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第127話 フーテンの虎ちゃん(1)

「――そういう訳で、家を出てきちゃったっす! 雑巾がけでも何でもするんで、ここに置いて欲しいっす!」


 とある夕刻。俺の家のリビング。


 テーブルの向かいに腰かけた虎鉄ちゃんが、拝むように頭を下げる。


「なるほどね……」


 俺は神妙な面持ちで虎鉄ちゃんの話を聞き終える。


(あのさあ……。そういうテンプレ家出イベントは、ヨソでやってくれる? 俺はファーストの主人公であって、セカンドの君の担当じゃないんだけど)


 内心ではそんなお役所じみたことを考えるが、困っている女の子は助ける一択なのが主人公の辛いところだ。まあ、一応、俺が竜蛾組の組長を成敗しちゃったことが喧嘩の遠因になっているっぽいので、放っておくのも気が咎める。


「お願いっす! もし、祐樹くんに断られたら、小生は路頭に迷うしかないっす! 実家の近くは親父の知り合いばっかりっすし、かといって、他のヤクザのシマに行って何かあったら、組に迷惑がかかるかもしれないっすし。……正直、帰りのバス代すらないっす」


 虎鉄ちゃんが途方にくれたような表情で言う。


「そう。大変だね……。――結論から言うと、俺としては、虎鉄さんを預かってもいいと思ってる」


「本当っすか?」


 虎鉄ちゃんがぱっと顔を上げて、期待に目を輝かせる。


「うん。でも、もちろん、俺の母にも、組長さんにも、虎鉄さんが俺のところにいるということの連絡はいれた上で、という条件付きだけどね」


「えっ……。それは、なんとか、勘弁してもらえないっすか。自分のケツを自分で拭けずに、祐樹くんを頼るって、我ながら、かなりダサくて恥ずかしいんっすけど」


「うーん、なるべくなら、虎鉄さんの意思を尊重してあげたいんだけど、君は虎血組を破門されたんだよね? 破門状が出回ってるってなると、その相手をかくまうのは虎血組への敵対行為になりかねなくてさ。俺と虎血組さんとは、母を介してだけど、ビジネス上の取引があるし、不誠実な態度はとれないよ」


 これがくもソラのヒロインであれば、俺は虎鉄ちゃんの好感度を最優先して、親父さんに黙っていてやっただろう。しかし、彼女は俺にとっては攻略対象ではないので、そこまでの便宜は図れない。


「そりゃ、そうっすよね……。ああああ、なんてアホなことしてしまったんすか! 小生は!」


「そう落ち込まないで。確かに名誉なことではないかもしれないけど、命と健康さえあれば、人はいつだって再起できるよ。とりあえず、組長さんも、虎鉄さんも、お互いの頭が冷えるまで、ちょっと距離を置くこと自体は悪くないと思うし。まあ、休暇か短期留学だとでも思って、ゆっくりしていってよ」


 俺は鷹揚に答えた。


「……祐樹くんは、大人っすね。親父の言っていたことの意味が、ちょっとわかってきたような気がするっす」


「大人? そうでもないよ! ほら、見て、昨日当たったレアカード!」


 俺はファイリング途中のレアカードを虎鉄ちゃんに見せびらかして言った。


 俺は、趣味と実益をかねて、遊〇王とか、マジック〇ギャザリングの目ぼしいカードを買い漁っていた。


 なぜって、将来プレミアがつくってわかってるからな!


「小生、頭を使う系の遊びはちょっと……」


「そう。じゃあ、アクションゲームとかならどうかな――ともかく、母に電話してくるから、くつろいで待っていてよ」


 俺はリビングのソファーの前のゲーム機とテレビを指して勧める。


 一通りのゲーム機が揃っているが、ソフトは複数人でプレイできるタイプの物が多めだ。


 俺個人の趣味というよりは、ヒロインたちや香くんはもちろん、部下娘ちゃんとの親睦を深めるのに使うためのチョイスである。ゲームのプレイスタイルにはそれぞれの性格が出るので、人間性を測る目的でも利用している。


 ちなみに、主人公のキャラと好感度調整の関係上、ギャルゲーは置いてない。


 そっちは、都心に専用の貸倉庫をレンタルしてコレクションしてあるのだ。


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