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集団召喚、だが協力しない  作者: インドア猫
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複製

遅れてすみません。これの過去編がかなりいいところなので良ければそちらもよろしくお願いいたします。(ただのやること増やしすぎた中二病な馬鹿の所業)

次の戦いまでにはまだ時間がある。この間の戦いで疲れたであろうと、休み、いわゆる有給という奴を貰った。偵察も並行でやっているので休んでいる間の分も給料は出る。福利厚生しっかりしてるな。ありがたい。


この休みを使ってやっておきたいこともある。自分の強化だ。何故ミラに勝てなかったのか。確かに幻術の方の操作をしていたこともある。そちらに思考のリソースをもっていかれた。


だがしかし、それは言い訳にすぎない。どんな状況だろうと、あらゆる不利が自分に働こうと生き抜かなければならない。それができなければ死ぬ。


一番の要因は経験だろう。戦闘経験は豊富だ。昔から父さんと母さんに鍛えられた。だが、命の奪い合いをしたのは数度だけ。ミラはもっと多くの回数殺し合って殺し合って殺し合っている。


しかも力に任せた一方的な虐殺ではない。殺し合い。つまり自分にも死の危機が訪れるということ。下手したら、一歩でも読み違えると即座にその命脈を絶たれる。そんな戦いの経験が不足している。


ただ、今からそんなライバルを捜す時間も、殺し合うような条件も場所も、何もかもがない。足りないものが多すぎる。だが、今度も負ける訳にはいかない。それだけは絶対に、絶対だ。


それを補うにはどうする?軽く絶望的で諦めたくなるような状況だな。【思考加速】で引き延ばしを図ろうとも、限度というものがある。せいぜい10倍がいいところ。時間は有限。


経験を上回るには、それを越えるには奇策。予想もできない、経験の外。想定を上回る斜め上、もしくは斜め下極まりない戦法が必要になる。そもそも死ノ鎖は奇襲向き。そもそも正々堂々と戦おうという考え方の方がおかしい。間違っていたというべきか。


今までは道場で1対1、もしくは1対多数で戦ってきた。だからこそ固定観念に縛られた。戦いの場は道場ではない。稽古、武術なんて甘いことは言えない。あの錆鉄の匂いと死の気配が漂う戦場。


勝てば正義。負ければ悪。勝利者のみが生き残れ、負ければ犬畜生にも劣るただの惨めな敗者。時という波に押され、流されるだけの無価値な存在と化す。そして逆説的に言えば、


「勝つためには何をやっても許される」


勝てばいい。そのためにはどんな卑怯な戦法も、下劣極まりない罠も許される。ならば目指すべきは何か。竹中半兵衛のような策士か?諸葛孔明の如き大軍師か?


いや、軍隊規模の戦略なんて今まで考えたこともしたこともない。一朝一夕でできることではない。それこそ経験とそれに伴う勘が必要なものの代表例だろう。それ以外だと特殊工作兵?いや


暗殺者(アサシン)か」


とは言え、ある程度、そこらの軍人や狩人を上回る気配遮断はできることは確かだが、コボルトやシャドウのような種族の固有特性を持っている訳ではない。


だが騙すことには自信がある。幻術においては、あの完璧超人の母さんを上回れると自負している。それと組み合わせる。そうと決まれば話は早い。その道のプロに教えを乞うしかない。


自室を出るとリビングへと向かい、魔法を使ってできた電話モドキを使って二人の長に連絡をとる。電話だから見えないはずなのに頭を下げる。


「多忙な中すみません。頼みがあります」


『おお、こっちの仕事はもう終わっとる。なんや?』

『ふむ、私本人は暫く仕事だが、わかった。優秀な部下を派遣するとしよう』



※※※※※※※※



話ではもう45分程で此方へ来ることになっている。それまでの時間を無駄にするわけにはいかない。一刻、一秒が万金に値する。何か自分に駄目な点はないか?例えば戦い方。例えば武器の扱い方・・・・・・


自分の死ノ鎖の扱い方は明らかに祖母に劣っている。祖母は自分よりも遥かに強いとか戦いの天才だとか言っていつも褒めてくれたが、到底及ばない。祖母の言葉をただの世辞にするわけにはいかない。真実にしなければならない。


祖母は四本の筈の死ノ鎖をまるでその倍や三倍の数を操っているかのような鮮やかな手並みを見せた。反面自分は直感で避けられる品物。祖母のように流麗な鮮やかさには程遠い。


ここでも立ち塞がるのが経験の壁。500年近い年月を生きた祖母。その年月の重みは、決して下手な才能で破れるほど柔らかいものではない。当たり前の現実。理解はしているただそれでも眼前に押し付けられるとその厚みに敵うのかと卑屈になる。


あんな操鞭は、いくら才能があろうとも、今からなんとかできる領域ではない。なら祖母に勝てる点は何かないか?考える。考える。考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える。


考える。そうだ。脳。脳味噌だ。祖母は思考加速や並列思考なんて便利なスキルなんて持ってなかった。直感と地頭の良さだけで祖父にも父にも並んだ。


自分には祖母よりも考えることができる。思考を早めることが、同時にものを考えることができる。もっとだ。もっと思考を早める。同時にものを考える。幻術の方に割く思考リソースなんてデメリットではない。むしろいい鍛練だと思え。ドMと呼ばれようと喜び勇んで苦行を乗り越えろ。


それができるならどう役立てる?戦い、戦争に活かすにはどうすればいい?即時戦略組み立て?そのくらいなら今までもやっていた。今までを越えなければ意味はない。


倍や三倍の数を操っているかのような?それに比肩し、越えるには?実際に操ってやればいい。どうやって?本数を増やす?流石に指の本数は増やせない。そこまで一度に持てない。なら途中で枝分かれさせるか。そのためには作り直す?武器作成の経験なんてない。ならパクるか。【複製】だ。


複製の行程は三つ。まずは解析。次に魔力による物質の生成。そして最後に構築。大概、解析の段階で立ち止まる。その物質の密度が高ければ高いほど複雑になる。死ノ鎖は金属製。この時点で複製なんて、普通に無理鬼畜馬鹿の所業。それでもやれるだけやるか。


「ふう、・・・・・・【複製】ッ」


一瞬にして脳に膨大な情報が流れ込む。金属の分子の構造の一粒一粒全て。魔力を通すための機構の緻密さ。無数にも見える魔方陣。脳裏に疼痛が走る。脳が酸素と糖分を求め、血圧が上がり、燃えるような血が脳を駆け巡る。


汗が狭い額から滝のように流れ出で、眉や睫毛の防壁など知ったことかと言わんばかりに目に、鼻に、口に、顔の穴という穴に流れ込む。目の前が滲む。穴から出たのに穴に回帰するとは珍妙な話だ。山手線か何かか。


「ッ」


短い息が漏れでる。苦悶に表情を歪め、竜の牙と岩の肌がせめぎ合っていた唇は遂に肌が敗北し、口の中に錆鉄の味が染み渡る。鼻奥の毛細血管ははち切れ鼻血が伝い、口を切って出た血とともに唇に深紅のグロスを塗る。


「ンンッ、・・・・・ぐっ」


喘ぎ声が漏れる。今の状況で誰かが入ってきたら悶絶死する自信がある。あれ?45分はまだ経っていないよな!変なことばかりが脳を駆ける。現実逃避だ。何分経ったか、何時間にも、何日にも等しい出来事だった。



解析、完了

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