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2.まさかの遭遇、令嬢

『初めまして、私の名前はアンナ・イデス。

これからキャラクター作成の情報登録と、チュートリアルのサポートを担当します。』


小さなポニーテールの女の子が笑顔で話しかけてくる。小さな部屋の中で浮かぶ少女の奥には扉。

(すげー。良くゲームの中に出て来るような女の子が、立体で浮いてやがる。いや、そういう技術は当たり前で現実でもよく使われているが、自分がゲームの中でそれを見るというのが驚きだった。)

自分が体験するような感覚に俺は少し興奮気味になっていた。

(ってかアンナ・イデスって。案内です?くだらねー。)

名前を考えた奴、めんどくさかったのか?


『まず初めに、マスターのお名前を教えてください。』

名前?名前か。折角だから格好いい名前とかがいいな。こんな事なら考えておけば良かったぜ。正直自キャラの名前も直ぐに出て来ない事を思うと、アンナ・イデスの名前が笑えねぇ。


「ユアキス。」

アキトでも良かったんだが、本名は抵抗がある。雪待晶杜から考えた名前じゃ、そんな変わらないかもしれないが、少しはまともなんじゃないか?


『マスターの名前はユアキスで登録されました。』

さて、次はなんだ。

『マスターの身長は175cm、体重61kg、性別男、間違いが無ければ浮かぶ確認オブジェクトに触れてください。この情報は更改されるものではありません。ベースの身体を作成する為に利用されます。』

VR-HMDが読み取った情報か。そこまで読み取られるってなんか気持ち悪いな。まあいいや、それより確認しなくても勝手に作ってくれればいいじゃん。

『未承認の場合は自分で設定する事も可能です。』

マジか。自分じゃない自分にもなれそうな気がするな。が、そんな面倒な事はしたくない。多分、自分の体形のままの方が操作しやすいんじゃないか?

そう思って俺は、ふわふわ浮いている確認アイコンに触れた。


『次に髪型と色を選んでください。』

うえ、そんな事までやるのかよ。キャラクター作成も楽じゃねぇな。


ここからが長かった。髪と色だけじゃない、目、鼻、耳、口等顔のパーツ毎に選ばされる。眉毛の太さとかそんなに拘ることか?面倒だからVRがスキャンしてくれればいいのに。

あ、現実の顔がばれるか。

更に戦闘時以外の服も上下や上着で選ばされる始末。しかも下着まで選択って、どうしたいんだよ。


『お疲れ様でしたマスター、これでキャラクターの作成は完了です。』

やっと終わったぁ。これでゲーム始まるのか?

『次は武器の選択へ移行します。』

あ、そうだった。武器を選ばないといけないんだったな。

『武器の選択はゲームを始めてからでも可能ですが、始める前に選択して操作方法の確認をおすすめします。』

確かにそうだよな。俺はそう思って選択アイコンに触れる。

『武器には攻撃向き、防御向き、支援向き、後方攻撃向きの四タイプが存在します。それぞれの特性についてはヘルプノートを確認してください。』

俺は支援や後方って感じじゃないんだよな。剣を振ってみたいからやったんだし、ここはやっぱ片手剣がいいよな。軽快に振れそうな気がするし。

『では基本操作と片手剣の扱いについて、チュートリアルを開始します。』


実際にやってみたが、結構複雑だ。

片手剣にはそれぞれ、単独、盾持ち、両手持ちのパターンが存在する。盾を持つと攻撃をガード出来るが手数が減る。両手に持てば攻撃力は増すが、硬直時間が長くなるのとコンボ制限がかかり、ダメージは増えるがこちらも手数が少ない。

軽快に動きたい俺としては、盾無しでプレイしてみる事にした。コンボ数も多く、回避率も上がる。


それから初回防具の受け取りと装備、大陸の概要と最初の街で何をするかの説明を受けて、俺は最初の小さな部屋の扉を開けた。


扉を開け、光の中に飛び込むと外壁に囲われた街の前に転送される。


アーケルスリア大陸南端にある、メルフェアの街だ。


「街に行く前にっと、システムデバイス。」

俺がそう言うと、左掌にメニュー画面が浮かび上がる。タッチやスライドで操作できることから、ユーザーインターフェースは携帯と大差ない操作で使えるのが扱いやすそうだ。

そこからシステムメニューを選んで時間を確認する。

「げ、もう二時間も経ってるじゃねぇか。」

一旦セーブしてログアウトするしかないな。母さんに怒られそうだし。




う・・・慣れないと、この現実とゲーム内の感覚の切り替わりに気持ち悪さを感じそうだ。

VR-HMDを頭から外すと、リビング内を見渡す。

「もう出来ているわよ。」

ダイニングテーブルの上に並んだ料理。料理も殆どが簡単調理用になっている。晩御飯のメニューを人数分選んで注文すれば、指定した時間にその分の材料が届く。

既に調理可能状態になっているので、特定の容器に入れてオーブンレンジに入れるだけだ。名前は変わっていないらしいが、料理を選んでボタンを押すだけってのは便利なんだそうだ。

この機能も俺が生まれる前からあったらしいが、材料は自分で用意して、完成度もそこまでじゃなかったらしい。今はこれに合わせて材料や調味料が加えられ、家では本当にセットするだけだ。

ネットワークを介して機器の型番と調理がクラウド上で同期されるため、オーブンレンジが作れる分量や作れる料理で注文できる。

当然、配達される材料もそれに合わせて、準備されているので自分で何かする事は無い。失敗する事も無く、毎回決まった味で勝手に出来上がる。


「あ、親父帰ってたんだ。」

その料理を親父は味気ないと言うが、俺には分からない。これが当たり前だから。

「あぁ、今日は早く終わったからね。で、早速やったんだな、どうだった?」

「どうも何も、キャラ作成終わったところだよ。」

今でもゲームをしている親父としても気になるのだろう。でも、まだ感想を言える段階ではない。

「本番はこれからだな。」

「ああ、進めてみない事にはなんとも。」

「成績に響かない程度にしておきなさいよ。」

「分かってるって。」

まだ高校生になったばかりだからな、勉強内容について響くかどうかなんて判断出来ない。けど、母さんには逆らえないんで、従っておく。




ご飯を食べて、早速続きを始める。

今度は自分の部屋に移動して、部屋から無線でUR2にVR-HMDを接続して。


さて、まず始めに何をするんだっけ。

「システムデバイス。」

システムメニューを呼び出して、ヘルプノートからやる事を確認する。

(ああそうだった、メルフェアの街で話しを聞くのと設備の確認か。)


あそこが道具やで、アイテムの購入や錬成が可能。

次に装備屋で装備の購入と、これにも錬成があるのか。

えーと、鍛冶屋では装備品の作成と強化が可能。

それからクエスト受付があって、ギルド受付ってのもあるな。

どの施設も初回はチュートリアルがあるので、確認するようにってヘルプノートに書いてある。


この大陸に派遣された者には部屋が割り当てられるらいし。

そこでアイテムの保管や装備の整理が可能っと。

(いわゆるこの世界の自宅って事か、とりあえず行ってみるか。店は面倒くさそうだから後でいいや。)


部屋に移動した俺は、設備のチュートリアルをみると中を確認してみる。

ベッドにテーブル、机にクローゼットと、家具が揃っている。

鏡もあったので自分の顔を見てみる。まぁ、妥当なところだな。リアルの自分寄りになってしまった。

親父は平凡だが、母さんは美人だったらしい。ってか昔の写真を見てみたが、確かに美人だった。俺は母さん似なので、自分で言う事ではないが顔は整っているほうだ。

(悪く無い出来なんじゃないか?)

キャラの見た目に満足しつつ他の設備を見る。トイレやシャワールームもあるが、使うか?

(試しにベッドに横になってみるか。)

そう思って横になる。感触は無いが、横になっている感覚は味わえる。疲れた時の休憩にはいいかもしれない。

(っと、こんな事をしている場合じゃない。さっさと狩りに出発しなきゃな。)


一通りチュートリアルを確認して分かった事がある。一応、キャラの上には名前が見える様になっているんだが、白文字はNPCだって事だ。

青色の文字が俺と同じプレイヤーのようだった。今のところ話しかけられてはいないので、俺も面倒だら自分からは話す気はない。


(さて、クエストを受けに行くか。)

『クエストの受注ですか?』

クエストの受付に来て、カウンターに近づいたら、NPCが喋りやがった。

カウンターの上に受注、報告の選択肢が表示されたので、受注をタップする。

『システムデバイスにクエスト内容を転送しました、内容はそちらをご確認ください。』

確認すると、LV1-0と書いてあるクエストがシステムデバイスのクエスト欄に表示されている。

闇イノシシの子供 討伐10体

(最初はイノシシ退治か。片手剣の扱いのおさらいには丁度いい。って、俺まだ戦ってないから、かもしれないだな。)

まぁ初心者が楽に勝てないようなクエストを出してくるわけないよな。


(さて、街の門に向かってフィールドに出るか。)

そう思って街の中を歩いていると、プレイヤーの中に綺麗な女の子を見つける。青文字だからプレイヤーだろう。

背中まであるストレートの黒髪、整った顔立ちでかなり可愛いが、目尻が少し上がっている所為かきつめな感じがした。

(好みとしては、もう少し優しい目をしていると好みなんだが。)

と思っていると、その女の子はこちらに顔を向ける。あれ、どっかで見た事ある気がするな。

あっ!今日学校帰りに会ったあいつだ!確か鳳隆院とかっていう。


通り過ぎて行ったその子のプレイヤー名はアヤカだったが、それだけじゃ分からない。

それ以前に財閥の令嬢がゲームなんかするわけないか。

そもそもキャラメイキングも自分そっくりに作る必要も無いわけだし。別人別人。と思いながら門に向かう。

いや、待てよ。

と思って振り返ると、その子はクエストの受付に居た。

そう言えば、今日は早く帰って新作のゲームをすると、高野だっけ?とにかく運転手に言っていたよな。ってことはあれ、マジで鳳隆院なんじゃないのか?


ちょっと確認のしようが無いな。

可能性はあるってだけだからな。気にしないでおこう。あと関わらないのが一番だ。

だからさっさとクエストに行こう。

余計な時間を使ってしまった。


「こんばんは。」

門のところでいらぬ事を考えていた所為で、後ろから声を掛けられる。邪魔したかと思って振り向くとさっきの子じゃないか!

「こ、こんばんは。」

何故話しかけて来た。ばれたか?

「イノシシ狩りでしょうか?」

「あ、ああ。始めたばかりなんで。」

「私も始めたばかりですわ、よろしければご一緒頂けませんか?多少操作に不安がありますの。」

いやぁ、独りで確かめたかったんだけどなぁ。だからそう言われると困るな。

「俺も、初戦なんですが。」

「では丁度いいではありませんか。」

「分かった。」

ま、そのうちパーティープレイとかする事になるだろうから、良い機会か。動きを確かめるついでにクエストが楽になりそうだし。

「では、パーティ登録を致しましょう。」

ああ、なんかチュートリアルにあったな、それ。


それからシステムデバイスをお互いに開き、パーティ項目から俺のクエストにアヤカが加わった。

だけど、喋り方からして、どうしても放課後の鳳隆院を思い出してしまう。

もっときつい感じの喋りではあったが。


街の中ではシステム的に武器の表示はオフになる。相手の情報を確認してない俺は、フィールドに出たときアヤカの武器を見て驚く。

太刀かよ・・・

もっと双剣や後方等の小さいものを想像してた。

しかも何故抜刀している。

「やはり、日本人は太刀に限りますわ!」

と言って素振りを始めた。

いやここで振るなよ。

ってか、やっぱこいつ鳳隆院なんじゃないか?



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