魔王
魔王、ケリー・Q・エバンスはクレルスの母のサーシャ・シルバーの親友である。
魔族の国の学校のクラスメイトで、ライバルでもあった。
サキュバスでありながら、あらゆる魔法を使うことができるケリーとサキュバスと悪魔のどちらの特徴も受け継いだサーシャは他のクラスメイトを寄せ付けない程に強かった。
当然、他人から羨ましがられる。故に孤独であった。二人が出会ったのは魔法高校に入学したときだ。
今まで負けということを知らなかったケリーは、首席を取れなかったことに酷く驚いたと同時に、その人物に対して興味を持った。
最初はケリーから話しかけた。お互いの今までの境遇を知ると、共感し、程なくして打ち解けた。
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「魔王様、先程の言葉はどういう意味ですか?サーシャというのはもしかしてあの、サーシャ・シルバーのことでございますか?」
「あぁ、サーシャの魔力を感じる。アンデットでもない、間違いなく生者の魔力だ。まさか、生きていたのか?今すぐ行くぞ。行くのは私とごく少数のものだけでいい」
「いえしかし・・・」
「いいから、早く。もしかしたら我が国の最高戦力が帰ってくるかもしれないんだぞ!」
「「「はっ」」」
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幻覚魔法も使わず、羽や尻尾を街中で自由に出して伸ばせるのはいいな。今までだと家以外ではずっと引っ込めてたからな。
王城の人に夜間に散歩に行きたいが、寒いので貸してくれないかと頼んで手に入れたローブのおかげで学生服も目立たなくて済む。
しかし割と簡単に出れたな。しかしこれから魔王とかにどう接触するか。邪神(仮)から話は通してあるらしいが、まず接触を図らないことにはなんともな。
「おいそこのもの。そこのローブのとサキュバスと、悪魔か?お前だ。ついてこい」
「は?いや急に言われても・・・」
「サーシャ・シルバーの関係者、否、血縁者。それも親や子といったとても近い血縁者だろう」
「何でそれを?」
「知りたかったらついてこい」
マジか。となると母さんを知ってる人物ということか?いや、割と母さんは有名人だったらしいからな。となると余程親しい者か?
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「貴様は何者だ?」
「クレルス・ベルク。サーシャ・シルバーの息子だ。それとも、創造主の遣いと言った方が分かりやすいか?というかあんたこそ誰だ」
「ふむ、最もだな。私の名はケリー。ケリー・Q・エバンスだ。というかなぜ創造主様のことを知っている?」
「ということはあんたが母さんの言ってたけーちゃんか?」
確か母さんの親友だった筈だ。気配とか感じたのか?似通った気配だったとか。
「なっ、本当に。ということはサーシャは、サーシャは生きているのか?」
「あぁ、地球って言うここからかなり離れたところだがな。今も生きている。って・・・」
ケリーとやらがいきなり抱きついてきたと思うと泣き出した。
「そうか。良かった・・・本当に良かった。ハハハハ。グスッ、グスッ・・・あぁ、グスッ」
死んだと思っていた親友が生きていたんだ。泣きたいだろう。見て見ぬ振りでもするか。フッ。




