第96話 ラブレターは都市伝説(2)
「――アイ。悪いがちょっとついてきてくれ」
俺は、部下娘ちゃんの隊列の先頭を、肩で風切って歩くアイちゃんへ声をかける。
今日は難なく捕まえられてラッキーだった。
こいつ、基本、給食がカレーで美味そうとか、ドッジボールで無双したいとか、気に入ったイベントがない限り学校をサボりまくるからな。
「なぁにぃ? お呼び出しぃ?」
アイちゃんは背負ってたランドセルをナチュラルで部下娘ちゃんの一人に押し付けながら答えた。
「みたいだな」
俺はその場で手紙を開封し、中身を一読する。
シエルちゃんからの招待状だ。詳細は書かれていない。
「ふうん。まあ、いいわよぉ。チュウ子をからかって遊ぶわぁ」
アイちゃんを連れて、俺はそのままの足でシエル邸を目指す。
向こうもこちらが来るのを予期していたのか、門扉の前でソフィアが待機しており、すんなり応接室へと通される。
「わざわざ手紙じゃなくても、学校で直接言うか、携帯にメールをくれればいいのに。さっきまで一緒だったんだし」
俺は窓際に立ち、中庭を見下ろして言う。
眼下では、ソフィアとアイちゃんがじゃれ合いというには少々激しすぎる喧嘩を始めていた。
「……ワタクシ個人の用事じゃありませんもの」
「なるほど――つまり、本家の方が俺に用があると」
俺は即座に意図を察して答えた。
「ええ。お兄様が、近々大規模な戦をなさるそうですわ。それに際して、是非、ユウキたちにも兵士を貸して欲しいとおっしゃっています。報酬は、ユウキが望んでいた技術ライセンスの付与だそうですわ」
「『にも』ということは、やっぱり、俺の母にも当然話はいってるんだろうね」
「らしいですわね。詳しいことは存じ上げませんけど」
(これが俺の知っているイベントなら、本来はママンにだけお鉢が回ってくる所だが……。俺の力も多少は評価されてるってことかな)
シエルちゃんはお兄様に対して、俺という人物を好意的に報告しているに違いない。
加えて、今は教練を終えて本国へと帰還したカーラも、俺の能力に対して一定の評価をしたということだろうか。
(それに、先の神盟決闘でも勝ったし?)
ともかく、俺の名声が上がった結果、お兄様が俺にチャンスをくれる気になったという訳だ。
「声をかけて頂けるなんて光栄だね。――でも、詳細を聞くまではなんとも言えないよ。軽々しく、俺の部下の命は預けられない。危険性はもちろん、その戦争に大義があるのかも含めてね」
「ユウキならそうおっしゃると思いましたわ。ですから、ワタクシも何度もお兄様に詳細を尋ねたんですけれど、要領を得なくて……。ただ、『聖なる騎士が悪い魔女をやっつけにいくんだよ』とばかり。お兄様はワタクシを子ども扱いされてるんですわ。もちろん、お兄様のことですから、悪いようにはなさらないと思うのですけれど……」
シエルちゃんが不満げに唇を尖らせる。
まあ、実際小学生だから子ども扱いは仕方ないよね。




