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第147話 俺の幼馴染と婚約者と任侠娘が修羅場っている(1)

「美汐……。聞いたのか」


 俺はシリアス顔を決め込んで、ぷひ子へと近づいていく。


「うん。……ゆーくん? シエルちゃんと結婚するの?」


 ぷひ子が俺の服の袖をギュッと掴み、俯いたまま低い声で言った。


「結婚じゃない。婚約だ」


「同じでしょ!?」


「違う。もし結婚するとしても、それは10年以上先のことだ。今日明日にという話じゃない」


「ゆーくんはそれでいいの?」


「……ああ。今の俺は、もう俺一人のものじゃない。たくさんの部下を抱えている。彼女たちの未来を守るために、この婚約は絶対に必要なんだ」


「私には難しいことはよくわからないけど、今はみんなの話じゃないでしょ! ゆーくんの話だよ! ゆーくんはシエルちゃんのことが好きなの!?」


 ぷひ子が俺の服の襟を掴んで揺さぶってくる。


「シエルのことは親友だと思っている。だから、友達という意味では好きだけど、恋愛という意味では好きではない」


 俺は赤べこのように首をガクガクさせながら答えた。


 若干、シエルちゃんの好感度ダウンが心配な発言だけど、大丈夫なはず。


 シエルちゃんは、『まだ』俺を異性としては意識していない。


「じゃあ、シエルちゃんと結婚なんかしちゃだめだよ。結婚は恋人同士がするものでしょ!ゆーくんは、シエルちゃんと結婚してそれで幸せなの!?」


「わからない。でも、今、シエルと婚約をしないと、俺の仕事は破綻する。そしたら、俺は部下の子たちを守れない。そして、彼女たちを守れないなら、俺が幸せでないことは確かだ」


 俺は額に汗を滲ませながら呟く。糸を針に通すような、繊細な選択肢のかじ取り。


 ヒリヒリするぜ。


 こういう時は、とにかく嘘をついてはいけない。正直に思っていることをぶつけるまでだ。下手な小細工は状況を悪化させるだけだ。


 一方、俺の背後も騒がしくなり始めていた。


「えー! シエル嬢、マスターと結婚するんっすか! ずるいっす!」


 悔しげな虎鉄ちゃんの声。


 バンッっと、地面に何かを投げつける音。


 イライラして、ランドセルを放り投げたのか。


「そうおっしゃられましても、困りますわ。家と家のことですもの。人は誰しも自分の生まれを選べないものです」


 シエルちゃんが困惑気味に答える。


「つまり、シエル嬢は別に、マスターにラブしてないってことっすよね?」


「ええ。ユウキのおっしゃっていた通り、ワタクシもユウキを馬が合う異性のお友達だと考えておりますわ」


「じゃあ、小生でもよくないっすか!? もちろん、シエル嬢のお家の方がでっかいことはわかってるっすけど、シエル嬢との掛け持ちで小生もイロにしてくれてもいいじゃないっすかー! マスター!」


 虎鉄ちゃんは叫ぶと同時に、俺の背中が重みを感じる。


 虎鉄ちゃんが子泣きジジイみたいに抱き着いてきやがったのか。


(おい脳筋こら! 部活みたいに言うんじゃねえ! 恋愛云々関係なく、俺は反社とつながりたくねえって言ってんだろ! 三歩歩いたら忘れる鳥頭か、この野郎!)


「こ、虎鉄さん、話がややこしくなるから、ちょっと今は勘弁してもらえないかな」


 俺は心の中で悪態をつきながら、ぷひ子から視線をそらさずに呟く。


「ゆーくん、虎鉄ちゃんとも結婚するの?」


 ぷひ子がそんなとち狂ったことをほざきはじめる。


 彼女が纏う闇のオーラが、更に濃くなった気がした。


「いや、虎鉄さんの件に関しては、さっきはっきり断ったばかりだぞ――」


 再び弁解を始める俺。



 チャチャチャチャーチャ。チャチャチャーチャ。チャチャチャチャーチャ。チャチャチャチャー。



 間が悪くポケットの携帯が鳴り出す。


 流れ聞える『ワルキューレの騎行』。


 この着メロは――ママンだ!


(悪いな。ママン。今は爆弾処理中だ。電話に出てる場合じゃねえ!)


 もちろん、こんなのシカト一択に決まってる。


「でも、虎鉄ちゃんとゆーくん、まだ仲良しみたいだし」


「少なくとも、今のこの激しいスキンシップは、俺の本意ではない!」


 俺は腕を振り回すが、虎鉄ちゃんは一向に離れてくれない。


 だって、ヒドラの筋力を凡人の俺氏が振り払うなんて無理ゲーだから仕方ないじゃん!


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― 新着の感想 ―
[一言] これは…ガバですかね… 主人公はママンというカンダタの糸を掴めるのだろうか、それとも気付かずにここで終わってしまうのだろうか…主人公の明日はどっちだ!
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