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第8話 ワンピースは夏の田舎の最強装備

 釣りの準備を終え、パジャマから半ズボンとTシャツというショタルックになった俺はぷひ子とみかちゃんと共に、堤防へ釣りに向かった。


 うん。あれだけイキった決意を表明した割には、ばっちりギャルゲーしてるが気にしない。これはギャルゲーではなく、いわば得意先への接待だ。そういう意味では経営SLGともいえる。


 俺は三人分の竿とクーラーボックスを持ち、みかちゃんは右手で日傘を持ち、左手をぷひ子とつないでいる。ぷひ子は、余った右手に、エロママンから持たされた昼飯と飲み物の入ったバスケットを持っていた。


「ねえ。ゆう。重くない? 私、竿を何本か持とうか?」


 先行していたみかちゃんが、楚々とした仕草でこちらを振り向き、上半身を前に傾けて、俺の顔を覗き込んでくる。


 ぷひ子を太陽とするなら、みかちゃんは数年に一度しか現れないスーパームーンのような美少女だった。かわいい系というよりは、切れ長の瞳をした美人系の顔立ちである。


 白いワンピースと麦わら帽子を装着し、黒髪ロングを自由に風に遊ばせている。


 オタクの田舎に対する集団幻想を具現化したような彼女は、年齢的には主人公の一歳年上で、高校編ではお姉さん兼先輩キャラとして登場、溢れるママみを見せつけてくる。


 現時点では俺より背の高いみかちゃんが前傾姿勢になると、色んなところでチラリズムが発生しているが、俺はロリコンではないので全く興奮はしない。


 ちなみに、みかちゃんのルートでは、この一見ノーガードで無防備そうな振る舞いは、実は主人公にだけわざと見せて計算ずくで誘惑していたというむっつりスケベ要素が明かされ、当時のオタクは大興奮したとかしないとか。そういえば、一時期くもソラのスレでは、『みかはかみ』とかいう謎の回文が延々とコピペされてたっけ。懐かしい。


「いや、大丈夫。俺、男だし」


 俺はぶっきらぼうに答えた。


 今なら性差別的役割分業だとSNSが炎上しかねない発言であるが、もちろん、これは俺の意見ではなく、主人公がこういう強がりを言うキャラだからである。実際、結構重い。俺は今七歳だし、そろそろ子どもの運動能力が飛躍的に伸びるゴールデンエイジっぽいから、トレーニングの計画を建てるか。


「そっかー。頑張れ男の子」


 みかちゃんが悪戯っぽく微笑んで、お姉さんぶった口調でそう言うと、再び前を向く。


 なお、彼女はくもソラの人気投票において、ぷひ子などは瞬殺でブチ抜いて、一位に君臨した。ビジュアルがいいだけでなく、CGの数もキャラクターグッズもぷひ子と同じくらい多く、声優も界隈で人気の人を使ってるからだろう。


 明らかに誰か偉い人が贔屓して(んほって)ませんか? というような優遇っぷりだが、主人公の初恋の相手であり、ぷひ子が嫉妬して殺すくらいの魅力的な美少女という設定なので、ある意味キャラ付けとしては正しいのだろうか。


 正直、俺は嗜好がマイナー厨なので、ぷひ子よりは好きなキャラだが、それほど惹かれるというタイプでもない。


 あっ、ちなみにぷひ子は今、めちゃくちゃダサいオーバーオールを着ている。興味ないけど。


 そうこうしている内に釣り場に到着した。


 堤防のコンクリートの地面に、ぷひ子、俺、みかちゃんの順に腰かける。


 両手に花狙い?


 いいえ。フラグ管理です。ぷひ子、みかちゃん、俺の席順だと、ぷひ子の嫉妬ゲージが上昇し、何かの拍子にぷひ子がみかちゃんをぶっ殺しそうで怖い。逆にみかちゃん、ぷひ子、俺の順だと、ただでさえ無駄に上がりやすいぷひ子の好感度ゲージを不用意にカンストしてしまう可能性がある。従ってどちらつかずのこのポジションがベスト。


 なお、蝉取りフラグを回収しない状態(みかちゃん生存状態)で、中途半端に納豆女の好感度を上げてぷひ子ルートに突入すると、トゥルーエンドの条件を満たしている時以外は自動的バッドエンド確定なので気をつけなければいけない。


 この歩く地雷ぷひぷひ女め。


 あ、なお、リアル事故フラグ回避のために、ばっちりライフジャケットも完備してます。


 そんなこんなで様々な配慮をしつつ、俺は初心者用のサビキ釣りの竿を、適当に準備し始めた。


ご拝読、まことにありがとうございます。


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