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集団召喚、だが協力しない  作者: インドア猫
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元人間

「さぁ、行け。そしてお前はお前の成したいことを成せ。四代目魔王からの勅命だ。ここは俺に任せろ」


 そう言うと、四代目魔王、レバート・アーラーンは悠然と構える。圧倒的な気迫が周囲に圧となって現れる。それはまるで、重力が強化されたのかと見間違う程。


「ありがとうございます」


 クレルスはそう残すと逆方向に飛び立つ。遠山のいる場所へと。「成したいことを成せ」。レバートは使命とは別に、クレルスにはやらなければならないことがあると、一瞬で見抜いていたのだ。


 これがレバート・アーラーンの噂に名高い謎の超直感かと、驚くクレルス。


「燃えろ。焼け、憤怒───ッ‼」

「冬よ、世界を白く染めなさい」

「行くぞ、魔剣。暴れろォ‼」


 あらゆる属性を内包した混沌とした空間がそこに顕現する。その中でも特別強いのが、炎、雷、氷。


 魔法が意思を持っているかのように喰らい付き、天使を確実に仕留めていく。二翼、四翼程度では話にならない。現代人の中では最強と言えるクレルスをも遥かに引き離す強さ。


 寸前にエルフの長の魔法で退避していた人間陣営の方が被害は少ない。いや、天使を完全に優先した、人間はどうでもいいと言いたいかのような執拗な天使狙いの攻撃に助けられたと言うべきか。


「だが、もう天界への門は開かれている」


 神託者が言う。天使が天界への門と地上から軍隊蟻が獲物に群れるかの如く現れる。それに対して険しい表情をするレバート達。


 当然、大量の天使はクレルスやサーシャの下にも現れる。この時点で遠山奪還など不可能。逃げるしかない。そうクレルスの脳が判断する。


 が、感情が許さない。強靭に鍛え上げられた理性を引き千切る程の強欲。強欲ノ魔眼の持ち主たる者の強欲は止まらない。


「通せ」


 死ノ鎖が振るわれる。風と雷を纏った八本の猛威が天使を縛り、切り裂き、焼く。殺した天使から【強欲】スキルで大量の魔力を集める。


 相変わらず吐きそうな程の気持ち悪い魔力。一つ間違えれば暴走。それを吐き気と目眩に耐えながら完全に操り、解き放つ。


「【雷砲・全開放(フルバースト)】ッ‼」


 青白い光のスパークが解き放たれる。まるでロボットものの巨大レーザービームのような極光が全てを破壊する。


 具体的に言うと、某モンスターを引っ張って敵にぶつけるゲームで、味方に当たった際に起こるコンボで出るアレだ。


 対する天使達は一切の無駄の介入する余地のない正確な大きさ、合理的な角度で障壁を張り、力に抗わず、上に反らそうとする。天使の力と天使の力がぶつかり合う。同格。ならばその力は相殺される。


 極光が消滅すると同時に障壁が砕ける。天使達はクレルスのもといた方向を見るが、そこには既にいない。天使達の遥かに上空。魔弾の嵐が吹き荒れる。


 牽制と目眩ましを兼ねた弾幕で自分の姿を隠す。天使達の迎撃。貧弱な魔弾など、一瞬で塵となる。


「発見。排除します」


 魔法戦だと数に殺られる。弾幕を盾に、数の暴力で押されないように接近戦を挑もうとしていたクレルスを天使が発見。各々の得物を振るう。


 斬る。突く。穿つ。撃つ。クレルスの体が微塵になるまで攻撃の嵐が止むことはない。クレルスは即座に切り刻まれ粒子となった。


 ───光の粒子に。


 幻影。そう気づいたときにはもう襲い。電光石火。死ノ鎖が出鱈目な方向に飛び、天使を穿っていく。時には【転移術】でワープゲートを開きながら、的確に心臓のみを穿っていく。


 数百匹いた天使が全て心臓を貫かれ死滅。殲滅完了。



※※※※※※



「なかなかやるな。しかも、まだまだ成長の余地がある。まるで才能の塊だ」

「余所見するな‼はあっ‼……ミラ、頼んだ」

「あらよっと‼」


 聖女とミラによる連撃。更に後続に天使の一斉射撃。しかし全て避けずに無傷。先の見えない戦いに心が折れそうになる。


 傷をつくれていない訳では無い。本当に、本当に浅い傷はつくれている。しかし、その程度であれば驚異の再生能力を誇る【再生】スキルの前には無意味にして無価値。この時代のあらゆる生物からすればチートもいいところだ。


 大概のスキルは、修行で習得できるのだが、【再生】スキルは天文学的数字の確率で現れる元々所持している者と、神の恩恵で与えられた者以外持っていないような、習得難易度:超絶極上鬼畜究極至難のスキルだ。


 その条件は、最低でも二年以上、毎日新たに少なくとも骨折以上のレベルの傷を追い続けること。それでも発現しない可能性の方が高いという鬼畜仕様。そもそも、このスキルを残したのは遊興の神ゲレン。


 スキルは、ステータスは神によって作られた物である。その目的は、その者の歩んだ人生の道標とでも言うべき情報という概念に詰まった力を抽出し、神々が己のものにするため。


 それに反抗するように、せめてもの抵抗と、その神々を打倒しうるスキルを、ゲレンは「中立だから敵対はしないけど、君たちのやってることに自分も参加していいよね」という詭弁を用いて無理矢理捩じ込んだのだ。それが【操作】【複製】【再生】【幸運】【遊興】。


 いずれも強力無比。確かに神に対抗しうる。しかしながら、才能か圧倒的な努力、又はその双方を持つ、真に正しく修羅と呼べるような者達にしか与えられず、使いこなせない、一般的にはゴミスキルと言われる類いである。


「さて、後輩が頑張っている。先輩が頑張らねばな。……カイザー、凉白。五秒間、俺を守れるか?」

「無論」

『承知』


 何処からともなく声が響くと、上空から矢が飛来する。飛来した矢はレバートの周囲を囲うかのように地面に突き刺さると、氷の壁を生み出す。


「小癪な。エクス……

「避けろォッ‼」


 聖剣の力を解放しようとした聖女にミラが飛び付き、カイザーの魔の手から庇う。ミラの背中に十文字の深紅の花が咲く。


「ほぅ、なかなか勘がいい」


 一瞬、底の見えない深淵のような影が姿を現すが、瞬きの後には消えていた。しかし、何者かと誰何(すいか)の声をあげる暇はなかった。


 二翼天使三匹の胸にダガーが生え、鮮血の華を咲かせる。背後から刺された。そう感じたときには既に絶命。この世の者ではなかった。


 即座に四翼、六翼が反応するが、抵抗虚しく想定外の方向から首を掻き斬られる。


 攻撃の瞬間、一瞬現れたと思ったら次の瞬間にはもう消えている。実際、攻撃の瞬間すら気づかれないことも可能だ。【気配遮断】と【幻術】、【影潜り】に体術を合わせた絶技を以てすれば、そのくらいは出来る。


 しかし、今回は気を引くことが目的なので、気配を調整して、一瞬だけ、気付かれるようにしている。


 ミラも、本来、欠片も気付けない筈だが、【気配遮断】を緩くしていたので、何とか直感が一番強いミラが天使よりも早く、攻撃の前に気付けたのだ。


 戦法から分かるように、カイザーは他の三人のような大破壊の能力があるわけではない。彼の本質は暗殺者。闇夜に気付かれることなく対象を抹殺することこそが彼の仕事である。


 弱者を毛散らかして無双するタイプではない。強者を確実に殺す能力の持ち主だ。【再生】スキル等と知ったことか。彼の刃は命脈ごと魂を砕き、死という現象をただを与える。


 付与、というのが近いかもしれない。死という概念や存在、状態の付与という究極の域。


 それを魔剣や魔眼など、スキル外の超能力や、神の与えたスキルを使うでもなく、努力と工夫で成し遂げた。そこまで魔王ジギル・アーラーンとの修行で自力で、辿り着いたのだ。唯一無二にして至高の神を殺せる暗殺者である。


 実際、レバート、凉白、鍛炉は、敵になると面倒なのは?と問われると、三代目魔王ジギル・アーラーンの次に彼の名を揚げるだろう。


「さて、五秒経ったな」

「解析、掌握全完了。蠢け【無機物操作】」


 【操作】スキルの派生で、生物以外の全てに干渉する【無機物操作】。【操作】は魔王レバート・アーラーンの原点であり、最も得意とするスキルだ。


 町全体、いや、町の周囲五百メートルごと、全てが歪んだように動き出す。それは集約し、十翼の天使へと向かう。二匹の天使は即座に逃げる。


 しかし、最早この王都は完全にレバートの支配圏域。何処にいこうとも地から出でる槍が、杭が、剣が、槌が、十翼天使を逃さず追い詰める。


 天使は街道に沿って空を駆ける。街道に沿えば建物が邪魔で、後ろを追う煉瓦や岩が混ざった岩石の津波がなかなか追い付けないだろうと考えた。


 しかし、頼りにしていた建物は杭に変貌し、その鋭い切っ先で天使を貫かんとする。針穴を通すように動く二匹。


 だがしかし、あえなく一匹の肩に一本の杭が突き立てられ、止まったところに、まるで死にかけの動物にハイエナが集るように、煉瓦が竜の牙と化してその体を切り裂き、貫き、潰し、砕く。


 天使の肉体と煉瓦。圧倒的な防御力、耐久力の差を埋めているのは一重(ひとえ)にレバートの技量だ。岩を限界まで、火山岩すら、深成岩になるような勢いで圧縮し、ぶつけている。


 もう一方の天使は、地の槍を打ち落とし、強かにもレバートに近づこうとする。前後から超圧縮された岩の塊が槌と化して天使を潰さんと急加速して、ぶつかる。寸前に直角に進路を上空に変えることで逃れる。


 ───がぁん


 明らかに金属が入っていると思われる違和感しかない音が響き、二つの槌が丁度重なり合う。上空への方向転換で失敗していたら今ごろはただの紅い染みだっただろう。


 ぶつかった岩石の大槌が、姿形を変えて、九頭蛇(ヒュドラー)のようにうねりながら襲い掛かる。最早それは蛇という枠に収まらず、そよ芸術性、凶悪さは九頭竜と表現するのが正しいのだろう。


 避ける、撃つ、避ける、撃つ。しかし、迎撃していた蠢く大地は、いつの間にか階段と化していた。誘導。そう気づいたときにはもう遅い。レバートという死神が、神の使徒の命脈を絶ちにくる。


 一歩。階段を数えきれないくらい飛ばしてただひたすら真っ直ぐに駆け登る。突風が走る。


 二歩。その手に持った明らかに投げ槍ではない、穂先が三ツ又でやけに太く大きな剛槍が投擲される。乾坤一擲、一球入魂ならぬ一槍入魂とでも言うべき渾身の力を込めた投げ槍。


 ───見事命中。


 三歩。天使が槍を引き抜いた隙に今度は大剣を投擲。紫電の雷光が煌めき、電磁加速で目にも止まらぬ勢いで吸い込まれるように突き刺さる。


 四歩。最早眼前。少し踏み込めばキスができそうな程に短い間合いで、いつの間にかレバートの手に現れていた大斧が首を断つ。


 大斧は天使の首を断った後に即座に消える。首が落ちて少し胴を動かしにくくなった天使の土手っ腹に、盛大に深々と突き刺さった大剣を足で更に押し込み、


「ぶっ飛べ‼」


 剣に伝導されるように紫電と黒炎が天使の体内に入り込み、中から体中をくまなく、隅から隅まで徹底的に紫電と黒炎に焼き付くされ、体内で爆発が広がり、体が四散する。


 ゲームセット。あれだけ脅威に思われた十翼天使を二匹同時に相手取って殺す。四代目魔王の力である。

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