勇者という名の兵器
「確か爺ちゃんと婆ちゃんは封印された後、必死で出る方法を探して、でもこの世界には干渉できなかった。だから違う世界に干渉して各々然々で」
「そうか。フハハハハ。そうか。あの悪友。五百年も生きたか。相も変わらず化け物だな。そうか。・・・そう、か。少し夜風に当たって来る」
時間の流れる速度が違うのか?こっちでは百年しかたっていないのに地球だと四百年もたってる。そういうものなのか?
「何をしているのですか?」
「エラン、ジョーカス、戻ったか」
「「はっ、ただいま戻りました、魔王様」」
あれが悪魔とミノタウロス族の代表か。確か悪魔のエランさんが財務大臣、ミノタウロスのジョーカスさんが建築大臣だったか。
その時、分身体の方から連絡が来た。内容は簡潔。「バレそうだ」と。
「すみません皆様、向こうにおいていた分身から、バレそうだとの報告が入りましたので、失礼いたします。御馳走様でした。ではまた【転移】」
ーーーーーーーーーー
カモフラージュはしておくべきか?どうやって入れ替わるか。いっそのこと分身だとバレてもいいように夜に食べ物買いにいった設定にしておこう。
パン屋か。悪くない。ここで見繕うとしよう。適当なの買っていくか。
ーーーーーーーーーー
帰りにどうしても教会のそば通らないといけないんだよな。こればかりは仕方ないが、できれば近寄りたくないものだ。
その時、醜悪な声が聞こえてきた。
「ぐへへへへ。勇者たちには明日から兵器としてどんどん働いてもらわねば困りますな」
「司教殿、どこに耳があるかわかりませんよ。とはいえ、全くもって同意ですなぁ。あやつらは勇者という名の兵器ですからな。心の痛まぬ使い捨ての道具ですな。ガハハハハ」
チッ、クソガッ。母さんが聖光教会は糞だといっていた意味がわかったな。醜い奴等だ。聞いているだけで虫酸がはしる。人を勝手に呼び出しておいて、何だと思っているのか。
今は無視だ。聞いているのがバレて関係が悪化したらたまったものじゃない。さて、窓があるからそっから入るか。
ーーーーーーーーーー
「何かクー君が変なんだよねー。いつもとは違うっていうか。むーー、何だろ?」
「そらそれ幻覚だからだよ。しっかしよく気がついたな。何で分かったんだ?」
「「クー君(クレルス君)が二人ー‼」」
「幻覚だからだっていっただろ、田畑。あと遠山、田畑のストッパー役のお前がぶれるな。しっかりしろ。そしてそいつの手綱を握りしめろ」
「酷いクー君。それじゃあまるで私が言うこと聞かないじゃじゃ馬みたいじゃない。私はしっかりしてるよ」
いや、実際言うこと聞かないじゃじゃ馬なんだかな。どこに目をつけていたらしっかりしているように見えるのか。是非とも聞きたいが、今は弁明が先だな。
「いやまぁ、ちょっと腹へってな。サンドイッチを買ってきてた。今の時間ラストでギリギリ開いてたは。お前らも食うか?皆で分けれるように量は買ってきたからな」
「いやどおりで。いつものクー君にしてはツッコミにきれがなかったからね。ほれほれ、それをさっさと渡すがよいー。誉めて遣わすぞー」
「それ、自分がボケてるっていってるのと同じってことに気付いてんのか?というか調子にのるな。まぁいい。遠山、そいつの手綱を今度こそはなすなよ」
「了解。はぁ、梨恵、ちゃんとお礼言わなきゃ駄目でしょ。全く世話がやけるんだから」
ーーーーーーーーーー
勇者という名の兵器ねぇ。ならせいぜい、あいつらにとっての不良品になってやるか。足引っ張りまくって地獄の底だろうと常世の底にだろうと落としてやるよ。




