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集団召喚、だが協力しない  作者: インドア猫
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死人ノ魔眼

 馬の上の騎士団長が聖女に大声で話し掛ける。立場が上の者に対しては馬から降りて、等と悠長なことをいっている場合ではないと、切迫した表情が物語る。


「聖女様!野営地が魔族軍の攻撃でほぼ壊滅状態。どうか撤退を‼」

「ハッ‼あのバケモノから逃げられるとお思いで?最早あれは魔族とか人間よりも強いとか、そういう次元ではない。逃げるにしても、あれをどうにかしないと……」


 現状、魔族の圧倒的有利。天使の出現で一時的に人族側に傾いた勝勢は、クレルスの進化で再度巻き返された。皇帝も獣王も死に、頼みの綱の天使は惨敗。神託者は狂う。


 ガタガタの情勢の中の更なる悪報にさしもの聖女の気力の糸も千切れかけ、絶望が心を侵食しつつある。戦場故に無視していた戦友(とも)の死も堪えている。


 もう。終わり。そう聖女が諦めかけた時だった。


「させません‼」


 聖女を串刺しにせんと迫っていた死ノ鎖を佐藤愛華が握り締める。その瞳に確固とした意志の光を灯して、鎖の先を見つめる。


 邂逅は早かった。鎖を巻き上げて急接近したクレルスが愛華の腹に蹴りを入れる。十分に勢いがのり、【硬化】スキルで固められ、微弱に発動させた【覚醒】スキルの恩恵を受けた必殺の蹴り。内蔵が破裂するほどの衝撃。


 日魔流闘術 体術 下殺(げさつ)内爆蹴(ないばくしゅう)


 日魔流闘術の中でも殺害に特化した、普通の門下生には決して教えない下殺シリーズの一つ。いかに堅牢なる防具に身を包もうとも、内にダメージを与えて殺す。それが下殺・内爆蹴。


 しかし、


「硬いッ⁉」


 無茶苦茶な程に硬い。しかし、衝撃が伝わったような手応えが全くない。愛華も踏ん張ろうとしたが、地面が耐えきれず、愛華は両の足で地面をえぐりながら吹き飛んでいった。


 だが殺せていない。それはクレルスにも分かっている。人間とは思えない異様な硬さ。全力で蹴った足が痺れている。本当に人間かと目を見張る。


 未知のスキルが存在するのか?それとも、と思案するクレルス。奥から出てくる全く無傷の愛華。本体どころか、服にすら傷一つない。


「こんなことは辞めなさい。せめて和睦を‼」


 簡単なことを言ってくれる。そう心中で毒づきながら、クレルスは愛華を真っ直ぐに見据える。


「和睦が出来るなら、こんなにも永く戦争は続いていない。元凶を排除するしか無いんですよ、先生。神が我々を神敵と見なす限り、人族連合は止まらない。仕掛けてくるなら、我々は民を、土地を、文化を守るために戦います」


 和睦など不可能。どうせ相互破壊確証があって冷戦に持ち込もうとしても、あの狂信者どもは自爆覚悟で攻撃してくる、と。そうバッサリ切り捨てて、クレルスは死ノ鎖を強く握る。


「なら、倒します」


 そこで殺すではなく倒すという辺りが、まだまだ甘い。


「貫け」


 クレルスの言葉は最早、会話ではない独り言。死ノ鎖八本を全て集めると、練り合わせ、回転させ、鈍い鉄の光を放つドリルへと変貌させる。


 そして、両者は衝突する。愚直に駆けてきた愛華に、天使をも死体に変える一撃が、全力で放たれる。クレルスの必勝、聖女も、騎士団長もクレルス本人もそう思っていた。


 ギィーーーー


 金属で金属を引っ掻いたような不快な音が響く。人体を傷つける音とは思えない。盾は持っていない。鎧もない。


 もし服の下に着込みをしていたとしても、耐えられるような鎧など、魔族の伝説の鍛冶師、鍛炉のアホほど重くて硬い、着こなせないような鎧くらいしかないだろう。


 なのに、血の一滴すら流れない。不気味に思ってクレルスが距離をとると、無傷の愛華がそこに変わらずたっていた。


「───バカな」


 クレルスのその一言は愛華を除く全員の言葉を代弁していた。あり得ない。だが、思案する時間はなかった。愛華の全く工夫しない無防備な右ストレート。


(確かに、あの防御があるなら受けるダメージを気にする必要はないか)


 腕を掴み、服の襟をつかみ、足を引っ掛け、勢いをそのまま力に変えて、背負い投げ‼だが、煉瓦が割れるだけ。この程度で傷つけられるなどと、クレルスも思っていない。


 本命は強欲ノ魔眼による魔力、及び生命力の強奪。


「何⁉」


 しかしそれすら防ぐ。それも当然。不殺ノ魔眼の【不殺】は、相手を殺せない代わりに、自分に対する一切の干渉を無効化する、というもの。


「なら、これはどうだ」


 八本の死ノ鎖。そこにそれぞれ【魔纏】スキルで火、水、氷、岩、闇、光の属性を纏わせ、【嵐雷魔法】で風と雷の属性を纏わせた攻撃を仕掛ける。いずれかの属性には弱いのではないか、と考えた。


 吹き荒れる魔法の嵐。光の奔流。しかし、それを以てしても愛華を傷つけることは叶わない。


 その攻撃を無視し、勢いよく、跳ね上がるように起きた愛華の頭突きがクレルスの額に炸裂する。咄嗟に【硬化】をかけたが、少し額が割れる。


 軽傷、これなら問題ない。そう割りきると、 攻撃を続行する。死ノ鎖を一旦収納し、御子神から奪い、腰につけていたデュランダルを引き抜く。


「なッ、それは‼」


 聖女が驚き、騎士団長は激怒する。


「それは、貴様が持っていいものではない‼」


 騎士団長は完全に失念している。デュランダルやエクスカリバー、グングニル、グラムなどは持ち手を武具が選ぶ。つまり、デュランダルを持てているということは、デュランダルがクレルスを相応しい持ち手と認めたからだということを。


「邪魔はさせないよ」


 黒槍を持ち、クレルス以上の立派な竜の翼を持った和服の男が現れ、騎士団長の剣を止める。クレルスの父、グレムである。


「父さん、あっちの状況は?」

「佐伯ちゃんだっけ、あの子のグループが結構粘っててエルフの長と一緒に持久戦の構えだよ。負けはしないが押しきれない、そんな状況だ。早くこっちを片付ける方が重要。そう判断した」


 そう言うと、長さ四メートルと、身の丈の倍ある槍を凪ぎ、払い、縦横無尽に疾駆させる。


「成る程。力はそこまでだけど技術は一流。特に受けの技術は目を見張るものがあるね。受けて反撃、うん、自分の精神を著しく削る戦い方だね」


 ギリギリで流し、受けとめ、反撃の機会を狙う。一度ミスすれば死ぬ。常に死と隣り合わせの戦い。そのせいで眉間や口に皺がいき、実年齢よりも年上に見られ、噛み締めた歯は削れている。


「だからどうした」

「そうだね、だから、受けきれない程の連撃を与えれば崩れる。クレルス、この老人と聖女は任せてくれ」

「助かる」


 再び愛華と向き合うクレルス。デュランダルを正眼に構え、深呼吸でゆっくり息を吐く。


 動き出す両者。愛華は走る。それに対してクレルスはゆっくりと歩む。


岩無空然(がんむくうぜん)龍落瀑布(りゅうらくばくふ)


 以前、サーシャが聖女との戦いの際に見せた岩無空然・遡上鯉(そじょうごい)は切り上げる技だが、龍落瀑布は切り下ろす技。


 日魔流闘術 全武具共通 岩無空然。その攻撃のあとにはどのような岩でさえも割れ、空がただ広がるのみ。威力を突き詰めた秘奥。だが、実戦ではあまり使わない。


 溜めが長い。一撃に全てを掛ける。その二点から、打ち合いの最中では応用性に欠け、隙をつくるだけになる。


 元々が様斬(ためしぎり)または様物(ためしもの)といって、刀や剣の切れ味を鎧兜や的、はたまた犯罪者の死体で試すときに用いる技。


 実戦で利用するのは全力の一撃を互いに打つ場合か、的が動かない、避けない場合のみ。


 今回は後者。的が避けない。愚直に、真っ直ぐに、嵐の中を、戦場の中を進んでくる。なら後は速度を読んで合わせるだけ。


 確実に殺す、その決意を胸に、振り下ろす。愛華の交差された腕とデュランダルが接近。そして、ぶつかる。


 風の奔流が迸る。しかしながら壊れない、研ぐ必要すらない、絶世の剣はその切れ味を発揮できない。地面は陥没し、愛華の靴の跡がありありと刻まれる。


 だが斬れない。硬いものを、ただ斬るために創られた技を以てしても干渉不能の障壁の前には勝てない。不壊と干渉無効。千日手の攻防。


 クレルスは業を煮やして蹴る。愛華が目で追うことすら難しい速度で後ろに飛び、体勢が崩れる。その隙に駆ける。一歩、二歩、それだけで何十、何百メートルという距離を詰め真名を開放する。


 情報と思念は力である。希望、憧憬、蔑視、欲望、嫌悪。様々な思念が載った真名を開放することで全心全霊で斬る。


 剣を地面と平行に構え、右から左に凪ぎ払う。黄金の刀身を眩く輝かせ、全てを裂かんとして。


不壊剣・絶世降臨(デュランダル)───ッ‼」


 ある男は、この剣をただの道具に過ぎないと、目的のために利用した。

 ある男は、この剣に憧れ、越えようと鎚を振るい、武具を造った。

 ある男は、この剣で人を救おうと希望を託した。


 そして今、この剣を振るう者は、これは借り物の剣であると。自らを担い手に相応しくないと思いながら剣を振るう。


 もうとっくに、【真勇】などなくとも選ばれているのに。


 エクスカリバーの選定基準は高潔であるか。

 グングニルの選定基準は不撓不屈の精神を持つか。

 グラムの選定基準は清濁を理解するか。


 そしてデュランダルは、確固たる信念を持つか。何でもいい。それが喩え負の感情であろうとも剣は厭わない。


 歴代担い手の内の1人は強いもの苛めが大好きな正確破綻者だった程だ。


 クレルスの信念は、強欲ノ魔眼の持ち主の信念のカタチは。勝利を求めた。勝ちたい。ただ純粋で珍しくもない簡単な欲望。だけれども、勝負に幾ら身を賭しても叶えられず、身を蝕む毒のような信念。


 それを以て剣の全力を開放する。


 が、それさえも無意味だ。クレルスの顔が絶望を写し出す。永遠に終わらない拳の鍔迫り合い。驚愕と、焦燥と、絶望が入り交じる。


 聖女と騎士団長を紙一重で捌くグレム。神技とも言うべき芸当を、飄々とした顔でやってのける。槍の間合いを生かして武装が剣の二人を近づけさせず、時折飛ぶことに寄って更に間合いをとる。


 傍目でクレルスを見ながら、その異常に気付く。


「こっちの相手も面倒だね。でも、向こうはどうなってる?幾ら何でもおかしくないかね。……クレルス、現況は!」

「物理、魔法問わず性能を発揮する障壁と思わしきものが体の一面に。デュランダルの全力開放すら効かない。最早無効化というレベル」


 最後の言葉は正鵠を射ていた。まさしく無効化だ。本当に、どうやって勝てというのか。まぁ、殺されることはないのだが。


(ッ⁉だんだん攻撃速度が上がってる。馴れて対応してきているのか)


 愛華の拳がクレルスの頬を掠めるようになる。しかし、妙なことに、気迫はどんどん薄れているような、そんな感覚が残る。


 クレルスが愛華の腕を脇で掴み、鳩尾に膝蹴りを。そして腕を離し、膝蹴りをした足でそのまま正面蹴りを行い、吹き飛ばす。


 吹き飛んだ愛華の腕には死ノ鎖が巻かれている。そのまま死ノ鎖を振り回し、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊。クレルスの狙いは、目が回るかどうかの検証。三半規管が異常を来すなら、まだ方法は残っている。


 クレルスの狙い通り、愛華はふらついた足で立つ。


(やはり三半規管への影響までは遮断できないのか。なら他の器官にも、抜け道があるかもしれない)


 音速を置き去りにして距離を詰めるとデュランダルを構えて振り下ろす。しかし愛華は、それを片手で流し、足でクレルスにミドルキックを喰らわす。


 すると、クレルスが光の粒子となって消える。


「こっちだよ」


 愛華の真後ろから武器を持たずに現れたらクレルスが、ジャーマンスープレックスを喰らわす。そのまま腕を掴んで関節を極める。


 検証その二。体をあり得ない方向に曲げてやればどうなるのか。外から幾ら斬撃、刺突、打撃を与えても意味をなさないが曲げてやれば骨は折れるのではないか。


 足に当たる胸の感触は無視してそのまま体制移動。その時に気付く。


「何だこの目。まるで、死人のような……。ッ⁉魔眼⁉しかもこれは。神の仕業かァッ‼」


 第二の脳であり、心臓でもある強欲ノ魔眼にインプットされていた情報に当てはまるものが。不殺ノ魔眼。しかし、遠山の前例でも分かるように、神がそんなものを普通に与える訳がない。


 不殺ノ魔眼改め、【死人(しびと)ノ魔眼】。不殺ノ魔眼の干渉無効の障壁が致死級の攻撃を受ける度に人間味が薄れるというもの。


 最も、時間経過で狂愛が治まるように、薄れた人間味は治るのだが、そんなことを知らないクレルスは激怒する。


「何処までも弄びやがって‼」

「ええ、我らが主にとって、貴方たちは玩具でしかない」


 クレルスにしか聞こえないような小声、そして背後から殺気。愛華を手放して転がる。そこにいたのは……


「天使、か?バカな全て始末した筈。しかも、先程の個体とは翼の枚数も強さの格も段違い」

「我もおるぞッ‼一度殺された恨み、晴らしてやる」

「帝国の皇帝だと⁉」

「流石の貴様らでも、ジジイの秘術は破れなかったようだな」


 まさかまさかまさか。クレルスの頭の中にある心当たりが思い浮かぶ。


 その名は条件蘇生。たとえば心臓停止、例えば脳の破壊、などといった条件が起こったときに蘇生させるという術式。ジジイというのは、帝国十傑の1人であり、エルフの長の師匠を引き受けたエルフの長に次ぐ最高峰の魔法使い。


「今回の条件蘇生は、心臓停止後十五分後だ。念入りに俺を殺したようだが、残念だったな。因みに、獣王とミラにもかけてあるぜ。これで、形勢逆転だ」


 皇帝の剣は鋭い。鎧は固く、盾はまるで壁。だが、そんな黄金をまるで其処らの石に変えてしまうような輝きを持ったもの。十翼の天使の存在が、クレルスに圧力をかける。


 あれには、勝てない。


「私は天使の中でも最高峰の個体の内の一つ。貴方が倒したのは低級の雑兵に過ぎない。貴方ごときでは勝てません」


 何故そんなものがここにある‼クレルスはそう大声で叫びたくなった。しかし、その問いの答は聞くまでもなく皇帝の口から語られた。


「何でも、神託者の野郎がやりやがったらしいぞ。自己を犠牲にして、天界への門を少し開いたとか。まだ神は出てこれないらしいが、天使は何体か出てきた。というわけで、だ。さっさと次の神託者探さなきゃならねえんだわ。とっとと、くたばれェッ‼」


『魔王の名においで命ずる。撤退‼全員撤退‼』


 魔王も、流石に今度こそは持ちこたえられないと察したらしい。撤退を命ずる。クレルスとしては遠山を回収したいが、そんな暇もない。


「逃がしませんよ」


 死があり得ないスピードで追いかけてくる。死ノ鎖をトラップとして張り巡らせるが、天使は時に避け、時に切り伏せる。天使の大剣デュランダルで受けとめる。クレルスの体が嘘のように吹き飛ぶ。


 顔に苦悶を浮かべながら四枚羽で速度を殺すが、努力虚しく建物に激突。砂塵が舞い、瓦礫が落ちる。そこには無力に倒れ伏すクレルス。


「終わりです」


 倒れ伏したクレルスを大剣にて両断。クレルスから血が溢れ、|光の粒子となって消えた《・・・・・・・・・・・》。


「幻術か」


 見事な幻術とそれを支える演技によって、圧倒的格上すら騙しうる。天使は即座に対応。


「そこか」


 あろうことか、大剣を投げた。クレルスは弾くことで精一杯。デュランダルで斜めに吹き飛ばす。それが、大きな隙となる。


「畜生がッ‼」

「死ね」


 光の槍がクレルスに向かって突き進む。


 グレムは間に合わないと分かっていても黒槍を投げる。サーシャはジョーカスとの連携を忘れて駆ける。


 【思考加速】と【並列思考】を全力で発動させる。


(死ノ鎖とデュランダル、は間に合わない。硬化程度では防げない。魔壁程度何枚あっても無駄。風で吹き飛ばす?光が風の影響を受けるわけがない。雷の槍で相殺も出来ない。押し負ける。あぁ、やらかしたな。こんなところで死ぬなんて。神様から祝福貰ったんだけどな。父さん、母さん。ごめ……)


「この都市に妙な結界が張られている。ゲレンの気配があって助かったな。そうでなければ見つけられなかった」


 謎の男の声。光の槍が彼の持つ大剣と槍に叩き落とされる。そして各天使の個体に矢が降り注ぐ。何かに当たった矢は氷の槍を以て天使を貫かんとする。しかしそれは、魔族には決して当たらない。


「調整した矢だと、殺しきるのは難しいですね」

「ならこれはどうだ?破ぜろ、瀧酒(たきさけ)‼」


 可憐な女の声。その後に続いた男が、刀から濁流を出し、八翼の天使を二体仕留める。天使の内訳は十翼二体、八翼五体、六翼が十体、四翼が二十体、二翼は数えるのも嫌になる程ウジャウジャと。どうやら翼の枚数が多いほど強い模様。


「そしてこれで、八翼始末完了」


 何処からともなく現れたら、コボルトの耳を持ったシャドウの男が、一ヶ所に固まってグレムを殺そうとしていた八翼の残り三体の心臓を抉り、首を断つ。


「さぁさあ、どうやら神代からかけ離れたこの時代には相応しくない顔が見える。ならば俺たちが貴様らを殺し、ここに泰平の世を築かん。我が名はレバート。レバート・アーラーンである。三代目魔王ジギル・アーラーン直属特殊部隊の隊員にして、四代目魔王。そして、神に復讐せんとする者だ‼」


 名乗りを上げるクレルスを守った男。灰色のマフラー、茶色のトレンチコート。白と黒に分かれた髪の色に赤黒い角。紺に金の炎の模様が入った腰巻きに、黒々しく、禍々しい剛槍と大剣。その背中は堂々としており、安心感を与える。


「何故貴様らがこの世にいる。あの大戦を生き延びはしたが、とっくに寿命で死んでいる筈だ‼」


 サーシャの相手をしていた方の十翼天使が声を荒げる。何より言えることは、この魔王レバートは、十翼天使よりも強い。


「戦争の時間だ。千年前の続きをしようか‼我が魔眼と心は、貴様らへの憤怒の炎に満ちている‼」

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