お菓子探偵は1000字で事件を解決する
ある密室で男が殺された。
犯行現場は一軒家で一階リビング、被害者は男性で水谷樹。
現場にはオーパーツのように発砲スチロール製雪だるまが残されていたそうだ。
容疑者はチャラいサーファーみたいな息子の修。
「犯人あんたでしょ」
巽さんはもぐもぐと今日の当たり目のクッキーを頬張り、口を動かす。
「もう、飲み込んでから話してください。巽さん」
僕は持っていたポットから味噌汁を注いで渡す。
巽さんは甘い物を食べないと事件を解決できない探偵だ。
ちなみに甘いものはサイコロを振って決め、その日一日はそれしか口にしない。
全く持って不健康極まりない人で、その上甘い物には味噌汁しか合わせない、ちょっぴり変な味覚人。
だから助手の僕は味噌汁にこれでもかと野菜と肉を入れておく。
「下野、これ飲みづらい。味噌汁は出汁と味噌だけで十分だって」
「いいから解決してください。で、理由は?」
急き立てる僕をジト目で見て、巽さんは紙コップ片手に
「被害者の名刺に『全国雪だるま協会』の名刺があって、ロゴが胴体が1つタイプ、犯行現場は2つタイプが置かれてた。多分雪だるまの作り方に意見の違いでもあったんでしょう? 副会長さん」
と、巽さんは修さんを指さす。
「って……。ええっ、それが殺した理由!?」
「殺した訳じゃない。もみ合って偶然あの重量のある置時計に頭をぶつけた。だから文字盤側に血が付いた」
「じゃ密室は?」
「密室だと思い込まされてただけ。誰でも自由に出入りできた。死亡時刻は午後3時だけど、本当は午後1時」
蒼白な顔で修さんは言った。
「そんな。僕はずっと自分の部屋にいて、交差点からの目撃者だって……」
「目撃者は鏡に映った修さんの姿を見ていた。君がお父さんのカッコでね。似てるわねぇ、さすが親子」
観念したのか修さんはがっくりと肩を落として白状した。
「雪だるまは自由がいい僕と、2段の雪だるましか認めない父とで言い争い、勢い余って……。でも殺すつもりなんてなかった!!」
「そうね。もっと早くこれ見ればよかったかも」
巽さんがビデオカセットテープをデッキに入れて再生すると、二人が楽しそうに雪だるまを作っているところから始まり、サッカーでハットトリックを決める姿、卒業式に入学式。
映像加工もあり、本格的な造りの成長記録映画だ。
次々に場面が切り替わり、エンドロールが流れる。
二人がスーツ姿で名刺を持っている姿と、
『成人おめでとう修』
で終わり、修さんは泣き崩れた。
エンディングは「聖母たちのララバイ」を脳内再生してやってください。




