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第80話 近親なんちゃらは鴨の味(1)

「あららぁー。昔の同僚に随分なご挨拶じゃなぃー。オニキスぅ?」


「サードニクス。今すぐお兄ちゃんから離れてください。そうすれば特別に死に方を選ばせてあげます。頸動脈か、心臓か、脳か、どれがいいですか?」


「いやぁん。こわーい。お兄ちゃん。オニキスがいじめるぅ」


 アイちゃんがしなを作って甘えた声を出す。


 そのまま楓の忍刀をはじいて、俺に頬擦りしてきた。


 俺にはブチッっと、楓ちゃんの脳の血管が切れる幻聴が聞こえた気がした。


「もういいです。殺します。三回です。まずは全身を引き裂いてあなたの女としての外見を殺し、陵辱して心を殺し、最後にじっくり甚振りながら命を奪います」


「あらあらぁ。嫉妬は醜いわよぉ。残念ねぇ。お兄ちゃんに選ばれたのが、あんたじゃなくてアタシでぇ」


 アイちゃんはスイカの種を吹き出すような仕草でプププと笑った。


「それは何かの間違いです。本当なら私がお兄ちゃんの側に行くはずだったんです。直前でなぜかあなたに変更されましたけど、お兄ちゃんも本当は私を欲しがってたんです」


「そうなのぉ? お兄ちゃん。アタシをあんなに優しく助けてくれたのにぃ?」


「……アイを招いたのは、俺の判断だ」


 俺は表情筋を殺した顔で、淡々と言う。


 まあ、主にソフィアの要望だけど。


「――だ、そうよぉ?」


「いいえお兄ちゃん、楓は全部わかってます。母のせいで嫌々あのイカレメス犬を押し付けられただけなんだって。でも、安心してください。今そいつを殺してお兄ちゃんを解放してあげますから」


 楓ちゃんはそう言って、満面のマジキチスマイルを俺に向けてくる。


「やれるものならどうぞぉ?」


 同じくクレイジーな笑顔で言うアイちゃん。


「しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね」


「いきるいきるいきるいきるいきるいきるいきるいきるぅ」


 激しい剣舞が繰り広げられる。


 始めは互角。本来、持久戦となれば地の利のある楓ちゃんに軍配があがるはず。


 しかし、今の冷静さを欠いた楓ではアイちゃんを捉えきれない。さらに、徐々にクロウサがちょびっと時空ワープを挿し挟むと、完全にアイちゃんの優勢となった。


「なんでっ! なんで勝てないの! サードニクスなんて、せいぜい私くらいの力しかないはずなのに!」


 楓ちゃんは苛立たしそうに棒手裏剣を投げまくる。


「うふふ。これもお兄ちゃんに毎日かわいがってもらってるおかげかしらぁ。愛の力ってやつぅ?」


 アイちゃんはパッシブ煽りスキルを発動しながら、手裏剣を人差し指と中指の間に挟んで受け止め、投げ返す。


「他人のお前が! お兄ちゃんを語るなぁ!」


「他人ねぇ? 血の繋がりだけしか誇るものがないなんてみじめだと思わないのぉ?」


「黙れ」


「図星ぃ? 家族を作るのは、血縁じゃなくて、一緒に過ごした時間でしょぉ!? ひょっとしてぇだけどぉー、もしかしてだけどぉー。オニキスがお兄ちゃんと過ごした時間よりぃ、アタシがお兄ちゃんと過ごした時間の方がぁー、もう長くなってるんじゃないのぉー?」


 アイちゃんが歌うような口調で煽る。


 っていうか、アイちゃん。絶対に言ってはいけないことを。それ楓ちゃんのコンプ直撃の特級地雷です。


「うるさいうるさいうるさい黙れ黙れ黙れ。お兄ちゃんと私が結婚するのは生まれる前から決まっている運命なんです。だって、イザナギ様もイザナミ様もそう言ってますし、アガスティアの葉にもそう書いてあるんですから。これは絶対で決定事項なんです。お兄ちゃんは私と結婚して、二回も流産して辛いけれどそれを乗り越えて、サッカーチームができるくらいの幸せでにぎやかな大家族をつくるんで邪魔しないでください死んでください」


「はぁ? あんた頭おかしいんじゃないのぉ?」


 アイちゃん直球すぎぃ!

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