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自称モブ、運命の再会を果たす

二話目~

長くなりました。どれくらいの長さが良いんでしょうかね?もう少し短くした方が読みやすいかも知れませんね。

俺の聞き間違いだろうか。


今、天野さんは俺に………

「好き」って言ったのか?


駄目だ、思考が纏まらない。告白は昔何度かされたことがあったが、今までこんなにドキドキしたことはない。

目の前の美少女はやっと言えたと安堵している。


しかしその表情はどこか不安げで、断られたらどうしよう……といった感情が見て取れる。


………これは、言いづらいな。


元々返事は決まっている。有り得ないと考えつつも、このことは予想はしていた。


きっと生半可な返事じゃこの先変に期待されるだろう。この際最低な男だと思われても仕方がない。


きっぱり、バッサリだ。


「ごめん、天野さん。俺は君の気持ちには応えられない」


「え………」


淡々とした声でそう伝えた。ここで緊張して声なんて上擦らせたらいけないと、そう感じたからだ。


期待した返事ではなかったのだろう、もしくは穂花に何か背中を押してもらったのかもしれない。それでも、告白を断られたという現実を突き付けられ、その表情は悲しみと絶望で埋め尽くされているようにも見える。


「そっか………」


そう言い俯いてしまった。両手ではスカートの裾をキュッと掴んでいて、肩はふるふると震えている。

今にも泣き出してしまいそうだった。


さすがに胸が締め付けられた。その様子から本気で俺のことが好きなんだろうということだけは分かった。


理由は分からない。一目惚れだとしたら、まず俺に一目惚れをする要素はないし、助けられた時に好きになったということも考えられるがそんなラブコメのチョロいヒロインのようではないだろう。


俺のことを好きになった理由はいささか気になるが、生憎もう俺にはその理由を聞く必要も理由もない。


ここで心配なんかしたらまた変に期待をされてしまう。今度こそ本当に天野さんを傷付けてしまう。だから最後まで最低な男を演じなければならない。


「話はそれだけか?それじゃあ俺はもう帰るからな。じゃあ、また明日」


良心を押し殺し、表情一つ変えず淡々と言葉を並べ、踵を返し、屋上から去る。


天野さんは何か言いたそうにしていたが、気にしてはいけないと思いそのまま階段を駆け降りた。


ここで振られて付く傷よりも、俺が天野さんを受け入れた先にあることの方が余程辛い。

こんなことただの俺のエゴだなんてとっくの昔から理解している。それでも嫌だった、俺の目の前から大切な人がいなくなるのは、傷付くのは。


だから最低だと思われても良い、例えこれが損な役回りだとしてもだ。


(頼むから、諦めてくれよ……)


これが、俺が天野さんに対する、最後の願いだった。




◇◇◇




その後急いで学校を出て帰路についた。

先程のことがあってか大分精神に疲労が見られた。


いつもは大輝と穂花と共に帰っているが、今日はあの二人は何かを察してくれたのか先に帰っていてくれていた。


俺は学校から徒歩30分程のマンションで一人暮らしをしている。セキュリティもそこそこの高校生の一人暮らしにしては十分過ぎる物件だ。


大輝もそこで一人暮らしだ。何でも親の単身赴任に付いて行かずここに残ることにしたらしい。

理由を聞いたら、「お前が寂しがるから」なんて笑いながら言っていたが、当の本人である俺からしたらとても嬉しいことだった。


つい二、三ヶ月前の話だと言うのにとても昔のように感じてしまうのは、今日がとても濃密な一日だったからだろう。


そんなことに一人苦笑を浮かべながら歩いていると、視線の先に公園があるのが見えた。

この後はスーパーで切らしていた調味料やら食材やらを買いに行こうと思っていたが、この疲労具合ではまず無理だろうと思い、そこの公園のベンチで一休みをすることにした。


俺は晩御飯も大輝と食べている。最初は押し掛けてきたあいつに驚いたが、あいつが料理ができないのは知っていたし、俺の料理も絶賛してくれているので悪い気はしていなかった。自分が作る料理を褒められると嬉しくなるものなのだと、その時気付かされた。


恐らく帰りはいつもより一時間程遅れるだろう。そう考えた俺は制服のポケットからおもむろにスマホを取り出し、RINEを開いた。そして大輝に


『少し遅れるから待っててくれるか』


と送るとすぐに


『了解した』


と返信が返ってきた。


まぁ、こんな日常の中に紛れたほんの少しの特別も良いのかも知れないと、そう思い、少しの微笑みと共に、公園から出た。




◇◇◇




切らしていた調味料と食材を買い、スーパーを出た。スマホで時計を確認すると、もう19時になっていた。

いつも帰っている時間が大体17時だから、二時間も遅いことになる。

こりゃ大輝に心配をかけさせてしまうな。良かった、大輝の好物のプリンを買っておいて。


こんな遅い時間に下校をすることがなかったので、いつもの帰路も、まるで全く別の道かのように思えてしまう。


ここは福島県の中でも都会の方だ。と言っても、東京とか大阪とか都会の中の都会程ではなく、どちらかと言えば“田舎の中の都会”と言う感じだ。何でも「東北のシカゴ」なんて異名を持っているらしい。

それを聞いたときはなんだそれと興味すら抱かなかったが、この何とも言えない景色を見ると、そうなのかもしれないと思えてくる。


いつもは空が明るい内に家へと帰っているためそこまで気に留めたことはなかったが、帰路の途中にあるレンタルDVDショップや服屋なんかも昼間と同じくらいの活気なのにも関わらず、夜になり、街灯等に照らされている所を見ると、昼間以上に活気づいているような気がする。


まぁ、ここまで活気づいているのは大通り付近だけであって、そこから外れると閑静な住宅街となる。大通りから一本道を外れただけでこの静けさだ。さすが田舎の中の都会と言えよう。


「閑静な」とあるように街灯もそこまで立っておらず、大通りと比べると二、三倍は暗くなる。

さらには路地裏なんかもあるため、ここを通る女性なんかは気を付けた方が良いのかもしれない。


なんて柄にもなくそんなことを考えていると、


「──てください!」


「ん?」


なんか聞こえたぞ。俺はあれか?知らず知らずの内にフラグを引き寄せてしまう体質なのか?

と言うか、明らかに「止めて下さい」って言ってるよなこれ?


ここは人通りが殆ど無い場所だ。恐らくそれを分かった上でやっているのだろう。声色から察するに随分と強引なようだ。


ともかく助けなければ。


気が付けば自然と声が聞こえた方向に向かって走り出していた。


「止めて下さい!警察を呼びますよ!」


「なんで呼ぶ必要があるんだよ」


「俺達悪い人じゃないぜぇ?」


「それに一人だろ?だったら俺達と少しくらい遊ぼうぜ」


一本の路地からそんな声が聞こえてきた。襲われている女性の声はどこか聞き覚えがあるような気がする。


それにしても………テンプレ過ぎね?

今時こんなナンパの仕方するやついたんだな。


路地に入ると、そこにはいかにもなチンピラ三人と、目の端に涙を溜める天野遥香の姿があった。


やっぱり。


どこか聞き覚えがあるかと思えばやっぱり天野さんだったか。

それにしてもこんな人気のない路地まで連れていくとはとんだ下衆な奴らだ。


取り敢えず、こいつらに制裁を与える前に天野さんを助けなきゃな。


「あれ、こんな所にいたんだ~遥香」


「なっ、誰だてめぇ!」


「あ~申し訳ありません。この人は自分の連れでして。その手を離してもらっても良いでしょうかね」


天野さんは俺の登場により頭が混乱しているようだがこの際それで良い。強引に男の手を剥がす。


「すみませんご迷惑をお掛けしてしまいました~」


精一杯の煽りスマイルで男達の前から天野さんを連れて去ろうとするが、


「ふざけんじゃねぇ!」


そう上手く事が運ぶはずもなく、三人組のリーダー格が逆上してきた。

殴り掛かってくるかと思ったら、その右手にはキラリと光るものがあった。


………ナイフだ。


こいつはここで俺を殺して逃げると言うことを考えているらしい。

ふと隣の天野さんを見るとナイフに怯えているのか全身を震わせている。当たり前だ。寧ろこの状況で平然としていられる俺の方が可笑しいのだ。


もしかしたらトラウマになるかもしれない、そう考え天野さんの顔に自分の顔を近づける。そして


「もう、大丈夫だ」


そう言い安心させてやろうかと思ったが、頬がみるみるうちに紅潮していった。


あ、そういえばこの人俺のこと好きなんだっけ。すっかり忘れてたわ。


相手はナイフを持っているが、怪我を負わずに済む方法は一つだけだ。


刺されなければそれで良い。


「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!!」


俺が向き直った途端にナイフを持って突っ込んで来た。

予想通りだ。


すかさず俺も突っ込む。そうしてナイフを避けてみぞおちを思い切り殴ってやった。俺は合気道を習っていたのでこいつはしばらく気絶して動けないだろう。


「かはっ………」


目の前で力なくドサッと倒れる。そしてそいつが持っていたナイフを奪い残り二人に向かって


「まだやるのか……?」


と睨みを利かせたら顔面蒼白で首を横に振ったので「だったら失せろ」と言ったら走って逃げて行った。


そうしてナイフを捨て、天野さんに向き直り、


「じゃ、帰ろうか」


そう優しく微笑み、未だに頬を紅く染めている天野さんの手を取りその場から去った。




どうでしたか?


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