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集団召喚、だが協力しない  作者: インドア猫
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狂愛ノ魔眼

 遠山が追って来るのは意外だった。そういえば勇者、クラスメイトの連中は俺を殺すと躍起になっていたか。同郷の者のけじめは同郷の者がつける。


 別に殺意を抱かれても構わない。それだけの理由はある。彼ら彼女らからすれば裏切られたと思っているのだろう。元々人間では無かった。


 同種を守るために戦うという思考は余程の復讐心を抱いていない限りあるだろう。見たことのない者でも無辜の同種というだけで助ける理由になる。


 命を賭けることに疑問はない。前もって、この世界に帰る予定だった母さんに聞かれていた。戦乱に巻き込む可能性があるが、それでもいいか。


 答えはイエス。クラスメイトを殺すくらいには狂っているが、同種が殺されることを黙って見過ごす程狂ってはいない。クラスメイトと同種の命を天秤に掛けた結果、同種を選んだ。


 その者によってこの価値観は変わるだろう。クラスメイトの方をとる者を否定はしない。無慈悲と言われればそうなのかもしれない。


 今まで共に過ごし、友情を育んだ者を躊躇せずに殺せるのだから。


 いや、躊躇はした。単に隣というだけでいいやつだった山田を殺すことに。外道に興味はないが、いいやつを殺すのは気がひけた。


 だから無断で田畑や遠山たちを誘うなんて行為に出たのだろう。優秀だからなんて言い訳に過ぎない。山田を殺してしまってから恐怖を覚えた。だから誘うなんて自分勝手な行為に走ってしまった。


 今、追いかけて来ているのはいいやつだ。一度は躊躇した相手だ。本題だ。さて、クレルス・ベルクよ、貴様には殺せるのか?


 当然。覚悟は決めている。未来のための犠牲だ。何事も犠牲がないなど有り得ない。全人類が夢見て果てる甘い毒の夢幻だ。


 さて、ここくらいでいいだろう。奴等は死ノ鎖による奇襲を警戒している。それと体術くらいしか見せていないからな。使うのならば別のスキルだ。



※※※※※



 ミラ目線


 暗闇に誘おうとも、勘で看破できる。此度こそは勝つ。負け越しだけは絶対に矜持が許さない。出来ればこの二人も無しで一騎打ちしたいところだが、それは叶わなそうだ。


 なら、奴の首は必ずやはねる。


 首をチリチリと刺す殺気。曲線軌道で襲ってくる死ノ鎖。暗闇に誘った理由だろう。本数も増えていた。だが、甘い。それくらい直感で分かる。


「上から鎖、避けろッ」


 全員が見事に反応する。獣王は知っていたが、勇者の一人、遠山とやらも流石だと感心する。だてに勇者なもと言われていないな。


 蛸や食人植物の触手のようにうねる鎖。いい加減うっとおしいな。獣王の矢も当たる気配がない。何度も何度も叩き落とす。甘い。


 ──甘過ぎる程だ。罠か?いや、直感は危険を告げない。取り合えずもう何合か打ち合ってから一気に距離を詰める。


 続けざまに大剣で鎖を地に縫い付ける。今、と思った瞬間、獣王に割かれていた鎖が全力で邪魔に来る。何らかの方法でこちらの様子を把握しているようだ。


 バックステップで回避ッ‼──からの回転……出来、ない?


 見えない壁に阻まれる。クレルス・ベルクに幻術以外の魔法の才能はない。初歩的な物しか使えない。ならば初歩を極めればいい。初歩も極めれば凶器となる。


 【魔弾】【魔壁】【魔纏】。それぞれ、駆け出しの魔法使いが使う魔法だ。極限に極める者などいない。だが、父親と母親に勝つためにどんな武器でも使うと決めたクレルスは極めた。


 結果として、【魔弾】の同時超多数展開、【魔壁】の超硬化、【魔纏】の精密操作が可能になった。


 【魔壁】はあくまでも防御用の魔法。故に殺気など籠らない。魔壁にぶつかって少しでも隙が出来れば、暗闇に忍ばせていた【闇魔弾】が餌に喰らい付くピラニアのように殺到する。


 野蛮で、暴力的な野獣のような表情だが、端正に整った顔が潰れるまで、全身の骨が砕けるまで、内臓が破れるまで、決してこう威力ではない。ハンマーで殴られるよりは弱い魔弾が襲い続ける。


 (【気合い】スキルにも限界がくる。意識が朦朧とする。顎をやられたな。脳が揺れている。その割に状況を客観的且つ現実的に把握できる。弱気になってどうする。長たる意地を見せねば。そして同胞を魅せねば。でも、無理だ。意識が遠くなる)


「死ぬ、のか」


「死にたく、ない。……まだ、死ね、 ない」


 死ノ鎖に全身を貫かれ、吐血する。痛みも熱も遠くなる。何も感じない。無我。肺が死に、酸素が回らず、───



※※※※※



 クレルス


 些か姑息だったか。魔王の精神誘導が効いているな。流石にあの直感の良さは面倒だ。五感の発達による第六感。その極限極致がアレだ。


 ───妙な魔力の流れだ。遠山に?光、か?なんだこれは


 ───死者蘇生!?有り得ない。そんな馬鹿な。そのような神技とも言うべきことが出来るならもっと早くにしているはず。何より世界の理に反する。


 先程の妙な魔力の流れが原因か?何か、俺たちの知らない巨大な勢力。例えば神々。ずいぶんと突飛な妄想だが、可能性はゼロではない。



※※※※※



 神界 とある人物


「神共め、やりおったな。少女を戦争の道具にし、あまつさえその心と尊厳すら踏みにじるとわ。なにが戒言か、何が慈愛ノ魔眼か。表層はそうでもあれはもっと歪められた───狂愛ではないか」

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