表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/225

第23話 ケンチキついでにアイドルをヘルプ(1)

「はい、そうです。サイ多めで。ドラムはなしで。後は適当に」


 俺は、ケンチキこと、ケンシロウフライドチキン東京新宿店で部位指定する。


 ワープ費込みだと、高級フレンチが食べれる値段のファーストフードだ。わーい。


「美味いか?」


 二階の窓際の席に陣取った俺は、周囲に聞こえない程度の小声で隣に座った兎に尋ねた。


「ぴょん」


 兎は、腎臓マシマシのサイを骨ごとバリバリいきながら頷く。


「それはよかったなー。俺ももう少し食いたいがあんまり食べすぎるとぷひ子ママの晩飯が食えなくなる」


 俺は二個ほど鶏肉の塊を腹に入れた所で、ウエットティシュで指を丁寧に拭く。


 ケンチキが食べたい気分だったのは事実だが、それはもちろんついでである。


(――さて、もうそろそろか)


「兎。そのまま食ってていいから、ちょっと待ってろよ」


 頃合いを見計らって、俺は兎を置いて店を出た。


 とある撮影スタジオの前、どこからか情報を聴きつけたファンが、早くも出待ちしている。


「場所取りすんません。これ、差し入れです」


「……」


 最前列で待機していた黒服は、やんわりと首を横に振って断った。


 ママン経由で雇った一流のプロは、職務中に軽々に飲食などはしないということだろう。


 さすが意識が高いぜ。



 ガチャ。



 おっ、出てきた。出て来た。


 フリフリの服を着た中学生くらいの美少女が姿を現す。


 女性マネージャーに庇われながら、送迎者に向かって歩いていく。


「小百合ちゃーん! こっち向いてー!」


「愛してるううううううう!」


「サインくださああああああい!」


 ファンたちの黄色かったり、茶色かったりする声が、小百合に投げかけられる。


うん。見ての通り、小百合ちゃんはアイドルです。


 モー〇ング娘やらの数人組のアイドルユニット全盛期に、時代遅れのピンで戦う昭和の歌姫という設定です。


「佐久間さん。少しだけ、いいですか?」


「次の仕事もおしてるんだけど……」


「数分だけですから」


 小百合ちゃんは、そう言ってマネージャーに断りを入れ、気さくにファンサービスに勤しむ。


 全くアイドルの鑑だよ。


「うおおおおおおおおお! 小百合! 永遠に一緒だよおおおおおお!」


 と、いきなり飛び出してきたのは、不精髭の不審者。


 白刃を手に、怒涛の勢いで小百合に襲い掛かる!


「キャアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 小百合の悲鳴が夜の街に響く。


「このっ!」


 マネージャーが咄嗟に小百合を庇うように進み出る。


 ガッ。


 その凶刃がマネージャーの首筋を捉える寸前、俺の雇った黒服が、暴漢を羽交い絞めにした。そのまま、犯人の首を絞めて落とす。


「――あ、ありがとうございます」


 小百合はガクガクと震えながらも、はっきりとした声で言う。


 さすが人気アイドルは胆力があるね。


「……仕事ですから。礼は雇い主に」


 黒服が俺に視線を遣った。


 俺は静かに一礼する。


「雇い主……。あんな、子どもが」


「と、とりあえず、車に乗りましょう。収拾がつかなくなるわ」


 騒然となる現場を見て、マネージャーがそう提案する。


「わかりました。あの、お二人共、もしよろしければご一緒に。お礼をしたいので」


「では、お言葉に甘えて」


 俺は黒服と一緒に長めな高級車に乗り込んだ。


ご拝読、まことにありがとうございます。


もし、『面白い』、『続きが気になる』などと思って頂けましたら、広告の下の☆から応援を頂けると、とても執筆の励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ