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東方救嬢期 〜男の娘の幻想入り〜  作者: ASADE
第一章 幻想郷巡り。……にしたいです。(作者の願望)
27/50

第23話 突飛なる“偽善”という“雑念” 後編

どうも皆さんこんにちは!気分で12時間くらい早く投稿したASADEです!

初めてですね、こんな時間に投稿したの。それが何だって話なんですけど。

あ、それと1つ報告があるので後書きの方に書いときますね。見てくださいね!

そんなところで、よければ楽しんでいってください♪

 外に出ると、案の定というか、すごい勢いで話しを振られた。お礼をしたいと、そう言われた。

 なんだなんだと、人々が集まってきているのが、今話しかけてきている人の隙間から少し伺えた。

 早く解散させなければならないとそうは思うのだが、いかんせんやり方がわからない。

 このままでは恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだと、そう思ったそのとき。なんの脈絡もなく、小兎姫ちゃんさんの言葉を思い出した。

 そして、改めて好都合だと思った。人がいるのならば、後は、自分が行動を起こすだけなのだから。あんな言葉も、かけられたわけだし。

 ……だから僕は、小さく語り始めた。

 唐突だと思われたことだろうと、そんなことを考えながら。


「……みなさんは、下手人……いえ、罪を犯した人を、どう思いますか?」


 見渡す限りの人が、ほぼ同様の……少し驚いたような顔をした。少しだけ、後ずさった人もいた。

 それから、数秒の静寂。その後、先ほどお礼をしたいと言ってきていた、1人の男性がポツリ声を上げた。


「……俺は、そうゆう奴らは、裁かれて当然、だと思っています」


 辿々しいその言葉は、確かに本心だと感じさせるような、そんな気迫があった。

 その声を皮切りにして、どんどんと民衆の意見が交錯していく。

 消えた方がいいという人もいれば、ただただ怖いと、そう言う人もいた。

 時間が経つにつれて、どんどんとことは大きくなっていき、最早騒ぎと言っても差し支えないレベルまでいったところで、僕は手に魔力をほんのりと纏わせながら、あたりに自身の魔力を薄く充満させ、手を鳴らした。

 すると、その音は魔力と魔力を通じ、衰えることなく、この場に長く響いた。魔力が波状に振動してることから、多分遠くの人にもこの音は届いているだろうと、そんな希望的観測をした。

 瞬間、一斉に視線が僕へと集まり、少しだけたじろいでしまった。だが、咄嗟に思いついたこの方法で届いていた安心感の方が勝り、すぐに立て直せた。

 息を吐いてから、先ほどより大きな声で、また言葉を並べ始める。


「概ねの人は、マイナスなことを思ってるでしょう。実際僕も、そういう考えが頭にあります」


 何が言いたいのかと、人々の視線が、僕を問いただすように鋭く、そして残酷に刺さってくる。

 控えめに言って倒れそうだった。緊張しすぎて。

 ……でも、それはダメだ。

 なぜなら僕は、人として、まだ生きることができる人にまで、一度罪を犯したからといって死んで欲しいなんて、そんなことは思えないから。

 だから僕は拳をつくり、それを固めて、言葉の続きを、叫ぶように語る。


「でも、僕は初めてそういう人たちと出会ったとき、その時に、少しだけ考え方が変わりました」

「……それじゃあ、何? ……私達を助けてくれたことを、後悔してるって、こと……? ……そういうことが、言いたいの?」


 ポツリと、そんな女性の声が聞こえた。

 それが聞こえた方向へ、視線を向ける。するとそこには、当然のように僕が助けた人がいて、手を胸の前にやりながら、口元を少しだけ震わせていた。

 僕はその問いに、その女性としっかりと目を合わせてから、小さく首を振った。


「そんなこと思ってるはずないじゃないですか。僕は、心の底から、あなたを助けることができて、本当に良かったと思っていますよ」


 無意識に、宥めるような声になってしまう。だがまぁ、問題はないだろう。

 だってこれは、僕の本心だから。

 最後の問いには、あえて答えなかった。

 そしてまた、いっぱいに息を吸ってから、続ける。


「僕はその時まで、結果しか見ていませんでした。犯罪を犯したという、上辺……いや、一方の真実だけを」


 先程まで騒然としていたこの場所が、今やシンと静まり返り、僕の声しか響かなくなっていた。

 緊張がまた加速する。隠すのが困難となり、少しだけ足と手が震えた。

 ……だけど、ここで終わってはダメだから。だから、僕は震える体に鞭打って、言葉を並べ続ける。


「でも、気づいたんです。その人たちは、最初から悪者じゃなかっと、その揺るぎない、あたりまえの事実に。僕たちと同じように……同じに、生きていた人だということに。」


 ハッとしたような人もいれば、微妙な顔をした人も、当然だろうというような顔をした人もいた。


「だから、その人たちは、やり直せるんです。息を吹き返せるんです。たとえ全ての人が、もう人間として生き返れなかったとしても、やり直せる人はいるです。犯罪者から、完全に足を洗える人は、少なかろうとも、必ずいるんです。……だから、その人達に、時間を与えてはもらえませんか? 寄り添い合うための、勇気を持ちませんか?」

「……そんなわけないだろ!!」


 誰かが叫んだ。ゆっくりと、声がした方へ視線を向ける。

 その男性は、涙を流していた。


「やり直せる? 俺たちと同じ? ……ふざけたことを……ふざけたことを、抜かしてんじゃねぇぞ!!」


 涙が、静かに地面へと落下しているのが、よく見えた。


「……そ、そうだ! 俺たちは、そんな奴らと一緒なんかじゃねぇ!」

「そ、そうよ! 犯罪者は、犯罪者以外の何者でもないわ!」

「そうだ! あんな奴らと、俺たちを一緒にするな!」


 怒号が飛び交う。さっきまでの静寂は何処へやら、今やここは、デモでも起きたのかと思ってしまうほど、騒がしくなっていた。


「ならばあなた方は、生まれ育った場所が例えどこだとしても、そういうことが言えるのですか?」

「もちろんだ!」


 誰かが叫ぶ、それに釣られるようにして、また一段と声が上がる。


「なら、こうしましょうか。あなたは廃れ、大人が誰1人として助けてくれないような場所で育ちました」


 そう言った瞬間、肩を振るわせるのが見えた。

 数は、あまりわからなかった。


「そこでの生活は順風満帆、なんて程遠いけれど、多くの仲間と呼べる人々と触れられて、不幸を紛らわせることができるほどの生活を送れていました。……ですがある日、突如としてその場所が破壊され、そこにいた仲間達は皆同様に、何者かの手によって、自分以外皆殺しにされてしまいました。……はい、そこで質問です」


 ピッと、真上に指を立てて、告げた。


「あなたなら、どこまで堕ちますか?」


 と。その、小さな問いを。

 それには、誰も答えなかった。答えることが、できなかったのだろう。先ほど声を上げた人すら、押し黙っている。

 鳴っていたのは、冷たく鋭い風だけだった。


「これは先ほど述べた“真実”に対しての、ほんの一例に過ぎません。この話でもし、犯罪を犯すことになったとしたら、犯罪者になったのだとしたら。他の人々は、十中八九その“真実”を見ようとせず、“結果という名の“真実”だけを見ることでしょう。……ただ」

『『……』』

「僕がそうなった時。その時は、多分“落ちるところまで堕ちて”しまうから。だから、だから僕は、そういう人達を救いたい。そういう人達の、真実を見たい。境遇によってできた仮面だけでその人を判断して、中身を見ずに切り捨てるなんてこと、したくないから。もしもそんな物語(ストーリー)があって、そんな結末となっているのだとしたのなら。……あまりにも、残酷ではありませんか?」

「……俺の家族は、犯罪者の手によって殺された」


 誰かが、そんな呟きを吐いた。

 続け様に、掠れた声で、言葉が響く。


「……そんな奴らすらも、俺たちと……俺と、同じだっていうのか? 境遇なんて、そんなものの違いで? ……恨まれて、死んで当然の、人間ってことか?」

「……」


 それは、1番最初に声を上げた人のものだった。

 まるで縋るような視線を、僕に送ってきていた。胸が締め付けられるなんて、そんな生優しいものじゃない。……握りつぶされているような、それほどの痛みを、僕の心は感じていた。

 ……だけど、告げなければ。……一縷に、救う。その為に。


「……はい、同じです。その人は、あなたと全く状況が違うだけの、同類……人間です」


 そう告げた瞬間、その人は、膝から崩れ落ちた。ポロポロと、地面に何かが落ちているのが見えた。

 周りの人々はゾロゾロのその近くから離れていき、遂には、周りには誰1人としていなくなっていた。

 僕は地を蹴って、人々の頭上を飛躍し、その人の目の前までやってきた。

 そして、僕は彼を、自身の胸の中に収めた。


「……え?」


 そんな素っ頓狂な声が聞こえた。


「辛かったですね。……なんて、そんな薄っぺらい言葉は言いません。……いや、言えません。だって、僕はあなたのことも、あなたの家族のことも何も解っていませんから。……でも、その“傷ついた心”はわかります。だから、だからこそ僕は、あなたの為に、あなたの家族の為に、この言葉を送ります」


 彼を少しだけ起こして、目を見据える。その目は、迷いに歪んでいた。

 スッと、息を吸った。まるで時が止まってしまったかの如く何も聞こえてこなかったこの場所で、唯一、その音だけが響いた。


「進みましょう」

「……っ」

「多分あなたは、家族を守るという責任感に、守れなかった罪悪感に苛まれてしまっているのでしょう。でも……いいえ、だからこそ。前に進まなきゃ行けないんです。あなたの家族は、あなたがそうしなければ。前に進まないあなたを、守れなかったあなたを、本当の意味で恨んでしまうかもしれないから」


 彼の体は、震えていた。


「でもそれは、1人では難しいことなんです。だからこそ人々は傷を舐め合い、癒しあい……そして、寄り添い合う。それが良いことなのか、それとも悪いことなのかは僕にはわかりません。……ただ僕は、こう思うんです」


 できるだけ優しく彼の頭を撫でながら、小さく、言葉を紡ぐ。

 そう言った時、彼の口から、嗚咽が漏れた。

 僕はそれを、聞かなかったことにした。


「それで前に進む、ほんの小さな、一握りもないような勇気がもらえるのだとしたら。それは、良いことなんじゃないかと」


 ……これは、魅黒藍奈の……いや、“何も救えなかった偽善者”であり、“罪人”である“私”の、反吐が出るような、自分を正当化させるための自分勝手な主張だ。

 ただその主張が、自分の中の本心というだけ。

 ……だけど、もしも。この言葉で、“私”自身の言葉で、救われる人が少しでもいるのだとしたら。……少しは、“贖い(あがない)”になるのかな。

 彼から手を離して、静かに立ち上がる。地を蹴り、霊力を体に纏わせて、中空に浮いた。先ほどまでよりも、視線が集まっている気がしたが、多分気のせいだろうと、そんなことを考えた。

 大きく息を吸う。叫ぶように、言葉を吐く。

 ……ここの人々に、少しだけでも良いから、僕の言葉が届くようにと。そう願いながら。


「だから、誰彼構わず寄り添い合うんです。やってしまったことは、消えない。だから、チャンスを与えるんです。……それは、自分自身を救う為にも、なるかもしれないから。だから、ほんの少しだけの時間を与えて、ほんの少しだけの、勇気を持ちましょう。皆の、誰かの、自分の……未来の為に」


 そう、締め括った。

 額に浮かんだ一粒の汗を小さく指で掬いながら、ゆっくりと下降して、静かに地面に足をつけた。

 息が上がり、肩が上下する。

 時間にすれば短いものだったのだろうが、僕自身は、途方もなく長く感じていた。

 心を刻むような静寂だけが辺りを支配し、だんだんと、視線が下がっていった。

 ……やっぱり、ダメだった。

 言葉足らずなのが行けなかったからかもしれないし、話の順序がおかしくて、何を言っているのかわからなかったからかもしれない。

 だけど、最終的に、これだけはわかった。……結局、どんな言葉を並べようと、“罪人”である自分の言葉など、誰にも届きやしないのだ。

 そんな奴が、“偽善”を語ったのならば。尚のこと。

 そう思いながら、いつの間にか目に溜まっていた涙を、静かに拭った。


 ———瞬間。


 たった1つの、拍手が起きた。

 思わず顔を上げて、そちらへと視線を向けた。

 人混みの間を縫って見えたその場所には、慧音さんがいた。微笑みを浮かべながら、こちらを見据えていた。

 僕の視線に気づいたのか、慧音さんは口に両手を添えた。


「藍奈のおかげで新しいことに気づけた! ありがとう!」


 そう言って、大きな笑顔を作った。

 何かが、頬を伝った。朝なんかじゃない、何かが。だけどそんなことが気にならないほど、救われたと、そんな気持ちが頭と心を支配した。


「良い演説だったぞー!」


 お団子屋さんのおじさんが、そう言った。


「お疲れ様ー!」


 お洋服屋さんのお姉さんが、そう言った。

 それらを皮切りに、どんどんと労りの言葉が投げられる。拍手も、増えていった。

 動けなくなった僕の体が、次々と流れる涙を隠すことを拒絶してくる。

 その時、先ほどの男性が立ち上がり、歩み寄ってきた。

 手を、差し伸べてくれた。


「……あんたの演説、良かったぜ。……俺は、お前の意見に賛成だ」


 涙で目元が赤くなり、鼻水で乱れた顔で、ニカっと、そう笑った。

 僕はその顔を見て、本当の意味で、心が伝わったのだと。そう感じた。

 彼の手を取り、ゆっくりと力を込める。


「あんたのおかげで気づけたよ。俺のこの考えも、気持ちも、全て間違っていたんだって」

「……間違ってなんか、いませんよ」


 今尚流れ続けている涙を心地よく感じながら、そう言った。

 彼は驚いたように、目を見張らせる。


「家族を失うことは、とても辛いことです。それはもう言葉に表せないくらい。……でもそれ以上に、あなたは家族想いだったから、家族を想いあまり周りが見えづらくなって、そんな勘違いを……あなたの想いに、綻びを生んでしまっただけなんです。そんな綻びができれば、直してしまえばいいだけ。だから、そんなあなたを、家族想いなあなたの本当の想いを、本心を。大切に、生きてください。あなた自身の想いを胸に、あなた自身を」


 言葉足らずかもしれなかった。

 本題とズレているかもしれなかった。

 言葉が間違っていたかもしれなかった。

 伝わっていない可能性だってあった。

 ただ1つ、言えることがあるとすれば……それを、僕が知ることはないだろう。


「あぁ……そうか……そうかぁ……!」


 彼は、そんな呟きをして、また涙を流し始めた。


「……俺のこの気持ちは、完全な間違じゃなかったんだなぁ……! 家族を想い続けて、そうやって進んでも、良いんだなぁ……!」

「そうです。あなたの歩みは、間違ってませんから。間違っているはずが、ないですから。後は、その綻びを直すだけです。……でも、もしも、その綻びを直してくれる人がいないのならば。僕と一緒に、直していきましょう。」

「あぁ……!あぁ……!! ありがとう、“思い出させてくれて”……! ……本当に、ありがとう……!!」


 彼は静かにそう言って、僕の手を両手で握り、両膝をつき、小さく体を丸めた。

 ……僕に、彼の先ほどの言葉を問う権利はないだろうと、そんなことを思いながら。

 今尚やまぬ、拍手と歓声の中。

 僕たちは、泣き笑い合ったのだった。




 そして、その時、その瞬間。僕の心と、“存在”に。また、1つの“大罪”が刻まれた。

 上辺であり、空気を薙ぐように手応えがなく、意味のない“空虚の希望”を語ったという、繰り返された……否、“繰り返してしまった”、大罪が。

 ……僕自身を蝕むように食い込んだお面は、戒めるようにして。更にその表情を、(えが)き足されていった。

 綺麗事を並べるだけ並べて……何様のつもりなんですかね?

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