実戦
解析が終われば後は簡単お手軽。魔力で素材構成。分子レベルの再現も完全に解析し、理解していれば難しいものではない。これを【複製】スキル無しにやろうと思えば地獄。あの完璧超人の母さんでも金属物質は無理だろう。
【複製】スキルを使っての鉄やその他鉱産資源の大量生産は軽く死ぬ。いや、案外石油ならいけるのか?そうなれば世界のエネルギー事情が変わる?いや、普通に魔力をエネルギーにした方が速いし効率的だな。
はい、完成。と思ったのだが、完成した物は創造とはかけ離れたもの。鎖が細い。魔力を練り上げて虫眼鏡的なものを創れば鎖とかろうじて分かる糸のような鎖。短剣部分は変わらないが、鎖が細い。
すると本来の死ノ鎖がパキパキと音を立てて割れる。割れた結果、中から出てきたのは先ほど【複製】で作ったものと全く同じ品。これを複製したのか?これが本来の死ノ鎖か?判断材料が少ない。少なすぎる。
「あら、死ノ鎖の安全カバー、外せたの?」
パワーワードを突如として放り込んできたのは完璧超人ことサーシャ・ベルク。マイマザー。しかも全く気配を感じさせずに顔の真横に来るという絶対にいらないおまけ付き。警戒してなかったし疲れてたが、ここまで気配を全く感じないのは異常。・・・・今更だな。今更。
「安全カバーとか聞いたこと無いんだが?」
「でしょうね。言ってないもの」
しれっと話される言葉。言ってないのに伝わる訳がないだろうと今すぐ盛大に突っ込みたいところだが飲み込んで話を続ける。完璧超人であるが故に常人とのスペックの差がありすぎてマトモに話せないのが辛い。
「どういうことか説明して貰っても?」
「たぶんその調子だと覚えてないでしょうけど、貴方昔死ノ鎖の鎖部分に引っ掛かって首締められて死にかけたのよ。そのときに中々ほどけなくて。それですぐにほどけるように、カバー付けてたの」
自分の息子が死にかけたという話をよくもまぁ、あっさりと何気なく言ってくれるな。懐かしめるものなのか?子供いないから流石に分からないが。
「カバーというか普通の鎖のように見えるんだが・・・・。カバー。カバー?」
「扱いに支障をきたさないようにしてるわよ。カバーというか鎖の拡大版よような形にしてたし」
突然のカミングアウトにも程がある。そんなこと出来るのかという疑問が頭の中で渦巻く。結果、呆れに呆れ、漏れた言葉は弱々しい。
「意味わからねぇ」
「血と汗、酷いわよ。拭いたら?」
全く聞いてないし・・・・この至近距離でよく無視できるな。
※※※※※
「よう、なんか疲れたような雰囲気してるが、大丈夫か?」
「問題ありません。少し頭の整理が追い付いていないだけです」
「そ、それは問題ないと言うのか?あぁ、敬語は使わなくていいぞ。堅っ苦しいのは苦手だ」
「斥候や暗殺系のことをやりたいんだろ?なら実戦あるのみ。五時間の間、この王都から出ずに、俺たちから逃げきってみろ」
端的かつ一方的に告げられた言葉。その言葉を合図に五時間の逃避行が幕を開けた。




