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集団召喚、だが協力しない  作者: インドア猫
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君臨せし神

 咲いた血華が衝撃と雷電をもたらす。あの圧倒的なまでの戦力を誇った魔王レバート・アーラーンが、不意打ちとはいえ、ここまで無惨にやられるとは、現代人は誰も予想していなかった。


 決して倒れてはいない。致命傷を負ってもまだ立ち、自信を切り裂いた神の手を掴み取り、決して離さない。確固たる意思、情熱、思想、そして何より、憤怒、憎悪、怨念。神を掴んで離さないその手はまるで地獄に引きずり込む亡者の魔の手。


 現代人陣営の動きが固まるなか、動くのは過去人。即座に継戦、臨戦体制。極寒のブリザードが吹き荒れる。


「チッ‼レバートがミスった訳じゃねえなこれ。神がやりやがった、ってところだ。当代の魔王!魔剣数本置いてくから、勇者は任せた」

「え、は、ええっ⁉……神って、そんな……」


 鍛炉とカイザーも動く。鍛炉は大剣型の魔剣を大上段に構え、振り下ろす。衝撃波が走る。超質量から放たれるそれはブリザードの暴風に全く左右されず、神の袂へ届く。


「おいおい、味方も巻き込むつもりか?薄情だなぁ?だが、無意味だ」


 目映い閃光と共に、灼熱の業火が燃え盛る。いや、正確に言えばそれは炎に非ず。全てを原子の塵に変える究極の兵器。広島や長崎で大量殺戮を起こし、キューバ危機で世界を滅ぼしかけた物理攻撃の最高峰にして、生活を支える電気を産み出す恒星の灯火。


 核融合(・・・)が起こる。


「成る程、貴様が無様に逃げ帰った月神(ツキガミ)の言っていた太陽神か」

「あぁ、そうさ。でも、無様に逃げ帰ったってのは言わないでやってくれないか?アイツも面子を取り戻すために来ててさ、でもアイツ、図太そうに見えて意外と小心者なんだよな」

「神にしては存外、眷族神思いなのだな。冷血非道の輩ばかりかと思っていたが、貴様の心は太陽と同じく、熱いようだ」

「変わり者ってよく言われるな」

「まぁ、それはいい。フハハ、フハハハハ‼待ちわびたぞ、神よ。此度こそ、貴様らを殺してやる。」


 いつの間にか胸の傷口は塞がっている。ベットリとした血は付着したままだが、その防具すらも直っている。【無機物操作】。王都を丸ごと支配して動かした術の力だ。


「しかし、炎か。いや、俺も炎が得意技でな。……


 ニヤッと口角がつり上がり、邪悪な笑みを浮かべる。それに対して太陽神は、喜ぶように感心している。


「我慢比べといこうか‼」


 魔王レバートの服に付着していた血が黒い炎を上げたのをスタートに、全身から溢れ出る黒炎。燃える、燃える、燃える。紫電が迸り、閃光を放ち、太陽神を焼く。


 対する太陽神も先程よりも更に火力を強め、周囲を盛大に巻き込みながら、最凶の我慢比べが始まった。


「太陽神様ッ‼」

「吾は良い‼貴様は貴様の戦いをせよッ‼」


 声を上げる月神。それを怒号で制する太陽神。その月神にコツコツと足音が高らかに近寄る。


「あら、貴方はメソメソと逃げ帰った月神ではないですか。……また下界に泣かされに来たのですか?」

「貴様ァッ!あの時の女‼殺す。絶対に殺す。月神リェンの名に懸けて必ず殺す。犯してなぶって殺してやる‼」


 月神に対して、凉白が普段は絶対にやらないような高圧的な挑発をする。少し演技臭い上に恥ずかしいのか、微妙に遠慮があるが、見事やりきる。


 月神リェンは怒りの余り、激情。いっそ不自然なほどに激しく凉白に食い付く。神とは思えないほど簡単に凉白の挑発にのり、端麗に整った顔を醜く歪ませる。


「さて、あんたもヤバそうだな。条件次第だと思うが、太陽神とどっこいどっこいの実力じゃねえか?」

「フハハッ!見抜くか?我が神名は軍神、軍神アルバン。貴様らを撃ち破り、殺す神だ」

「うげっ⁉戦闘狂の類いじゃねえか⁉」


 対峙する鍛炉と軍神アルバン。各地で大戦が始まろうとしていた。



※※※※※※



 これでいいのか……。


 勝てない。間違いなく神には勝てない。それは確信できる。間違いない。


 でも、おずおず、おめおめ逃げ帰ることが正解なのだろうか。太陽神と軍神。どれだけ魔王レバート様たちが強かろうと、最高峰レベルの神相手に勝てるとは思えない。


 月神は、何だろう。太陽神の眷族神という話がさっきでてきたし、実際に太陽神や軍神よりは弱いと思う。でも何処か底知れない、不気味な感じがする。策謀の匂いが漂ってくる。


「私は、けーちゃんのサポートに行くけど、貴方がどうするかは別。自分で選びなさい。別に正しさとか人道なんて求めないから、好きなことをしなさい。……ただし、死なないこと。そこは絶対条件。最終防衛ライン」

「……了解」


 どちらの戦闘に参加することが正解で、この局面において正しいか。そう考えていたのを見透かされた。母親というものはこれだから恐ろしいのだ。いや、ここまで恐ろしいのは我が家だけだと思いたい。


 でも、気はスッキリした。正解不正解を考えなくてよくて、自分の欲望で選べるというのは、気楽でいい。なんとなく、瞳が少し喜んでいるように感じる。


 強欲の魔眼。欲しいとか願いとか。陽と陰、清と濁を併せ持っているが、根底に近い願いには、束縛されたくない、自由でいたいというものか多い。生物が今まで感じてきた欲望の中でも、これが多いということだろう。


 意外にも、恋愛とか情欲に類する欲が無い。色欲に分類されるからだろうか。他にも、大罪に当てはまる欲は軒並みない。怠けたいという怠惰、食べたいは暴食、自分をよく見せたい虚飾。そんな類いはない。


「何がしたいか、か」


 とっくに知っていた。話す前から定まっていた。例え足手まといであろうともいい。それなら切り捨ててくれていい。コンビネーションがない自分は酷く迷惑なのは知っている。


 それでも戦いたい。あの華やかで、苛烈な戦場で戦いたい。


 余程な戦闘狂だ。まったく、忌み嫌っていた者に自分が成るとは、思いもしなかった。


 遺伝だと思うことにしよう。あの母親にして自分ありと。


 行こう。死ノ鎖。もう少し、もう少し、壊れないでくれ。度重なる乱用。母さんの刀と同じで、そろそろ限界を迎える筈だ。だから、この戦いが終わるまでだけ、頼む。


『こちらの戦闘に参加するなら、私のところは不要です。月神は私が相手します。太陽神に関しては、太陽が出ている間は概念的に不滅ですから、恐らくレバートは時間稼ぎをするつもりだと思います。なので本命は、』

「軍神アルバン」


 武神でなかっただけマシだと思うべきか。とは言え軍を率いる神だ。戦争の天才なのは疑いようもない。強いのは紛れもない事実。そんなことは宣告承知。


 戦況は拮抗。いや、どちらも奥の手を隠しているのだからまだ分からない。どちらに転んでも不思議ではない。


 だから、天秤を傾けよう。



※※※※※※



 魔剣が猛威を振るう。多彩な魔剣による幾層にも連なる連撃が、軍神の攻勢を押し留め、防戦に徹さざるをえない状況を造り出す。


 そこに、カイザーが寸前まで何も気づかせない隠行を以て攻勢を仕掛ける。何処から延びてくるか分からない純然たる死。それにすら対応する軍神。


「緩い‼」

「畜生、ふざけんなッ!月神や森神とは桁が違ぇ。あん時の海神とおんなじタイプか⁉太陽神もヤベェ。クソ!あと一手。どうしても攻めきれねぇ……」


 完全なる膠着状態。実力が拮抗した殺し合いにおいて切り札は先に切る方が不利。下手したら手の内を晒して終わる。迂闊に切れない。


「なぁ、軍神さん。此方も我慢比べしないか?」


 その戦いに口を挟むクレルス。死ノ鎖が四方八方から軍神アルバンに襲い掛かる。それを六メートル。巨人級の身の丈の軍神がその身長とほぼ同じ大剣で叩き落とし、凪ぎ払い、バックステップでいなす。


 弾かれた死ノ鎖は大空を舞い、大破損。その後光の粒子となって消えた。


 突如、軍神アルバンの右手に死ノ鎖が現れる。八本全てで軍神の右半身と大剣を地に縫い付ける。幻術による死ノ鎖の偽装が上手く嵌まった。


「【雷帝】‼」


 【嵐雷魔法】の一種。上位魔法の【雷帝】が死ノ鎖を伝って行くことでほぼ消費減衰無しに軍神に襲い掛かる。言わば零距離での雷魔法の発射。


 距離とスピードがウリの雷魔法。その長所を完全に消して威力だけを追求した。軍神の筋肉が電流に焼かれ、死ノ鎖と癒着し、剥がれなくなる。脱出は困難。


「【強欲】」


 更に、死ノ鎖を通して魔力を奪う。相変わらずの気持ち悪い魔力に吐きそうになりながらも、魔力を奪い、体の中を通る時間を最短にしてそのまま【雷帝】につぎ込む。


(無茶苦茶気持ち悪い。多くは吸えない。何だこの異質な魔力は⁉)


 天使のものも十分におぞましい魔力だったが、それとは段違いの異様さ。異質さ。神聖さの欠片もない、泥々とした怨念の塊のような魔力。それも、魔王レバートの憤怒の炎に匹敵するほどの怨念だ。


「喰らえ、【山割り竜牙】ァッ‼」


 鍛炉の大剣から衝撃波が飛び、軍神をノックアウトさせる。軍神が膝をつく。カイザーの毒短剣が容赦なく【雷帝】によって焼け爛れた傷口を襲い、竜の毒が神の体を、少しではあるが蝕む。


「グハッ。ここまでとは。いやぁ、油断した。敵の力を以て敵を統べる、か。考えたな。しかし、もっと吸えるだろうに、この少ない吸収量は何だ?」


 軍神が頭を使い、結論を導きだす。


「即ち、我らの魔力は貴様には毒なのだろう?ならばとことん喰らえい‼」


 諸刃の剣。下手をすれば自分が弱体化する一世一大の大賭け。その賭博に、軍神は勝った。


 不味いと、そう感じたときにはもう既に遅かった。魔力が一息に、大津波の濁流のように流れ込み、体内を嫌悪感で満たしていく。おぞましくて気が狂いそうになる。


「電撃が止んだなぁ!先ずは貴様から殺してやろう」


 力任せに強引に鎖を引きちぎる軍神。締め付けられて傷を負っても気にすることなく破る。限界を迎えた死ノ鎖が無惨に散った。


 大剣の猛威が振るわれる。咄嗟にデュランダルを構える。余裕がなかった故に鞘ごと構えたが、強靭な霊樹で出来た鞘が一瞬で砕け散る。不壊の剣たるデュランダルは壊れないが、単純に腕力に負け、吹き飛ばされる。


「ガハッ──」


 ブラックアウトしそうな意識を何とか保つ。ついでに魔力を吐き出すことで周囲一帯を吹き飛ばし、大クレーターを創る。


「そんなもので我は止まらぬ」

「間に合え‼【神鳴雷凰】」


 絶体絶命。

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