魔法による被害
「まさか、この辺一帯が冬になってしまうとはな。」
そう言っているのは、クルデン王国の騎士隊の隊長バルンである。
「ええ私も起きた時には、この状況でした。
正直驚きです。これほどまでの氷魔法が存在するなんて。」
「国一つ潰せるほどの氷魔法だ。
あのサイクロプスが一瞬で凍り付いてしまうのだからな。
だがエレーナ君が生きていたのが何よりよかった。」
この国の騎士の中でも上位の実力であるエレーナを失うのは大きな損失だろう。
「君が見た、不思議な格好をした男がこの氷魔法を使ったとみていいのだな?」
「はい。おそらくこの惨状は彼が引き起こしたものでしょう。
彼が氷魔法で作られた剣を持っているのを見たので、間違いありません。」
「この強大な魔法を打たれたら、この辺一帯の土地は使い物にならなくなってしまう。
そのため、君が見た男を探しているのだが、全く見つからない。
いったいどこに消えたのだか?」
戦国時代 伊賀の地
「ここは、ああ戻ってきたのか。」
ここには、伊賀の乱で散っていった兵や忍びの骸が転がっていた。
(上位種討伐により、神格が上がりました。
ギフトとしてスキル:六道の目を手に入れました。)
また頭に声が聞こえた。
まだ少しボーっとしているが立ち上がろうとしたとき、出血がひどいため立ち上がれなかった。
「そういえば腕をなくしたのだったな。このままでは失血死してしまう。」
(体に欠損した部位を確認、命にかかわるため処置させていただきます。)
再生プログラム構築。
欠損部分、腕。
スキル:氷の剣神を発動
「なにっ!」
また頭の中で声が聞こえてきて、意味がわからないこと言ったと思えば、
左腕があった場所に魔法で作った雪が集まり、左腕を再生していったのだ。
「どういうことだ!なぜなくしたはずの左腕が元通りになったのだ!」
(氷魔法を応用して新しい左腕を構築しました。)
「もはや何でもありだな。」
(この程度の体の欠損であれば、簡単に治せます。
それがスキル:氷の剣神の力です。)
侍は氷の剣神がどれほど規格外かを理解した。
「先ほどの魔法はいちいちお前に許可を取らねば打てぬのか?」
(まだ神格が足りないため、打つ場合は私を通していただくことになります。
もっとも、今は魔力が足りないため氷の剣も出すことはできませんが。)
どうやら先ほどの魔法で、力のすべてを使い果たしてしまったらしい。
(そのため、この時代にしばらく滞在して魔力の回復を待つしかありません。)
「それはどのくらいで回復するのだ?」
(約一週間です。その間一切の魔法を打つことはできません。
溜まってきた魔力を放出してしまえば、滞在期間が延びてしまいます。)
「わかった。一週間大人しくして、魔力とやらが溜まるのを待とう。」
そう言うと侍は戦場に落ちている。刀を拾い、山を下りて行った。
グルデン王国 王城
「近隣の村々の被害は?」
王城の中で王は、騎士隊長バルンに被害状況を聞いていた。
「ただでさえ今年は農作物が取れない時期であったのにも関わらず、
急に冬が来てしまったため、近隣の村から逃げ出す始末である模様。
犯人と思わしき男はまだ騎士たちを総動員して探していますが、居場所が分からないままであります。」
「そうか、では近隣の村には配給を用意しろ。
そして王城の宝物庫の二割を使い、被害のない土地に家を作り、そこに住むよう促せ。」
「はっ!仰せのままに。」
王がその命令を与えると、バルンはすぐに準備に取り掛かった。
「まさか、被害が拡大しているとは思いませんでした。それも広範囲に。」
「ああ、しかも隣国であるルマ王国との膠着状態でのさなかだ。
いつ隙を狙って攻めてくるかもわからない。
しかしエレーナ君、君が見たその氷魔法を使う男はどういう男はどのような格好をしていたのだ?」
「不思議な鎧を着て、髪は白く女のように後ろで結んでいました。」
「ということは、この国の者ではないだろう。
一刻も早く探し出さなければ!あの強大な魔法を使う男を逃がしてしまえば、強大な兵力として利用されてしまう。」
「しかし、敵国の人間であったなら、なぜ私を助けたのでしょう?」
「そのことも、見つけた後聞けばよい。とりあえず今は王命を遂行する。
ついてまいれ!」
「はい!」
豆知識
この侍は、伊賀の里と織田信長の戦いである、
伊賀の乱で織田側として戦っていました。
そこで忍びの夜襲により殺されそうになり、異世界へ行きました。