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東方救嬢期 〜男の娘の幻想入り〜  作者: ASADE
第一章 幻想郷巡り。……にしたいです。(作者の願望)
15/49

第12話 この紅色の姉妹の恒久なる『タタカイ』にピリオドを。

どうもこんにちは!

めちゃくちゃ久しぶりのASADEです!

詳しいことは後書きで書きます。

……なんか(今回の話が)ものすごく長くなってしまった……!

まぁ戦いだからね仕方ないね。

……

すみませんでした!

あ、よかったら長いほうがいいのか短いほうがいいのか、コメントいただけると幸です。

別に興味ないって方は悲しいです(?)

それと、折角の妹様との戦いで話数稼ぎにうってつけなのになんで細々とやらないでしょうね。

え?それは投稿者目線の感想だからこういうところで言わないほうがいい?

……

ちょっと何言ってるかわからないですね。

まぁ投稿期間がものすごーく空いたお詫びでもありますし、仕方ない……ですよね?

……

まぁそんな話はさておいて!よかったら読んで行ってください♪

 あれから数分間、膠着状態が続いた。

 辺りには(何故か)紅色の月明かりだけが淡く照りつけ、体を打つような風が容赦なく吹き付けていた。

 僕とレミリアさんは、フランドールさんを挟む形となり、距離を取っている。

 余談だけれど、霊夢さんと魔理沙さんには、館が爆発した時に怪我をした人や妖精メイドさんたちがいないか見に行ってもらっている。

 そして咲夜は、お二方が動く前にもう動いていたとのこと。

 フロントが1番酷い状態だと言っても、やっぱり、他の場所にも、大小の差はあれど被害が出てしまうから。

 そっちに人員を回した方が良いと、そう判断した結果だった。

 ……加えてこれは、姉妹喧嘩の様なもので、“スカーレット姉妹の”戦いで、“フランドール・スカーレット”を救い出すための戦いだから。

 他の人が無闇に手を出したら、それはただの“戦い”になってしまう。

 僕は、最大限レミリアさんの手助けをしなければならない。

 そう、約束したのだから。

 そんなことを考えている時も、レミリアさんは、鋭く、そして何処か優しさがこもった敵意をフランドールさんにぶつけて、フランドールさんは、ツンと刃物のように鋭く尖った殺気を躊躇いもなくレミリアさんにぶつけている。

 ……どうしてフランドールさんは、姉妹なのに、そんな殺気を向けることができるのだろうか?

 ……まずそれ以前に、“家族”なのに、何故、こんな争いをしなければならないのだろうか?

 どうしても、そんなことを考えてしまう。

 しょうがないことだと……救うためのことだと、今だけのものだということを、頭では理解しているのに。

 ……気持ちが、心が。理解を拒んでしまう。

 もっともっと、他の方法があるのではないかと……そう、考えてしまう。

 ……いいや、今はこんなことを考えている場合ではない。

 今は、これからどう動くかを考えなければ。

 そう思いながらも、僕に何かできることはないかと、思考を巡らせる。

 そうこうしていると、フランドールさんが口を開いた。


「あレ?おネえさマタちからはコナイの?ナら、ワタしかラいくネ?」


 そう言った直後、フランドールさんは何かを抱き締めるような動作をしながら、呟くように言った。

 僕はそれに何故か嫌な予感を感じて、急いでその場から離れた。

 横目でレミリアさんを見てみると、同じようにして動いている。


「きゅっとしてドカーン!」

 

 すると、辺りに散らばっていた瓦礫が、一度に爆発四散した。

 ……そして、それは先ほどまで僕達がいた場所も同様に。

 その時に飛び散った大小様々な石が僕達を襲う。

 これは……


「レミリアさん……これが、先ほど言っていたフランドールさんの……?」

「……えぇ。」

 

 レミリアさんは端的にそう返すと、体を少しずらしてそれらを避けた後、警戒体制を強めた。

 レミリアさんから目を離し、フランドールさんに視線を移すと、その表情は、どこまでも笑顔で、そして、狂気に染まっていた。

 

「アハハハハハ!お姉さン、マだコワれテない!いツものオモチャならこれデ簡単ニ壊レちゃうノに!」


 僕のことを……否、“紅魔館の外”から来た者のことを“玩具”と呼ぶその姿に。そして、心の底から楽しそうに、そう言うフランドールさんを見て、僕の心は締め付けられた。

 フランドールさんは続け様に、こう言った。


「そレじゃア、こレは耐エらレる?」


 と。

 それと同時に、懐から一枚の紙を取り出した。

 あれは確か……スペルカードというものだったっけ?

 ……まぁ、そんなことを考えている暇はないのだけれど。

 次の瞬間。フランドールさんが空に向かってスペルカードを突き出し、菫色の夜空に轟かすようにして、高らかに宣言した。


「スペルカード発動!禁忌『クランベリートラップ』!」


 それと同時に、辺りに四つの魔法陣が現れたかと思えば、それが縦横無尽に動き回りながら、無数の弾幕を散らして、それなりのスピードで僕達を襲った。

 僕達はそれを、必要最低限の動きで避けていく。

 そして、弾幕が止んだと同時に、レミリアさんがフランドールさんと同じようにして、叫ぶ。


「スペルカード発動!天罰『スターオブダビデ』!」


 それと同時に、先ほどの弾幕と比べて一回りほど大きな弾幕と、針のように細長い弾幕がフランドールさんを襲う。

 それはまるで、静かな夜空に咲いた一際大きく、そして、美しい花火のようだった。


「アハハハハハ!おモシろイ!オモしロいよ!オ姉サま!」


 フランドールさんはそれらを避けながら、そう言った。

 そして、弾幕が止むのと同時に、フランドールさんはこちらに視線を向けた。

 次の瞬間。……僕は、理解をした。


「そレに、あナタも!いつものオモチャなラもうトックにこワレてルノニ!」


 そういうフランドールさんは、心の底から、楽しそうに見えた。

 ……そう、そう見えた。たったそれだけだ。

 いや、実際に楽しんではいるのだろう。

 ……だけどそれは、フランドールさんであって、“フラン”さんではない。

 いや、違う。

 ここにいるのは実際に、“フラン”さんなのだろう。

 そう。ここにいるのはただの……

 ……表裏一体の(フランさんの中の)裏側の存在(フランドールさん)だと言うだけ。

 だから今、ここにいるのは。今、僕達と戦っているのは———


 ———悲しくて儚い、時間という悲しみを、辛さを。一身に受けた、“フラン”さんの“狂気”と“優しさ”の塊だ


 だから、だから僕が……僕達が。彼女を……“彼女達”を、救おう。

 まだ、救う、救える方法は、見当もつかないけれど。

 救わなければ、ならないから。

 やる以外の選択肢は、ない。

 ……だけどそれは、例え救う方法がわかったとしても、僕にはできないことだ。

 心からの言葉を投げれば、僕も少しは“本当の意味で”フランさんを助ける“手助け”をできるかもしれないが、やはり、手助けだけ。完全には救うことは、到底できやしない。

 だってそれは、姉である、“レミリア・スカーレット”さんにしか、できないことだから。

 だから僕は、彼女の心ゆくまで、戦おう。

 僕には、それくらいしか、できなから。

 ……まぁ、所詮全て、ただの憶測に過ぎないけれど。

 ……言葉がおかしくなってしまっているけれど、今はそんなことを気にしている余裕はない。

 だって今は、いつ攻撃が来ても、何もおかしくはないのだから。

 そう思考を巡らせていると、レミリアさんが口を開いた。

 強い想いと、願いを乗せて。


「もう、私は……あなたから逃げないわ。フラン。だから……全力で、遊びましょう?」


 そうレミリアさんが言った時のフランさんの表情は、どこまでも嬉しそうで、どこまでも、辛そうだった。


「ソレじゃア、イくヨ!お姉様!」

「えぇ!」


 そしてようやく、本当の、フランドールさんを救う為の戦いが始まった。



「スペルカード発動!禁忌『スプラッターレイン』!」

「スペルカード発動!恐符『アンリミッティングフィアー』!」


 フランドールさんとレミリアさんが、スペルカードを天に掲げて、同時に叫んだ。

 すると、フランさんの上空からは無数のナイフ雨が降り、僕とレミリアさんの上空からは、無数の矢の雨が降ってきていた。

 ……ここで実感するのもどうかと思うけれど、やっぱり姉妹なんですね。

 

「アハハハハハ!やっパり、ヤッぱりオもしロイよ!お姉様!お姉様ト戦ウのモ、そコのお姉さんモ!」

「そう……よかったわね……!フラン!」


 そんなことを言い合いながら、2人はお互いの弾幕を避け続けている。

 ……まぁ、それは僕もなんですけどね。(雰囲気を壊すような言動は控えてもろて(byテロップ))(いやそれあなたもですよね?(by藍奈))(ちょっと何言ってるかわからないですね(byテロップ))

 弾幕が止み終わると、レミリアさんとフランドールさんは互いを見据えて、深く笑った。

 数秒の沈黙。

 ……沈黙の末、先に行動を起こしたのは、フランドールさんだった。


「イくヨ!お姉サマ!ソレト、そこのオ姉さン!スペルカード発動!禁忌『フォーオブアカインド』!」


 すると、次の瞬間、フランドールさんが4人に分身した。

 ……えぇ……

 これ、結構あれだと思うんですけど……

 まぁ取り敢えず、レミリアさんにはやってもらわないといけないことがあるからね。

 ここは……僕が引き受けなければ。ここにいる意味がない。


「レミリアさん」


 僕はレミリアさんの近くまで来て、先ほどよりも少し小さな声でレミリアさんに話しかける。


「どうしたの?」


 余裕が感じられない声色で、そう返してくるレミリアさんに、僕は静かに告げた。


「僕が3人引き受けます。だから、貴女は本体を叩いて下さい。」

「……! いいえ、無茶よ!そんなこと……!」

「大丈夫です、レミリアさん。……それに、貴女にはやることがありますよね?」


 そう言うと、レミリアさんは押し黙った、

 僕は更に言葉を重ねる。


「元々僕は、こういう小さなお手伝いをする為に、ここにいるんです。だから……僕に、任せて下さい。フランドールさんを、救う為に。……貴女にしか、できないことなんですから。」


 勝てる自信なんてない。

 だけど、僕がやることは、やらねばならぬことは、変わらない。

 ……それに、例え最善はあったとしても、正解はないのだから。

 だから僕は、自分が最善であると思うことをする。

 そんなことを考えながら、僕はレミリアさんの目を真っ直ぐと見据えて、そう言った。

 数秒の沈黙を経て、レミリアさんが小さく、聞いてきた。


「……本気、なのね?」

「勿論です。」


 僕は間髪入れずにそう答える。


「……そう……わかったわ。貴方に、任せる。……だけど、これだけは守ってちょうだい。……絶対に、死なないこと。……良いわね?」


 レミリアさんの返しに、底のない優しさを感じながら、僕はその言葉を肯定した。


「左から2番目が本体です。……武運を、祈ります。」

「!貴方、何故……!?」


 レミリアさんが聞きたいことは、概ね理解できる。

 だけど今は、そんなことを言っている時間はない。

 僕は不意打ちでいくつかの弾幕を本物のフランドールさんに向かって放ち隙を作り、瞬時にその背後に移動して、レミリアさんの方へ出来る限り優しく背中を押した。

 それを見た分身達は、一瞬顔を驚愕の色に染めて、次の瞬間には、澄み渡った菫色の空の下に咲く、紅色の美しき花々を思わせる、そんな笑顔を浮かべていた。



 sideレミリア

 ……あの人間は、一体何者なのだろうか。

 

 迫り来る弾幕を体力を無駄に消耗しない為に最低限の動きで避け、時には相殺ながら、そんなことを考える。

 だけど、いくら思考を巡らせても、その答えは浮かばない。

 浮かべることが、できない。

 ……あの人間は、まず前提からおかしかった。

 何故そう言ったか。

 理由は、合わせて3つほどある。

 まず1つ。

 今回のことは、事前にあの胡散臭い隙間妖怪から情報を受け取っていたこと。

 こんなこと……初めてだった。

 今まで、あのスキマ妖怪からこんな情報を受け取ったことはなかったのだ。

 だが今回、唐突に情報を渡された。

 当然、それを渡された時に問いただした。

『何故、今回だけなのだ』と。

 この素朴な疑問に、あのスキマ妖怪は、端的にこう答えた。

『運命を見て欲しいから』と。

 何故そう頼んだのかを知りたかったが、あのスキマ妖怪は『いずれ解る』と言うだけで、何も教えてはくれなかった。

 そして2つ。

 それは、あの人間の運命が見えなかったこと。

 当然誇り高き吸血鬼である私なら、一般人程度の運命を見ることなど、造作もないことの筈。

 ……だけれど、あの人間は違った。

 私のこの能力……運命を操る程度の能力が通用しなかった。

 あの人間の運命が、全く見えなかった。

 プロテクトの類ではない。

 ただただ単純に、“見えない”だけ。

 ……いや、言葉を誤った。

 ただ、その“見えない”ということこそが、精密に、精巧に構築された、強すぎるプロテクトなのだろう。

 プロテクトだと、思わせないほどの。

 ……それか、あるいは……

 ……この結果が出たとき、あの時のスキマ妖怪の言った言葉の意味が、なんとなくわかった気がした。

 最後に3つ目。

 あの人間は……強過ぎる。

 今あの人間は、分身で多少力が弱くなっていると言えど、3人のフランを同時に相手取って、劣勢になるどころか、時間が経つにつれてどんどんとおしていっている。

 まぁ今のところ弾幕はフランを誘導するためにしか使っていない様だけれど……。

 私たち吸血鬼、特にフランは、人間など優に凌駕する身体能力を持っているにも関わらず、フランは体術でなす術もなくおされている。

 ……憶測でしかないが、あの人間は、まだ本気の2割も出していないだろう。

 本当にただの、お遊びでしかない。

 だから、私程度の力では、あの人間の、足元にも及ばないと、そう思う。

 あのスキマ妖怪から情報を受け、私でさえも運命が見えず、あのとてつもないほどの強さ。

 本当に、底が見えない。

 ……夜の王と言われる誇り高き吸血鬼が、聞いて呆れるわね。

 と、そんなことを考えながら、私達はスペルが切れたタイミングで同時に静止し、視線を交差させる。

 そして、笑った。


「「スペルカード発動!」」

「禁忌『カゴメカゴメ』!」

「紅符『スカーレットシュート』!」


 またも同時に、静まり返った水面に波紋を渡らせる様にして、鋭く声を上げる。

 すると次の瞬間、私を中心として大小様々な弾幕がフランを襲い、私の方には封じ込めるかの様に緑色の弾幕が生成されたかと思うと、フラン自身から黄金に煌めく弾幕が私をめがけて、ある程度のスピードで飛んできた。

 そして一度その囲いが外れたかと思えば、直ぐに、今度は斜めに流れる弾幕が、私を囲む。

 そんな攻防が、姉妹の楽しい楽しい“お遊び”が。それからも途切れることなく続いた。



side 藍奈

 どのぐらいの時間が経ったのだろうか。

 横目でレミリアさん達のことを見てると、心の底から楽しそうに笑いながら弾幕を打ち合っている。

 いい笑顔ですね。(←いまはそれどこれじゃない)

 そんなことを考えながら、どうやって倒そうかと思案する。

 弾幕は却下で。(←早ない?)

 何でって?

 それは勿論、弾幕を打てたのも空を飛ぶ時の応用みたいなものだし、どのぐらい持つかわからないのであんまり使いたくないからですよ?

 やっぱり弾幕を使わないとなると、肉弾戦でしか攻撃手段がない。

 まぁレミリアさんがフランドールさんのことを倒すまで耐えるって言う方法もあるけど……

 流石に(多分)無理なので、どう攻撃を入れるかが鍵になっていくのは明白。

 やはりそうなってくると、どう考えても肉弾戦しか方法はない訳で……

 ……うん。考えてて思ったけど、めちゃめちゃキツい状況ですね。これ。

 ……まぁもういいや。どうにでもにゃれぃ!(思考放棄+噛んだ……(デジャヴ))

 そんな考えの中、僕は360度絶え間なく無数に襲ってくる弾幕を変わらずに避け続けながら、心中で謝罪した。

 そして僕は、その弾幕が止んだ一瞬間に、瞬時にフランドールさんの背後へと移り、気絶する程度の力を込めて手刀を入れた。

 すると、次の瞬間。

 フランドールさんが真夏の陽光の様にゆらりと揺れたので、体を抱える様にして支えようとすると、フランドールさんの体は僕の腕を透けた。

 地面に落ちてしまうと思い、急いで視線を移すと、そこには元から誰もいなかったかの様に、何も変わっていなかった。

 ……そうか。あのフランドールさんは分身だから……

 ……でも、フランドールさんを傷つけたことには変わりない。

 ……後で謝らないとなぁ……

 これを後2回繰り返さないといけないし……

 ……

 土下座ですね(泣)

 そんなこんなで、僕はもう2度、同じことを繰り返しました。

 ……罪悪感が……凄い……。

 そんな、僕にとってはそんなことでは片付けられない様なことを考えながら、小さくふっと息を吐き、微風が体を撫でるのを感じながら、視線をあの2人に移した。

 そこでは———ボロボロの2人が肩で息をしながら、楽しそうに笑い合っていた。

 だが、次の瞬間。2人から笑顔が消えた。

 不意に、レミリアさんが口を開く。


「はぁ……はぁ……はぁ……。……フラン、そろそろ、もう、良いでしょう?」


 フランドールさんは何も答えず、肩で息をしながら俯いているだけだ。

 もう、口元程度しか見えなくなっていて、どんな目をしているのかが、わからなくなっていた。 


「だから……これで、終わりにしましょう?」。


 そう言った、次の瞬間。

 フランドールさんが顔を上げたかと思うと、彼女の瞳から、一筋の“フランさんの”涙が、流れた。


 ……いや、違う。


 あの涙は、“フラン”さん“だけ”のものではない。

 あれは、“フラン”さんと、“フランドール”さんの想いが入り乱れ掻き乱されて、溢れ出し過ぎた結果の涙なのだろう。

 ……それか、もう家族を傷つけたくないと言う“フラン”さんの想いと……もっと遊びたいというフランドールさん願いと、“もう狂気に犯されたくない”という、()()()()()()さんの願いが溢れ出し、入り乱れ過ぎたの結果なのかもしれない。

 ただの憶測に、幻想に過ぎないけれど。

 ……でも、もしも本当にそうだったとしたら。

 ……僕は、前提から間違ってしまっていたのだと、気がついた。

 何故かレミリアさんが、また口を開く。


「……私は、貴女を救うために。その為だけに、ここまでやってきたの。」

「!!」

 

 ……レミリアさんのその言葉に、どれほどの想いが詰まっていたのか。

 ……僕には、わからなかった。


「貴女に何も傷付かせないために、私は貴女を……フランを閉じ込めた。……だけどそれは、間違いだった。いや、間違いだとわかっていた。ただの逃避の行為だと、わかっていた。……でも私には、これ以外の方法を、思いつくことができなかった。……これは、ただの私の詭弁だということは……理解しているわ。」

 

 想いが詰まった、言葉だった。

 それはもう、言葉では言い表せることができないほどに。

 レミリアさんは言葉を詰まらせることなく、掠れた声で、続けた。


「こんな妹のことを考えなくて、こんなにも辛い思いを、沢山貴女にさせて……。……こんな不甲斐なくて、甲斐性なしな姉で、ごめんなさい。」


 そう言った瞬間。レミリアさんの瞳から、一筋、涙が流れた。

 ……その時のフランさんは、今までで1番、辛そうな顔をしていた。

 静寂が訪れる。

 視線が交差する。

 互いの想いがぶつかり合う。

 ……そうして、何時間という時が流れてしまったと感じてしまうほどに、濃厚過ぎる時間を経て、レミリアさんが先ほどとはまるで違う、月明かりに照らされる花々を髣髴とさせる、優しい笑みを浮かべた。

 そしてフランさんは、悪魔よりも深く、堕天使よりも悲しい笑顔を浮かべた。

 その刹那。

 2人が静かに、されど力強く。

 ……動き出す。


「……いくわよ、フラン!!」


 フランドールさんは、何も答えなかった。

 レミリアさんとフランドールさんは、水面に反射した紅色の月のようにゆらめく笑顔を浮かべ、同時にカードを取り出した。

 そして、それを天高く突き出して、力強く、叫ぶ。


「「スペルカード発動!!」」


 想いと決意と懺悔と恐怖が篭った言葉を辺りに轟かせ、叫ぶように宣言した。


「禁忌『レーヴァテイン』!」

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!」


 そう叫ぶと同時に、フランドールさんの手には炎を纏った剣が。レミリアさんの手には、紫色に輝く槍が出現した。

 レーヴァテイン……は確か、北欧神話に登場する世界樹の頂に座している雄鶏ヴィゾーヴニルを殺すことができる武器、だった気がする

 そしてグングニル……は、こっちも北欧神話の主神オーディンが持つ投げ槍で、回避不能の必中の槍……だった気がする。

 ……え?なんで北欧神話の武器を平然と所有してるの?

 ……

 うん。今は考えないようにしよう。

 ……だって、今はそんなことを考えている暇なんて、ないのだから。

 そして、次の瞬間。

 2人は、笑った。


 僕はここまでの戦いの中で、ずっとフランドールさんを救う方法を考えていた。

 どんな方法を使えば良いのかと。

 だけどその答えは、いくら考えても思いつかなかった。

 ……でも、答えはとても簡単なものだった。

 簡単過ぎて、気づかなかった。

 だから、気づけなかった。

 ……だって、その方法は———

 ———“フランドール”さんの願いを、叶えてあげれば良いだけなのだから。

 ……ずっとずっと、おかしいと思っていた。

 何故、“僕を殺さない”のかと。

 彼女の能力ならば、僕を殺すことなど、赤子の手をひねる様に容易な筈。

 なのに、何故それをやらないのか。

 ……何故なら、“フランドールさん”が、能力に……『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』に、身の丈に合わない程の“狂気”()を与えられたからだ。

 どういうことかというと、レミリアさん情報だと、フランドールさんは、一度能力を暴走させ、地下に閉じ込められてしまった。

 その時に、能力を暴走させたのは、フランドールさんであり、フランさんではない。それは事実だ。

 だがそれは根本的な話ではない。もっと深いところ、そこにある……本当に能力を暴走させたものの正体は、“フラン”さんの“中”の“フランドール”さんの、“狂気”だ。

 ……人は力を与えられれば、“善か悪か”、自分の意思かそうでないかなど関係なしに、狂ってしまう。

 どんな狂い方をするかは、人によって違うけれど。

 ……その中で、フランドールさんの狂い方は、自身の意思を能力という名の狂気に汚染された、タチの悪い狂い方だ。

 だから“フランドール”さん自身、止めることができない。

 だって、“根本的”に悪いのは、“能力”なのだから。

 ……まぁ、要約すると……これらは“フランドール”さんが起こしたとこではなく、“能力”に与えられた“力”(狂気)の所為。

 だから“フランドール”さんでさえ、止めることができない。

 まぁこれから全て、僕の憶測に過ぎないけれど。


 ……閑話休題


 “フランドールさん”の、“本心から”の願い。

 それは———

 ———“現状を変える”ことだ。

 だから、だから僕は……

 ……これを、見守ることしかできない。

 だってもう、今の僕の役目は……終わったのだから。


「フラン!!」


 正に動き出そうとした、その刹那。

 レミリアさんの声が、紅色の長過ぎる夜に轟いた。


「こんなにも月が紅いから。……私は今一度、もう目を背けない為に……!もう2度と、逃げない為に!ここに宣言する!」


 レミリアさんのその声は、どこまでも、強かった。

 何万もの獲物を狩る、獣のように。

 そしてその声は、果てしなく、優しかった。

 ……それはまるで、一つの命を守り抜く、母の様に。


「私は……私は!もう、貴女から……“フランドール・スカーレット”から、逃げない!」


 フランドールさんが、目を、見開いた。

 かく言う僕も、少し驚いている。

 わかっていたのだ。レミリアさんは。

 ……“全て”を。

 またも、静寂が訪れる。

 ツンと張り詰めた紅色の(いと)が、辺りに隙間なく張り巡らされ、時が止まったような感覚に陥る。

 ……瞬間。

 レミリアさんとフランドールさんは、同時に動き出し、衝突した。

 その刹那、一陣の風が吹き荒れ、砂埃を飛ばし、爆音を轟かせた。

 

 ……勝負は、一瞬でついた。

 その結果、倒れているの者は———


「どう、して……」


 ———いなかった。


 フランドールさんの震えた声が、今はもう静寂に包まれたこの空間に木霊する。


「……もう私は、貴女を傷つけることはできない」


 その声には、嗚咽が混ざっていた。

 レミリアさんは今、フランドールさんの剣……レーヴァテインを、自身の槍……グングニルで弾き飛ばし、そのままの勢いで、フランドールさんを……“フランさん”を、抱き締めたのだ。


「どうして……!」


 フランさんは、大粒の涙を中流の河のように流しながら、叫ぶように言った。


「どうして……!どうして!私は、あそこにいるお姉さんも、お姉様も……殺そうとしたんだよ!?」


 その声にはもう、狂気はいない。


「どうして?そんな質問、愚問だわ。」


 レミリアさんは、聖母のような、底のない優しさのこもった笑顔を浮かべながら、菫色の中で輝く月明かりを背にして、静かに、こう告げた。


「だって、家族だもの。」


 と。その、救いの一言を。

 次の瞬間、フランさんはレミリアさんの胸の中で、嗚咽をこぼしながら、泣いた。

 それをレミリアさんは、静かに涙を流して、優しく背中を摩りながら、見守っていた。

 そして、小さな子供に言い聞かせるように、レミリアさんが、優しく言葉を並べる。


「もう遊びは終わりにしましょう。……そして、これから作っていきましょう。495年間と言う、長過ぎる時間を埋め切ることができるほどに、幸せに染まった、思い出と言う名の日常を。」


 それを聞いたフランさんは、どんな花よりも綺麗で、美しい笑顔を咲かせた。


 もう“フランドール”さんの中には、狂気は“殆ど”なくなっている。

 フランドールさんの中の狂気は、“遊びたいと”いう願いと、“レミリアさんとわかり合いたい”という願いの下、誕生した。

 だから、それが叶ったことで……“救われた”ことで、狂気は、小石ほどに衰弱した。

 だから、“フラン”さんと“フランドール”さんが、これから狂気で苦しめられることは、下手な真似をしない限り、もう来ないだろう。

 だってもう、“フラン”さんの願いと、“フランドール”さんの“目的”は、果たされたのだから。

 ……狂気は、“フラン”さんと、“フランドール”さんの目的の具現化のようなモノだから。(何故2回言った?)


 月明かりに照らされた、2人の吸血鬼少女。

 方や吸血鬼であることを誇りとした、誇り高き吸血鬼の姉。

 方や途方もなく長い時を、地下に閉じ込められた、誇り高き吸血鬼の妹。

 その2人が今、“1つ”になった。

 今この時、この瞬間。この戦いに、悲しみの連鎖に。ピリオドが打たれた。

 

 次の瞬間。2人が抱きしめ合いながら、地面へと落ちていった。

 ……え?

 ……間に合うかな?

 僕は急いで彼女らの下へと向かった。

 ……これって、どういう受け止め方すればいいの?

 と、そんなことを、考えながら。



 あれから、無事に2人が地面とごっつん☆する前になんか受け止めることができて、今はどうしようかと考え中です。

 因みにお2人は気絶してました。

 うーん……今の紅魔館は壊れてる所が多い(半壊の域だ)から紅魔館のベットで寝かすのは危ないよねぇ(万が一館が崩壊した時を考えて)。

 その時、不意に僕の視界に芝生が目に入った。

 ……うん。凄い失礼かもしれないけどあそこに寝かしてもらおう。

 このままお2人を(空中で)持っている訳にはいかないからね。

 そんなことを考えながら、近くの芝生の木が生えていて木陰になってそうなところに着地した。

 ……

 まって、今思ったけど、どうやってお2人を寝転がせよう。

 普通に地べたでもいいと思うけど……なんか申し訳ないなぁ……。

 ……

 ……どうしよう……

 ……

 ……あ、そうじゃないか。僕たち人間には膝という便利なものがあるじゃないか。

 これを寝心地は最悪だと思うけど枕にして貰えば地べたより多少は良いのではないでしょうか……?

 ……まぁ、他に案もないからどちらにしろやるんですけどね。

 そんなことを考えながら、僕はそこまで行って乙女座りの状態になり、お2人の頭を出来る限り優しく持ち上げて、膝の上に乗せた。

 先ほどとは異なり、柔らかな微風が体を優しく撫でながら静かに通り過ぎ、空には雲一見当たらず、菫色に輝く月明かりが辺りを淡く照らしつけている。

 ふと、2人の方へと目がいく。

 すると、互いに傷つき合った体を癒し合うようにして抱き合っていたのが、今は2人とも離れており、変わり互いの手を、固く結び合っていた。

 ……2人とも凄い良い笑顔してるなぁ……。

 良かった。

 多分これでこの件は終わったことでしょう。

 凄い疲労ガガガガガ。

 ……あんまり感じませんね。

 ……

 ……レミリアさんは、自身の『逃げない』という宣言の下、あの行動を起こし、成し遂げた。

 それはどれほど恐ろしく、勇気のいるものだったのだろう。

 ……やはり、僕にはわからない。

 ……“わかって良い、筈がない”。

 ……

 まぁそうこう考える前に、“仕上げ”をしますか。

 そんなことを考えながら、僕は———

  

 ———“能力”を、発動させた。


 もうフランさんとフランドールさんが、もう2度と、能力に“殺されない”為に。

 そして、2人が……“3人”が、これから、“幸せ”を育めるように。

 優しい光が辺りを包む。

 体を撫でる風が吹く。

 ———まるで、全てを癒すかのように。

 

「……スペルカード、発動。」


 小さな声が風に攫われ、どこか遠くへ消えて行く。

 いつの間にかあるこの“紙”に、文字が刻まれ絵が描かれる。

 僕はただただ、流れに流され言葉を紡ぐ。


「———癒し『譲痛無傷(じょうつうむしょう)』」


 その刹那、より一層優しく、強い光が辺りを支配した。

 だけど僕は、目を閉じてしまうほど、閃光のように強い光の筈なのに。目を閉じる気は起きなかった。

 だってその光はさながら、我が子を包み込む母のよう、優しく暖かかったから。

 だから目を閉じる気も、逸らす気すらも起きなかった。

 ……まぁ、今は何も関係ないんですけどね。(関係ないついでにあの光を見ているとなんか目の疲れが少し取れた気がしました。やったね(?))

 そんなことを考えている間に、辺りに散らばっていた光は、一点に集まり始めていた。

 僕はそれを、ただただ眺める。

 そうしていると、その光は段々と収束していき、辺りに光がなくなると、一度、目を向けていられないほどに強い輝きを発した。

 だけどその光は、数秒も経つと、すぐに収まった。

 僕はまた同じようなことが起きたら嫌だなぁなんてことを考えながら、そしてどこか既視感を感じながら、ゆっくりと目を開く。

 すると、先程まで辺りを漂っていた光は跡形もなく無くなっており、代わり、という風に目の前には先ほどの光よりも鈍い輝きを放つ純白の小さな球が2つ、ぷかぷかと風船のように浮かんでいた。

 僕は、それを眺めて思案する。

 これは一体何なのかと。

 数秒間、それを眺めて。理解した。

 ……これは———


 ———“弾幕”だ。


 ……でも、何故だろうか。

 これは、“攻撃をするための弾幕”ではない。

 直感的に、そう思った。

 じゃあ、これは何のための“弾幕”なのか?

 ……僕には、わからない。

 ……わからない、筈なのに。だけど僕は、2人にこれを打たなければならないと言う、使命感にも似たものを感じた。

 だから僕は、この2つの弾幕を、2人に向かって、放った。

 どんな結果になるかなど、皆目見当もつかないのに。

 そうして、弾幕が2人に迫っていく。

 ……だが、その2つの弾幕は、2人を前にして、完全に停止した。

 どうしたのだろうか?そんなことを考えながら、それらを見つめる。

 すると、次の瞬間。その2つの弾幕がまた少し小さくなったかと思うと、瞬きの後、先ほどよりも鋭い輝きを放った。

 僕にはそれは、何かを押し込めているように見えた。

 そうして数秒後、2つの弾幕はまた小さく動き出し、そして、2人の体に触れた。

 するとそれらは、2人の体に吸い込まれるように、溶けて広がっていくように、静かに消えていった。

 そして、完全にその球が消えると、次は2人自身が、眩い輝きに包まれた。

 その輝きは、どこか幻想的で、とても綺麗だった。

 僕がただただそれを呆然と眺めていると、2人の輝きは段々と衰えていき、気がつけばまた、あの球が色を変えて、2人の体から出てきていた。

 レミリアさんの方は、紅色。

 そしてフランドールさんの方は、黒色だった。

 その2つが、今度は、僕に目掛けて飛んでくる。

 僕はそれを、目を瞑りながら体に触れるのを待った。

 これを体に取り込むとどうなるかは、直感的にわかっていた。

 だけど……否、だから僕は、これを受け入れる。

 だってこれは、僕にしかできないことだから。

 紅色と黒色の弾幕が、静かに僕に溶けていく。

 完全にそれが僕の体に溶けた時、僕は、涙を流した。

 ……こんなにも苦しくて、辛い思いを、2人は1人で抱えていたのだと、“理解”したから。

 だからどうしても、僕の涙は止まってくれなかった。

 僕が1人、静かにそう涙を流していると、2人が、ゆっくりと目を開いた。

 そして同時に、片腕をついて起き上がる。

 ……あれほど激しい攻防を繰り広げても尚、こんな短時間で目を覚ます。

 ……それは、例え吸血鬼だとしてもあり得ないだろう。

 ならば、原因は、先ほどのアレしかない。

 ……今はそんなこと、関係ないし、わかりきっていたことなのだけれど。

 2人は少し辺りを見渡し、互いの姿を捉えると同時に、互いに、強く抱きしめ合っていた。

 それはまるで、互いが互いを確認し合っているかのようだった。

 僕は、それを少し眺めてから、2人が気がこちらに向いてしまわぬように、静かにそっとに立ち上がり、この木の裏まで歩を進め、そこで、力なく腰を下ろして、小さく、血反吐と共に、吐き捨てるように呟いた。


「……よく、頑張りましたね。」


 その声は誰かに届くことはなく、ただ微風に拐われていった。

 そうして、深過ぎる暗闇が広がる底の見えない海の中へと沈んでいくように。

 僕は、意識を手放した。

 その微睡む意識の中で、どこか遠くで、とてもとても、懐かしい声を、聞いた気がした。






 

 ……少しずつ、少しずつ。意識が覚醒していく。


 不思議な浮遊感と、そこはかとない“既視感”を感じながら、僕はゆっくりと、重過ぎる瞼を動かした。



 ……そこに、広がった光景は———













 ———有り得る筈のない、光景だった。










どうもこんにちは!前書きでも言ったけど久しぶりのASADEです!

いやぁHAHAHA!もの凄く投稿期間が開きましたね!

HAHAHAHAHAHAHA!

……

……すみませんでしたぁ!

まぁこれからも投稿は続けていくので、よかったら見

てくださいね。(投稿頻度が上がるかは謎)

それではこれ(?)で、さよなら、さよなら、さよなぁら〜♪

……

サラダバー!(←何故2回目?)

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