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第38話 表の顔は整形できる

「……なるほど。カバージョブとして、構成員を芸能事務所所属のタレントとする訳ですわね」


「うん。まあ、児童労働が許される職業って、子役か新聞配達員くらいだからさ。合法的にお給料が払えるようにね。あと、スキュラにいた子は社会常識を身に着ける余裕がなかった人も多いし、色々と目立つだろうけど、『芸能人だから』っていうレッテルがあれば、ある程度誤魔化せるし」


 人は理由を欲しがる生き物だ。徘徊する無職は不審者でも、徘徊する芸術家なら産みの苦しみに耐えている勇姿と捉えられる。


「そのために映画も撮る、と。なんとも剛毅な話ですわね。赤字覚悟と言う訳ですの」


「うん。でも、どうせなら当てにいくつもりだけど」


 今回の映画を撮る目的は二つ。


① 構成員たちを俺の周りに置いておく合理的な理由を作る


② 神社をPRして、解呪に必要な力を溜める


 ①は映画が当たろうが、こけようが構わないが、②を達成するには映画が当たって、文字通り聖地巡礼が発生するレベルのヒット作になる必要がある。


「当てに行くって、そんな簡単にいきますの? いくら宣伝費をかけても、ひどい映画に客は入りませんわよ」


「大ヒットになるかは分からないけど、大コケはないと思うよ。なんせ、主演女優がすごいから」


「どなたですの?」


「小日向小百合って知ってる?」


「ああ、存じ上げてますわ! ワタクシはこちらに来たばかりで、日本の芸能事情には疎いですけれど、あれだけテレビやCMでお見かけすれば嫌でも覚えます」


「うん。彼女の初主演映画っていう触れ込みだけでそこそこ客は入ると思う」


「まあ、それは素晴らしいですわね。でも、昨日たまたま『銀子の部屋』で観ましたけれど、彼女は『いつかは映画やドラマに挑戦したいと思っていますが、今はまだ演技の勉強が不十分なので……』とあまり女優業には乗り気じゃないようでしたが」


「ちょっとコネがあってね。無理を言ってお願いしたんだよ」


 アイドルに演技力なんて求められてない。むしろ、素人っぽい方がよかったりする。まあ、小百合ちゃんはスーパーアイドルなので、食わず嫌いしてるだけで演技も普通にできるんですけどね。


「あとは、監督と脚本ですか」


「監督は金を積んで巨匠を捕まえたよ。脚本はシエルもよく知ってる子に頼んでみる予定」


「あら、どなたかしら?」


「わかるだろう? 俺たちの仲間内で、その手の才能があるのは限られてる」


「ミカ――は優等生ですけれど、そういう意味でのクリエイティブなタイプではありませんわね。となると……まさか、イノリですの?」


「ご名答」


「あの子が趣味でブログに上げていた小説を読みましたけれど、誰も小学生が書いたとは思えないような素晴らしい出来でしたわ。でも、小説の才能と脚本の才能は別ですのよ」


「かもね。でも、どうせ映画を撮るなら知り合いの才能が開花して欲しくない?」


「全く、ユウキは、ビジネスライクなのか、身内に優しい人情家なのか、よくわからないお人ですわね」

 シエルはおもしろがるように言う。


 多分、体感、好感度が3くらい上がった。


 「いや、だから俺はいつも、後者のために、前者が必要だからそうしてるだけだよ。なんなら、シエルも映画に出てみる?」


「遠慮しておきますわ。今は目立つ訳にはいかない立場ですの」


 シエルは少し寂しげに微笑む。


 『今は』っていうことは、内心、満更嫌でもないのかもしれない。

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