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第152話 不幸中の幸い(1)

「お前ら! 今すぐ騒ぐのをやめろ! 止めないなら、俺は俺の金玉を潰すぞ! そしたら、お前ら全員、目的を達成できないだろ!」


 俺はぷひ子を静かに玄関先に寝かせ、そこらに落ちていた石片を手に取って叫んだ。


「もぉー、しょうがないわねぇ。やっと盛り上がってきたところだったのにぃー」


「……生殖機能が損失したら、任務が達成できなくなる」


「マスター、申し訳ないっす。また、カタギに迷惑かけちゃったっす」


「少々悪ノリが過ぎましたわね」


 ピタっと戦いを止めた少女たちが、気まずそうに顔を見合わせる。


「脈は――大丈夫そうだな。呼吸も安定している。随分と不自然な倒れ方だったが――なあ、ユウキ。まさか、ミシオもスキュラの関係者だとでもいうのか? それとも、なにか持病でもあるのか?」


 ぷひ子に駆け寄ったソフィアが怪訝そうにこちらを見た。


「いや。そのどちらでもないはずだが……。とにかく、中に運ぼう」


 俺はぷひ子を抱き上げて言う。


 事実、ぷひ子の肉体自体は健康そのものである。心の方がぬばたまの姫にアレされているだけで。

研究所とは関係あるといえばあるが、ソフィアちゃんの言う意味での直接的なつながりはない。ぷひ子の憑依体質はナチュラルボーンだからね。


(嫉妬の感情が許容量を超えて、ぬばたまの姫に完全に乗っ取られる前にオーバーフローしたのか? 不幸中の幸いというやつか……)


 俺は意識を失ったぷひ子の顔を観察して、そう結論づける。


 本編でぷひ子の嫉妬が爆発する場合は、どのルートでも、眼の前で他のヒロインとのイチャラブを延々と見せつけられて、じわじわと闇に浸食される感じであった。少なくとも、こんなに急速沸騰でワチャワチャになるラブコメ展開は存在しなかった。


 例えるなら、あれだ。『身体に当たった銃弾は、中途半端に身体の中に残るよりも、貫通した方が被害は少ない』みたいな感じ。


「家人の許可を得ないのは不躾だが、緊急事態だしやむを得ないか」


 ソフィアちゃんはそう言って、両手が塞がっている俺の代わりに、ぷひ子家の玄関の扉を開いてくれた。


「おばさん! 失礼します! 美汐が――」


 俺はぷひ子家の奥に呼びかける。


「はいはーい! あら、ゆーくんいらっしゃい――もしかして、発作?」


 廊下の先からパタパタと駆けて来たぷひ子ママは、ヘッドホンを外して、すっと目を細めた。


「はい。このまま美汐をベッドまで運びます」


「わかったわ。私は着替えを用意するから、少し待っててね」


 ぷひ子ママが俺の言葉に頷く。


 そのまま俺は階段を上り、ぷひ子をベッドに横たえた。


「ゆーくん。お疲れ様。リビングで待っててくれる?」


 やがて、ぷひ子ママがパジャマを手に階段を上がってきた。ぷひ子を締め付けのゆるい寝間着に着替えさせるつもりだろう。


「はい。――すみませんが、他の奴も中に入れても構いませんか?」


「ええ。構わないわ。色々、事情があるみたいだから」


「ありがとうございます」


 俺はぷひ子ママとバトンタッチし、部屋の外に出る。


 そして、外で待機していた一行をぷひ子家のリビングへと導いた。


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