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初戦辛勝(ほぼ敗北)


「はい、反省会するよー」


「…………」


「…………」


 パンパンとサンダルクが手を叩くと全員が円を描くように地面に座る。

 現在彼らがいる場所はフィフティスからあまり離れていない平原。そこに生えている木の下に陣取るように座っていた。


「あの、主様……」


「まぁ……うん。散々だったね」


 ミカンの言葉にサンダルクが言葉を返すと、まるで弾かれたかのようにスイカとモモの兄妹が真正面から対立する。

 互いに立ち上がっては一触即発と言った様子。今すぐにでも掴みかかりそうだった。


「だって兄貴がしっかり止めないから!!」


「いきなり魔法撃ったヤツに言われたくないよ!!」


 ぐぬぬぬ……とにらみ合い一向に引く気配が無い。

 事の発端は少し前のことだった。


 武具屋での買い物を終えその後道具屋で必要な物を取り揃えたを終えた一行は、その足で街の外にまでやってきた。

 向かう先はフィフティスから西に少し行ったところにある森。ここは『はじまりの森』を卒業した初心者が次に向かうような場所である。

 サンダルクはそこで一度全員で戦ってみようと提案した。全員の能力自体はステータス画面で大よその把握は済ませているものの、どの様に動くのかは実際に見てみないと分からない。

 だからまずはお試しで、と軽い気持ちで言ってみたのだ。


 だが結果は予想以上の大惨敗。

 別にボスが出たわけでもなければ集団で襲われたわけでもない。

 その森に生息する『ダッシュボア』と言う猪型の雑魚モンスター一匹に一人と三匹が盛大にやられた。

 結果だけ言えば最終的には討伐は出来た。ただしそれ以上にパーティーの被害が大きかったため一端森から離れ反省会をしようと持ちかけたのだ。


「まぁお互い言いたい事は分かるけどさ。俺もかなり反省点が多いからその辺で……」


「あの、まずは何がダメだったのか問題点を挙げてみませんか? その上で対策を錬りましょう!」


 ミカンがそう言いながらスイカらの間を取り持ち、一端二匹を引き離してクールダウンさせる。

 そして落ち着いたところで改めて問題点を出す事にした。


「まずはモモからね。兄貴はまずはあの敵を止めるところからでしょ? あんなに簡単に突破されてどうするのよ」


 問題点その一。敵を後衛にまで近づけさせてしまった事。

 モモの指摘通り、先の戦いではダッシュボアを止める事が出来ず後衛であるモモとミカンが逃げ惑う事態に陥ってしまった。

 コボルトという特性上全員がAGIに補正が入ってるためか直撃は受けず大事には至らなかったものの、一歩間違えば吹っ飛ばされていたのは想像に難くない出来事だった。


「そっちだってオイラ達ごと魔法を叩き込んだだろ! 尻尾焦げるかと思ったぞ!」


 問題点その二。火力のある魔法による仲間撃ち(フレンドリーファイア)

 実はこのゲーム、パーティー内でも当然のように仲間の攻撃でダメージを受ける。

 その為仲間を攻撃しないよう前衛後衛問わずアタッカーは気を配らねばならなかった。


「でも倒したから良いじゃない!」


「味方ごと倒していい理由にはならない!」


 互いに一歩も譲らず再びヒートアップしそうだったので、今度はサンダルクが二匹の首根っこをつかみ物理的に引き剥がす。

 今回の件についての問題点はサンダルクははっきりと分かっていた。


「俺も含めてだけど連携不足だったよね」


 全員のパーティー戦における圧倒的経験不足。

 実戦をしていないコボルト三匹はともかく、一年以上このゲームをやっているにも関わらずサンダルクにはパーティー戦の経験は無い。

 正確にはイベントで護衛など一時的にNPCが加わったことはあったが、どれも基本戦闘では動いたりしないキャラクターだった。

 本来なら自然と身に着くはずのパーティー戦での動き方の圧倒的な欠如。

 そもそもダッシュボア自体、サンダルクならば【重桜無刃(じゅうおうむじん)】を使わずとも、それこそ現状の強さでソロで倒せるモンスターだ。

 それにも関わらずパーティーで負けかけた時点でどれほど悪かったのか推して然るべきである。


「主様、どうしましょう」


「うーん……経験不足なら積むしかないんだけど……」


 光はそう言うものの、内心では現状のまま経験を重ねると間違いなくスイカとモモがギスギスするだろうと思っていた。

 仮にそのままやって経験を積めたとしても禍根は残る。

 長い目で見るならこのまま続けるのは一端中止し、何かしらてこ入れが必要だろう。


「マスター、私思ったんだけど知り合いに誰かいないの?」


「あ、それいいな! 他に人間にコツ教えてもらおうよ!」


「…………」


 そんな知り合い居たら【重桜無刃】は持ってない、とスイカ達の無邪気な提案に心を抉られる光だったが、確かに彼らが言うように先人に教えを請うのは基本。

 まぁ居たら、になるが……。


「あ、あの! あの武具屋にいた女性の方は主様の知り合いの方ですか?」


「え、あー……」


 そして空気を読みフォローに入るミカンの優しさに癒されつつ、あの時の女性のことを思い出す。

 正直あんな色々と危なそうな人に頼るのは怖いところだったが、光にしては二人目のフレンドと言う数少ない(プレイヤー)との繋がりだ。

 ファルナと言う繋がりもあったが、あちらは完全に初心者のため教えてもらうと言う選択肢に入れることは出来ない。


「ちょっと待ってね、【ブック】」


 しかし若干の不安は感じていたものの、彼女はサンダルクに比べたら間違いなくパーティー戦の経験は上だろう。

 とりあえず彼女にアポを取ろうかと探索者の本を出しフレンド項目を開く。そこには一年間白紙だったページにファルナとフリーダの文字が追加されていた。

 そしてフリーダの文字が何やらぺかぺかと明滅している。

 これは何だろうとサンダルクがフリーダの名前をタッチすると、その瞬間ずらりと出てくるフレンドメールの山。

 これはフレンドになった者同士でやり取りする機能の一つである。

 しかし光はこれまで全く使ってなかったため通知設定を切っていた。その為着信に気づくことが出来なかったようだ。


「うわぁ……」


「わぁ、お手紙一杯ですね」


 ミカンは好意的に受け取っているようだがあの人と別れてからまだ一時間ぐらいなのにこれである。

 光も流石に薄ら寒いものを感じ頼るのを止める方向に舵を切り始めたその時、不意にモモがサンダルクの右腕を小さく引っ張った。

 何だろうと彼女の方を向くと、そこにはモモが空に向かって短い前足を指す姿。

 それに従い空を見ると、そこには頭上でぐるぐると旋回する小さな鳥がいた。


「マスター、あれなぁに?」


「ん? あー、メールバードだね。誰だろ」


 フレンドメールと違い、メールバードは名前が分かっていれば誰にでも送れる手紙だ。

 差出人がはっきりと分かる上、一通出すのにお金と手間がかかるのでそこまで使われない連絡手段である。

 そしてサンダルクがメールバードに手を伸ばすと鳥はそのままこちらにゆっくりと下降し、手紙を落としてその場を去っていった。


(うーん……例のギルドの人が動いたかな……)


 何故か光が潰した事になってるギルドの人や、今回の件を面白がってる人が送ってきた可能性を考えると正直この手紙を開くのは億劫だった。

 しかし変なメールだったら運営にこれを送りつければいい。やや強引ではあるが割り切ることにすると、まずはメールバードで送られてきた手紙から見る事にする。

 正直なところフリーダのメールは数が多すぎて怖かったと言うのも大いにあった。


「…………」


「ご主人、何書いてあったんだ?」


「ん、簡単に言うと遊びに来て欲しいって話だったよ」


 差出人の名前はヨッツと言う知らない人。ただ手紙には今日の武具屋でフリーダを連れて帰った人だと書いてあったので顔だけは何となく覚えている。

 そしてその内容はスイカ達を連れて是非自分達のクランへ遊びに来て欲しいと言うものだった。



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