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東方救嬢期 〜男の娘の幻想入り〜  作者: ASADE
第一章 幻想郷巡り。……にしたいです。(作者の願望)
22/50

第19話 彼女が『彼女』で在る理由 後編

どうも皆さんこんにちは!新年一発目のASADEです!

ということで明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!

約2週間空きましたね!私にしては短い方ですね!

……はい、もう少し頻度上げられるように頑張ります

みなさん唐突ですが、コロナとインフルエンザってどう思いますか?

私は無くなったほうがいいと思います! ……同時にかかると、あんなにきついものなんですね……コロナにかかった人を、インフルエンザにかかった人を、私は心から応援しています!

言いたかっただけですはい。

それじゃあ前書きはこの辺で。

よかったら楽しんでいって下さい♪

 何かをしようとする自分自身を粛正させるかのように、両手を首に当てがいながら体を震わせ、勢いよくその2つの手に力を込め始めた。手には青筋が浮かび出ており、どの程度本気なのかが、一目でわかるほどだった。

 僕は彼女が先ほどまで座っていた椅子から転げ落ち、こちらからは見えなくなってしまったところで、ほぼほぼ条件反射で、扉を乱暴に開け放ち、部屋へ入ると迷いなく彼女の近くまで駆け寄り、抱き起こした。

 だけど、そんなことをしても尚、彼女はこちらに気がついていないかのように、必死の形相で自身の首を絞め続けている。

 いくら声をかけても、反応は返ってこなかった。

 いくらなんでも、これは可笑しすぎる。

 そうは考えたが、特に何もできるわけでもないため、自身のポケットからアキメネスという花の柄がついたハンカチを取り出し、彼女の額から流れたであろう汗を拭った。

 自身の無力さが悔しかったのは、言うまでもない。

 その時やっと、彼女と目があった。

 だけど瞬間、生物としての危機を感じた。

 ……その理由は、単純明快。

 彼女が僕に対して送る視線が、獲物を見据えた肉食動物のように、獰猛(どうもう)に、鋭く変化していたからだ。

 次の瞬間、彼女の両手の爪が、鋭く、そして長く伸びていき、気がついた時にはもう、それは横薙ぎに振るわれた。

 静かに風を切りながら目前に迫るそれを、バックステップでは避けきれないと判断したと同時にバク転をすることでスレスレのところで躱し、彼女との距離を離しながら、滑るようにして着地した。

 完全に止まったと同時、その時に下がってしまった視線を、胸から沸々と湧き上がる感情(本音)を無理矢理に抑え込みながら、顔を上げて彼女を捉えた。

 ……そこにはもう、先ほどまでの彼女はいなかった。

 今の彼女はもう、紅魔館(ここ)主人(あるじ)であり、最愛(フランドール)()(スカーレット)の姉として、ここにいるのではない。

 ……1人の吸血鬼として、明確な敵意を持ちながら、今ここで、僕と対峙しているのだ。

 だから、僕も命をかける思いでやらなければ、“彼女を救えない”。


 ……そんな独り善がりな考えは、すぐに間違いだと気付かされることになる。


 そんな考えに至った刹那、彼女がその場で蹲り、小さく唸り出した。

 どうしたのだろうか。直ぐに支えに行きたいという思いを押し殺しながらも、警戒を怠らず、その場で彼女を見据えた。


「……ッ! ……は、やく……!逃げ、なさい!藍奈!! ……っぐぅ……!」


 そんな彼女の言葉が、どこからか入ってきた微風と共に微かにだが確かに僕の耳に届いた。その声は、とても苦しそうだった。

 そして気づいた。彼女の瞳が、表情が。まるで競り合うようにコロコロと変わり続けていることに。

 なんでもっと早くに気が付かなかったのだろうか。少し前までの自分を殴り飛ばしたい、そんな念に駆られる。———これは、償いだ。何故か、なんの突拍子も関連性もなく、そう思った。

 だから僕は、その言葉を無視して、彼女と真正面から対峙をする。

 ……薄っぺらくて、小さくて自分勝手な覚悟を。独り、胸に宿しながら。


「聞こえ……なかった……!?早、く……! ……逃げ、なさい……!!そう……いって、る、の……!じゃ、ないと……!」

「! ……あなたは、朝食のとき言っていましたよね?」


 朝の食堂での会話を思い出す。

 彼女は確かに言っていた。ここに住み、働くものは、皆同じだと。……紅魔館の、住人だと。

 それに……僕は今この瞬間、“確信”を持てたから。そして、解ったから。今さっき自分ですら理解ができなかった、あの思いの理由も。


「ならばこれは、僕が、あなた達と同じ屋根の下で働く、仲間。その1人となるための儀式だと、そう考えれば良いのではないですかね?」


 そんな自分でも訳のわからないことを言いながら、流れるような動作でいつも愛用しているナイフを懐から取り出し自信の首に当てがうと、かすり傷程度の、だけどしっかりと血が流れる程度の切り傷をつけた。


「ァ……あァア……」


 ……良かった、力加減間違えなくて。一歩間違えたら取り返しがつかなくなるからね。

 そんな下らないとも思える思考を巡らしてから、小さく息をついた。

 そして、一歩、一歩と彼女へと近づいていく。すると彼女は後ずさるように、蹲った体勢のまま僕との距離を離そうとする。

 ……だけど、もちろん僕の方が数段早くて、彼女の抵抗も虚しく、直ぐに目前へと辿り着いた。

 そして、僕は彼女と同じ目線になるまで姿勢を低くして———彼女を、腕の中へと収めた。


「! ……や、ァァァ……」


 彼女は涙を流しながら、必死にもがいて、僕の腕から逃れ、離れようとする。

 その行動に、僕は彼女に心の底からの尊敬を向けながら、先ほどよりも腕に力を込めて、彼女の耳元で、できるだけ優しく、囁くようにこう言った。


「……あなたは、よく頑張りました」


 今更ながらに申し訳なく思ってはいるものの、ここで引き返すはずもなく。

 僕に向けられている、獲物を捉えるその視線を横目に、彼女の頭に手を置いて、そっと、自身の肩に彼女の唇をつけた。

 瞬間、プスリと何かが刺さるような感覚と共に、鋭い痛みが全身を駆けた。


「だから、もう我慢しなくていいんですよ。……少なくとも、今だけは。……僕の、前だけは。」


 彼女の頭をできるだけ優しく撫で続けながら、痛みに悶えるわけもなく、静かにそんな言葉を並べる。

 ……え?

 ……ハハ……もう“全身に巡らせていた血液”が少なくなってきたんだ……

 これは僕の体の血液自体が少ないのかレミリアさんの吸い取る勢いが強すぎるのか……。

 後者でお願いします(懇願)

 まぁ僕は貧血になりづらいので多分大丈夫でしょう(適当)

 ……そろそろ、流石にキツくなってきたなぁ……

 え?フラグ(?)回収早すぎ?それと意味がわからない?

 ……

 ちょっと何言ってるかわからないですね。

 彼女の姿をしっかりと捉えつつ、僕は霊力が扱えるようになってから溜め続けていた血液を、少しずつ全身に巡らせていく。

 一応でやってたけど、本当にやってて良かったと思いました。一応にしてはやってることぶっ飛んでる気がするけどね。

 因みに血は腐ってません。血流をほんの少しだけ止め続けてはいたけど、霊力で包んでたら腐らなくなりましたし。それに体の中だしね。身体の中に故意的に血栓を作るイメージですね。小分けにして包むと血栓の症状も何もでませんよよ!体に害なし! ちなみに理論はガチで不明。

 ……怖いなぁ(他人事)

 

 そんなどうでもいいことを考えてから、数十秒が経過したとき、途端に何かを引き抜かれているような感覚がなくなり、それと同時に彼女は突き立てていた歯がゆっくりと引き抜かれ、何かがダラリと肌を沿う感触がした。 

 ……もう、覚悟はできてる。そう自分に言い聞かせるように、小さく心の中で呟いた。

 瞬間、頬に走る鈍い痛みと、同時に響く破裂音。

 彼女の顔へと視線をやる。……そこには、憤怒の色が隠さず現れていた。

 気づいた時には胸ぐらを掴まれ、怒鳴られていた。


「なぜ……なぜ放さなかった!魅黒藍奈!!」


 その時の彼女は、際限なく涙を溢れさせていた。

 僕の眼を力強く射抜くその瞳には、底の見えない後悔と、取り止めのない怒りで溢れ、表れているのが一目でわかる。


「先程、理由は言いましたよね。僕が今の出来事を、ここの仲間となるための儀式だと。そう捉えたからです」

「そんなの、理由になってない!」


 淡々とした口調で述べる僕に対して、彼女はますます激昂する。


「あなたには、私がお父様の話をした理由が伝わっていなかったみたいね……!」

「いいえ、理解していますよ」

「なら、なんで……! ……まさか、あなたが元からそういう人間だったからとでもいうつもりなの!? ……私は……もう、自分が原因で、友人を、大切な人を……失いたく、ないのよ……。……紅魔館の主人でいなければ、強い自分であらなければ……そうでなければ、いけないのよ……! ……そうじゃないと……私は———また、失ってしまうから……」


 胸ぐらを掴んでいる彼女の手の力が、言葉に籠っていた力が、激しく上下しているのがわかった。

 そして、その言葉を受けて、僕は耐え切れなくなってしまって。……耐えなければならないことはわかっていた。“秘密”を隠すためには、嫌われる程度の犠牲は、払わなければならない。そう、深く理解をしているはずだった。

 ……だけど、僕は弱い。弱かったから、その言葉を……真実を、口にしてしまったのだった。


「……あなたが、『ヴラド・ツェペシュ』の娘さんだと。そうわかったからですよ」


 ……息を呑む、声がした。


「……なんで……なんであなたが、それを……!?」


 瞠目をし、僕の胸ぐらを掴んでいた手を力なく離した彼女は、ポツリと独り言のように呟くと、静かに後ずさっていく。

 ……はぁ、なんで本当のこと言っちゃうかなぁ……まぁ最初に言ったことも完全に嘘ではなかったけど、それにしてもだよ……もう少し隠しておくつもりだったのに……少なくとも、次会うときまでは隠そうと思ってたんだけど……僕の心の弱さがものすんごく出ちゃってるなぁ……本当……はぁ……本当にもうもうだよ(?)……本当に。

 しかも、言い訳っぽくなってるし……本当に最低……

 というかなんか自分のさっきの言い方に凄い腹立ってきた後で自分の顔面殴ったろ。

 もういいや、思い切って今思ってること吐いちゃろ。


「最初に会ったときは、欠片もそうとは思ってませんでしたよ。だって、あの方と雰囲気がまるで別物でしたからね。まぁ多少は性別の関係もあるとは思いますけど……それを差し引いたとしても、です。……でも、先程やっと思い出したんです」


 ゆっくりとした足取りで、彼女との距離を縮める。


「……あなたはヴラド・ツェペシュの妻であり、今のあなたの姓を持っていた彼女に……『クレセント・アリア・スカーレット』に、本当によく似ている。似すぎているんです。暖かくも芯のあるその性格も、柔らかく艶やかなその髪も、綺麗に整った顔立ちも、今僕を見据えているその深い紅色の……朱色の瞳も。何もかも、全てが」


 少しだけ屈んで、出来るだけ優しく彼女の頬に触れて、そっと撫でる。

 拒絶されると思っていたそれは、彼女の体をほんの少しだけほぐしたように見えた。


「……もしかすると、それが原因で逆にクレセントという人物とあなたを紐づけることができなかったのかもしれませんね。本当に気づきませんでしたもん」

「……ならなんで、今そのことに……?」

「……あなたが、ヴラド・ツェペシュと同じことをして、クレセント・アリア・スカーレットと同じことを言っていたからですね」

「……同じ……こと……?」


 彼女のその言葉に、小さく首肯する。


「えぇ、一言一句、そして一挙一動と言っていいほど同じでしたよ。だから、そのときに……というよりついさっきに、完全に重なったんです。彼らと、あなたが」

「……そう……でも、そういうことだったら、私の問いに対しての理由としては、あまりなっていないんじゃないかしら?」

「確かに、そうですね」


 その言葉で、彼女が先ほどよりも平静を取り戻したことがわかった。それと同時に、僕に向けられる感情も、憤怒という形へと軌道修正をしたことも。

 僕は自分のしたことに対して悔やんでもないし、後悔もしてないし、間違ったとも思ってない。

 だけど、あの行動で彼女を心を苦しめて、傷つけてしまったこともまた事実。

 これは罰であり、償いだだ。彼女を苦しめてしまった、僕に対しての罰。そして、僕が傷つけてしまった、彼女に対しての償い。

 だから、あと少し、もう少しだけ、語らなければならない。

 彼らのことについて、ほんの少しだけ。

 ……きっとこれは、僕が逃げているだけなのだろう。彼女に嫌われたくないから。だからこその、せめてもの抵抗。それが、今の僕がベラベラと余計な事実を語っている、本当の理由。

 ハハ……僕という人間は、本当に矛盾したことが大好きなんだな。最大限の皮肉を込めた言葉を、その自分に向けた言葉を、できるだけ強く頭の中で反芻した。……ただの自己満足以外に、何にもならないのにも関わらず。

 ……今の僕は、他者の目から見てどれだけ醜く滑稽に映っているのだろうか。僕には、想像すらできなかった。

 よくよく考えなくても今の僕ってクズ男の典型(?)ですよね……。本当に性格直さないとダメですねこれ。こんなの続けてたらいつ誰かに刺されても文句言えないじゃん。

 もしやられたとしても文句なんて言うつもりないけど。

 え?まず男に見えない?

 そんなボケこの状況で言わないでください今ギリギリで生き残ってる砂埃みたいなメンタルが完全にK.Oしてしまいます(?)

 そんなことを考えながら、僕らは再び席に着いた。

 沈黙が訪れた。どこからか入った隙間風が僕の体を撫でたことが音でわかるほど、静かな沈黙の空間。

 ……その沈黙を先に破ったのは、僕の方だった。


「……僕は、“彼ら”に血を分けたことがあります」

「それはあなたがヴラド公と関わりがあると言っていた時点でなんとなく予想はできていたわ……って、え?ちょ、ちょっと待って。彼らって……ヴラド公だけではないの?」

「はい」


 僕が短くそう返すと、彼女は自身の顎に手をやり、もう片方の手でその腕の肘を支えた。

 簡単に言えばフランソワ=オーギュスト=ルネ・ロダン作の考える人みたいな感じ。


「まさか野良吸血鬼?……はヴラド公が許すわけないか。彼は吸血する相手を選ぶと聞いたことがあるし。確か、一度自身が吸血した相手に関しては他の吸血鬼には絶対に手を出させない、だったはず。それに野良だとしたら1匹程度では済まないはずよね。……ってことは、まず大前提として吸血鬼であり、その上彼が心を許すほど親密な間柄であることが前提になるけど……その時点で、そんな人物なんて1人も……」


 そこまで言った時、彼女はハッとしたように手から顎を少しだけ浮かして、目前の中空を見つめた。


「まさか……まさか、お父様以外に藍奈の血を吸血した人物って……お母、様?いや、そんなわけ無いはず……でも他にそんなことが許される人物なんていない……だけど……だけど、お母様は———吸血鬼では、ないはずよ」


 長考の末の反動のようなものなのか、ヴラドとクレセントの呼び方が変わっていたことに対して、僕は気がつかないふりをした。

 ……あれ、というかさっきのレミリアさんの言葉、どこか違和感がある気が……気のせいですね。多分。こういうの外れたことないけど。

 彼女自身はそんな些細な変化には気付きもせずに、数十秒の逡巡の後、こちらに視線を送ってきた。


「そろそろ……答え合わせ(でいいのかな?)をしましょうか?」

「……えぇ、お願いするわ」


 僕のその言葉に、力強い視線と共に力強い声がかけられた。

 途中で言葉に迷っちゃったけど大丈夫だよね。だって答え合わせってノリで言ったんだもん。そんで言った後になんか違うかもって思っちゃったんだもん。


「っと、その前に、あなたの考えたことを聞かせてもらっても良いですか?」

「……わかったわ」


 小さく息を吐く音が聞こえた。

 というかそれを聞くなら会話の切り出し方おかしくない? ……考えたら負けというやつですね分かりません。


「藍奈が血を分けた、お父様以外の吸血鬼。……否、“半吸血鬼”。それは、お母様なんじゃないかしら?」

「……なぜ、そう思ったか聞いても?」


 理由なんてさっきの長考の時間の間に呟きとして漏れていたため全部知っているが、この答えは彼女が頑張って出したものなのだ。ならば、理由を聞かない選択肢はない。


「あのお父様が、野良吸血鬼などに自分が吸血した相手を吸血させるわけがない。……これだけでも理由としては良いと思うのだけど、それだとそこはかとなく気に食わないから、もう一つだけ理由を提示させてもらうわ」


 そういう理由であそこまで深く考えてたんですか??


「あたはお父様に“血を分けた”と言った。だけど、そんなことは通常だったらあり得ない。なぜならお父様は、一度自身が吸血した者を生かしておくことはないから。一回の吸血で、全ての血を吸い取るから。だから、そんなことはあり得ない……だけど、お母様が半吸血なのだとしたら。あなたが今も尚生きている理由も、合点がいくのよ」


 静かに滴り落ちていく雫のように、ポツリポツリと語られるそれに、底のない関心を覚えながら耳を傾け続ける。


「私は伝承や言い伝え、書物なんかでしかお父様のことを知らない。だって、最後に会ったのが、私が今よりもずっと幼いときで、記憶に全くと言って良いほど残ってないから。……でも、いいえ、だからこそ私が読んだ書物に書かれていたことは、ほぼ全て頭に入ってる。世界に名を轟かせた、偉大で、他に追随を許さないほどに大きな力を持った吸血鬼……いいえ、それ以前に父親だもの。そのくらい当然よね」


 微笑みを浮かべた顔をこちらに向けながら、嬉しそうな声色でそう言った。


「あっと、そんなことは今はどうでも良かったわね。そこじゃなくて……重要なのは、その書物の内容。もっと正確に言うと、お母様の性格のところね。……伝承にはこうあったの」


 そう言った彼女の顔は、少しだけ曇っていた気がした。

 それから彼女が語ったことは、ほんの一部。今必要な情報だけが綴られているところだけ。

 だけど、それだけでもう十分と思えるほどのものでもあった。

 僕は思わず頷いて、彼女の目を見た。


「人間にしては、ここだけは脚色はないのよね。……半吸血鬼だとバレる前までは、だけどね」

「……因みに、混血だとバレたと思われる部分の先では、どうなっていたかわかりますか?」

「……酷かったわよ、本当に」


 先ほどとは一変して、苦い顔をしながらレミリアさんは言葉を続けた。


「伝承の中ではあれそれ呼びは当たり前だったし、薄汚れたーとかなんとか、その他にも色々書かれていたわね。……最初はどうしていきなり、なんてことも思ってたりしたけれど……そういうこと、だったのね」


 それを聞いて、無意識に息が漏れてしまった。

 そのくらいに、酷いと思ってしまったのだ。彼女をこの目で見て、実際に関わっていたこともそう思った大きな理由の一つになるだろうと思う。


「本当、言葉にできないくらい酷いですね」


 語彙力ないのは知らね。

 そんなことを考えていると、「そろそろ話を戻すわね」と言ってから、もう一度語り始めた。


「私の知ってるお母様の性格からして、自分から人間の血を吸いに行くことはない。だけどそうしないと、吸血鬼として生きていけない。そのことを危惧したお父様は、あなたに頼んだんじゃないかしら?……我が愛する妻に、血を分けてほしい、と。……その時だけは、吸血鬼としての威厳も含め、何もかもをかなぐり捨てて、1人の夫として、ね」

「……そこまでわかるもんなんですかね?」


 僕が思わずついたその言葉に、彼女は微笑を浮かべた。


「私はあの人の子供だからね。わかるものなのよ」


 そう言うと彼女は、ふふんと得意げに鼻を鳴らした。

 だけどすぐに立て直し、1つの先払いをした。


「結論を言うと、藍奈が血を分けた2人目の吸血鬼は、半吸血鬼であるクレセント・アリア・スカーレット。それはヴラド公が彼女を吸血不足で死なせないために藍奈を吸血後も生かして、血を分けさせた。とまぁ、私の考えたことをまとめるとこんな感じよ。……この回答は、どうなのかしら?」


 さっきまでとは裏腹に、不安げな声音でそう言った彼女の頭に、そっと手を置き、できる限り優しく撫でながら言った。


「えぇ、合ってましたよ。模範解答かと思うほど良くできてました。正直ここまでできるとは思っていなかったので、本当に凄いと思いますよ」


 無意識にいつもより優しさを込めたその言葉を、彼女に送る。……小さな、なんでこんなに頭の回転が速いんだ、という妬み、基皮肉も含んでしまったかもしれないが。これが無かったのなら話さなくても良かったかもしれないのに……とは思わなかったといえば、嘘になる。

 これ後で恥ずかしくなるやつかもしれないと、そんなことを頭の片隅で考えながら。


「ふふ、ありがとね。頑張って考えた甲斐があったわ」

「……でも、1つだけ訂正させて下さい」


 そう言って彼女の頭を撫でていた手を戻し、僕は彼女の目を見据えた。綺麗な朱色の瞳が、僕を穿った。


「僕は2人に無理やり血を与えさせられたのではありません。彼女たちに生きていて欲しかったから、自分の意志で血を分けたんです。きっかけはどうであれ、結局は自分で決めて、行動をしたんです」

「……そうなのね。ごめんなさい。言葉を誤ってしまっていたのね」

「いえ、こちらこそすみません。少し細か過ぎましたね」

「でもそういうこだわり、私は好きよ」

「……そ、そうですか」


 面と向かってそんなこと言わないでください恥ずかしさで破裂してしまいます(?)


「それじゃあ頑張ったついでに、もう1つだけ教えてもらっても良いかしら?」

「まぁ流石にここまで来ると質問の内容によりますけど……できる限りのことはお答えしますよ」

「ありがとう」


 そう言って彼女が見せた笑顔は、(かげ)りも何もない、どこまでも純粋な笑顔だった。


「それじゃあ遠慮なく。……あなたとヴラド公は、どういう関係だったの?

「関係……ですか」

「そう、関係。ここまでヴラド公のことを知ってるってことは、それほど深い関係だったのでしょう?血を分けたのなら眷属って可能性もあったのだけど……そう言うのでは無いのよね?」

「えぇ、まぁ、そうですね。僕はヴラドの眷属ではありませんよ」

「やっぱりそうよね」


 まぁそれなら、言っても良いかなぁ……まぁ、流石に“あのこと”はこの人の前では言えなけどね、そのことだったら別に構わない……はず。まぁそんなん関係なしに今問われなことについては答えるけど。あのこと以外。

 ……ニホンゴッテムズカシイデスネ。

 彼女の真剣な眼差しを横目に、小さく息をつき、語り始めた。


「僕とヴラド・ツェペシュは……いいえ、もうこんな呼び方、やめにしましょうか。……僕とヴラドは、戦友(親友)同士なんですよ。大体600年ほど前ですかね?そうなったのは。あぁそれと、ここだけの話、ヴラドとは一回だけ杯を交わしたたことがあるんですよ?……まぁ僕からしてみれば、ほんの“3年前”の、ごくごく最近ことなんですけどね」


 ……流石にここら辺が限度、かな。

 そう思い「何にしろ、こう言う理由ならそういうことを知ってても不思議ではないでしょう?」と、最後にそう付け加え、締めくくった。


「まぁ確かに不思議ではないのだけど……流石にここまで来ると、あなたが何者か気になるわね」

「普通の人間ですよ」

「普通の人間はヴラド公と友好関係を持っていたり、あんなに血が美味しかったりしないの」

「あ、そんなに美味しかったんですね。僕の血」

「えぇ、それはもう。今まであんな美味しい血飲んだことないってくらい美味しかったわ」


 そう言って彼女は、先程とは比べ物にならないほどの笑顔を見せた。食ってすごいなって思った。(←多分そこじゃない)

 そういえばヴラドも美味しかったって言ってたっけ、僕の血。


「あ、そうだ。お父様についていろいろ教えてくれたことは感謝するけど……私はまだ、藍奈のあの行動を許したわけじゃないからね」

「ぅ……はい、すみません。後日何かでちゃんと償いますので許して下さい」

「えぇ、そうして頂戴。ここの“メイド”として、これからキッチリ働いてもらうから。覚悟しておいてね、藍奈」

「ちょっと待って下さい今聞き捨てならないことが聞こえた気がするんですけど……って押さないでください転んでしまいます!」

「いいからいいから、もう話は終わりよ〜」

「僕の方の話がまだ……って、ちょ、ちょっと、レミリアさ〜ん!」


 扉をくぐり抜けると同時、後ろからバタリと、扉を勢いよく閉める音がした。

 はい、結局締め出されました。

 いやぁ色んな意味で早かったなぁHAHAHA!

 え?なんでローマ字かって?

 気分以外にないんだよなぁ。

 ……まぁ良いや、締め出されたんだし、そろそろ霊夢さんたちのところへ———


「……ありがとう」

「! ……また、近いうちにお会いしましょうね。レミリアさん」


 それだけ言って、僕はその場を後にした。

 扉越しに微かに聞こえた、彼女の最後のあの言葉を。

 僕は1人、胸の中に閉まった。

話の流れ作るのって難しいですよね。本当

ということ(??)で、どうも皆さんこんにちは!コロ(コロナ)×イン(インフル)という地獄を新年早々味わされたASADEです!

改めて、新年明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いしますね♪

私今回の話めっちゃ頑張ったんですよ!コロナとインフル同時にかかりながらこれ書いたんですよ!できれば褒めてください

はっきり言ってバカですよね。(書いてて改めて思った)

まぁこれが言いたかっただけなんでこれで終わりにします

私にしては早い……なんか違和感()

とまぁそんな感じで、次回もよければ読んで頂けると幸いです!

それでは皆さん!

シーユーネクスタイム! ……だけだなこれ普通に違和感しかない

普通に〜……さ〜よ〜う〜な〜ら〜!


あ、それと多分今回で紅魔編終わりです(めちゃ需要な情報)お疲れ様でした!

次はやっぱり……あれかなぁ……?

あとレミリアさんが吸血下手とか言う設定は知りませんスカーレットデビルなんて名前も知りません

……独自設定っていいなって思うんです、私。

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