第16話 のじゃロリ供養RTA
ロリババアは浪漫。
ここまでくると、そろそろあいつが――、お、いたいた!
「……お主、男のくせにわらわが見えるのか。――というか、なんじゃ! このうるさい鉄の塊共は」
崩れかけの鳥居の上に腰かけていたロリババアが俺を睥睨し、驚いたように叫ぶ。
待ってたぜ! ロリババア! 今楽にしてやるからな。
「こんにちはー! 突然ですが、朗報です! あなたが昔愛した男は、実はあなたを裏切ってません! あなたを愛し、あなたを守るために、最後まで戦い抜きました! これがその証拠です!」
俺は工事音に負けない声で叫んで、既に回収していたストーリー上のキーアイテムをのじゃロリに向かって投げつけた。具体的には、兜とか、思い出のかんざしとか、ほら、まあ、よくある戦国時代の悲劇ってやつですよ!
「そ、そんな。砂王丸、わらわは――」
ロリババアが万感の想いがこもった涙を流し始める。感動的なシーンだね。
でも、すまん。余韻に浸ってる時間はないんだわ。ぷひ子たちが帰ってくる前に工事を終わらせないと、変なフラグが立って凶事が発生しかねない。
「咲夜姫、砂王丸さんが待ってます。あるべき場所に還りましょう」
「じゃが、妾は兎の呪いにしばられて、この社を守らねば――」
「その兎はここにいます! 真名も解明済みなので、もう縛りはなしです! だから、安心して逝ってください! な、兎」
「ぴょぴょーい!」
時空兎がぴょんぴょん跳ねる。
ロリババアの魂を過去に送る代償? そんなもんはいらない。ロリババアはそもそもその存在自体がこの世の理を歪めてしまっているイレギュラーな存在だからね。むしろ、彼女をあるべき場所に戻してやるんだから、俺が報酬をもらってもいいくらいだ。
ほら、その証拠に時空兎もやる気まんまんだ!
「よ、よいのか? 数百年の間、何をやっても解けなかった呪いが、こうもあっさりと……」
「いいじゃないですか。突然降りかかってくる不幸があるなら、突然訪れる幸福もあったって」
俺は脊髄反射て適当にでまかせを述べる。
兎が手をかざして時空送りの呪文の呟きはじめる。
「そうじゃな……。そうかもしれぬ……。ああ、ようやく、わらわも永劫の苦しみから解き放たれるのじゃな……。何奴か知らぬが、礼を言おう。残穢に苦しむ者があらば、これを使うと良い」
ロリババアの姿が光り輝き、段々と透明になっていく。ついでに、戦利品として、強力な浄化アイテム、ロリババアの護符を手に入れたぞ!
「ありがとうございます。それにお礼の言葉なんて必要ないですよ。だって、砂王丸さんは俺の前世の一つっすからね!」
俺は彼女に、親指をサムズアップして応えた。
さすがは伝奇もの。俺の前世は、作者の知らないドラゴンの某アニメ主人公くらいいっぱいあるぜ! あっ、ちなみに原作の方はギャグとかじゃなくてマジでおもしろいので、馬鹿にする奴はブッ飛ばす。
「な! それはどういう――」
目を見開いて疑問を呈そうとしてきたロリババアだったが、もう遅い! タイムアップで過去に流されていった。はい、合掌パート2!
(ふう。これでようやく、社に手が出せるな)
俺は一呼吸おいて、禍々しいオーラを放つ拝殿に向き合った。
ご拝読、まことにありがとうございます。
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