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東方救嬢期 〜男の娘の幻想入り〜  作者: ASADE
第一章 幻想郷巡り。……にしたいです。(作者の願望)
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第28話 ラストワード

この世界は、綺麗事で溢れかえっている。

それを詭弁だと言って、突き放す人は少ながらずいるだろう。

でも僕は、そんな世界でもいいと思っていた。少ながらずこの目で、救われた人々を見てきたからだ。

だけど、目の前の彼女はそうじゃない。

……きっと彼女は、実際に綺麗事ではどうにもならない世界を見てきたのだろう。

それは、その世界は、どうしようもないほどに揺るぎない、確実すぎる事実であり、現実。それを曲げることは、どうしようともできないのであろう。

でも、だからこそ。僕は彼女を、そんな世界から救いたいと思った。

綺麗事は、僕もあまり好きじゃないけれど。

だけど、誰かを救う力は、きっとあるから。

———これで彼女を、救えるのなら。

 ??? 時は少し遡り、霊夢と別れたその直後




 Out the current, Side 藍奈


「……ふ!」


 一息で彼女との距離を縮めて、再度回し蹴りを放つ。

 だがその回し蹴りは空を切り、逆に下から与えられた衝撃により、バランスを崩してしまった。

 

「……く……!」

「ほらほら、どうしたんだ?」

 

 掴まれた足を向けた強引な足遣いで放させて、その勢いを活かして距離を取った。

 何秒間かズルズルと後ろに下がった後、停止する。

 僕らはあれからずっと体術戦を繰り広げており、五分五分の戦いとなっていた。

 息が絶え絶えしくなっていることを身に染みて感じながら今一度、僕と彼女は対峙した。


「おいおい、あんな粋なこと言っておいて、実力はそんなもんなのか?」

「……まぁ、人間の、最近来た余所者にしては、よくやっている方だと思うんですがね」

「……へぇ……」


 僕がそういうと、彼女は興味深そうな視線を僕に送り、顎をさすった。


「慧音から幻想入りした者がいるとは聞いたが、お前だったんだな。……ククク……あはははははは!」

「……何か、面白いことでもありましたか?」


 お腹を抱えて笑いこけているその姿を見て、なぜか自然と警戒が強まった。


「ははははは!……お前、本当面白いな……あはは。そんな大口を叩けるのもそうだが……何よりも、お前は強い」


 ……理解した。なぜ、自分がそういう風に感じているのかを。

 激しくなっているのだ。背中の両翼、その火力が。

 多分これは感情が昂っているサインだ。いつ何か大きな攻撃がきても、おかしいことではないだろう。


「あなたの言う強さの定義が何かはわかりませんが……僕は、“弱い”ですよ」

「謙遜なんかしなくて良い。私と対等に戦えてる時点でお察しだからな」


 そう言った彼女は、静かに地を蹴った。

 体が、中空のある一点で静止する。


「だから……私は次の攻撃で、お前を“殺す”」


 悪寒が全身を駆け巡る。思わず後退をしてしまうほどのそれに、一層冷や汗が溢れた。

 そして同時に、目尻には涙がたまる。それをグッと堪えて、煽り混じりにこう言った。


「殺しは……弾幕ごっこのルールだと、御法度だったのでは? ……それに、日本語もなってない」

「ッハ! ……そんなこと、今更だろう?」

「……ですね」

 え?(by作者)


 そして、沈黙が訪れる。

 月明かりは更地になりかけていたこの場を薄く照らし続け、この世界に、僕ら2人しかいないと言う幻覚をミせてくる。

 弾けるような音と焦げ臭いにおいに包まれながら、僕は……今一度ここに、『宣言』をする。


「……僕は!」


 彼女の体がピクリと反応を示し、こちらに、ガッチリと視線を合わせてきた。

 すると彼女は、“目を見張った”。

 

「僕は……この戦いに勝って。僕が!()()を、“殺して”みせる!!」

「アハハハハハハハ!!!!お前は、お前はお前はお前はァ!!ほんっっとうに面白いなぁ!!藍奈ァ!!!」


 顕とされた妖力と霊力が、目に見えるほどに激しくぶつかり合い、相殺し合う。

 僕らは同時にスペルカードを取り出し掲げ、叫び合う。

 ……互いが互いを、殺すために。この戦い、僕にとっての、最初で最後のスペルカードを。


「スペルカード発動!!!」「スペルカード!!!」


 高らかに響くその声は、空気を振動させ、天空を穿つ。

 その時僕は、“彼女”の後ろに“幻影”を見た。

 瞬間、全身に力が迸る。何かを掴めと、“貫け”と。体と心が、叫び始めた。

 意味なんて、分からなくていい。どうせわかったところで、また辛くなるだけなのだから。

 今一度大きく息を吸い込んで、その言葉を……スペルカードを。宣言する。


「『パゼストバイフェニックス』!!!」

琰譌(えんかい)『契られたタガイの真』!!!」


 その刹那、どこからともなく出てきた鳥……否、使い魔に、僕は背後を取られた。同時、僕の体は鉛のように重くなる。

 僕は反射的に身を翻し、拳を突き出した。

 ……だが使い魔は僕の拳を透かし、何事もなかったかのように僕を透け、僕の背後へと移動した。

 嫌な予感が膨らんでいく。何か……まずい気がする。

 そう感じて、咄嗟に体勢を低くする。するとコンマ数秒も立たぬ間に、頭上に弾幕が飛影した。

 続けるようにして降り注ぐそれらを、僕は地面へと降り立ち、バク転によってギリギリで回避するとそのままの腕の勢いを利用し、もう一度中空へと上がった。

 そして、僕はそれを認識をする前に直感でその場から離れ、スピードを保ったまま奴の周りを旋回するようにしての移動を開始した。地面にいた時よりも早く、鋭利な弾幕が僕に襲いかかってきていた。


 (……危なかった)


 冷や汗を握りしめながら、そんなことを思った。そしてそんなことを気にしている場合ではないと自分に言い聞かせ、喝を入れた。

 言うなれば全部運なのだ。安心材料としては、程遠すぎる。

 時折牽制として弾幕を放ったりするが、やはりこの程度の攻撃、なんともないようだった。加えて少しトリッキーにも見えるような動きをしても、使い魔は当たり前のように僕の背後についてきていた。

 弾幕が、勢いを増していく。それにつれて、奴と使い魔の動きが早くなってきているように思えた。


「……ワタシは……」


 その瞬間、何かが明確に、確実に変わる。そして微かに、声が聞こえた。冷淡で、冷酷。先ほどまで楽しそうにしていた人と同一人物とは思えないほどの変わりように、思わず思考をそちらに向けてしまいそうになる。

 だがそれに気を向けることなど、今の僕にはできる気がしない。

 まとわりついてくるこの使い魔が、本当に厄介なのだ。なぜか僕の動きを鈍くしてもくる。はっきり言ってこの子のせいで、僕の勝機は、限りなく0に近くなってしまっている。

 ……だけど、多分。この戦いの決着は、“あともう少し”で、着くはずだ。


「……ワタシは……!!」


 今度ははっきりと、その声が聞こえてきた。

 何かの感情に震え揺らされた、その悲しすぎる声が。やはり先ほどとは、一線を画すものであった。

 次の瞬間、弾幕がぴたりと止み、後ろにいた使い魔も同時に消失した。

 ……だけど、奴と共に燃え盛る憎しみの炎は、更に火力を増し、“竹林”を焼き尽くしていた。思わずたじろぎ、後退する。

 まさか……制御が……!?


「お前らみたいなクズどもに……負けちゃあ……! いられないんだよぉぉぉお!!!」


 そう叫んだ奴の瞳の中に映る景色。その全ては、底なしに色褪せていた。

 そんなことを思った次の瞬間、まるで“祭壇”を形成するかの如く、火柱が彼女を軸として乱立された。

 気がつけば辺りは火柱だけが残り、焦げ臭い匂いが、更に中空を彷徨う。見晴らしの良くなったここに想いを馳せ、心が少し乱された。

 目前に目を向けるとそこには、炎の階段。その終わりには玉座と言っていいほど豪華に形作られた炎の……神棚?のようなものがあった。

 だが、そこに奴の姿はない。奴は、それの更に上空で、僕を見下ろしていた。手には、何かが握られている。

 その手に握られたいるのは当然……スペルカード。

 だが、それは先ほどまでとは一線を画すと思った。そんな気配を、今の段階からすでに感じさせているのだ。直感などではない。これはもう……予知といってもいいかもしれない。

 避け切れる保証は、完全に無くなったと言っても過言ではないだろう。……まぁ、もともとそんなものは微塵たりともなかったのだが。

 更に確率が低くなった、という感じだ。

 そんなことを思いながら僕は、“1つの希望”を胸に、奴の動向を見守った。

 奴は今一度、ゆっくりと。こちらに、言葉をかけてきた。


「ワタシは……お前たちを許すことはない。……絶対に」

「許さないって……何をなんですか……!」


 やっとの思いで絞り出したその言葉は、奴を激昂させるには、十分すぎるものだったらしい。


「何を……何をだと……? ……お前たちは、本当一度死なないとダメみたいだな……」


 目尻に涙を溜めて、奴は憎悪に(まみ)れた声色でそういった。

 掠れた声が、あたりに響く。

 

「“こんな存在”にしておいて、よくそんな口が聞けるなぁ……よく、そんな口が……なんで、そんな言葉が……当たり前みたいに出てくるんだよ!!!」



 ……僕は、勘違いをしていた。奴……いや彼女は、何者かに操られているのだと、そう思っていた。

 そう、思い込んでいたのだ。

 ……だけど実際は、そんなモノじゃなかった。

 そんな、“薄汚れた”モノじゃない。……彼女は、“自分自身”に振り回されているのだ。

 記憶が重なり、ノイズが走る。……()()が、鮮明に。そして、“烈絶”に。頭の中を、蹂躙した。



「あなたのその行動はいずれ、あなた自身を壊します」


 確信を胸に、言葉を紡ぐ。自分の荒れた声に、少しだけ怒りを覚えた。


「……‼︎ ……何を、知った口で……! 何を知った口でワタシにもの言ってんだよ!!! お前たちのせいなのに……お前たちのせいなのに!!なんで!!!」


 “カノジョ”を見据えて、沈黙を貫く。


「おマエたちがアんなモノを作ったからワタシは今……こんなことになったんだろ!!!!何が“長寿の薬”だ、何が“実験”だ!!!!! ……オマえたちは、何もかも全ブ知ってて……何もかも全部わかってて!! こんな“呪い”を……わたしにカけたんだろ?」

「……僕には、あなたの気持ちはわかりません」


 ありきたりな言葉が、口から出る。


「僕には、あなたのことがわかりません。お前達という人々のこともわかりません」


 ありきたりな言葉しか、口から出てくれない。


「僕には、自分のことすらわかりきれていません」


 ただ、こんなことで救えるのなら。


「ただ僕には、それをして、あなたが幸せになる道が見えないんです」


 それで、いいと思った。

 腕をだらりと垂らした彼女は、俯き、今にでも壊れてしまいそうだった。


「……もう、い———」


「だけど」


 だけど。


「僕は」


 “私”は


「あなたをただ、タスけたいと思った。あなたの……いや、“あなたたち”の辛さも穢れも、憎しみも。全部一緒に、背負いたいと」


 それができないことを、僕はずっと、知っていたはずなのに。

 自分自身に、反吐が出た。


「だからこそ僕には、たった1つ。あなたに送れる言葉があると思っています」


 息を吸い込み、目一杯の力を込めて。僕の言葉で、“カノジョの真念”を……願いを。

 彼女は震え、言葉を搾り出すようにして、それを紡ぐ。

 それの真意がなんなのか、僕にはやはり、わからない。


「だマレ……」


 だけど……否、だからこそ。

 ここに、宣言する。


「それは、呪いじゃない」

「……ァァ……ァァァァアアアア!!!!!」

「あなたのそれは……“結晶”だっ!!」

「ダまレェェェエエエエエエ!!!!!!!」


 僕の言葉を遮るように、その咆哮は轟いた。

 瞬間、彼女の頭上から眩い光が放たれる。直視できないほどの、言わば、眩耀(げんよう)。それが、この空間を覆い隠した。

 数秒間それが続き、収まったところで目を開く。

 ……同時。僕は、瞠目した。

 理由は明白。……それは、カノジョの頭上に、“フェニックス”の幻影が現れていたからだ。

 そう思うのも束の間、それは大きく翼を広げ高らかなる声を上げた。

 辺りが振動し、炎すらも風に煽られ消えていく。そんな幻すらも見せる、そんな力が当然のように備わっていた。


「これは……!?」


 唯一搾り出した言葉すらも当たり前のように、全くの意味をなさないものだった。

 そう考えた、その刹那。その眩耀は一気に上空へと上昇する。


「来い……不死鳥(フェニックス)!!!」

 

 その叫びに呼応するようにして、それは急降下を始めた。

 到着点は……カノジョの脳天。

 それは早すぎるスピードでカノジョに近づいて、僕は思わず手を伸ばして———

 瞬間、ものすごい衝撃波とともに、僕は再生し始めていた竹林に押し付けられた。

 何十本もの竹々を折り、ようやく止まることができた。

 全身を走る痛みに耐えながら、あの方向へ目を向ける。

 ……そこに、カノジョはいなかった。

 

「な……」

「……ラストワード」


 そこにいたのは———


「『フェニックス……再誕』」


 ———正真正銘の、不死の象徴(フェニックス)であった。


前書きのデータが3回くらい消えて完全に萎えてましたすみません。やべぇ……改めて見ても前書きやべぇ……

頑張って頑張ったのに消えまくるとか酷くなあですかぁ!?!?!?!?全然慣れてないんですよああいうの!!!

……はい、全部私のせいですすみません。

ちなみに投稿が遅くなった原因の一つがこれです。……さーせんした(土下座)

気に食わなくなったらワンチャン変えますあれ。ご了承ください。

あ、3回目消えた時ガチで泣きそうになったっていうのは内緒ね?

それでは皆さんさようなら(無気力)

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