第43話 たった一つの冴えた計画
「なるほど……。事情は把握しましたが、みかさんと祐樹くんが一緒にいる時間が増えると、美汐ちゃんが嫉妬しそうですね」
俺の話を聞き終えた祈ちゃんがずばり核心をついた。
ほんとそれな。
「その件なんだけど、嫉妬とかはともかく、みかちゃんだけじゃなく、他の友達も仲間外れにしたくないからさ。映画の物語の導入部の幼少期編でさ。ぷひ子や香たちにも出演してもらおうと思ってるんだ」
「プロの子役を使わず、にですか?」
「うん。例えば、メインヒロインは小百合さんだけど、彼女の幼少期役にぷひ子を使おうと思って」
「ふむ。今頂いている本だと、確かに子どもの頃のヒロインのイメージに美汐ちゃんはぴったりですね」
「そうだろ」
そもそもぷひ子を念頭に原案を仕上げたからな。
「ヒロインの幼少期が美汐ちゃん。とすると、相手役は?」
「香に頼もうと思う。あいつなら、そこらの子役には負けないくらいイケメンだろ?」
「ルックスは十分だと思います。でも、そもそも美汐ちゃんや香くんって演技できるんですか?」
「そこだよな。あまりにもひどかったら、エキストラでもしてもらうしかないかも。とにかく、俺はみんなで映画を作りたいんだ。ひどい映画でもいい。十年後、みんなで観て懐かしめるようなら」
俺は友情に厚い主人公スマイルを浮かべて言った。
「そうですね……。そんな映画ができたら、とっても素敵ですね」
祈ちゃんが、好感度が5くらい上がったような笑顔を浮かべて言った。
まあ、演技力に関しては何とかなると思っている。
というのも、本編のぷひ子ルートの高校編では学園祭の出し物として、クラスで演劇をやることになり、香が王子様役、ぷひ子がヒロイン役に選ばれる。二人の仲睦まじい姿に、主人公は、初めて嫉妬を覚え、幼馴染という曖昧な関係でお茶を濁していた卑怯な自分を自覚する――というシナリオがあり、その中で、二人共、一般客から拍手喝采を浴びる程度の演技力はあった。
(っていうか、いい加減、ぷひ子に興味を持ってくれよ、マイベストフレンド。頼むぜ)
わざわざ作品のクオリティを落としかねないことをしてまで、彼女たちを映画に出す理由は、二つ。
① 香とぷひ子を接近させて、ぷひ子の好感度を香に押し付ける。
② あわよくば、ぷひ子に芸能界に興味を持たせて、彼女の村脱出ルートを開拓する。
という目論見があるからだ。
「ゆうくん。私は映画に出なくていいの?」
「みか姉には、裏方をやってもらうつもりだよ。映画を撮るとなったら、この地域に詳しい人の助けが必要だしね」
みかちゃんは逆に目立ってもらうと困る。もちろん、演技はできるし、容姿端麗で色んなところからスカウトがくるレベルだろうが、彼女は基本的に薄幸属性なのだ。
もし芸能界にでも入ろうものなら、不幸な未来しか想像できないもんね。




