魔族の国と人間の国
邪神(仮)の話をまとめると、魔族を救って欲しいとのこと。まぁ親の故郷な訳だから元々まともな奴らなら救うつもりだ。
勇者勢の一人という立場を利用したら講和を結ぶ事だって可能なはずだ。
さてさて、対策は色々考える必要がある訳だが、どうすっかな。
「取り敢えず君は勇者たちと一緒の場所に転移させておくよ。あとそれから、あまり力を使い過ぎると感知されるかもしれないからこの程度しか手助けできないのはすまないが、持っていってくれ」
渡されたのは一つの仮面だ。顔の半面は笑っているが、もう半面は怒っている不思議な見た目の仮面だ。
「認証阻害の魔法が込められた仮面だ。ポケットの中に入れておくだけでもかなりマシになるだろう。君の母親や君自身で幻覚魔法を使って誤魔化しているが、絶対ではないからな」
「サンキュ。まぁせいぜい活用させていただく。取り敢えずやれる事はやってみる」
「そうか。頑張ってくれたまえ」
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「おぉ勇者様方。お待ちしておりました。大体の事情は我らが主から聞いてますかな」
「あぁ、暴虐非道の魔族を討つために召喚したと聞いている」
答えたのはクラス、いや、学校一のリア充の御子神光正だ。なるほどそういう説明をしたのか。
「待ってください。この子たちの担任としては承服しかねます。危険なことをさせないでください」
佐藤先生は生徒想いで有名だからなぁ。美人で生徒想いな先生だから人望は厚い。だが、
「でも沢山の人が困っているんでしょう。なら助けなきゃ。皆んなもそう思わない?」
なんか妙だ。軽く洗脳でもされているのか。にしてもここには居たくない。この大聖堂、魔族対策が施されているようだ。さっきから肌が焼ける感覚だ。
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場所を変えて今夜の宿泊場。王城客室の一番大きい部屋だ。
「皆さんがどうしたいか聞きたいと思います。先生としては危険な事はおすすめしません。しかし、生徒の自主性を信じて行動させるのも先生の役目です。なので、皆さんに聞きたいです」
ここで仕掛けるか。
「そもそもその魔族たちとは講和条約とか結べないのですか?そうすれば戦争も起きないと思うんですけど」
「たしかにクレルス君の言うことも一理ありますね。そうすれば無駄な血が流れずにすみます」
「お、さっすがクー君。着眼点が違うねぇ」
「ウザい。取り敢えずそのすぐ人の背中を叩く癖は直してくれ。出来れば早急に。いやもう今すぐに」
こいつは幼馴染の田畑梨恵。苗字まんまで農家だ。恐らく農家だから田畑とつけられたのだろう。昔庶民も苗字を持つようになったとき、わりと適当に決めたらしいし。
「取り敢えず、今日は寝ましょう。また明日、王様たちの話を聞いてからでも決めれます。では、早く寝ましょうね」
さてさて、邪神から魔族の国の座標は聞いてる。行くか。この世界なら地球では数センチしか出来なかった転移も1万キロ近い転移ができる。
「【転移術】」
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成功か。いい場所だ。落ち着く雰囲気がある。建築は中世ヨーロッパ風。でもまだ人間の国に比べたら建築技術が高いな。二階建て三階建てとかも普通にある。
どうするか。王城にでも行くか。情報が正しければここは王権と民主主義を足して二で割ったような政治らしい。詳しくは知らんが。
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魔王城にて。
「魔王様、どうなされましたか?」
「サーシャ?」
クレルスの母の名前である。




