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第58話 高度に発達した呪術はCGエフェクトに似ている

「イキリくさって、ガキとジジイがナンボの――」


「ようやくアタシの出番ねぇー! 退屈すぎて寝落ちしそうだったわぁー」


 緋色の閃撃が宙を舞う。


 バタバタバタ、と。


 親分が啖呵を切る前に、部下たちは声もなく床に転がっていた。


「大丈夫? 殺してない?」


「余裕ぅー。ちょっと貧血で倒れただけよぉー。一応、脚と腕の腱も切っておいてあげたわぁー」


 アイちゃんは長く伸びた爪をペロっと舐めて言った。


 どうやら、アイちゃんはこの一瞬で、傷口を切って、血を吸って、焼いて止血までやってのけたらしい。


(さすがはケツァルコアトルの爪の切れ味)


 アイちゃんの爪は持ち込んだものではなく、パワーアップイベントで手に入れた能力である。今のアイちゃんは、元来の属性の炎に加え、風属性も使えるようになった。総合的には、攻撃力と素早さを備えたいい感じのアタッカーとなっている。


『素晴らしいエフェクトです! これなら、規制なしでそのまま使えそうですね! ――あっ、小百合さん。せっかくですから、小道具にそこに転がってるヤクザさんの本物の刀を拝借しましょう。あちらの柄の方が使い込んだ感があって良い』


 監督が拍手をして言う。


 ヤクザよりも監督の方がよっぽど怖いよ。


「な、なんなんだお前らぁー! 一体何をした!」


「狩る側から狩られる側になった気分はどぉー? お・じ・さ・ん」


 アイちゃんはメスガキ日本代表のような挑発的な声で言う。その爪が、親分の服を紙吹雪のように散り散りにした。


「ひいっ」


 親分が尻もちをついて失禁する。


「さあ、鬼ごっこを始めましょぉ! 早く逃げないとぉー、食べちゃうわよぉ?」


 アイちゃんが、『ガオッ』とライオンの真似をした。


 かわいい。かわいいけど――。


「アイ。仕事はきっちり最後まで」


「だってぇ、こんな雑魚共相手なら、もうちょっと抵抗してくれないとぉー、つまらないでしょぉー?」


 アイちゃんが、這う這うの体で逃げて行く親分を一瞥して言う。


『ええ! もうちょっと撮れ高が欲しいところです!』


 白山監督も叫んだ。


 もう。ちょっとみんな頭おかしいゾ?


 舐めプは色々良くないフラグが立つからやめて欲しいんだけどなー。


「ああああああああああ!」


 親分がドアの奥へと逃げていく。彼は頑張って隠し扉やらなんやらを使って時間を稼ごうとするが、アイちゃんの爪が全部壁ごとスッパスパにするから意味をなしていない。テレビ通販もびっくりの切れ味だ。


「あっ、柱斬っちゃったぁ。崩れるわぁー」


「もし小百合ちゃんたちが傷ついたら、二度と夢の国には連れていかないからね」


「もう、わかってるわよぉ。マスタぁー」



 半壊する屋敷。


 ブバァーン!


 落ちてくる屋根と倒れ込んでくる壁を、アイちゃんは炎の衝撃波で吹き飛ばす。



『小百合さん! 脚本にはないですが何かセリフを! アドリブで!』


『赤鬼と黒鬼。どっちになるかくらいは選ばせてあげるわ!』


 小百合ちゃん、この状況でも演技してる! さすがのプロ根性だ。


「くそぉ! くそぉ! なんじゃこれは。こんな、こんなことがあってたまるかい! ワシを、賽蛾組を舐めるなああああああああ!」


 瓦礫の破片にでも当たったのだろうか。額から血を流した親分はダンプカーの運転席へと飛び込む。


 うなるエンジン。煙る排気ガス。灯るフロントライト。


 ヤケクソ親分の駆るトラックが、『プオオオオオオオオオオン』っと、クラクション全開でこちらに突っ込んできた。


「鉄屑ごときでアタシを殺せるつもりィー? そもそも人類に鉄を溶かす炎を与えたのは誰だと思ってるのかしらぁー? うふふふふ。あはははははははは!」


 アイちゃんは哄笑しながら、拝むように両手を合わせて、天に掲げた。


 迫るダンプカー。


 振り下ろされる両腕。


 アイちゃんの手からほとばしる熱線が、ダンプカーを両断する。


 立ち上る炎。巻き上がる噴煙。


「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 親分は転げ落ちるようにトラックから脱出する。


「どこに行くのかしらぁー。血が、血が足りないのよぉー。神様に捧げる血がぁー」


 結構な火傷を負った親分に、躊躇なく追い打ちをかけるアイちゃん。


 親分をボコボコのギッタギッタにしてから、血を致死量ギリギリまで吸い取る。


『小百合さん! 風が吹いてます! 右側なら炎に巻き込まれずにいける! トラックの残骸に足をかけて! そう! それです! それです!』


 監督も絶好調。


『セイ・フク・カン』


 小百合ちゃんが恍惚とした表情で、ダンプカーからこぼれた砂利に、ポン刀を突き立てた。


 風がセーラー服のスカートをたなびかせる。


(……。さて。ヘリを呼んで、ママン提携の病院に怪我人ヤクザズを運ぶか)


 俺は視線をそらし、色々と見なかったフリをして、ガラケーを取り出す。そして、あらかじめ準備していたチャーターヘリに連絡を取るのだった。


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