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集団召喚、だが協力しない  作者: インドア猫
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人殺し

「今日こそ怨敵たる人類同盟を打ち破る第一歩となる日。ここに集いし同じ夢を見る勇猛果敢なる戦士たちよ。恐れることはない。さぁ、その手に武器をとれ!心に情熱の炎をともせ!この日、我々は皆、万夫不当の英雄になる!大量の敵の首をもって凱旋しようじゃないか。こちらの酒の貯蔵は十二分だ。存分に暴れたまえ!」


 魔王の大号令が響く。集まったのはあらゆる種族、年齢、性別などの制限を排除し、集まった精鋭たち。皆祖国への愛と忠誠をもって敵を屠らんとする意思がその眼に宿っている。



「出陣ッ!」


 その言葉と共に軍隊転移用の大魔法陣が光り輝く。実力不足故に参加できなかった兵と国民たちが魔力を注ぐ。皆想いは同じ。祖国の軍の勝利。少しの魔力消耗をも防ぐためにこの形をとったが、そう決定する前に自ら志願したものも多い。


 一足先に王都内に入る。今回の自分の仕事は攪乱。城の中で暴れに暴れまくる。そして出来るだけ多くの勇者を殺すこと。そのために侵攻の時刻は勇者と国、聖光教会の会議の時刻にしてある。会議が始まる。さぁ、出番だ。


 死の鎖の短剣部分でまず隣の山田の首を落とす。静寂が訪れる。皆が反応できず、困惑する。その中で案の定切りかかってくる聖女。


 予期していたため何の問題もなく上に逃げ、幻術を解除する。ある者は驚きのあまりに声なき悲鳴を上げる。またある者は悲愴で顔を染める。

 当然であろう。味方で、一番強かったものが実は敵だったのだ。魔国で言えば母さんが裏切った級の大事件だ。


「クレルス、君?」


 一番先に声を発したのは意外にも遠山だった。てっきりリーダー的なな御子神あたりだと思っていたのだが,まぁどうでもいいことだ。


「貴様は、仮面の・・・。まさか勇者の中に紛れ込んでいたとは」


「悪いがお前の相手は俺じゃない」


「やっほー、元気にしてたー?」


 陽気な声が静かな城内に響き、父さんと母さんが現れる。場違いにも程がある。町では美男美女のおしどり夫婦で有名だったので知っているクラスメイトも多い。


 一方、王国側の人間はというと、サーシャ・シルバーの登場に驚ている。生存確認されていて、警戒もしていたが、、自国の最強戦力と互角に渡り合うほどの化け物を前に絶望する。


 聖女を母さんに任せて勇者狩りを続行する。王国騎士が急いで庇うが、右手に持つ二本の鎖で縛り、壁に叩きつける。左手に持っている方で沢田、村田を殺す。国王直轄の近衛兵が襲ってくるが、父さんによって止められる。


「なぜ、なぜみんなを殺す!答えろ、クレルス!」


「戦争だからだよ、御子神。そこに私情は挟まない。クラスメイトとかは関係ない。ちょうどいい。御子神、あと遠山、田畑、華谷。こちら側に来る気はないか?御子神の【真勇】、遠山の【軍勢強化】田畑の【弱体無効化】華谷の【超回復術】は興味深い」


「ふざけるな!クラスメイトを何の感情もなく、冷酷に、ただ戦争だからという理由で殺す殺人鬼についていくと、本気で思っているのか!それなら最初からみんなを誘えばよかっただろ。そうじゃなくても、相談くらいしてくれたら、俺じゃなくても佐藤先生にでも相談すれば、こんなことにはならなかったはずだ」


なんの感情もなく冷酷に?お前こそふざけるな。確かに魔族を見た目で蔑む奴に慈悲などいらない。だが、さっき殺した山田のようにそこそこ話す奴を殺さなくてはいけなっかった。そこにどんな覚悟があったか知っているのかと叫びたいところだが、何とかこらえる。


「相談して聖光教会にばれても困るからな。それに魔族を見た目で醜いとかいう奴らや無能はいらないな。ところで、遠山と田畑、華谷はどうだ?」

「私はいやよ。殺人鬼側にまわるのは御免ね。私は正義をもって戦うわ」


 華谷が答える。目線に敵意が宿っていたからこれに関しては予想通りだが残念だ。【超回復術】は三代目魔王様が死者蘇生という禁忌の域まで至らせた記録が残っている。神に与えられたものならそこに手が届く可能性があったのだが。


「私は・・・・」

「答える前に一つ聞いていい?」

田畑が割り込み、遠山のことばを遮る。


「何だ、田畑」

「クー君は瑠花ちゃんのおもいを知ったうえで言ってるの?」

「遠山の?何のことだ?」


 無言の殴りが飛んでくる。鳩尾を的確に狙っているグーだ。とっさに回避する。運動能力女子一位と言われるのは伊達ではないと思わされる速さ、的確さだ。

最後に常人なら、とつくが。反撃に首を掴む。


「何のつもりだ。敵対ということでいいのか?」


「ああ、敵対だね、クー君。いや、クレルス・ベルク。君が瑠花ちゃんの思いをちゃんと理解したうえで誘っているならその話に乗っていたさ。でも能力だけでひとを判断して相手の自分に向ける本質的な思いを無視するような奴に私はついて行きたくない」


「本当に何のことだ。別に能力だけで判断した訳じゃない。初対面で見た目で判断しない点も、その他性格もいい点を含めて評価している」


「ここまで言っても気が付かないって、とんだ大馬鹿だ。クー君・・・じゃなかった。君は鈍感すぎるよ。こんのラノベ主人公脳が!瑠花ちゃんもこんな奴についていったらだめだからね」

「う、うん」


 これで全員交渉決裂。時間がなかったとはいえ、さすがに殺す前に交渉した方がよかったか?もしかすると交渉事の才能が皆無なのかもな。


「少し、殺す前にに言っておこう。お前らのやろうとしていることはさっきお前らがおれに言った人殺しと変わらない、魔族殺しだ。結界のせいで気づいていないだろうがいま城壁のすぐ近くでやっている戦争を見てみろ。血で血を洗う激しい殺し合いだ。命に貴賤もなにもない。全ては平等というのなら、魔族の命も人と変わらない。違うか?」


 皆が皆黙る。現実を押し付けられたからだろうか、それとも何か別の要因があるのか……。


『注意、アマゾネスとエルフの族長がいた、エルフの方はなんとか抑えているがアマゾネスの方にそっちに向かわれた』


「ハイ結界ドカーーン。って硬ってえなー。お、いつかのサーシャの野郎じゃねえか。なんか知らん奴もおるな。強そうじゃし戦ってもいいか?いいよな」


「できれば、勇者様方を逃がしてほしいのですが、頼めますか?ミラ」

「何だ。面白うない」


 だがその言葉とは裏腹にニヤリと笑って


「だがまぁ、戦に負けるのはもっと面白うない。最後に立つのはこっちじゃなきゃな。いよし、任せろ」

遠山の思いに関しては田畑の言葉から察してください。

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