第150話 俺の幼馴染と婚約者と任侠娘と無口っ娘が修羅場っている(2)
「あー、ダイヤ! ギブアップっすか? なら、小生にバトンタッチっす! ――ええっと、ほら、マスター。今なら、ダイヤを選べば、漏れなく小生もついてくるっすよ! お得っすよ! お得! 出血大サービスっす! 酒池肉林っす!」
虎鉄ちゃんが深夜の通販番組みたいなことを言い始めた。
でもすまんな。
俺、前世で、勢いで腹筋鍛えるやつを買ったら全然効果なかったから、こういうのは信じないって決めてるんだ。
「お下品な誘い文句ですわね……。――でも、そういうことで申し上げるなら、もしユウキがワタクシと結婚すれば、ソフィアや、他のメイドたちも一緒について来ますのよ? あなた一人で、ワタクシの美しい使用人たちに対抗できまして?」
シエルちゃんはそう言って、ソフィアちゃんの肩に手をかける。
「お、お嬢様。お戯れを」
ソフィアちゃんがちょっと頬を赤らめて、口をへの字にした。
「あああああああああああああ! 負けたっす! だって、虎血組にはむさくるしい男衆しかいないっすもん! こんなん八百長っす!」
シエルちゃんにワンパンで論破された虎鉄ちゃんは、俺の肩から手を放すと、地面に大の字になって倒れた。
弱い。弱すぎるよ。虎鉄ちゃん。
「……パターンA失敗。パターンBに移行する」
ダイヤちゃんは、先ほどまでのお間抜けなレスバなどなかったかのように、クールにインカムへ告げた。
「えっと、その、パターンBとは?」
俺は嫌な予感に思わず身構える。
「……説得が無理なら、既成事実」
そう呟いた次の瞬間、ダイヤちゃんはスポポポーン!っと、来ていたスーツを脱ぎ捨てた。
そして、躊躇なく、無味乾燥な白い下着へと手をかける。
やがて、下着を道端にポイ捨てし、一糸纏わぬ姿になりかけた所で、俺は視線をそらした。
紳士なのは主人公のマナーです。
「ちょ、ちょっと、あなた、そんな、はしたない! 仮にもレディーでしょう! つつしみを持ちなさい!」
シエルちゃんも『見ていられない』とでも言うように、顔を手で覆う。
「……どうでもいい。……私の任務に失敗はない」
ド〇ターXのような台詞を吐き捨てるダイヤちゃん。
その影が、俺へと迫りくる。
(無口っ娘あるある! 偏った性知識と不器用さのせいで、異性に極端な行動とりがちいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!)