉くが相殺される。
幽香の弾幕は相当な威力なものだった。以前戦った時よりも、確実に数段増している。
「そんな消極的な戦い方していたら……足元、掬われるわよ?」
「ッな……!?」
鳩尾への回し蹴りにより、霊夢はその体を飛ばされる。
あまりにも威力の強いそれに、思わず唾を吐き出した。
「ッウ、ぐぅ……!!」
「……あなた、こんな程度だったの?」
あからさまに落胆した様で、幽香は小さくそう言った。
霊夢は鳩尾を押さえながら、肩で息をして俯いている。
……そして、次の瞬間。
霊夢は、笑った。
そんな霊夢を見ると同時、幽香はある異変に気がつく。
「!?」
「……まんまと引っかかってくれたわね、幽香!」
「これは、簡易封印……!?」
見ると、幽香の足には、一つの札が貼られていた。
封印というにはあまりにも粗末な代物である。幽香ほどの実力者であれば、簡単に解けてしまうほどに弱いものだ。
だがそれでも、幽香の……否、“妖怪”の動きを止めるには、隙を作るには。十分過ぎる代物であった。
「まさか、こんなこざかしい真似をされると
「そんな悠長にしてて良いのか? 私も、いるっていうのによ!!」
! 後ろ!?」
気づいた時にはもう遅い。魔理沙は、一枚のスペルカードを掲げていた。
「スペルカード発動!恋府『ノンディレクショナルレーザー』!!」
5方向にレーザーが射出され、それに沿うように色とりどりな大きい星型の弾幕が。幽香自身を狙うように、小さな星型の弾幕が放たれ出した。
そして幽香はその言葉が耳に届いたと同時、強引にその封印を解いて、その場から離脱した。
が、レーザーと幾つかは弾幕は幽香の頬を掠め、服のところどころに傷をつけた。
「ふふ……やるじゃないの。驚いたわ、まさかそんな連携が取れるなんて」
狂気的な笑みを浮かべながら、先ほどよりも大きく弾幕を避けながら、幽香は静かにそう言った。
そこから幽香は、このスペルカードで被弾することはなかった。
「クッソ、やっぱ倒しきれなかったか……だが、これで終いにしてやるぜ!」
魔理沙はそう言いながら、あの八卦炉を構えた。
「たかがパクリのその技で、私を倒せると思ってるの?」
「おっと聞き捨てならねぇな。やってみないとわかんねぇし、これはパクリじゃなくてリスペクトマシマシのオマージュだぜ!」
「……パクリでもオマージュでも、どちらにせよ……」
そこまで言って幽香はその傘の鋒を、魔理沙に向けた。
「本家には勝てないものなのよ?」
「それじゃあ試してみるしかねぇなぁ、幽香!!
スペルカード発動! 恋符『マスタースパーク』!!」
「……そうね。それと、折角なら……あなたの名前、借りるわね?」
そう言った次の瞬間、さらに笑みが深まったかと思えば、その鋒に莫大なエネルギーが溜まっていく。
それをみた魔理沙も、思わず冷や汗をかくほどだった。
そうして幽香は、咆哮する。
「スペルカード発動! 元祖『マスタースパーク』!!」
その刹那、2つのレーザーは衝突した。
押し合い、押され合うそのエネルギーの塊たちの競り合いは、一歩、幽香が勝ってしまっていた。
そのパワーに、魔理沙は思わず後退する。
(……だめだ、このままだと……!! 押し、負ける……!!!!)
「ふふ、ふふふふふふ………いいわ、良いわ良いわ良いわ!! 良いわよ魔理沙!!! もっともっともっと、いきましょうか!!!!!」
心底楽しそうな笑い声をあげ、どこまでもワクワクとした表情をしながらそう言った次の瞬間、幽香のレーザーは、1段階その威力を増した。
さらに魔理沙のものが押され、大きな後退を余儀なくする。
そうして。
魔理沙が、負けを確信した……その、次の瞬間のことだった。
「———私のこと、忘れたわけじゃないわよね?」
それらがぶつかり合う轟音の最中、微かに聞こえたその言葉に、幽香は思わず視線が吸われた。
思わず辺りを見渡し、その声の主を探す。……いや、探すまでもなかった。
幽香は魔理沙との真っ向からの衝突に高揚をし、警戒がお粗末になってしまっていた。
だから、博麗霊夢に背後を取られるなどという失態を犯したのだった。
気配を探る。背後に1人と、もう5つの気配がした。
「ふふふ………あはははは!!! 良いわよ2人とも、とっても良いわ!!!!」
それでも尚、幽香はまだ、笑っていた。
「ほんっとどこまであんたはあんたなのね……まぁいいわ。私が、蹴りをつけてあげる。……スペルカード!!」
その5つの気配が……否、5つの弾幕は、その宣言と同時に。幽香に向けて、放たれたのだった。
「霊符『夢想封印』!!!」
だが、それで易々とやられる幽香ではない。
微かにその弾幕に視線をやると、マスタースパークを放っている手とは反対の掌を、霊夢に向け……否、その弾幕たちに向け標準を合わせた。
そうして、そのスペルカードに落とした技を、今一度、発動させる。
「スペルカード発動!! 開祖『ダブルスパーク』!!!」
次の瞬間、幽香の手から、そのレーザーが放たれた。
それは夢想封印による弾幕たちを消し飛ばして……跡形すらも、残さなかった。
ふと思う。彼女の弾幕は、ここまで弱かっただろうかという疑問を。
これを同時に放つ時、両方のレーザーは共に威力が少し落ちる。現に、先ほどまで幽香の方が優勢だったのにも関わらず、こちらの方が押され始めていた。
こんな簡単に消えるような攻撃ではないはずなのだ、夢想封印という攻撃は。
これはもはや、通常弾と同じ……と、そこまで考えたその刹那。やっと、彼女は気がついた。
「あぁ……霊夢、あなたは……あなたは!! 本当に面白いことをしてくれるのね!!!!!」
魔理沙の横にいつのまにか移動していた霊夢に向けて、敬意を持ちながらそう叫ぶ。
みると、彼女の周りには……5つの弾幕が浮かんでいた。
「ありがとう。……そして、これで終わりよ!!」
霊夢は、持ちうる限りの力で、その全てで。
たった一言、言葉を紡ぐ。
「———発動!!!」
瞬間、その弾幕たちが放たれたのだった。
轟音が響く。
砂煙が立ち込める中空を、2人はなんとかその場にとどまり続け、見つめていた。
2つの……否、3つのマスタースパークと、夢想封印の衝突。
その衝撃で大きく大気が揺れ動き、ものすごい衝撃派を生んだのだ。
倒せていてくれ……と、そんな思考が重なった、その時のことだった。
その中から、1つの影が浮いてきた。
2人は同時に身構えた。だが、同時に気づくことがひとつあった。
その中の人物に、もう敵意がないことを。
「……私の負けよ」
手を挙げながら、彼女はその煙の中から姿を現し、開口一番そう言った。
2人は一気に体から力が抜けて、項垂れた。
「はぁぁ……無駄な体力使わせてんじゃないわよほんと……」
「良いじゃない別に。無くなるもんじゃないんだし」
「減るものではあるのよ、全く……」
「いやぁ良い勝負だったなぁほんと。ありがとな幽香、楽しかったぜ。またやろうな!」
「えぇ、こちらこそ」
「いやよ私は。それとなんであんたはそんな風にいられるのよ……」
「なんだ霊夢、もうばてたのか?」
「もうって何よもうって。あんたらだって人のこと言えないくせに」
「ありゃ、バレテーラ」
「はぁ……それで、幽香。私たちが勝ったんだから、少なくとも約束は果たしてもらうわよ」
「えぇ、もちろん」
「おいおいそんな焦んなくても良いんじゃないか?ほら、戦った直後なんだからそこ時ぐらい休んだりしよーぜ」
「バカ言ってんじゃないわよ。時間も時間なんだから」
「え……? ……マジだな。もう陽が沈みかけてる」
「取り敢えず急ぐわよ」
「……へいへい」
「……どういうこと?」
「説明めんどいから察しなさい」
「……流石博麗の巫女ね(ボソ」
「あ?」
「なんでもないわよ」
そうして3人は、再び太陽の畑を目指し出した。
3人は太陽の畑につくと、地面に降り立ち、歩いて中に入っていった。
空を飛べないのは不便であるが、持ち主の言うことである。仕方ないと割り切って、2人はその言う通りに進んでいった。
今は時間帯のせいなのか、普段は見かけるはずの妖精たちが一匹も見受けられなかった。
そんな中、3人は幽香の家に到着する。
中に入り、2人を椅子に座らせてから、幽香は奥へと入っていった。
数十秒後、幽香が戻ってくると、3つの湯呑みが置かれたお盆と、小さなカゴがを持っていた。
お盆を机に、籠をその横に置いて、2人に湯呑みを配り終えてから再度お盆をもって言葉を吐く。
「話していた花はこれよ」
そう言って、小さなカゴの中から2輪の花を取り出した。
「これは…………なんの花だ?」
「私もわからないわ」
「……フリージアよ」
微かなあきれが混ざった声音で、幽香は静かにそう言った。
「フリージアは、色で花言葉が違うのよ」
「へぇ、色でも分けられてるんだな、そういうの」
「まぁね。そっちの赤い方が、純潔。そっちの黄色い方が無邪気って意味ね」
「……良いわね……」
「ふふ、お気に召したようで何よりよ」
そう言うと、幽香は一度お盆を戻しに行ってから、霊夢たちと同様に席についた。
「それで、その花はどうするの?」
「? 確か言ってたはずだぜ? プレゼントだって」
「そうじゃないわよ。フリージアは多年草で枯れにくいのはそうだけど、ここの冬、特にそっちは山の上でしょう?その花は、大体3℃ぐらいまでは耐えられるけど、それ以下になると難しくなる。だからそのまま渡すにしても、長持ちさせるのは難しいと思うの」
確かに優香の言ってることは正しい。
博麗神社の冬は皆が口を揃えて言うほどに寒くなる。
紫曰く、余裕で氷点下を下回るのだ。
「……押し花って、枯れないわよね?」
「押し花? えぇ、まぁ水分を完全に抜き切るのと空気に触れないようにすれば枯れることはないわね。……するの?」
「……えぇ、そのつもりよ。もっと言うと栞にしたいと思ってる」
霊夢は幽香のあの、笑わないと言う言葉を信じて、彼女の目を見てそう言った。
「……わかったわ。ちょっと待っててちょうだい」
そう言うと幽香は、また奥へと戻っていった。
数分後、幽香は小さな籠を持って戻ってくる。
「それは?」
魔理沙が問いを投げた。
「押し花を作るための道具よ」
「……いいの?」
「えぇ。せっかくだし、私も手伝わせてちょうだい」
「……ありがとう、恩に着るわ」
「ふふ、どういたしまして」
そこまで話して、幽香はそれの作り方の手順を話し始めた。
「押し花の栞は、大きく分けて3つの手順があるの。最初に押し花を作って、次に押し花を型紙の上に載せる。最後にラミネート加工をする、ってやり方ね」
「大体はわかるけど、その、らみねーとかこう?っていうのはなんなの?」
「ラミネート加工っていうのは、印刷物……今回で言うと押し花ね。それに透明なフィルムを貼り合わせて、耐久性を高める加工法のことよ」
「へぇ、そんなやり方があるんだな」
「栞とかって上側に紐がついてることがあるでしょ? それもラミネート加工の後に穴を開けて紐を通してるの」
「へぇ、そうだったのね……」
「勉強になるのぜ」
「ま、細かいことは追って説明するから、取り敢えず始めちゃいましょう」
「あぁ!」「えぇ」
「藍奈、喜んでくれるといいな!」
「……そうね」
こうして、3人で押し花の栞作りがはじった。
その後、約1時間後。
悪戦苦闘の末、2人は満身創痍になっていた。
「ゔぁぁぁ……」
「な、何これ……全然花が思う通りにならないじゃない……!!」
せっかくならと言って、幽香はあの花の他にもクローバーなど色々と持ってきてくれていた。
が、それが逆にダメだった。
そう。霊夢と魔理沙はここでとんでもなく不器用を発揮したのだ。
「……まさか、ここまでとは」
幽香が思わずこうこぼすほどである。
それからさらに10分後。
「で……できた……」
「や……やったな霊夢!」
「はぁぁぁあ……疲れたぁ……」
「お疲れ様」
何がなんでも不器用すぎじゃない?
なんて言葉は、彼女たちの笑顔を目の前に、幽香の心中で霧散して消えた。
「それで、ここからどうするの?」
「何かおもしを乗せて待つだけよ」
「待つだけでいいのか?
「えぇ」
「……もしかして、めちゃくちゃ長いとかないわよね?」
「そのもしかしてよ。大体1週間くらいかしらね」
「「え」」
2人の声が重なった。
「……まさか今日中にできるとでも思った?」
「……なんとかなったり……??」
「……できるっちゃできるわ」
「ほんとう!?」
霊夢がぐいっと、幽香に顔を近づける。
「えぇ。魔法を使ってなら」
「それ! お願い!!」
「……今度戦ってくれたらいいわよ」
「うぐ……でも、背に腹は変えられない……ぐぅぅう…………わかったわ、それでお願い!」
「ふふ、交渉成立ね」
「話し早いななんか」
おだまりさ(by作者)
「うわなんか出てきた」
「ちょっと待ってなさい、すぐ終わらせるから」
そう言うと幽香はそれらに手を翳し、魔力を流し込んだ。
するとなんと言うことでしょう。気づけばもう押し花が完成してるではありませんか。
「こんな便利な魔法があるのね……」
「なぁ幽香ー、それあとで教えてくれよー!」
「後でね。その前に続きやりましょう」
「「はーい」」
「(仲良いわねこの子ら)型紙の色は何がいいとかはある?」
「特にはないわ」
「そう。なら透明でいいわね。形は?」
「できれば長方形で」
「わかったわ。それじゃあそのフィルムの上にこの型紙を置いて、好きな大きさのものにさっきの押し花を置いていって」
「えっと……こう?」
「そうそう。そしたらそれにフィルムを被せて、こっちに渡してちょうだい」
「……はい。これでいい?」
「えぇ。それじゃあ私はこれをラミネーターで加工してくるから、ちょっと待ってて」
ラミネート加工がされたそれらを持って、幽香が部屋に戻ってきた。
「あとはどうすればいいの?」
「あとは切って栞のする形にするだけよ」
「わかったわ」
そんなこんなで。
「で、できた……!!」
「できたわね……!!」
「ふふ、おめでとう、2人とも」
2人はキラキラした目で、それを見つめる。
「本当に恩に着るわ、幽香」
「いいのよ。約束もしてくれたしね。……というより、そろそろ陽が落ちるけどいいの?」
「あ! やばい夕飯に遅れる!!」
幽香がそういうと、霊夢はそんな叫びをあげて、その家から飛び出した。
「おい待てよ霊夢!!」
魔理沙も霊夢の跡を追いように家から飛び出した。
幽香は見送りも兼ねてその跡を追って外に出た。
「助かったわ、幽香!」
「ありがとうな幽香!また遊びに来るぜ!」
「えぇ、待ってるわ」
幽香の気持ち的に、柄にもないことを言ってしまったことも、今だけは気にすることではなかった。
2人は、ものすごいスピードで空を駆けていく。
だが、2人が神社に着いたのは、もう陽が完全に落ちた時だった。
「ただいまー!!」
霊夢の声が響くと、奥から1人の影が出てくる。
「あ、おかえりなさい。遅かったですね、お2人とも」
2人を迎えたのは、優しい笑顔を浮かべた藍奈だった。
藍奈の笑顔で、申し訳なさで満ちていた霊夢の心に静かな平穏が生まれる。
「ごめんなさいね、ご飯食べるって言ってたのにこんなに遅くなっちゃって……」
「大丈夫ですよ。今ちょうど作り終えたところなので、ご飯も温かいです♪」
「あら、そうなの」
珍しいと思った。
いつもならもうとっくに食べ終えてる時間だ。なのに、今作り終えたなんて。
だけど、深く考えることでもないか。
そう割り切り、霊夢と魔理沙は、いつものあの場所へと足を向けた。
ご飯を食べ終えた後、霊夢と魔理沙は、居間にて藍奈と対面をしていた。
「え、えっと……どうしたんですか?」
微かに怯えたように、藍奈は霊夢たちに向けそう言った。
怒られるとでも思っているのだろうか。
真偽は定かではないが、話出せない2人のせいではあるのは確かである。
数秒か、数十秒からはたまた数分の沈黙。……そしてやがて霊夢は、意を決したように藍奈の顔を見つめ、それを差し出した。
「それは……押し花? いえ……栞、ですか?」
「……えぇ、そうよ」
霊夢は微かに視線を逸らしながら、されどはっきりとそう言った。
「……まさか、これを僕に?」
「……」
その言葉に、霊夢は小さく頷いた。
藍奈は少し躊躇うような動作の後、それを優しく受け取った。
「……! まさか、手作りで……?」
「よくわかるな、藍奈は」
ぽりぽりと頬をかきながら、恥ずかしそうに小さく魔理沙がそう言った。
「魔理沙と2人で作ってたのよ、それを」
「! お2人が帰るのが遅かったのって、まさか……?」
「あぁ。それ作ってて帰るのが遅くなっちまったんだ。ごめんな」
「……!! ……いいえ、謝らないでください」
藍奈はそれを受け取って、胸の前で、両手で、それを大事そうに収めながら言葉を紡ぐ。
「とっても嬉しいです。それにこれ、フリージア……。僕の好きなお花、よく分かりましたね?」
揶揄う気は一切なくても、言葉が出なくてそんな言い方になってしまう。そんな気持ちを知ってか知らずか、2人は藍奈の言葉に照れを隠しきれずにいた。
そして、同時に。
心底嬉しそうな表情で、潤んだ瞳で2人を見つめる彼のことを、2人は等しく、愛おしく感じた。
その理由を、彼女たちはまだ知らない。
「でもなんで、僕なんかにプレゼント」
「あんたなんかじゃない」
藍奈のその言葉を遮るように、霊夢が声を上げた。
「私は、私たちは、“あんたに”それを渡したくて頑張ってたのよ」
「そうだぜ。……だから、そんな言い方しないでくれよ」
「……そう、ですね。ごめんなさい、言葉を誤りました。でも、なんで本当にこれを僕に?」
「……普段のお礼よ」
「お礼……?」
「えぇ。いつも頑張ってくれてるから。プレゼントの1つや2つしないのもどうかって、そう思ったのよ」
「そうだぜ。いっつも藍奈にはお世話になってるしな」
「そんな、それだったら僕の方も……」
「まぁこれじゃアンタは納得しないわよね……」
そう言うと、霊夢は藍奈に耳打ちをした。
魔理沙にだけは聞こえないように、小さく、静かに。
すると藍奈は目を見開いて、再度、胸にそれを強く収めた。
「なぁなぁ、今何言ったんだ?」
「特になんてことないわよ」
「そんなことないだろ絶対!なぁ教えてくれよぉ」
「いややめんどくさい」
「ふふ……。……とっても……本当にとっても嬉しいです」
言葉が溢れて出てこない彼は、こんな形でしか感謝を伝えることができない自分を、微かに恥じながら、2人に確かな友愛を感じながら。
僅かに、目尻に涙を浮ばせながら。
満面の笑みで、こう言った。
「ありがとう、霊夢、魔理沙」
その想いで満たされ尽くした、ハジメテの言葉を。
どうも皆さんこんにちは!!東方救嬢期3周年がまだ現実味がないASADEです!
皆さん、この度は東方救嬢期3周年!本当にありがとうございます!!
こうやってやっていけたのも、皆様の存在のおかげです!
アクセス数とか見てモチベ上げてます私。
そんなことはさておき、もう本当に感謝の感情しかないです今。後申し訳なさと不安とか。
……あれ?結構あるな?
まぁまぁまぁそんなことはさておき、このまま胸の内を垂らし続けたら止まらないことがほぼ確実なのでこれだけ言います。
私ASADE基東方救嬢期、3年間も本当にありがとうございます!これからも頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします!
それではみなさん、まだ言いたいことは湯水のようにわけでますが今回はこの辺で。
改めて、ここまで東方救嬢期をご愛読いただきありがとうございました!そして、これからも東方救嬢期をよろしくお願い致します!!
それじゃあ今回はこの辺で(2度目)
それではみなさん、サラダバー!!
追記
言い忘れてましたが、魔理沙にだけは聞こえないようにしていた内容は“宝石のお礼”です。
因みにそれ言った時霊夢は懐にあの宝石を持っていました。




