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運命は必然なのです!  作者: タロト
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第一話 ぶかぶかの制服に身を包んだ私たち②

主人公

・神谷 夢

非科学的なことを信じるタイプの主人公。話し合いにはある程度本気で望むタイプ。


・現世 真

科学的なことを信じる主人公。話し合いは基本早く終わらせることを望むタイプ。

ちっ。


どうなってる。


こういうのは、教師が事前にまとめ役から発表役まで、トラブルが起きないように決める基準を作っておくものだろ...。


僕の名前は、現世うつつまこと


よく、シンと言われるが、真だ。

現世は大抵初見じゃ読めない。


親に敷かれた、トップの私立高校へのレールに嫌気がさし、親が一番嫌いそうな私立の、学力はそこそこのこの高校に入学して早々、こんなトラブルに巻き込まれている。


巻き込まれる、という説明が正しいかはさておき、出会って早々の人間と班を組まされ、学年テーマの曲の案を出させられている我々は、深刻なコミュニケーションエラーに悩まされていた。


だが、こういうのは、とりあえず何か

話さないと始まらない。


そんなことを考えていた矢先、ある一人の女子が話し始めた。


「えっと...みなさん。何か案あります?」


ナイスだ。

この一言から会話というのは始まる。


しかし、他のメンバーは話し始めない。

周りを軽く見渡して、そうっすねーという雰囲気だけ纏っている。



会話という戦場に覚悟を決めて入った彼女は、もはやそちら陣営なのだ。


この班が6人なので、1:5。優勢なのは、話さない陣営、ということだ。


まずい。


このままだと、意を決してそちら側へと入った彼女をみすみす死なせるだけになってしまう。


「とりあえず...。」


そう、とりあえず。


「僕が、進行役しましょうか?」


これでいい。


僕の打った手は、死にそうなこの局面を打開するものだ。


死線を乗り越える、勇気ある一撃。


みんなが黙って頷く。


そう。

彼らだって鬼ではない。


人間として、恐れた結果の行動なのだ。


「では、みなさん一つずつ曲の意見を出して、それで最後多数決にしましょう。」


「はい!」


元気そうな女子が返事をする。


他のメンバーもしたのだろうが、位置関係的にか声量からか、彼女の声しか聞こえなかった。


僕はあまり曲知らないし、Memoryという無難そうな曲をチョイスした。


よし、これであとは何事もなく終わってくれ...。


「それじゃあ、それぞれ決まったら、僕の右の君...半波はんみ君だっけ?から時計回りで発表してくれるかな?」


「おう。俺はやっぱり、今流行りのロックバンド、Bad endの僕と君のラプソディーがいいと思うな。

みんなも、ロックの方が何かと好きだと思うし。」


...?


何かと、の内容物が一つも分からない上に、そんなバンド聞いたこともないが...。

周りの反応を見てみても、誰一人として知ってそうな人はいなかった。


半波は見た感じ全くおかしな雰囲気のない、ごく普通の男子高校生の基準と言えるような感じだったのだが...ふざけたのか?

「...。ありがとう。じゃあ、隣の君...相田さんかな。発表してくれるかな?」


「はい。私は、sekai wa owaranaiの、恋煩いがいいと思いまーす。」


こうして、無事に全員が意見を出し合った。


「それじゃあ、せいので、自分が最もいいと思った人に指を差そうか。自分でももちろんいいよ。せーのっっ!」


全員が指を差す。


俺は、適当に左の元気な女子...神谷さんだっけか。が出した、Thunderという曲に決めて、彼女を指差した。


彼女は僕の挙げた曲、Memoryを気に入ったのか、僕を指している。


他のメンバーはと言うと...。


「全員一票ですか...。」


他の班員は、自分を指していた。


「なんかよくわかんねーんだけどよお...。全員に自分が好きな方指せって言うなら自分になるんじゃねえのか?」

と言い出したのは、日に焼けた男子生徒、天谷あまたに 翔平。


「あ..。うん...そうだね...。」

こういうのは、大抵自分以外の指すの!


雰囲気的に一番決まりそうなの指すの!!


「じゃあ、自分以外で指そうか...。」


気を取り直して。


「せーのっっ」


僕は今度も神谷を指した。

理由は簡単。


前回僕が彼女を指していたことによって、みんなに印象付けたはずなのだ。


彼女には、彼女以外の票が入ったと。


そう、つまり彼らが今持ちうる情報の最大のものが、彼女には前回別の人からの票が入ったというものなのだ。


つまり、彼らの中で、きちんとこの投票の真意(なんでもいいから早く決めたい)が伝わっているものがいれば、次に指すべきは彼女。そうわかってくれるはずなのだ。

(同一条件に僕も当てはまるが、自分に投票できないので、今回の僕の最適解は彼女となる。)


そして、


「全員一票ですか...。」


誰にも伝わってねえええ!!


いや、もしくは本気で決めたいのか。

これに結構本気なのか?


もしくはバカかだ。


「じゃあ、もうじゃんけんで決めましょうか。六人だとなかなか決まらなそうですし、ここは、3人ずつでじゃんけんして、勝ち残った一人ずつでジャンケンしてって感じで決めましょう。」


というわけで、3人...。


僕と、半波、そして小暮という男子生徒でじゃんけんをすることになった。


「じゃあ行きますよ。最初は...」


「ちょっと待ってくれ...。」


そう言い出したのは、小暮くん。


「どうしたんですか?」


本当にどうしたんだろう。


「このジャンケン、おかしいと思いませんか?


なんというか、こんな簡単なことで終わるとは思えないというか。」


...本当に君は何を言ってるんだ。


「実は、俺も思ってた...。そもそも、この3人によるじゃんけんに持ち込んだのは誰だ?」


と、半波。


「僕ですが...?」


満を持したかのように小暮が手を顔の前で組む。

「このジャンケンには、必勝法がある...。」



.......?

本当に狂ってるのか?この人たち?


「何だって!!それはどんな手だ...?」


いやいや半波。そこは突っ込めよ。乗るんじゃない。


「それはだ。一人協力者がいれば確実に勝てるのだよ。


つまり、勝ちたいやつをA、協力者をB、もう一人をCとしよう。」


なんか始まった!!!!


「Aが出す手に対し、Bがそれを読むことができれば、BがAに負ける手を出せばいいんだよ。」


「でも、小暮くん...それだとAに勝つ手をCが出したら...はぁっっっっ!!!」


「そうなんだよ。そうするとBがCに勝つことになるから、ジャンケンは再戦となるだけ、ということか。」


「そう...だからこそ、犯人はあえて3人にこだわったんだよ!!このトリックのためにね!!!」


......おいおいこの展開はまさか....!!


「身に覚えがあるんじゃないですか...犯人、いや現世さんよお!!」


「えええええええええぇぇ!!!!!

ちょっと待ってくださいよ!!僕がその犯人なら、もう一人の共犯者はどうなるんですか!!」


なんだこの展開は。


推理ものの追い詰められた犯人の気持ちがわかる。


当たってようが当たってまいが動揺して、まさに犯人ムーブをしてしまった。


「えっと...僕視点は、半波くんになるんですが...」


まあ、そう言う感じになるよね。


「ちょっと待ってよ。それなら前回までの投票の時の説明がつかない。


前回までの同数票の時に俺が現世に入れれば今この場はないんだぜ?


決まってたわけだからな。」


うんうん。


「確かに...。」


いつまで続くんだ...?この茶番。


「まだタスクあるし、ここスキップで。俺と現世警戒で。」


「了解。」


アモアスするんじゃない。


「あの...とりあえずジャンケンしてもらえます...?」


そう言うと仕方ないかと言う顔で小暮がこちらを向く。


「そうだね、一回じゃんけんしてみないと始まらないしね。」


ふう。


「それじゃあ、行きますよ。


最初はぐー!じゃんけんぽい!!」


現世)ちょき


小暮)ちょき


半波)ぱー


「お前らじゃねぇか!!!!」


「なっ何言ってんだっっ!!!ふっっふざけんなよっっ!!!」



わかりやす...。



「しかも、これで僕と小暮くんの1vs1ですよ。」


小暮&半波「あっ」



必勝法が崩れ去る音がした。





そしてその後、なんとか話し合いが終わった。



班代表の曲はMemoryに決まった。




ふう...。





とりあえず、状況が落ち着くまで...。それまでの辛抱だ...。

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