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5話

この街はかなり規模のある街のようだ。

荷馬車から見てわかったが、街を囲むようにそびえ立つ城壁は駐屯地にあった城壁よりも大きく、各所に緑と白を基調とした紋章がかがっていた。

街中に入ると大通りの両脇には様々な店舗や住宅が立ち並び、それを行き交う人々が多くいた。

「栄えてるね!」

「逸れるなよっ」

俺たちは人の圧力と熱気に圧倒されながらも人混みを縫う様に歩く。当初の予定通り冒険者になるべく冒険者ギルドなる建物へ進んで行く。門兵に聞いた所、本当に冒険者という職業があるようだ。

人に道を尋ねること数回。やっとの事で着いた建物はなかなかの大きさのある建物だ。

三階建てで扉は広く。木の看板のようなものは怪物を倒す人の姿が彫刻で精緻に作り込まれていた。木造建築だが主柱となる木は太く、素材の良さを感じた。

「案外立派な建物なのな」

同感だった。冒険者ギルドと呼ばれても荒くれ者集団が集まる場所で、てっきりおんぼろの建物が粗末に立ち、中は荒れ放題とばかり思っていた。

「まぁ、中に入ろうぜ」

「あ、ああ」

ヒロは動じることなく、堂々たる足取りで俺たちを先導する。

中に入るとこれまた外の外装を裏切ら無い、木造の立派な内装だった。正面には長いカウンターがあり、どこか市役所に似ていた。

ヒロはそのまま正面に座っている受付嬢に近づき話しかける。

「すんません。冒険者登録が出来ると聞いてきたんですけど、ここで当たってます?」

「はい。間違えありませんよ。登録は四人ですね?」

冒険者ギルドという事だからてっきり粗雑な扱いをされるとばかり思ったが、日本と変わらない丁寧な対応をされる。それにこの受付嬢はかなり美人の容姿をしている。

どうやら冒険者ギルドはかなりしっかりとした組織のようだ。

「ではこちらの用紙の各所の項目に記入をお願いします」

「了解です」

渡された用紙にはやはり日本語が書かれてあった。少しそこに違和感を覚えるが、気にせず記入していく。

「すいません。この役職というものは一体何ですか?」

受付嬢はこれと言って驚いた様子もなく流暢に説明を始める。

「役職とは通称のようなものです。大まかに四つに分類されますね。攻撃を受け持つ盾職。剣や弓などを用いて攻撃する攻撃職。魔法で攻撃する魔法職。回復など前衛を支援、またはモンスターに状態異常攻撃などで支援する支援職の四つですね。」

受付嬢は細い指を指折りしながら嫌な顔もせず、丁寧に教える。

「じゃー俺は攻撃職になるのかな?」

となると必然的に決まっていく。ヒロが攻撃職で、俺が盾職、タカちゃんは魔法職、イッちゃんは支援職だ。

「いやー綺麗に別れたな!」

「まぁ、必然だろうな」

それぞれが記入して提出する。

となると次の問題は武器だ。

「すんません。武器の貸し出しはできますか?」

「はい。もちろんできますよ。それに貸し出しではありません。新人冒険者には初回は無料で配布しております」

当然のように受付嬢は答える。

タダで貰えることに驚かされた。

本当にかなり力のある組織だ。考えを改めなければならない。

「その間に冒険者プレートを用意致しますのでこちらの役員について行って武器を選んでください」

カウンターの奥から出てきた男性の職員に着いて行くと、様々な装備が壁に立てかけられている大部屋に入る。盾や防具を始め、大剣、西洋風のロングソード、弓やナイフ、魔法使いの杖のようなものまである。

「すっご...」

日本ではお目にかかれない様々な武器に圧倒されていると。

「ここからそれぞれに合う装備を一式選んでください。」

「い、一式ですか!?」

太っ腹にも程がある。すると男性職員が微笑むように答える。

「もちろんです。新人冒険者は、ゆくゆくは高名な冒険者になる可能性があるのですから。これはその先行投資です」

言われてみて気づかされた。それもそうだろう。ろくに装備が整ってない状態で荒野に出し、モンスターの餌食になってしまえばそれで終わりだ。だが、精強なった冒険者は高難度の依頼を達成し続けていけば冒険者ギルドへ大きな利益となる。

「ホワイト企業かよ...」

「?何か?」

「い、いえ...なんでもないです。」

とはいえ、それほど強そうな装備はない。どれも量産品の武具だが俺たちにとってはとても有難かった。

「ヒロ、お前弓使えるのか?」

「アーチェリーの教室に一ヶ月くらい通ってたんだ。多分いける」

おもむろに弓を手にしたヒロに俺は思わず聞く。

まぁ、器用なヒロなら大丈夫だろうな。

横目で見ながら俺は金属の胸当てがある軽装を胸から順番に装備していく。

「おっ!冒険者ぽいじゃん!」

ヒロが横ではやし立てる。そう言うヒロは動物の革で作られた軽装を装備していた。

「ヒロの武器は弓とナイフか!カッコイイな。」

するとヒロは装備を披露するようにポーズを取りながら見せびらかす。ヒロの装備はマントの下に革鎧を装備し、腰のベルトには大ぶりのナイフと矢筒が引っ掛けるように装備していた。

「どう?その弓は使えそう?」

するとヒロは弓を構えながら唸る。

「んーまぁ、練習が必要だけど何とかなりそう」

するとほかの二人もどうやら装備が決まったらしい。

「おぉー。二人とも魔法使いぽい」

確かに下は制服だが、上は大きめなローブとそれぞれの手に魔法使いが使うような杖が握られていた。まさにその姿はファンタジー風の魔法使いと神官そのものだ。

「えへへ、そう?」

「まぁ、ローブを羽織って、杖を持っただけだがな」

二人とも少し照れながら苦笑をする。

「ああ!様になってるよ!ばっちりだ!」

大袈裟に褒めるヒロを横目に俺は中型の盾と中ぶりの斧を装備する。

「お決まりになりましたか?」

男性職員は苦笑しながら俺たちの装備を見る。

「では、そろそろ皆さんのプレートの用意がてきたと思いますので先程のカウンターへ戻りましょう。」

男性職員に先導され戻ると、カウンターの上に革で作られたドッグタグのようなものがあった。

「冒険者の身分を証明するものですので、無くさないようにお願いします。冒険者ギルドの説明を聞きますか?」

「お願いします。」

タカちゃんがすかさず言う。

「では、説明を始めます。」

それからというもの冒険者ギルドの説明はこうだった。前情報のヒロの言う通り、依頼を達成して得た報酬で冒険者は生活するようだ。依頼内容にも様々で、モンスター退治はもちろん。街の奉仕活動のようなものもあれば、商隊の護衛もあるようだった。しかも冒険者にはランク制であり、俺たちの首からぶら下げているプレートはランクの証明にもなるそうだ。ランクは10段階もあり、かなり細かい。ランクが上に行けば行くほどギルドから様々な特典もあるそうだ。

受付嬢の説明も終わり情報収集を行ったあと、俺たちは冒険者ギルドを後にして宿屋を探すことにした。

「いやー思ったより。冒険者ギルドってしっかりしてんのなー」

「ああ、だが上に行けば行くほどあのような特典があるとなると、かなり厳しい世界らしいな」

同感だった。一見、それこそホワイト企業のような組織ではあるが、徹底した実力主義であることが説明の節々にあった。

「頑張ろうね!」

意外にもイッちゃんはやる気を出しているのか、こぶしを作って息巻いている。

「とりあえず宿屋を見つけなきゃな。紹介されたのはこっちだったな」

冒険者ギルドで紹介された道を辿っていく。しばらくするとあまり上等とは言えない、宿屋らしきものがあった。

「もしかして、これ?」

「の、ようだな。入ろう」

少し寂れたドアを開けるとそこには簡素な廊下があり、左右にはドアのない吹き抜けの部屋がいくつもあった。

「これって空いている部屋を勝手に使えってことかな?」

部屋の中に入ると二段ベットの中に藁が敷き詰められていた。

「なるほど。もっといい部屋を使いたければ、ランクを上げろってことか」

徹底した実力主義だ。格安の宿屋にはこういう意味があったのだ。悔しければ実力を上げみせろ。暗にそんな風に言われている気がした。

「ま、ひとまずはギルドで貰った情報をまとめよう。」

それぞれが部屋の中で適当に座り、情報の再確認をする。

「まず、やはりと言うべきか。この世界にはゲームのようなモンスターが数多くいるようだ」

ギルドで読ませてもらった本には様々なモンスターがいた。それこそ誰でも知っているドラゴンやグリフォン。ファンタジーゲームをしていればそこら辺のモンスターを見れば、見覚えがあるやつばかりだろう。

「幸いにもここら辺には強力なモンスターはいないらしい。俺たちのレベル上げにはもってこいだ」

だが、タカちゃんは眉をひそめていた。

そう決して楽観視できる状況ではないのだ。

俺たちは全員lv1。たまたまクマのようなモンスターを撃退した実績はあれど、未だ最弱のレベルなのだ。

「ギルド出もらった情報によるとここから南西の森に最近、ゴブリンが多数、出没するらしい」

ゴブリン。ファンタジー世界ではよく最弱に分類されるモンスターだが、知能があり武器を扱う個体もいる。

「群れで行動しているやつもいるそうだが、俺たちはハグれと言われる。単体で行動しているやつを狙う」

それから夜になるまで作戦会議は行われた。フォーメーション、攻撃のタイミング、緊急時の場合も予想し合って思いつく限りのことを全員が言い合った。

「よし。じゃー明日に備えて今日はもう寝よう」

売店で買った夜食を頬張りながらタカちゃんはそう締め括った。

窓の外を見ると日が沈み夜を迎えようとしていた。

俺はベットの藁に身を包み、横になると明日の冒険が楽しみなのか手が少し震えていた。

それがどこか、遠足前の小学生のように感じてしまって苦笑しながら無理やり深い眠りについていった。


「りゅう!起きろー!冒険の始まりだ!」

元気のいいヒロの声が俺の意識を覚醒させる。周りを見ると装備の点検を行っていた2人の姿があった。

「りゅう遅いぞ。早くしろ」

「あははは、りゅうちゃんおはよー」

あまりの俺の寝付きの良さに三人は苦笑していた。

「外で待っているぞ」

「僕は売店で適当に何か買ってくるよ!」

慌てて準備していた俺の横で二人は勢いよく部屋を出る。

「まったくせっかちだなぁーあの二人は、そんなに楽しみなのか?」

案外まだまだ子供だな。

ヒロはやれやれと言わんばかりに首を振る。

「ともかく準備出来たのなら行こうぜ」

準備が整い外に出ると、朝にも関わらずメインストリートと呼ばれる道は人と荷馬車でごった返していた。すると人混みからイッちゃんが朝食を買ってきてくれたのかパンを手渡す。

「えへへー、何か安くしてもらっちゃった!」

売店の方向を見るとだらしなく頬を染めるおっさんが手を振っていた。

理由はイッちゃんの美少女とも思われる容姿のおかげなのは口にはしなかった。

それから南門を抜け、南西にある森を目指したが1キロもしないうちに着いてしまった。

「作戦通りに行くぞ。」

タカちゃんが短く指示を出す。

それだけ言うと作戦通りにヒロがどんどん森の中に入っていく。足の速い俊敏なヒロが索敵をし、発見しだい後から来る俺たちに報告するためだ。それから10分ほど森の中を進んでいたら先に行っていたヒロが戻ってきた。

「いたか?」

「ああ、いた。この先の池で水を飲んでる。武装は木の棒だけだ」

全員の緊張が高まる。

「作戦通りに俺が不意ついて攻撃をする。俺の攻撃が外れたら別方向からヒロの弓、それでも死ななかったらりゅうを中心にフォーメーション組んで攻撃だ」

それから足音を殺しながら歩いていくと、本当にゴブリンがいた。池の水を啜るように両手で飲んでいた。作戦通りタカちゃんが先制攻撃するため大杖を構える。

『ファイヤーボール』

ゴブリンの背中に放たれた火球はかなりの勢いつけてでゴブリンの背中にぶち当たる。

するとゴブリンに火がまとわりつくように燃え続ける。

「ギャアアア!?」

上半身を黒焦げにし、短い断末魔を上げる。

「え、終わり?」

あまりのあっけなさに弓を構えていたヒロが茂みから出てくる。

一応死んだふりかもしれないので、盾を構えながらゆっくりと近づき、ゴブリンをひっくり返す。

「うん、死んでるね…」

「あっけな!あんなに緊張したのにさ!」

弛緩した雰囲気があたりに漂う。

「タカちゃんの魔法が強いんだよ!てか、タカちゃんのレベルあがった?」

そういえばそうだった。

当初の目的は俺たちのlv上げた。

「ああ、lv3になってる。」

ステータスウィンドウズを開き、笑顔で報告する。

「おおぉ~!!本当にlvが、てかlv3って!意外とポンポン上がるんだなー」

だがこれは確かな前進だった。

右も左も分からないこの世界での始めての手ごたえ。

「ともかく討伐部位をはぎ取るか。ゴブリンは魔石小さすぎて価値が無いんだろ?」

「ああ、討伐部位は右耳だ。」

「オッケー任せて」

ヒロはゴブリンの右耳をそいでいく。

そう、この世界は魔物からとれる素材や魔物の中にある魔石がお金になるのだ。

だが、ゴブリンは魔石が小さいうえに売れる素材もない。

それでも放っておける存在でもないためギルドは常に討伐対象としてお金を出している。その証明として右耳が必要なのだ。

「うへぇ、グロー…」

「すまんが今夜の飯台に必要なんだ…」

「頑張れー!」

皆の喝さいの元、ヒロはゴブリンの右耳を袋の中に入れる。

「そんじゃー次に行こうか」

それから数時間、十数匹のゴブリンを倒し続け後、俺たちは帰路についた。



Araki Ryutarou(荒木 竜太郎) 17age


Lv5


HP 1010

MP 384


STR 49

VIT 41

DEF 44

DEX 28

AGI 24

INT 20

LUK 9


SKILL

 ・仲間思い(ユニーク)

仲間がピンチの時、STRとDEFが上昇(ピンチの度合いによって変動)

MAGIC



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