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集団召喚、だが協力しない  作者: インドア猫
40/56

魔王再臨

 軍神の大剣が吸い込まれるようにしてクレルスの顔面へと進んで、


 止まった。


 見れば、軍神の体には細い、白銀の糸のような鎖が絡み付いている。


 焦りから表情一転。不敵に笑うクレルス。


 見下ろしていた狂愛抱えし少女は、最高に格好いいと称した。


 鍛治師と暗殺者は、大した度胸だと誉める。


 そして、軍神は


「そうでなくてはな。殺しがいが無いというものよ」


 背に鍛治師の大剣が放った衝撃を受けながらも、不敵に笑い返した。



※※※※※※



 壊れた筈の死ノ鎖の再臨。それによって足止めされた軍神は、まんまと背に衝撃を受け、膝から崩れる。いくら防御を固めていても衝撃は身体の中にダメージを与える。無抵抗時に受ける不意打ちならなおのことだ。


「さて、吾が壊した筈だが、まだ隠し持っていたか?」


 安全地帯まで退避したクレルスに軍神が問う。面白い、殺したい、が先んじたが当然、何故?という気持ちはある。


「企業秘密だ」


 そう簡単に、敵に対してネタを明かすクレルスではない。企業秘密だなんて(うそぶ)くと、ソレ以上は黙秘を決め込む。実際のところは、隠し持っていたのではなく、作ったのだ。今の一瞬で。


 軍神が力を込めると、急造の死ノ鎖は脆い故に直ぐに壊れる。


 前に複製した時に、死ノ鎖を一度解析している。その際に認識した元素の設計図(マテリアルデータ)、生物で言う遺伝子を元に【複製】をした。勿論、急造で作りは甘くしてあるので、惰弱だが、前のように血反吐を吐くこともない。


 質を数で補う作戦。大量の死ノ鎖が軍神に絡み付く。振りほどこうにも絡まり、捻れ、束ねられ、強固で壊すことも出来ず、地に縫い付けられる。


 そこを一閃。クレルスのデュランダルが、カイザーのダガーが、鍛炉の神鳴雷凰が、軍神を切り裂く。特に顕著な効果を現したのはカイザーのダガー。斬られた部分が変色、壊死していく。竜の猛毒。それは毒への耐性すら打ち破り、神すら殺す。


 切り終えた後、即座にカイザーが反転。ダガーを逆手で両手に持ち、目にも止まらぬ連撃。白銀の剣閃が煌めくと、その後を応用にどす黒い赤と青の血が吹き出る。地面には前衛芸術のような染みができる。


 化膿、変色、壊死、爛れ。軍神の皮膚が、内部が毒によって犯され、蹂躙される。溢れ出るおぞましい赤と青の血がより見た目の気持ち悪さを引き立てる。


「死、あるのみ」


 その様は死神、或いは天使だろうか。


 ふと、クレルスはかじった程度の知識だが、、ゾロアスター教などでは死告天使(アズライール)のような死を告げる天使がいるということを思い出す。死告天使(アズライール)にしろ、北欧のワルキューレにしろ、死を告げ、魂を運ぶ相手は人であって神ではないのだが。


「毒、か。これは、竜の猛毒に何か混ぜ物をしているな」

「対神暗殺用の毒だ。真剣勝負ではないが、悪く思うなよ」

「いや。吾は戦闘の神に非ず。戦の神であり、軍を率いる神なのだ。故に、騙し討ちや暗殺、奇襲も戦術の一つと心得ている」


 潔い軍神。敗北を認め、死に抵抗がない。


 いや、潔すぎる。何事も過ぎれば疑念を抱く。なにより、よく見ればこの男の瞳と口には悦びが映っているではないか。


「何を企んでいる……。薄笑いを止めて答えよ‼」

「何、貴様らは、太陽神を嘗めすぎだ」


 その言葉を言い終わった途端、背後から橙の灼熱が現れる。火の粉が舞い散り、街が燃える。


「レバートォ!生きてるかっ⁉」

「何とかな。クソッ。化け物にも程がある。アレは間違いなく、神の中でもトップクラスだ」


 そこにいたのは灼熱の嵐の中、泰然自若にして威風堂々と歩む太陽神。憤怒の黒炎が、核融合の焔の前に押されている。


 因みに、ここにいるのは戦闘に特化した超生物たちだから大丈夫なだけで、普通の生物ならばとっくに数メートル越しに感じる熱と放射能に殺られているだろう。


「手加減されてこれかよ……嫌になるな」


「ハンッ!オレは恒星の化身。本気ならば惑星なぞ一瞬で死滅する。そうすればこの世界が農園(・・)としての価値がなくなってオレ達が破滅するから加減してるってだけだ。新しい星探そうにも、神秘が消えかけたり、大量に神がいる世界ばっかで、今からじゃ乗っ取れねぇからな」


「一千年もこの星に拘るのはそう言う訳か。てっきり、魔族を嘗めていたぶって遊んでるのかと思ったな」


 話に着いていけないのはクレルスだけ。農園という言葉や、今までの断片的情報から察するに、神々はこの世界を自分達が生きるための


「ま、そう言う奴等もいるがな。というか、嘗めてるって点で言えばテメェも神々を嘗めてるだろ。手加減については、テメェも加減してる分際で言えることじゃねえぜ。仲間に飛び火しないようにしてるのがバレバレだ」


 心なしか、先程よりも口調が荒々しくなっている太陽神。神としての威厳ある話し方よりも、闘争本能に従っている故に、地が出ている。


 身体が温まってきた、といったところか。数分前よりも数段、力の格が上がっている。レベルアップどころではない、進化や再臨といった、生物としてのそもそもの格が上がったかのような上昇だ。


 すると、太陽神が軍神に近付き、彼の焔が軍神を焼く。一瞬、同士討ちかと思ったが、次の瞬間、軍神は生きていて、肌の化膿や変色が綺麗さっぱり無くなっていた。むしろ、最初からそんなものがあったのか疑うほどに。


 太陽神の焔は核融合の力であり、恒星の生命であり、同時に、聖なる炎という概念が付与されている。故に、邪悪の象徴である呪いや毒と反発して、浄化する。


「内側に回ってしまった毒までは取り除けぬか。だが、この程度であれば吾の敵ではない。致死量には遠く及ばん」

「というわけで、いつの間にかどっかに消えた暗殺者、オレの焔の前にテメェの毒は効かねぇぜ?」


 毒が効かないというのは大打撃だ。実はクレルスも毒をカイザーから貰って複製死ノ鎖に塗っていた。殺すまではいかないが、弱体化は出来る、と。しかし、毒を一瞬で浄化されれば、死ノ鎖の束縛は一瞬にして破られるであろう。


「焔、抑えられますか?」

「いや、無理だな。俺の槍の力で強化された黒炎でも少し相殺するのがやっとだ。凉白曰く、冷して消火しようにも、【冬ノ魔眼】にとっては太陽は天敵だから氷も一瞬で溶かされるらしい」


 クレルスの問に苦々しい表情で答える魔王レバート。完全なる手詰まり。いや、このままでは確実に敗北する。詰み、チェックメイトというべきか。


「……どうしたら」



※※※※※※



「あちらはまだか!もう戦線は持たないぞ⁉」

「仕方ないわよ。……アレは、神々はどうしようもない化け物揃いよ。私たちが未だ負けてないのが不思議なくらい」

「でも、ジョーカス君が限界だね。そして、前衛で盾役をしているジョーカス君が崩れれば、我々は一気に崩れる。四人では三人ではどうしようもない」

「不覚。すみません、陛下。私がもう少し強けれバ」


 クレルス達が神と戦っている一方で、サーシャ達は勇者達と激しい戦闘を繰り広げていた。


 サーシャが聖女と天使たちを全て相手取り、ジョーカスはそれ以外の攻撃を受け止める。他の二人は全体へちびちびと遊撃。


 本来、少数対多数では一気に誰かを削るべきであり、ちびちびと相手を削るのは少数側が圧倒的不利。それでも、そうせざるを得ない。誰か一人を削ろうとすれば、そこを集中砲火されて後ろから刺される。


 人数差が痛手すぎる。


「ええい、ジョーカス。謝るな!誰が悪いかと言えば判断を下した魔王たる私だ。貴様は私を恨む権利はあっても謝る義務はない。もう持たないと判断したら貴様らは私を殿(しんがり)にして逃げてよい」


 ケリーが血を吐き出しながら叫ぶ。全責任は私にある、と。


「貴女馬鹿なの?死ぬの?死ぬ気なの?そんなの、親友の私が許すわけないじゃない」

「いや、最悪、もう過去の人たちに全て押し付けて息子を連れて逃げてもいいと思うよ。父親としては、息子に辛い思いをしてほしくないし、地球でのびのび暮らさせるのが一番だと思う」

「肝心な所で馬鹿ね、貴方。あの子はここで逃げたことを一生後悔して背負い込むタイプよ。息子への理解度が足りていないわ」

「まぁ、僕が一番愛してるのは君だからね」


「いや、お前ら仕事しろ……。というか、四代目魔王様達に任せたとして、逃げ切れるとは思えないけど」


 戦闘中だというのに、教育方針の論争や愛について語り出すものだから、ケリーは呆れ、少し苛立ちながら注意する。


『魔力が少し惜しいけど、作戦は聞かれたくない。念話を繋ぐ。このままだと三分後には全滅だ。私が誰か一人に一か八か突貫をかける。……お前たちなら誰を狙う?』

『だから貴女馬鹿なの?本当に死ぬ気なの?そんなハイリスクな作戦許すわけ……』

『全滅よりはマシだ』

『だから、そう言う話じゃなくて‼』


 友であっても、いや、唯一無二の親友だからこそ、互いに決して譲れない場所がある。王たる自分だけが死ぬべきだと語るケリー。王だからこそ死んではならないし、友人として死んでほしくないサーシャ。


『陛下、ご再考を‼貴女が死ぬ必要はありませヌ。ただ王として、私めに国のために死ねと命じればよいのでス‼』

『そうよ。ジョーカスの言う通り。部下を殺してでも生き残らなきゃいけないのが王でしょう⁉』

『では、お前達は私に言えというのか?私に、お前達に死ねと命令しろというのか⁉誰がそんなことを言いたいと思う!そんな残虐非道、それこそ真っ当な王のすることじゃない‼暴君のすることでしょう‼』


 つい、感情的になってしまう三人。しかし、それは即ち、戦闘へと直結する。


「ほいほい、そこ、癖が悪いね。今三人ちょっと相談中だからさ、時間は僕が稼ぐよ。全く、面倒臭いね。感情というものは。「そこです、自爆しなさい」で全て片付くのに。僕も少し、彼女が死ぬのは嫌かな。サーシャが悲しむからね。と言うわけで、君たちには犠牲になってもらおう」

「言わせておけば。俺たちだって強くなった。日魔流闘術師範の貴方でもこの人数差で勝てると思わないでください」


 勇者の一人、父が自衛隊員で元々運動には自信があった河野玲音がそう言うと、皆賛同して構える。戦争の最中なのに、槍を肩と首で挟みながら、余裕綽々。飄々と手に巻いた掌の保護用の布を巻き直しているのが気に入らない。


「いいや、勝つさ。不利逆境を引っくり返すことこそ、日魔流闘術の目的にして深奥なんだから。奥で師範代が化け物と戦っているんだ。師範であり、父の僕が負けるわけにはいかない。何より、ステータスでクレルスにちょっと負けたっぽいけどさ、父親としては負けたくないんだよね‼」

「抜かせ。我も加わるぞ?」

「あちゃー、それはキツいね。でも、……子供たち、少し殺しに躊躇いがあるだろう?勿論、そんなの無い子もいるけど。どんなマジックか知らないけど恐怖を圧し殺しても、無意識下の恐怖が行動には出る」

「……そんな、訳……」


 皇帝の参戦宣言を聞きながらも、少し余裕のある表情でヒラヒラと、蝙蝠男のような話し方をして相手を苛立たせる。武術でも超一流だが、あらゆる手管を使って戦う。それが日魔流闘術。サーシャは割りと一直線なきらいがあるが、彼はそうではない。


「まぁ、話はここまでにして、行こうか!」


 急加速。音歩からの薙ぎ払い。先程、しれっと勇者の話題を出すことで、勇者に初撃が行くと思わせておいて、皇帝目掛けて槍の長いリーチを活かして攻撃。咄嗟に皇帝も反応。しかし、鎧の表層を砕かれる。


「身体は回復しても鎧は直ってないね。自己修復機能はあるらしいけど、まだヒビが入ってる」

「先程までヒビを狙ってチマチマと攻撃してきた癖に。どの口が言っている‼」


 閃光のような大上段からの振り下ろし。巨人たる軍神のソレには及ばないが、剣は最早剣ではなく鈍器に見えるほど分厚く、堅い大剣が押し潰しに来る。一撃必殺。


 それを黒槍の石突きで叩き、起動を反らすと、両手で大剣を持っていた皇帝の腕と腕の間に、皇帝に抱かれるようにすっぽりに入る。本来槍のリーチではない、いや、戦闘をする距離ですらない超近距離、零間合いに入る。槍のメリットは消え失せるが、これなら遠距離範囲攻撃は用意に出来ない。


「んな!」

「顎、心臓、鳩尾。全てがら空き。あんたは薩摩藩士か?」


 実際のところ、生まれたのは大正時代なので本物の薩摩藩士を見たことは無いが、両親から聞き及んだ狂気の初太刀のように実直。その一撃必殺を余裕で逸らした技巧に驚き、そして間合いに再度驚愕。


 顎に一撃、掌底を捩じ込む。小威力で失神させられる効率的な場所且つ、現状で殴れる少ない場所の一つを狙い、澄ました、清流でいて激流のような一撃。


 寸前で頭を後ろに反らすが、フルフェイスの兜に掌底が命中。掌で打ったとは思えないほどひしゃげる。掌底の痕跡をくっきりと押印しながら兜を破壊し、吹き飛ばす。


 長い透明感あるブロンドの髪が、その髪と同じ色の繊細な眉毛が、薄い桜の唇が、柔らかな頬が世間に、世界に露呈する。


「……女、?」

「五月蝿い‼」


 失いかけていた皇帝の意識が一瞬にして戻る。完全なるミス。逆鱗に触れる禁句を発してしまったのだ。聖女とアマゾネスは女性であることが確定。そこに男女差別は無いが、帝国は違う。


 女=社会的、物理的弱者と見られることを忌み嫌う皇帝にとって、女の顔を見た瞬間、動揺して手を止める時点でギルティ。


 掌底を中途半端に振り抜いた間抜けな姿で固まる。大剣を引き戻した皇帝に石突きで背中を殴られる。咄嗟に【硬化】と【竜鱗】の発動。金属のように光沢を纏った竜鱗と石突きが削り合う。端から見ると睦合っている男女のようだ。武骨な武器が無ければの話だが。


 実際は命のやり取りだ。


「僕の嫁さんは不倫には厳しくてね。ちょっとの疑いでも斬りかかってくるんだ。だから、離してくれないかな」

「だが断る!むしろサーシャと同士討ちして共倒れとなれ!勇者ァ、我ごと殺れ‼」


 皇帝が叫ぶ。ギリギリと締め付けながら、ここで闘死する覚悟でがむしゃらに、遮二無二に。振り払おうとしてももろともしない確固たる意志。


「はぁ、面倒だね。仕方ない。……これはとある国の領主の偉業から名前を借りた技なんだけどね、【竜爪】応用、串刺し公爵(ドラキュリア)


 護国の領王たる、かの吸血鬼のモデルとなった公爵、ヴラド三世のドラキュラ伝説から借りたネーミング。ルーマニアで起きた悪魔の所業が再現される。


 二万人を串刺しにして殺した杭にもひけをとらない死の刺が体から生え、皇帝を刺し、穿ち、貫く。それは全てが竜の爪だ。


 そして皇帝の心臓が鼓動すると、ドクン。体に電撃のような衝撃。しかし、誰も何も攻撃していない。全身を刺し貫かれているだけだ。皇帝のみがこの世で持つ戦闘続行スキル、【帝王の意地】で、全身を刺し貫かれていようとも、三分は動ける。


 だというのに体が全く反応しない。そして体が化膿、壊解、変色。


「竜の毒……そういえば、聞くところによると貴様の父は最強最悪にして劇毒を持つドラゴニュートという噂だったな。毒持ちのドラゴニュートなど稀故に忘れていたわ……ククク、ハハハ。ナサケナイ。これではミラに斬り殺されるな」


 サーシャと戦っている聖女とアマゾネスの女帝を思い浮かべながら塵と化していく皇帝。


「……だが、ただでは死なんぞ!【災いあれ】。呪術師ではない我が身だが、魂を捧げれば、すこしは呪いを発現出来るか?今となっては分からんがな」


 皇帝が死に際の捨て台詞で呪いを吐いている中、勇者は何も出来なかった。


 恐怖、驚愕。そして、怒りすら出てこない、虚無。絶望の色に顔が塗り潰されたまま、虚無虚空の海へと沈み行く感情。無理に抑えていたものが暴発して、器を破り、虚無へと導いた。


「特に体に違和感は無いね。さて、まだ会議中なら、オジサンはもう少し頑張らないとだけど、」

『だから私めが、ワレが、突撃しまス!』

『許さぬ。ええい。もういい。出る』

『ごめん、ダーリン。迷惑かけたわね。ケリーはこうなったら、梃子でも動かないわ。作戦変更、けーちゃん説得は諦めて全力サポート。死なせないわよ。そう簡単には』


 折角気合いを入れ直した後だった。何処からだろう。唐突に、カチッ、という音が聞こえた。何故かそれはよく響いた。そして直後、状況証拠的に間髪入れずに言ったのだろうが、体感的にはやけに長い時間がたった後に


「解除、完了」


 エルフの長の口からそう聞こえた。


 何の事だと疑問が走る。だが、ケリーは瞬きの間の極僅かな時間で答えを導きだした。導きだしてしまった。気付けばそこに絶望が待っているのに。


「術式が……崩壊した、ッッッ───⁉不味い。一旦分散撤退。町並みに隠れろ‼」

「だが、無駄だ。……【何か巨大な樹】‼」

「相変わらずそのネーミングセンス……。まぁいいでしょう。エクス、カリバー!」

「今よ、全員、一斉攻撃!」

「全天使、魔力隆起。呼応確認。空間座標、固定。統率個体、告。神威全力解放、許可。封印、解除。神罰執行、【神威】!」


 エルフの長、聖女、そして現在意気消沈中の御子神に代わり、指揮をしている佐伯が叫ぶ。それに呼応するように、無情な天使の声が響き、周囲を囲まれての一斉放射する


 落下する巨大樹。吹き荒れる極光。魔法と矢の嵐。そして神罰。ジョーカスは盾で防ぐも、魔法で破壊され、遂にはその身一つでケリーを守る。


「■■■■■■■■──────!」


 声にならない痛みと忠誠の叫び。それは【咆哮】スキルに乗って辺りの魔法を散らすが、雀の涙、焼け石に水。無意味無価値。圧倒的質量塊がミノタウロスの【咆哮】も何も関係なく全て押し潰す。


「ジョーカス、時間稼ぎありがとう。走れ、怨天紅煉‼日魔流闘術 刀術 伸斬居合い!」


 太刀が縦横無尽に駆け巡る。それは飛ぶ斬撃、というよりは、その直線上全てを切り裂く延びる斬撃。


 巨大樹の根を微塵切りにし、神威を霧散させ、聖剣の光を割った。


 だが、それだけだ。根を切り裂いても幹が落ちる、霧散させても後続の神威がそれを塗り替える。極光は割ったところで突き進む。勇者の攻撃に関しては無対処。一人で数の暴力に勝てるわけがない。


 策謀を巡らせようと、武器を整えようと、いくら一騎当千の英雄だろうと、一騎当百の準英雄が六十人以上集まった集団に勝てるわけがない。


 英雄は準英雄の数の暴力に破れ、大英雄は神に破れようとしている。


「クソッ、クソッ!ジョーカスが死んだァ!有望な才能の塊が、私の采配ミスで‼……あぁ、終わりか。勝ったと思ったんだけどなぁ。天使とか意味わからないのがでしゃばってきて、でも祖王様が来てくれて。なのに神とかいう奴のせいで、あぁ、畜生。悔しいな、惨めだよ。自分が」


 死してなお盾となり、魔王を守るジョーカスの背を弱く叩きながら嘆く。


 サーシャは切り裂いても切り裂いても止まらない猛攻に呑まれようとしている。大太刀をあり得ない速さで振るっても、どう考えても間に合わない。


「クッ……誰か、」


 平時なら、いや、自らが死の危機に瀕しても絶対にサーシャが言わないような、親友の死の危機が重なったからこそ心の内から漏れ出た祈りの言葉。救いを求める声。この場でそれに答えるものは、


「まだ終わっていない。僕が、いや、俺がいる‼」


 黒槍が巨大樹を貫いた。太く頑丈な幹を、一直線に。人が歩いて通れるような孔を空けた。


 本来なら、その巨木は多少孔を空けた程度で崩壊するものではない。なのに、黒化に犯され、病魔に枯れ、塵となって崩れ行く。


「【完全竜化】ァ───!」


 黒槍には紐がくくりつけられており、一匹の翼竜が黒槍に引っ張られていた。


 いや、紐ではない。布だ。巻き直していた手の保護をしていたぼろ布。しれっと槍にくくりつけていたのだ。


 瞬間、気付いて寄ってきた天使に、吐息(ブレス)が吐かれる。紫の炎だった。可燃性の毒ガスに着火したようなものだ。本来はそうはならないが、竜という神秘の塊の援助を受け、炎と毒が一体化。


 焼けた傷口に毒が侵入。死に至らしめる。


「サーシャ、乗れ。それから、これを使え」

「OKダーリン。確かに、質は劣るけど、間合い的には太刀よりも槍の方がいいわね。けーちゃん、ここは私たちに任せて逃げなさい‼」

「まさかまだ戦う気か。正気か?……いや、そういえばお前が正気であったことは、一度たりとも無かったな。……ならば私も狂気に身を任せるとするか!総員三名、生きて帰るぞ。殺し尽くせ!」

元ネタ解説。 そこです、自爆しなさい。

某ゲステラより。

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